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2016/10/24

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  • 老いての恋 ④ 終

    きよ子が転移性の腎癌にかかったと聞いてから亡くなるまでの五年間、西嶌の心が安らぐことは一度もなかった。西嶌は仕事第一の人間だった。家庭のことはきよ子に任せっきりで、そこに自らの責任は感じていなかった。自分の使命は真面目に働いて安定な収入を得て自分と家族に生活を提供すること、それのみだった。思えばきよ子と子供が同時に熱で床に臥していたときも、西嶌は仕事を優先した。子供の運動会と聞いても、無理に休みを取ることもなかった。そんな西嶌にきよ子は何ひとつ文句をいわなかった。実際、子供も父親がそういうイベントに来なかったことに不満はこれっぽちもなかったようだと、子供が大きくなって聞いて、西嶌は安心した。酒、タバコ、ギャンブルには縁がなく、仕事だけを真面目にこなす西嶌を、妻も子供も無害で安心な夫、父親として見ていたのかもしれ...老いての恋④終

  • 老いての恋 ③

    西嶌は不安だった。勝手に他人の祖父を名乗ったこともそうだが、あの若者二人が突然祖父と名乗るジジイに怒鳴られ、安藤に対して変なことをしでかさないかどうかが正直不安でたまらない。いまの若者は短気で自制心が足りず突飛なことをするイメージを西嶌は抱いている。ある夜、西嶌はいつものようにアップルパイとアイスティを平らげ、帰りがけに人がいないことを確認し安藤に声をかけた。「毎日いつも遅くまで大変ですね」安藤はもう十時過ぎだというのにお気に入りのデザートを口にしたときのような笑みを浮かべた。「ありがとうございます」「家は近いんですか」危ない質問だとわかっていた。内心はドキドキで、呂律がうまくまわっただけでホッとした。安藤は老人の不意の質問をまったく怪しまず、「自転車ですぐです」と答える。「夜は暗いから気をつけて。最近はどこも...老いての恋③

  • 老いての恋 ②

    ハンチングをかぶっていないことを除けば、ポロシャツ、チノパンといういつもの格好で、西嶌は駅前のマクドナルド二階のいつもの場所でアップルパイを頬張っていた。安藤に勧められてから、マクドナルドのアップルパイは七十を過ぎた西嶌の好物となった。二度目のアップルパイを注文したときは、安藤から「お口に合いましたか?」と訊ねられ、「ええ、美味しかったです」と返すと、彼女は「よかったです」と親しげな笑みを浮かべてくれた。西嶌はそれだけで幸せな気分になった。そんな幸福のアップルパイを食べ終え、すこし読書をすると、ぽつぽつと睡魔がやってきて、西嶌はいつの間にか眠りに落ちていた。目を醒ましたのは、若い男の会話が耳に入ってきたときだ。眠気眼をこすると、奥の方の席に若い男が二人大きな声で話をしている。会話の内容はまったく入ってこないが、...老いての恋②

  • 老いての恋 ①

    夜は異常に湿気ていた。こんな空気を好むものは誰もいないだろう、私を除いて。そう思いながら、西嶌太郎は駅前に来ていた。髪のない頭にハンチング帽を乗せ、クリーニングに出したばかりの白ワイシャツと黒のスラックスにサンダルという身なりの西嶌は、駅前にあるマクドナルドへ向かった。自動ドアをくぐると、「いらっしゃいませ」と若い女の子の明るい声が西嶌を迎え入れた。西嶌は三人並ぶ列に加わり、レジに立つその女子に視線を注いだ。安藤と名乗るその店員は、今年の四月から大学生になったらしい。触れてみたくなるほどの眩い白肌は今夏の厳しい日差しに全く侵されてなく、キレイに反り返った睫毛の下には逞しさと聡明さの両方を秘めた瞳が潤んで揺らめき、七十過ぎの老父を見たこともない世界へと誘おうとする。安藤という名は胸元につけているネームプレートで知...老いての恋①

  • 心の瞳⑮ 終

    「家の前にあったパトカーは宍戸巡査部長が乗ってきたのではなく、髙橋巡査のものだったんですね」来たばかりの伊部刑事がカクテルに口をつけている後ろでは、ゴジラ対メカゴジラの逆襲が画面に流れている。伊部刑事の言葉に耳を傾けながら、すでに3つのジョッキを空にした私は酔眼をそちらの方に向けていた。夢中になっていたゴジラが休養期間に入る前の最後の作品である。私はまだ幼く、ゴジラの人気が低迷していたことなど露知らず、それを知ったときは全く納得できなかった。だから思い入れが異常に強い。伊部刑事はそれに気づいたのか、私の目線の先に顔を向けていった。「メカゴジラですか?」「知ってるのかい?」「ゴジラは好きなんです」「それは意外だ。何が一番好きだい」「デストロイア戦ですかね」「どうして?」「最後にジュニアが一人で叫んでるシーンが何だ...心の瞳⑮終

  • 『ユー・ガット・メール』

    を観ました。自称トムハンクス大好き野郎なのですが、実はこの作品初めて観ました。メグライアンの作品ってあまり観たことがなかったのですが、勝手に彼女に対していい印象があって、多分ニューヨークの恋人がおもしろくてそのときそんな印象を得たのかもしれません。この映画でもすごくよかったです。日本のラブコメ映画ってあんまり観ようという気持ちが起こらないのですが、アメリカのラブコメ映画って結構好きだなと今回の映画を観てて気づきました。ストーリーはいまでこそなんかありがちかなとは思うんですが、それでもおもしろかったということは、やはり役者さんの力だったり、細かい場面でのアイデアなのかなと感じて、すごい勉強になった次第です。なんかこういうの書いてると、ディカプリオお味噌味は何様なんだ!お前が映画を語るな!と、自分で自分を反省させて...『ユー・ガット・メール』

  • 心の瞳⑭

    髙橋と百合ちゃんが初めて出会ったのは宍戸の家に髙橋が招かれたときだった。3人でディナーというわけでなく、宍戸と髙橋が2人でいる際、偶然百合ちゃんが宍戸宅を寄った。魅力的な女性だと感じた髙橋だったが、そのときすでに人妻となっていた彼女に対して好感は持っても好意を抱くことはなかった。2人が再会した場所は宍戸と髙橋が務める交番だった。近くまで来たということで挨拶がてら交番に寄ったとき、そこには髙橋しかいなかった。髙橋は宍戸が帰ってくるまで待つよう促し、百合ちゃんはしばらくそこで髙橋と会話をした。百合ちゃんはそのときすでに病んでいた。その淵源は大川卓の妙な性癖にあった。それは夫婦の営みの際に現れるもので、稚拙な言葉を選べば変態行為への執着、深刻に表現するとレイプまがいの行為を百合ちゃんに求め、強制して行っていたのだ。そ...心の瞳⑭

  • 『LA LA LAND』

    書くのは遅くなりましたが、公開して結構すぐに観に行ったんです。1人で観たのですが、隣のおばはんが変な笑いのツボを持ってる方でちょっと複雑な席でした。前評判で観に行ったというのも勿論あるのですが、私ディカプリオお味噌は主演のエマ・ストーンが実は好きで、『EasyA』という日本版では変な映画タイトルの映画を観たときから良いなと思っていたのであります。アメイジングスパイダーマンにも出てますエマ・ストーンですが、なんか、いいですよね。私アメリカ留学経験はありますが、正直外人にはあまり惹かれないのですが、エマ・ストーンは、目が大きすぎるけど、なんか、いいですよね。なんかいいんですよね。28歳とか私とほぼ同い年で、大人っぽすぎて、なんか、いいですよね。ちなみにライアン・ゴズリングも好きなんですよね。なんか、いいですよね。た...『LALALAND』

  • 心の瞳⑬

    家に着いたのは0時過ぎだった。池袋で軽く1杯で済ますはずだったというのに、頭の中で複雑に交錯して収縮する血流を緩和しようとした結果、締めのハイボールにまで手を出す羽目になった。あまり良い酔い方をしなかった私の視界は何年も掃除していない湯垢のように白く霞んでいた。玄関とドアを閉めて鍵をかけると同時に、リビングのドアが開いて半袖にスウェットパンツという寝間着姿の雅美が出てきた。「お父さん、メール入れたのよ」娘はやれやれといった表情で私を見る。「ああ、すまん。色々考えながら飲んでて、気づかなかった」雅美は私が手荷物バッグを自然と受け取り、「お風呂は?」といった。「ああ、あとで入るよ」「水飲む?結構飲んだんでしょ」「そんなに臭うか?すまん。でも大丈夫だ。待たせてすまなかった。もう寝なさい」「そう」ネクタイを外しながら自...心の瞳⑬

  • 心の瞳⑫

    宍戸が起訴されて3日が経った。私は警視庁捜査一課の部屋で、1人机上にばらまかれている膨大な資料を前に疲れ切って固まっていた。窓外は静かに眠りにつくような薄闇に染まり始めていた。犯人は宍戸ではない。真犯人が百合ちゃんという100パーセントの確証はないが、宍戸が犯人ということは絶対にありえない。なぜかと問われれば、宍戸という男を誰よりも知っている刑事の勘だ。しかし、確たるエビデンスがなければ私の声に耳を傾けてくれる弁護士、裁判官などいやしない。課内には私と同様の考えを持っている刑事もいなくはないが、真実を求めようとする者は慎之介を含めて他にはいない。頭を掻き毟るとパラパラと艶のない縮れ毛が資料の上に何本も舞い落ちた。私はそれを資料ごと机の奥に押し動かし、空いたスペースに顔を埋めた。宍戸は殺していない。しかしそれを完...心の瞳⑫

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