初夏の豪雨の夕暮れ時、帰宅したはむぺむがなにやらビニール袋を差し出してきた。 「どうかなと思うんだけど…」 おみやげでもなさそうだし、なんだか珍しく歯切れが悪い。 袋を開けると、ドロドロに薄汚れた黒猫のぬいぐるみ。 左目は取れてなくなっていて、見るも無残な姿だ。 「サービスエリアでさ、踏まれたり蹴られたりしたみたいで、どしゃ降りで、もうすぐ清掃のおっさんに片づけられちゃいそうなすんでのところで保護したんだ」 誰かが気付かずに落としたのだろう。 見る人が見れば小汚いゴミだろうし、そんなものを拾ってくるなんて信じられないって人も世の中には結構いるのかもしれない。 だけど、ああだけど。 わたしはきみ…