明るい陽光の降り注ぐ海岸から山側の通りに入った少し喉が渇いていたのでカフェに入って一休みすることにする確かここはラザレット・ヴェッキオ通り通りのどこかにウンベルト・サバの詩があるはずマスターに尋ねるとすぐに教えてくれた「隣の建物の壁だよ」「トリエステには閉ざされた悲しみの長い日々に自分を映してみる道があるラザレット・ヴェッキオという名の」ラザレット・ヴェッキオ「古い伝染病院通り」と名付けられた道だ以前の回にも触れたようにトリエステはローマ、ヴェネツィア、そしてオーストリアと様々な国の支配を受け続け決して主役にはなりえないままに歴史の変遷を重ねてきたそんな環境の中で生きてきた人々の思いを映し出すかのような道路名ここから海は見えないまた展望の拓ける高台も急な坂道の先にある少ない人通りの空間を一陣の風が吹き過ぎ...心ふるえる風景北中部イタリア編⑥トリエステは悲しみを意味するイタリア語を思い起こさせる