「なんで引っ越したんですか?」「誰に聞いた?」あと1週間で高校の入学式。咲から電話がきたのは、男に溺れたあの日から数日経った夜のこと。いつものようにビール片手にアルバムを眺めていると、全くならない電話が突如鳴り響いた。一瞬望海からかと期待しながらディスプレイを確認すると、そこには咲の名前。登録はしたが、俺の新しい連絡先は教えていない。無視をするとしつこそうだから、ため息まじりに電話にでる。すると、...
胡蝶 望海バーナーで炙ったカラメルのような鎧を、常に纏っていた。外はパリッと歯ごたえがあるが、中はとろとろで柔らかい。中の弱い部分は誰にも触れられたくなくて、虚勢を張って壁を作る。その薄くて脆いカラメルを強固な鎧だと勘違いし、他者を断絶し、自分の世界に浸るのが中二病。その脆さに気がつきながらも、なかなか脱げないのが今の俺というところだろう。理想の自分と現実の自分との差。その大きさに比例して、中で閉...
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「なんで引っ越したんですか?」「誰に聞いた?」あと1週間で高校の入学式。咲から電話がきたのは、男に溺れたあの日から数日経った夜のこと。いつものようにビール片手にアルバムを眺めていると、全くならない電話が突如鳴り響いた。一瞬望海からかと期待しながらディスプレイを確認すると、そこには咲の名前。登録はしたが、俺の新しい連絡先は教えていない。無視をするとしつこそうだから、ため息まじりに電話にでる。すると、...
段ボールだらけの部屋で、組み立てたばかりのベッドに転がる。前のベッドは望海の顔がちらついて、仕方なく処分した。望海のために用意した着替えや歯ブラシ、寝具やスリッパ。それをひとつひとつゴミ袋に入れる度に、視界が歪む。終わりにしようと決めたのは俺なのに、思い出だけはなかなか手放せない。実母の写真は破り捨てたのに、望海の写真は1枚だって捨てられない。何度も何度も迷って、結局ゴミ袋から助け出した古ぼけたア...
望海「ねえ!!陽兄っていつ帰ってくるの!?」中学を卒業して、高校の入学式が迫っている。体育祭では3人でメシに行こうと約束していたのに、正月に顔を出してから一度も会えていない。それどころか、咲と初詣に行って帰ってくると、既に陽兄の姿はなかった。俺に挨拶もなく帰ったことなんて一度もなかったのに、としばらく不貞腐れて……待てど暮らせど、いつまで経ってもフォローの連絡はない。業を煮やして連絡したのに、なぜか...
大晦日。澄んだ空気を肺一杯に膨らませながら、煩悩を隠して実家に顔を出した。望海に会うのは、体育祭以来。2ヶ月も空いていないのに、既に毎日会いたくて堪らなかった。少し前なら感情の赴くまま会いに来れたのに、罪悪感が足を重くする。特に父さんと母さんに合わす顔がなくて、ずっと避けていた。これだけ世話になっておいて、その大事な息子に劣情を抱くようになるなんて、俺だって勘弁してほしい。俺が家に到着するや否や、...
「もう!!はるちゃんに言いつけるから~~~っ!!」気に入らないことがあると、望海は俺のところに一目散に逃げてきた。襟元をぐしゃぐしゃに濡らして、宝石のように美しい瞳を深海のように煌めかせて、自分勝手な正当性を訴えてくる。その姿を見ていると理性がぶっ飛び、沸騰しそうなほど熱い血が頭にドクドクと溢れてきた。自分のブラコンぶりを振り返ると恥ずかしいと思う場面が多々あるが、天使を泣かせるなんて悪の所業。俺...
結局あの日から、俺たちはふたりと養子になった。恵さんが言うような選択権なんてなかったし、金も手もかかる大きな子供を2人揃って引き取れる裕福な親戚は、どこにもいなかったから。実母でさえ、家庭を壊されることをひどく恐れていた。写真の中で見た優しい笑顔は幻想で、俺たちを見つめるリアルな視線は驚くほどに冷酷で、無慈悲だった。血の繋がりなんて、何の意味もない。―――家族なんて、いらない。「はるちゃん、夕飯はなに...
陽海―――いつからだろう……?いつから間違えてしまったのか、自分でも分からない。感情の境目があやふやで、いくら探してもその答えが見つからない。見つかったところで、今更どうしようもないのだけれど……ベッドに寝転ぶ無防備な姿を見下ろして、深いため息を吐いた。***望海が生まれたのは、夏休みに入ってすぐのこと。からっとした気候とは程遠く、Tシャツが身体に纏わり付くようなひどく蒸した日。毎日のように最高気温を更新す...
こんにちは!お久しぶりです。皆さま、お元気でしょうか?寒かった日が急に暑くなって、身体の体調崩しそうになりますね。『過保護な花男くん』の続編に続く陽海編を書き終えたので、明日から短編始まります。近親相姦苦手な方はごめんなさい。短編ですが、楽しんで頂けると嬉しいです。桐生最後まで読んで頂き、ありがとうございます!!ランキングに参加しています。よかったらぽちっと応援お願いします!!にほんブログ村小説(B...
咲 「今日どっか寄ってかない?」「……どこ?」俺の肩に頭を預け、のぞが嬉しそうにスマホを差し出す。でも、差し出されたスマホの画面ではなく、シャツの隙間に視線が吸い込まれた。すこし伸びた前髪が、滑らかな頬にふわりと滑る。指先で毛先を耳にかけてやると、視線を合わせてにっこりと微笑んだ。「駅前にタピ屋オープンしたって、田中が言ってたんだよね。少し遠回りしてみない?」「タピ?」「タピオカ。」「あー、カエルの...
咲「こ……今野、まさか貰ったの?」放課後、のぞから貰ったチョコを大事に抱えながら部室に顔を出すと、俺と袋を見比べた部員に渋い顔をされた。「何を?」「チョコ。今日バレンタインだろ?お前が貰えるんか?そして受け取るんか?バレたら天使に殺されない??」「ああ、これはのぞから貰ったやつ。」そう言って腕を高くあげて見せびらかすと、悲鳴と雄たけびの不協和音を奏でる。「のぞみんから?え、確かのぞみんと同クラの田中...
望海―――困った。なんか面倒なことになってきた……。「のぞみん、今野んとこ行ってたの?貢物は代わりに受け取っておいたから。」「あー、うん。」 田中から受け取ったものを乱雑にカバンに放り込みながら、チャックが締まらなくなったカバンを見てため息を吐く。―――俺だって、あげたかったのに!!!「なにそれ?」「現国の教科書。借りてきた。」「え?今日って現国ないだろ?焦るからやめて。」「咲のクラスであるんだよ。」「は...
咲「のぞみんが田中に本命チョコ渡してた!!!」1限のチャイムと同時に駆け込んできたクラスメイトが、その一言で教室に爆弾を投下した。それをすぐ後ろに控えていた教師に咎められ、浮ついた教室が無理やり鎮火させられる。でも、俺の怒りは少しも静まらない。田中。それはのぞの唯一の友達。それが今日からは、俺の最大のライバルに変わった。教室で仲睦まじくじゃれ合う姿を何度も目撃しており、やめろと何度も忠告しているの...
望海―――あー、渡せなかった……!!!カバンの奥にしまい込んだプレゼントを覗き込んで、こっそりとため息を吐く。咲は今日が何の日かも知らなかったみたいだし、昔からイベントに無関心なこともよく知っている。赤色で装飾された浮かれた街中を見ても、咲の目には何も映していない。単なる日常の風景として処理され、記憶にすら残らない。先週の土曜日。咲が部活に精を出す中、俺もこっそりと繁華街へ向かった。いつもの性欲を満た...
咲真っ白な息が張り詰めた空気に溶け込み、低い雲が空を覆う。耳が痺れるように痛むけれど、この時間は嫌いじゃない。のぞが家から出てくるまで、あと2分。先月の誕生日にのぞから貰ったマフラーに顔を埋めて、スマホはカバンへ。悴む指先をポケットにしまいこみ、2階の窓を見上げる。白いレースのカーテンが端に寄せられ窓が開くと、のぞが寒さに眉を潜めながら顔を出した。俺を見つけてにっこり微笑むと、跳ねる前髪をキャラ物の...
遅ればせながら、あけましておめでとうございます!!今年もよろしくお願いします。更新もせずに放置しているブログですが、もうすぐバレンタインということで、咲×のぞの短編を書きました。お話の流れとしては『蛇に睨まれたオオカミ』の後の話になります。明日の10時からはじまります。よかったら遊びに来てもらえると嬉しいです。桐生最後まで読んで頂きありがとうございます!!ランキングに参加しています。よかったらぽち...
望海「夏休み、終わっちゃうね。」小さなバケツと花火セット。派手さは皆無だけれど、俺が望んだ最後の夏のイベント。欠けた月が浮かんだ空の下、向かいにしゃがみ込んだ咲が一生懸命ろうそくに火を灯していた。風除けになればと手を翳すと、咲が俺をじっと見つめる。ゆらゆらと揺れる火の光に、咲の顔がぼんやりと映し出される。いつもとは違う咲の顔に、なんだか照れてしまう。見ていられなくて視線を下げると、咲が俺の手に花火...
咲「咲、汗すごいね?」拭っても拭っても滴り落ちる汗を見つめて、のぞがふわっと笑う。「え、臭う?」「大丈夫。俺も汗だくだから……。」そう言いながら、赤ら顔をしたのぞがにっこり笑う。自分から漂う汗臭い匂いに混じって、隣に歩くのぞからはずっと甘い匂いが漂っていた。その匂いに誘われるように、華奢な首筋に鼻を近づける。「のぞは汗の匂いしない。」「え、なんで?背中もびしょびしょだよ?」「……すげえ甘ったるい匂いす...
「で、咲となんの話したの?」「さすがに急すぎない?」玄関に一歩踏み入れてから、靴を履いたまま男を見上げる。男の家は駅から20分ほど歩いた、2階建ての古いアパートだった。立て付けの悪いドアを開けると、中は蒸し風呂のような灼熱地獄。開けた瞬間に、目を瞑りたくなるほどの滝のような汗が額を流れる。玄関のすぐ脇には、段ボールが開けられることもなく乱雑に積み重なっていた。その上にさらに女性ものの下着や洋服が重...
咲の部屋にいるのが気まずくて、久しぶりに陸部に顔を出した。サッカー部が校庭の大部分を占めているから、俺たちが使えるのは端にある空スペースのみ。だからこそ日陰が確保できるから、別に困ることはない。こんがりと焼けた肌の男たちが、ボールを蹴り飛ばしながら何かを叫んでいる。それをぼんやりと見つめながら、木陰で水筒を傾ける。大して動いてもいないのに、休んでばかりだから空になるのが早い。夏休みが、もうすぐ終わ...
望海―――あれから、咲が全然手を出してくれない……。花火大会の日、初めて咲が触れてくれた。嬉しくて、嬉しくて……俺たちの関係が進展する気がして、次の展開を期待してしまう。いつ続きをしてくれるのかと期待して待っているのに、咲はあの時のことなんてなかったかのように平然としている。ベッドで寝転びじゃれてみても、この前のような雰囲気になることはなく、期待しては裏切られる。毎日その繰り返しで、いい加減俺も疲れてき...
全くやる気のなかったのぞが、瞬時に笑顔を消した。いつもの柔らかな雰囲気を封じて、代わりに全身から気迫が満ちる。エロ目とアイドル鑑賞で来ていたギャラリーがどよめく中、のぞひとりだけ別空間にいた。みんなが予行練習に余念がない中、目をしっかり閉じたまま微動だにしない。身体を使って覚えるのではなく、のぞは頭の中ですべてを完結できる。―――のぞ、やる気だ……。「胡蝶、大丈夫か?具合悪いならやめとく?」心配した西...
咲のぞがバーを見つめて、軽く助走をつける。バーに近づくにつれてスピードが増して、体重をかけて踏み込んだ。そのまま空に向かって身体がふわりと浮き上がると、バーからかなり高い位置を背中が通過した。そして平行に身体を保ったまま、ゆっくりと着地する。数秒で終わる僅かな時間だと言うのに、スローモーションのように優雅に見えた。先月まではさみ跳びしか出来なかったはずなのに、今は1年で唯一背面跳びをマスターしてい...
昔やりとりしてたメアド使えなくて、こちらで名前叫んですみません!こんばんは!お久しぶりでございます!!すごい前の話なんだけれど、もしかしなくてもコメント頂きましたか……🫨コメントほぼもらわないからどスルーで、昔のコメント見ながら元気出そうと思ってたら、えりりんの名前を見つけました。過保護の花男くん読んでくれて嬉しい!!LIVEにお芝居に、昔と変わらず元気そうです何よりです☺️俺も腸活してる。違う意味で笑元...
望海放課後、咲にユニフォーム姿を見せたくて電話をかけたのに、なぜか繋がらない。いつもはワンコールも待たずに電話をとる咲だから、電話に出ないのは珍しい。体育館まで距離はないから、その姿のまま部室に顔を出した。「え、のぞみん!?」部室を覗くと、ちょうど部活を終えた部員が着替えている最中だった。ラッキースケベだと思いながら咲の姿を探したが、奥まっている造りのせいで入り口から奥まで見えない。―――あー、残念...
咲「さっきの体育、のぞみんTシャツ着てなかったって。」―――は?次の授業は理科の実験。そろそろ理科室に移動しようかと腰をあげると、小走りで教室に戻ってきた木村が息を弾ませながら爆弾を投下した。思わず顔を上げると、木村と視線ががっちり噛み合ってしまう。俺を見つめてあからさまに狼狽えながらも、小声でぼそぼそと話し続ける。「乳首透けてたらしくて、エロいってD組が騒いでた。」「マジか。見に行く?」「え、男の乳...
「のぞみんの彼女ってどんな子?」「え?」咲の委員会が終わるのを大人しく待っていると、同じく彼女の委員会が終わるのを待つ田中が話しかけてきた。「いや、昨日シたって話してたから。」「あー、彼女じゃない。」「え?」「初めて会った子だから本名も知らない。」「……・え?」むしろ、女ですらない。田中が面白いくらいに口をあんぐり開けながら、俺に近づいてくる。咲と違ってリアクションが大きい田中は、単純に話しやすい。...
「電話なんででなかったの?」結局まっすぐに体育館に向かう気分になれず、図書館で時間を潰して……部活が終わるチャイムに合わせて、慌てて体育館へと走った。体育館を覗くと、タオルを首にかけた咲が俺を見つけて睨んでくる。いつもならさっさと着替えているはずなのに、俺が来るのを待っていてくれたらしい。その視線に笑顔だけ返して、機嫌をとろうと腕に絡みつく。「喋ってて気がつかなかった。」「誰と?」「田中。」「……あい...
望海「のぞみん、なんかあった?」「何が?」「昼休み終わってから、顔がずっと怖いから。」「わり。」「別に謝らなくていいけど。」田中と一緒にテニス部に顔を出すと、おがっちに睨まれたけれど田中の背中に隠れてやり過ごす。体操着に着替える田中の背中を見つめながら、自分の背中を思い出す。俺と同じもやしだと思っていたのに、咲ほどではないけれどちゃんと筋肉がついていた。着痩せするタイプなんだなって思いながら、肩甲...
「B組の舞ちゃん、のぞみん狙いだって。」「え?あの子って進藤と付き合ってなかった?」「別れたんじゃね?」「ま、胡蝶ちゃんだもんな。そりゃ進藤でも負けるだろ。」のぞの話をしている男たちの声が、自然に耳に入る。それには気がつかないフリをして、耳だけ男たちに向けながらスマホを見つめる。「そういえば、先輩たちもD組の廊下にいないよな?いい加減飽きたのかな?」「違うって。志村先輩の怪我、知らねえの?」「あー、...
咲のぞが隣の席の女を見つめて、ため息を吐くのが視界の端に映る。俺といるのがそんなにつまらないのか不安を覚えながら、大学生くらいの女に視線を向けた。肩まで伸びた髪の毛先はカラーで痛んでいて、滑らかで艶やかなのぞの髪とは雲泥の差。ステンドグラスから伸びた光が、のぞの柔らかな髪を優しい彩色で照らしていた。のぞと女が並ぶと、お似合いとは言い難い。―――まだ、俺の方がマシじゃないか?いや、おこがましいにも程が...
「え?なんでカラコンしてんの?」地元の改札を抜けると、怖い顔をした咲が待ち構えていた。俺を見つけるとほっとしたように緊張を解いたが、見慣れないカラコンに眉を潜ませる。「え、あー……この目だと目立つから。」「瞳の色変えたところで、そんなに変化ないけど……。なに買ったの?」「いや、何も。試合はどうだった?」「勝った。」「よかったじゃん。」「明日は予定あるの?」不安そうな咲に見つめられて、微笑みながら腕に指...
はじめて降り立った新宿駅は、迷路のような複雑さだった。駅構内や周辺の地図を頭にいれてきたけれど、実際に歩くと人の波に簡単に流されてしまう。地元の駅とは比べ物にならない人の多さに眩暈を覚えながらも、初めて出会うゲイを想像して不安や恐怖と同じくらい興奮しているのも確か。人に溺れそうになりながら目的の場所に辿り着いた頃には、額から汗が止まらなくなっていた。知らない場所というのは、いるだけで疲れる。ひゅう...
「おはよ。」「……うん。」昨日の今日ですごい気まずくて、咲を見ることが出来ずに俯きながら学校に向かう。咲の視線を痛いほど感じるけれど、その視線を受け止める余裕がない。「俺、なんかした?」「心当たりがあんの?」「い……ええ?まさか、起きてたの?」「なんの話?」「……なんでもない。」咲が無言の空気に耐えかねて、不安げにそう質問をなげてきた。いつも仏頂面の咲が、珍しく百面相をしている。その横顔を見つめながら、...
望海「のんちゃん、ぼくと結婚してくれる?」ふたりで弾まないボールをリビングで転がしていると、咲が突然そんなことを言い始めた。忘れかけていた子供の頃の記憶。あれは都合のいい俺の夢だったのか、今はもう判断がつかない。「結婚?」「ずっと一緒にいられるお約束すること。」「さっちゃんと一緒にいられるの?」「うん。ずっと一緒にいてくれる?」「いいよ。毎日ゲームできるね。」俺がそう返事をすると、咲の顔がぱっと華...
俺が精通を迎えたのは、小学5年の終わりだった。落ち着くから、気持ちいいから、そんな軽い気持ちで触っていたそこが、たまに硬くなることは知っていた。硬くなったそこをさらに擦ると単純に気持ちがよくて、気がついたら癖のようになっていた。いつものように何気なく部屋で弄っていると、手が透明な液で汚れていた。「はあ?」という何にキレたのか分からない感情が沸き起こるのと同時に、尿とは異なるそれが精液だと気がついた...
咲「え、このタイミングで寝る?」俺の胸の中ですやすやと眠るのぞを見下ろしながら、思い切り脱力する。教室でもこの調子ですやすや眠っているんじゃないかと、マジで心配になる。担任は鬼怖いと有名なおがっちだから、他の生徒が何かしたりはできないと思うけれども……のぞは小学生の頃から本当によく眠るから、油断できない。小学校の頃は教師に起こされて、家族と勘違いしてキスをした前科がある。―――やめてくれ!絶対にやめて...
望海「なあ、中間終わったらお泊り会しない?」「はあ?」中間試験対策をしながらそう問いかけると、咲の表情が思い切り曇る。あからさまに嫌だと言われているようで、悲しくなった。俺も精通を迎えて大人になったことだし、咲とベッドにいたらもしかしたらなにか発展があるかもしれない。そんな不埒な考えがチラッと浮かんだが、咲の今の顔を見ただけで結果は明らか。―――明らかなのに、なんで諦めがつかないんだろ……。「小学生の...
「二の腕って、おっぱいの感触と近いんだって。」「マジで?今度誰かの触ってみよーぜ。」腹いっぱいで怠すぎる6限の体育の授業を終えると、クラスの男子の会話が耳に入った。女子がいないと、途端に猥談に花が咲く。その様子を遠目に見つめていると、突然話を振られた。「今野くんって、胡蝶さんと仲いいよね?」「まあ。」俺にはくん付けなのに対し、のぞにはさん付けなのが気になりながら、いつものように適当に流す。「胡蝶さ...
「咲、おはよ。」昨日と変わらない眩い笑顔で、のぞが家からひょっこりと顔を出した。エロサイトを見ていたことを俺に気付かれたなど全く気がつかない様子で、いつもの爽やかな笑顔を見せてくる。―――このクソ可愛い顔で、マジでオナってんの?「咲は寝不足?クマできてる。」「……のぞはもう平気なの?」「いっぱい寝たから。」「元気そうでよかった。」横顔はいつもよりも晴れやかで、なんだかこちらまで幸せそうになる笑顔だった...
咲中学に通ってから、初めてのひとりでの登下校。のぞが隣にいれば秒で着いてしまうその距離が、ひとりだとやけに遠く感じる。のぞ、食欲はありそうでよかった。具合が悪いと恵さんから教えてもらった時は不安だったけれど、昼休みに電話した時には元気そうな声に安心した。小学生の頃は、本当にしょちゅう学校を休んでいた。家からほとんどでない生活の癖に、インフルエンザなんかの流行りものには毎年罹り、ちょっとした風邪が瞬...