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2016/05/07

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  • 過保護の花男くん 131

    「緊張する。無理。見れない。」「さっさとしろよ。ボタン押すだけだろ?」合格発表の日。これですべてが終わってしまうと思うと、怖くてボタンが押せない。スマホ画面に受験番号まで入力したところで、確認のボタンを押すための勇気がなかなか出ない。もう結果は覆せないことくらい分かっているが、時間ぴったりに確認ボタンを無言で押すのぞを見つめながらも、俺の決心は揺らいでいた。「のぞがやって?」「先輩平気で蹴り飛ばす...

  • 過保護の花男くん 130

    「受験票とお守りもった?」「オッケー。のぞは筆記用具も大丈夫?」「あ、忘れてた。ちょい待って。じゃ行くか。」受験当日。のぞの家の前で待ち合わせをして、2人並んで駅に向かう。俺が受かれば、毎日通うことになる駅までの道のり。これが最後にならないことを切に祈りながら、ポケットの中のお守りを握りしめる。「どうしよう。緊張してきた。」「一回抜く?」真顔でそんなことを言われて、緊張していた気持ちが秒で吹っ飛ぶ...

  • 過保護の花男くん 129

    「のぞ、おめでとう。」「あけおめ。今年も俺の世話よろしく。」澄んだ空に、綿菓子のような柔らかい雲が浮かんでいた。鼻の奥がつんとするような寒さの中、すっかり日課になりつつあるのぞとの走り込みを終えて、毎年訪れている場所に足を延ばす。隣で鼻を啜りながら欠伸を繰り返すのぞの背中を押して、近くにある神社に向かった。「超さみい。」走り込みを終えても、のぞは寒そうに歯をガタガタさせながら俺の隣を歩いている。上...

  • R18 過保護の花男くん 128

    俺の家に到着すると、カーテンが開いたままの家の中は真っ暗だった。のぞの家の電気も消えていたから、きっと両家で楽しく夕飯でも食べているんだろうと思うと、堪らなく嬉しくなってしまう。うちの両親が俺の変なところを口走らないことを切に祈りながら、のぞのシャツを脱がすことに頭を切り替える。「咲、ちょっと待って。」「何?」「シャワー浴びたい。今日べとべとだから!」「いいよ。どうせすぐに汗だく。」「俺がよくない...

  • 過保護の花男くん 127

    校庭に蔓延っていた一般人はすっかり消え、さっきまで騒がしかった外には体育祭委員の腕章をつけた数人の生徒のみ。他の生徒は各クラスに別れてHRをやっているはずで、後夜祭は基本は自由参加。自由参加とはなっているが、ほぼ全員が参加するだろうことは想像できる。のぞがこれでサービスするのは最後だと言っていたし、ダンスの盛り上がりから後夜祭後に告白する人間も多いはず。ライバルはいないと言ってくれたのぞの気持ちは嬉...

  • 過保護の花男くん 126

    咲「のぞ、大丈夫かな?」「てか女子ダンスの時どこいた?」田中と並んでのぞのことをドキドキしながら待っていると、田中に鋭い突っ込みを入れられた。「バスケ部の部室。」「抜いてた?」「……はい。」俺が大人しく白状すると、田中が眉間に皺を寄せながら考え込む。「2人とも早漏なの?」「のぞがスカートでサービスしてくれたから。」「マジで!?」田中が口元を緩ませ、俺の肩を乱暴に揺すってくる。のぞのスカート姿を思い出...

  • R18 過保護の花男くん 125

    「のぞ、浴衣かわいい!似合ってる!!」「さ、咲も……か、かわいっ!ふくくっ!あはっはは!無理!似合わねえ!!」咲に抱き付かれながら、男バス恒例の女装姿に思い切り噴き出す。ゴリラが窮屈そうに女子の制服を纏っているが、今にも破れそうで別の意味でヒヤヒヤする。「ファスナー上がらないの?」「無理。ギチギチだから破れる。」腰に巻かれたスカートのファスナーは全開で、もはや民族衣装のようだ。「なんで女装なのにかわ...

  • 過保護の花男くん 124

    「おーせ、おせおせおせおせD組っ!!!」最初から本気で走るつもりだったけれども、事情が変わった。大声を張りあげながら、D組とA組の走行者をじっと見つめる。選抜リレーは各クラス男女混合10名で構成され、アンカーはグランド3周という鬼ルール。第一走者が走り終えたところで、BCADの順番が出来上がる。―――序盤から劣勢すぎるな……こわ。バトンパスが上手いのは山口がいるC組。足の速さで見れば城戸のいるB組。俺と咲がいる...

  • 過保護の花男くん 123

    男子バスケはD組の圧勝で幕を閉じた。進藤にペットボトルを手渡しながら、タオルを首にひっかけた。疲れるとやりたくないを繰り返していた進藤を無理やり競技に引っ張り出してしまったから、労いの言葉と笑顔で機嫌をとる。「優勝おめでとう!!めっちゃ格好よかった!!」両手を広げてハグに応えると、珍しく疲れた表情をした進藤に力いっぱい抱きしめられる。背中に回された腕はがっちりとホールドされ、身動ぎしても離れない。...

  • 過保護の花男くん 122

    体育祭当日。唸るような暑さが引いたと思ったら急に肌寒い日が続き、季節の移ろいを肌で感じる。窓を開けるとふわりとカーテンが膨れて、澄んだ空気の中に金木犀の香りが紛れていた。秋めいた過ごしやすい季節の中、俺はありえない程の人の多さに困惑する。去年はここまで人がいなかったはずなのに、だだっ広い校庭を埋め尽くす黒い集団を教室から見下ろしながら眉を潜めた。「なんか、エグくね?」「のぞが今年卒業だから。」「な...

  • R18 過保護の花男くん 121

    スマホのタイマーをつけて、シャーペンを3回転させてから問題を睨む。覚えたばかりの公式を、クイズのようにどんどん当てはめていく。それがぴったりと重なった時は、イったときのように視界がぱっと開ける感覚が気持ちいい。分からない問題も何問もあり、突破口すら開けない問題はすぐにパスをして、次の問題に頭をシフトする。制限時間のアラームが鳴ると同時に、肩の力がふっと抜けた。「のぞ、お疲れ。」咲の声に顔をあげると...

  • 過保護の花男くん 120

    望海体育祭が近くなってきたから、久しぶりに男子選抜の合同ダンス練習をおこなうことになった。昼飯のおにぎりに齧り付きながら咲のテスト勉強に付き合っていると、城戸が俺の背中に寄りかかってきた。「女装やめたんだって?」「あー、舞ちゃんと競う必要なくなったから。」「今野と和解したの?」「まあ。」「ま、よかったじゃん。で、体育祭なにでんの?」「走る専門。」「大雑把な括りだな?」「城戸は?」「俺も走る系とバス...

  • R18 過保護の花男くん 119

    咲下校時刻でいつも以上に騒がしい廊下を抜けて、のぞと一緒にトイレの個室に籠る。前にしゃぶった場所で、再びここに籠ることになるとは思わなかった。かわいい声を聞かせたくはないけれど、今は非常事態。顔を隠すように俯いたままでも、色白の首筋が真っ赤に染まっている。視線を落とすと既に股間が窮屈そうに膨らんでいて、それを見ているだけで俺の方がもっていかれそうだ。「どうしたの?」「なんか、咲に見られると身体が熱...

  • 過保護の花男くん 118

    望海「にっしーはなんで俺のことは叩かないの?」「胡蝶叩いたら多方面から殺される。お前の兄ちゃんも今野も超怖いじゃん?」「依怙贔屓って言葉知ってる?」「贔屓されてる側なんだから余計なことを言うな?」「にっしーは俺のことだいすきだもんな?」「はいはい、だいすきだいすき。てか胡蝶本気で走るんだろ?怪我すんなよ?」「えっち。盗み聞きしてたの?」「久しぶりに扱いてやろうか?」「咲と走ってるから間に合ってまー...

  • 過保護の花男くん 117

    咲「のぞ、体育祭なにでる?」ずらっと黒板に書かれた種目を見つめながら、隣にいるのぞに声をかける。「徒競走と選抜リレーと部活対抗リレーは多分必須。毎年でてるから。」「……どんだけ走るの?」走るという種目に関して、のぞの右に出る者はいない。最近のぞが起きれた時に一緒に走るようになったが、慣れているはずの俺が必死にのぞを追いかけるしかないのは、最早ギャグでしかない。それでものぞは手を抜いてくれているようで...

  • 過保護の花男くん 116

    「どうだった?」撮影が終わり、syuさんがカメラをゆっくりと下ろす。レンズ越しだと緊張していたのに、カメラを外すと別人のように人のいい笑顔を向ける。その笑顔にほっとして、俺もようやく肩の力が抜けた。冷房が効いているはずの室内でも、眩いほどのライトのせいか撮影中はかなり熱い。背中はぐっしょりと濡れていて、ジャケットを脱ぎながら手で仰ぐ。撮影に集中していたせいか、窓がない室内では時間の感覚が狂ってしまう...

  • 過保護の花男くん 115

    望海次の日選抜女子に経緯を説明して謝ると、意外なほどにすんなり納得してくれた。その足で2年の体育祭委員のクラスに顔を出すと、俺を見るなり露骨に落胆した表情を見せる。「やっぱりやめるとか、言いませんよね?」「ごめんなさい。」そう言って深々と頭を下げると、机に突っ伏しながら眉を下げる。「あー、まじですか?正気に戻っちゃいました?」「彼氏NGくらった。」「やっぱり!!今野先輩に最初に許可取りしなくちゃまず...

  • R 過保護の花男くん 114

    「のぞが選抜女子のダンスで踊るって。」「はあ?女装すんの?」掃除当番の時間。田中にその話題を振ると、口をあんぐり開けた状態で俺を見つめる。「そもそも女子のダンスってどんな感じ?」「のぞみん、やる気なの?」「がんばるって言ってた。」「NTR希望?」「それ殺すやつ。」「だよな。男子の制服で襲われる人間がなにしてんの?ちゃんと説教した?」「逃げられた。」「のぞみん逃げ足速いもんな。」「怒られる前に甘えるし...

  • 過保護の花男くん 113

    仕方なく教室に戻ると、進藤と視線が絡む。「なんか、のぞが怪しい。」「なんで?」「昨日LINEしてた。」「で?」「いや、のぞは基本返信しないから。」「それは知ってる。既読つけば読んだことわかるだろってタイプだもんな?典型的なB型。」「俺とのLINEも平気でブチるのに、昨日は秒で返してた。」進藤は全く興味が惹かれないようで、スマホに視線を向ける。「体育祭の話って言いながら進藤や城戸じゃないっていうし、絶対おか...

  • 過保護の花男くん 112

    咲「のぞ、なにしてんの?」無事に再試を合格して、いつも通りに俺の部屋での勉強会。2人でいる時に、のぞが珍しくスマホをじっと見つめている。なんか調べものかと思いながらちらりと画面が見えると、誰かとLINEしているようだった。「あ、なんか分からなかった?」「いや、これ終わったから。」「オッケー。丸つけるからこっちやってて。」そう言われてプリントを手渡され、スマホは机に伏せられた。スマホを視線で追うと、机が...

  • 過保護の花男くん 111

    「てか今野ってどっちなの?」俺たちの会話を呆れたを通り越してドン引きした様子の城戸が、聞くに堪れなくなったのか咲に質問をなげる。「なにが?」「女と男どっちがすきなの?」「なんでお前に聞かれなくちゃいけない?」咲は明らかに気分が乗らない様子で、城戸を睨んでいる。女に決まってるのに、なんでそんな嫌そうな顔をするのかが分からない。「あ、でも舞ちゃんタイプだから元は女好きなのか?」「なんでお前がそれを知っ...

  • 過保護の花男くん 110

    「のぞは頭いいくせに、なんでぼんやりしてんの?」抱きしめられながら馬鹿にしたようにそう尋ねられて、ぼんやりしているつもりもなかったから返答に困る。咲といると、咲しか見ていない。咲のことしか考えてない。ひとりで居る時はいろいろなことを考えているつもりだけれど、咲といるとおんぶにだっこでなにも考える必要がない。その分、咲が俺のことを考えてくれているのを知っているから、きっと助けてもらえるだろうと安心し...

  • 過保護の花男くん 109

    望海「で、ムズムズは解消された?」いつもの空き教室でのダンス練習を終えた後、揶揄う気満々の顔の城戸に声をかけられた。「セクハラやめろ。」「解消されたんだ?よかったじゃん。その顔で性欲強いのはウケる。」「男なら大体強いだろ?」「今野も強そうだけど、それに付き合えるってことはよっぽどだろ?」「ゲイカップルがキショいって言ってた癖に、めちゃくちゃ絡んでくるのなんなの?ウザいんすけど。」出会った初日が懐か...

  • R18 過保護の花男くん 108

    咲のぞがシャワーをしながら準備している間、のぞの言葉を思い出しながらかみしめる。―――のぞのメンブレ超かわいい!!萌える!悶える!!泣きながら縋られて、危うく二日連続で学校で勃ちそうになった。のぞとのセックスが嫌なわけがない。むしろ学校で盛られてものぞが困るから、我慢しただけ。メンブレかわいかったけど、やっぱり怖い。のぞは誰とでもヤれるから、あのタイミングで俺が傍にいなかったらマジで誰かに抱かれそう...

  • 過保護の花男くん 107

    「セックスしたい。」耳元でそう囁くと、咲が驚いたように身体を離す。少し嫌そうに眉を潜めるから、余計に寂しくなる。―――俺の身体も心もこんなに咲を求めているのに、咲は俺のこと欲しくないの……?「寂しいから抱いて。」「な、なに言ってんの?」慌てた様子で俺の指まで引き剥がすと、さっと距離をとられるからまた泣きそうになった。「抱くのやだ?」「いや、ここじゃ無理じゃん。」「家帰ろ?」「え?」「俺としたくない?」...

  • 過保護の花男くん 106

    望海次の日の昼休みから、咲も同じ教室で過ごすことになった。咲がいるから女子の練習に参加するわけにもいかず、しばらくは自主練習ということに決まった。俺以外の女子はダンスに慣れていて、男子に比べると上手い人間が揃っている。その中で俺だけが足を引っ張っているのに、その俺が参加できないのであれば集まる理由もないのかもしれない。昨日の件で周りも引いていて、俺に話しかけるどころか視線すら合わせない。ダンスの練...

  • 過保護の花男くん 105

    進藤「疲れた。しんどい。腹減った。」「ジュースあるよ?」「扇風機つかう?」「お菓子たべる?」「いいの?ありがと。」受験のため貴重な放課後は使えないから、毎日行われることが決まった昼休みのダンスレッスン。胡蝶は女子の練習にも参加しているから、ほぼぶっ通しで踊っていることになる。ゆっくりメシを食う暇もないせいか、いつもよりも大きなおにぎりを齧りながら、机に長い脚を投げ出していた。制服では動きにくいから...

  • 過保護の花男くん 104

    「大丈夫だった?」「何が?」「ダンス踊るんだろ?」「初心者だけど、なんとかなるっしょ?所詮中学のお遊戯会。」本気で踊るような面子じゃなさそうだし、ガチ勢ではなかったことに安堵を覚える。どちらかといえば、女子にモテたくてそれしか考えてなさそうなチャラい連中。俺が間違えたところで怒られなさそうだし、それなりにカタチにすれば問題ない。別にテストでもないし、女子モテなんて俺になんのメリットもないのだから。...

  • 過保護の花男くん 103

    「にっしー、胡蝶くん借りていい?」舞ちゃんが男たちの輪に入ると、男の視線が舞ちゃんに注がれる。その視線に気がつくと、ふわりと花が咲いたように微笑むから、かわいい以外の言葉が見つからない。小柄で愛嬌があり、自分がかわいい生き物だということを熟知している。「ああ。女子でも決めてもらって。」にっしーがそう言うと、舞ちゃんが微笑みながら俺の腕にしがみついてくる。柔らかな胸がふにゃっと触れて、それでも構わず...

  • 過保護の花男くん 102

    望海教室に男子10名と女子が9名集められ、1年と2年で構成される体育委員にぐるりと周りを囲まれている。女子が1人足りないようだから欠員かバックレかと思い進藤に問いかけると、神妙な顔つきで俺を見つめてきた。「なに?」「いや、まじで美人になってきたなって思って。神々しい。」「1ヶ月でなんも変わらないだろ?」「毎日見てたから気がつかなかったけど、爆速で美人になってる。余裕で化粧のCM出れるわ。」「どうせ褒め...

  • 過保護の花男くん 101

    目を覚ますと、のぞがいる幸せ。のぞの顔を見つめながら、寝られる幸せ。毎日の幸せをかみしめながら、夏休みが秒で過ぎていく。始まる前は辛いと思っていた家で缶詰での勉強も、慣れてしまえば苦ではない。むしろのぞが隣にいるという最大級の安心とのぞが先生という幸福のお陰で、俺の学力は飛躍的に伸びた。夏休み最後の週に受けた模擬試験。昨日その結果が返ってきて、合格判定がずっとDだった俺が初めてCに上がった。偏差値で...

  • 過保護の花男くん 100

    女子に追いかけられてから1週間は、大人しく家に籠っていた。でも、さすがにしんどいと言い出したから、気分転換がてら田中や進藤を交えて勉強会をすることになった。日曜日のよく晴れた朝。雲一つない真っ青な空に向かって伸びをすると、手を大きく振りながら田中が現れた。「のぞみ~~~ん!ひさしぶり!すっげえ会いたかったわ!!」いつも通りのぞに向かって満面の笑みを向けるのに対し、隣の俺には挨拶はおろか視線すらない...

  • 過保護の花男くん 99

    母さんが夕飯の準備をしてくれている間に、のぞと俺の部屋に籠る。のぞが無言で俺に向かって、スマホの写真を見せてきた。「これ何?」見るとインスタの画面のようで、のぞと陽海さんがスーツ姿で並んでいる。服装からこの前の誕生日の時に撮られたものであることは分かったが、あまりにも様になっているせいか素人には絶対に見えない。2人のビジュがあまりにも強烈すぎて、背景にあるおしゃれな建物が霞んで見える。「ストリート...

  • 過保護の花男くん 98

    結局のぞは夕方までぐっすり寝て、母さんが帰宅したチャイムの音で飛び起きた。夕飯の追加の買い出しを頼まれ、のぞと一緒に散歩がてらのんびりと歩く。昼間に比べたらましになったとは言え、夕方でも湿気で空気が重く、肌に張り付くシャツをパタパタと扇ぎながら駅前のスーパーを目指す。18時を過ぎてようやく陽が傾いてきた空を見上げていると、のぞが申し訳なさそうに話し始めた。「咲、ごめんね。」「何が?」「俺だけ寝ちゃ...

  • R18 過保護の花男くん 97

    咲点数制を設けていたはずだったのに、のぞが自慰ができないというかわいすぎる件で自然消滅していた。その代わりヤる時は俺の両親がいない時間が絶対条件で、勉強に身が入らないと困るから勉強時間は基本的に離れて過ごす。机の上で俺専用のテストやプリントを作成してくれて、俺は分からないところを聞きに行くスタイル。手の届く範囲にのぞがいると、俺がすぐに手を出すから。毎日3回行われるテストは継続していて、俺の苦手な...

  • 過保護の花男くん 96

    ご馳走になったお礼に洗い物を申し出て腕まくりをしていると、咲に背中から抱きしめられる。「のぞ、家に帰っちゃう?」「うん。シャワー浴びたいし、今日の分のプリント家に置いてきた。」「シャワーはうちで浴びたら?」「は?」「俺も浴びたいし、一緒に入ろ?」「はあ?無理だろ。」「なんで?陽海さんとは入るんだろ?」「あの人は咲と違う。」「何が違う?」「全然意味が違うだろ?咲とは絶対に風呂入れない。」「洗ってあげ...

  • R18 過保護の花男くん 95

    望海ゆっくりと瞼を開けると、咲のドアップに思わず変な声が出そうになる。驚きすぎて声をあげそうになったところで、ベッドのヘッドボードに頭をぶつけて声は無事に抑えられた。じわりと滲む視界のまま咲を見つめると、珍しく熟睡しているようで身動ぎ程度では全く起きない。俺の背中は咲の腕でしっかりホールドされ、枕にしていたのは咲の腕だった。―――恥っず!!!背中の腕を離すのは惜しくて、枕にしていた腕だけ少し動かして...

  • 過保護の花男くん 94

    部屋に戻ると待ちきれなかったのか、のぞが俺のシャツにしがみついてくる。「陽兄となに話してたの?」「なんでもない。」「陽兄相手にやくのマジでやめて。」「なんで?」「キショいから。」「はあ?」「だって陽兄だよ?俺のおむつかえて、風呂入れてた親代わり。ありえないから!」「分かんないじゃん。相手のぞだし。」「いやいや、ないでしょ?ガチでやめて!」「のぞでも陽海さんキショいと思うの?なんかされた?」「陽兄が...

  • 過保護の花男くん 93

    陽海さんとのぞがキスをしてから2日後の夜、陽海さんが俺の家にやってきた。時刻は夜の10時を回っていて、着崩れたスーツ姿で現れた陽海さんは俺を見るなりクスクス笑っている。―――マジで、腹立つな……こいつ。「この前の慰謝料、全額お返しします。」そう言って封筒を手渡すと、陽海さんは虚を突かれたようで驚いた表情を浮かべた。「いらねえの?」「いりません。俺が勝手にしたことなので、陽海さんに払ってもらうのは筋が違い...

  • 過保護の花男くん 92

    咲深夜0時を回り、静まり返った住宅街に、ハザードランプが点滅する光とともに、駐車する音が聞こえた。誰だろうと思いながらカーテンを開けると、のぞの家の前にタクシーが一台止まっている。陽海さんに何度か電話をかけたが、繋がらずにメッセージだけ送っておいた。この時間に帰宅するとすれば、陽海さんくらいしか考えられない。直接お礼を言おうと窓を開けると、生ぬるい風が頬を撫でる。タクシーから降りてきたのはいつもよ...

  • 過保護の花男くん 91

    初めてのフレンチだったけれど、店員さんも気取らないタイプで、緊張しすぎることもなく楽しめた。周りは大人の恋人ばかりで、あそこにいるのが場違いなことは確かだったけれど、年齢層が落ち着いているせいか逆に微笑ましく見守られていた気がする。ふわふわとした特別な気持ちのままタクシーに揺られ、陽兄の肩に頭を預ける。「美味しかったし、楽しかった!すっげえ疲れた!秒で寝れそう。」「そう?それはよかったわ。望海がは...

  • 過保護の花男くん 90

    「あ、咲から。」陽兄がスマホを見つめて、そう呟く。でも、少しも出る気はないようで、そのままプツリと切れてしまう。「なんででないの?多分お礼の電話だと思うよ?」「デート中に急ぎの仕事と望海の電話以外、出る必要ないから。」「は?」「咲にもデートのマナー教えとかないとな。あいつは失礼過ぎる。」「いや、今は俺だから出ていいだろ?なんでデート中に俺の電話に出てんの?だからフラれるんだろ?」「だって、望海が一...

  • 過保護の花男くん 89

    身体が動かしにくくて、緊張する。初めてのお高いスーツの印象は、動きにくいだった。いつもゆるゆるの服ばかり着ていたから、身体のラインがはっきり出ているだけで恥ずかしい。スーツなんて小学校の卒業式に着て以来で、あの時は陽兄のおさがりを着ていたから不格好すぎて、皆に笑われた苦い思い出しかない。「スーツなんて緊張する。」「俺は美人の隣を歩けてすげえ幸せだわ。気分いい。」陽兄はさっきからずっと上機嫌で、俺を...

  • 過保護の花男くん 88

    「咲、舞ちゃん好きなんだって。」陽兄の顔を見るや否や、その話題を口にした。泣いている俺には触れずに優しく抱きしめてくれるから、甘えてしまう。陽兄には遠慮なく甘えられるのに、なんでも言いたいことを言えるのに、咲だとどうしてもうまくいかない。素直になれない。優しく出来ない。大好きなのに、触られたくない。「咲、家にいんの?ちょっと殺してくるわ。」そう真顔で言うと、俺を置いて出て行こうとするから腕を掴む。...

  • 過保護の花男くん 87

    望海―――やっぱり、咲もノンケだったか……。舞ちゃんの顔を思い出し、スコーンの味がしない。口の中にもさもさとした触感だけが残り、それを無理やり飲み物で押し込んでいく。小動物系の、大きな瞳が特徴的なかわいい女子。他の男子がかわいいと持て囃しているし、小顔で表情豊かで華奢な身体を持っている。柔らかそうな太腿や頬を思い出し、喉にやたらとスコーンがひっかかる。半分ほど無理やり腹に入れたところで、気持ちが悪くて...

  • 過保護の花男くん 86

    咲こういうとこ、もしかしなくても女子と来てんのかな?なんか女子好きだもんな。こういうオシャレな感じ。あー、でも陽海さんとは来そうかも……?1人でそんなことを考えていると、ハンモックではしゃいでいたのぞが心配そうに声を掛けてきた。「咲、なに食べるか決まった?スコーンとか美味そうじゃね?さっきショーケースに並んでた。飲み物だけでもいいし。」甘い物が苦手な俺に向かって、そう配慮をしてくれる。のぞに曖昧に笑...

  • 過保護の花男くん 85

    望海「あの!あれこのまま着てっていいすか?」「ぜひぜひ!新品ご用意させて頂くので、少しお待ちください。タグだけ切らせて頂きますね。」そう言いながら、丁寧な手つきでタグを切り取る。「あ、そのシャツもうちのブランドですね!メンズものなのに嬉しい!とてもお似合いです!」俺が着ているシャツに目を止めると、自然な笑みで微笑まれた。徹底された教育が行き届いていて、生意気な中坊に対してもそれは変わらない。陽兄を...

  • 過保護の花男くん 84

    夏休みが始まった最初の日。のぞの誕生日に合わせて、俺たちは初めてのデートに出掛けることになった。7割は取れても、なかなかそれ以上点数が上がらない。したいとは言ってくれるのに、点数を甘くつけることや問題の難易度を変えることはしない。合格のためといったらそれまでなんだけれど、なかなか厳しい現実に少しへこむ。「その服どうしたの?」のぞの家の前で待ち合わせしていると、ドアを開けたのぞが開口一番にそう呟く。...

  • R18 過保護の花男くん 83

    学校が休みの日曜日。部活も辞めたから、朝から俺の部屋での勉強会が行われるようになった。昼飯はのぞの家でご馳走になり、のぞが綿密に作ってくれたカリキュラムに沿って、夕方までほぼぶっ通しで行われる。好きな人と一緒にいながら、それが恋人でありながら、触ることさえ許されない地獄。夏休みが始まったら、これが朝から晩まで毎日と思うとさすがにしんどい。それはきっと俺だけではないはずで、のぞも覚えの悪すぎる生徒に...

  • 過保護の花男くん 82

    咲―――えー……進藤って、格好いいのか?まあ、女にモテるから、イケメンはイケメンなんだろうな。のぞから見てイケメンに映る進藤をじっと見ていると、確かに顔は整っている気がする。でも、こいつの性格やのぞを狙っていることを加味すれば、敵以外のなにものでもない。次第に嫉妬で目つきが尖っていくと、視線に気がついた進藤に睨まれた。「何?」「何が?」「めっちゃ睨んでるから。」「別に。」そう言いながら進藤を見上げると...

  • 過保護の花男くん 81

    「のぞ、なんか欲しいものある?」「あー、誕生日?別にいいよ。それよりも合格することが大事。」「お揃いとかやだ?」いつもの咲との勉強会。俺が丸付けをしていると、咲が唐突に話し始めた。咲のことをちらりと見つめると、真剣な表情で見つめているから笑ってしまう。今までの不愛想が嘘のように、咲の感情が透けて見えるのが嬉しい。「指輪とかはやめてね。アクセサリー苦手だから。」そう言って予防線を張ると、落胆した表情...

  • 過保護の花男くん 80

    「進路、本当にここでいいのか?」夏休み目前の放課後、にっしーとの個別での進路相談。みんなと同じように用紙は期限内に提出したのに、俺だけなぜかダメだったらしい。静かな教室で俺の机に用紙を広げながら、少し困ったような顔で見つめてくる。「なんで?」「いや、胡蝶の実力なら余裕でもっと上いけるだろ?特待生狙いだとしても、こことかどう?自由な風習で制服もないし、胡蝶に合うと思うんだけど。」そう言ってパンフレッ...

  • 過保護の花男くん 79

    咲「なーに話してんの?」そう言いながら、のぞが俺の隣に顔を出した。いやいやいやいや、のぞには絶対に聞かせたくない。のぞの耳を塞ぎながら輪の中から逃がそうとすると、俺ではなくのぞに向かって次々に質問が飛ぶ。「ケツ突っ込まれるのって、気持ちいいの?」「お尻に挿れられてイくの?超エッチじゃん!」「女の子みたいにエロい声出る感じ?」最初は大人しくしていたのに、俺が口を割らないせいか、のぞにまであからさまな...

  • 過保護の花男くん 78

    「今野、ちょっといい?」「え、これからメシ。」「ごめん。のぞ。秒で済ますから先に食べてて。」―――我慢、我慢、我慢、我慢!!!もうこれ以上、面倒くさいって思われたくない。咲の負担になって、疲れさせたくない。机に頬をくっつけながら、咲の様子をじっと見つめる。でも、いつまで経っても話は終わらないし、咲とも視線が合わない。―――やっぱり、悲しい。「のぞみん、大丈夫?」優しい声色に視線を上げると、眉尻を下げた石...

  • 過保護の花男くん 77

    咲、俺のことちゃんと好きなんだよな?セックスしたいから、付き合ってるんじゃねえよな?お手軽な俺を今は選んでるだけで、女子っぽい見た目に絆されているだけで、本当は女子がいいのかな?もっと大人になっても、俺のことだけ見ててくれる?そんな疑問がずっと解消されずに、シコリのように頭に残っている。教室での掃除時間。ホウキを持ったまま、何もせずにずっと突っ立ているポンコツな俺。他の奴らがチラチラとこちらを見な...

  • 過保護の花男くん 76

    「今野先輩、ちょっといいですか?」下級生の男に声をかけられ、咲がげんなりしながら腰をあげる。そんなに行きたくなさそうなのに、なんで行くのか意味が分からない。咲のシャツの裾を掴んで見上げると、咲が困ったように俺を見つめる。「行かないで。」「のぞ、ごめん。」「なんの呼び出し?」「大した話じゃないから、気にしないで。」そう言って言葉を濁され、俺の手を解いて行ってしまう。俺といるよりも、あのクソガキと喋っ...

  • R18 過保護の花男くん 75

    望海いつもは部屋着のような気軽さで勉強会をしていたが、今日からは違う。だって咲はもう友達じゃなくて、俺の大事な彼氏だから。そう思うと、気持ちの悪いにまにまとした笑顔が止まらない。お気に入りのシャツを鏡の前で合わせてから、悩みに悩んでズボンを選び風呂場に直行する。シャワーで汗を流し、もしかしたらの期待を込めてシャワ浣も済ませる。咲に早く会いたくて、濡れた髪のまま咲の家に直行する。「咲、おまた……え?何...

  • 過保護の花男くん 74

    咲「今野、ちょっといい?」体育を終えて教室でのぞと話していると、元A組のクラスメイトの河合に声をかけられた。前のクラスでも接点はなく、挨拶すらしたこともない。そんな河合が、わざわざ短い休み時間にD組まで俺を訪ねてくることに、疑問を感じた。のぞも俺と同じ疑問をもったようで、視線を絡ませて首を傾げる。言われるまま廊下に出ると、すぐに河合を含めた男たちに無理やり円陣を組まされた。「何?」「胡蝶ちゃんと付き...

  • 過保護の花男くん 73

    「のぞ、あんまりくっつかないで。歩けないから。」「無理!恥ずい!顔が熱い!」「ごめん。のぞがかわいすぎて、教室でヤりたくなったわ。」「怖いことばっか言うな!!」咲の背中に額を押し付けて、教室に戻る。歩けないと文句を言う咲の言葉は完全に無視して、ぴったりと張り付いていないとフラフラと眩暈が起こりそう。昨日から熱が冷めきっていないのに、再びエロいことをされて、下がるどころかずっと温泉に浸かっているよう...

  • R18 過保護の花男くん 72

    望海「マジで変な気遣いやめろ!田中に秒でバレるから。」下駄箱で上履きに履きかえるために片足になると、ペタンとその場で座り込んでしまった。それを慌てた咲が抱きしめるように支えるから、混雑する朝の下駄箱で、パンダのように目立ってしまう。じろじろと不躾な視線を全身に浴びながら、咲を睨む。それでも咲は心底嬉しそうな顔をしているから、怒りたくても怒れない。何もしなくても痛むケツが、その衝撃で涙が出そうになる...

  • 過保護の花男くん 71

    日が長くなったのにも関わらず、太陽はすっかり沈んでしまっていた。綺麗な三日月が空の主役となり、星たちがその周りを煌めいている。暗くなった部屋の中で、電気も点けずにひたすらのぞを眺めていられる幸せ。寒くないように布団をかけ直し、全裸で眠るかわいい生き物を、隣で寝転びながら独り占めする。「かわいい。」すやすや眠るのぞの寝顔を見つめながら、俺の心は幸せに満ちていた。のぞの寝顔を見つめながら、先ほどの行為...

  • R18 過保護の花男くん 70

    咲のぞが俺を見つめながら、にやりと笑う。いつものかわいい顔ではなく、間違いなく獣の顔。頼りないと思っていた美人の幼馴染は、間違いなく俺と同じ男だった。のぞが「男だよ?」と念を押す理由を、この時に改めて理解した。どれだけ顔が美人でも、ヤってる時はちゃんと男なのだと認識しても、俺の興奮は少しも冷めない。だって、のぞだから。身体の肉付きがやけに悪く、全体的に骨っぽい。でもどの骨も折れそうなほど細く、骨太...

  • R18 過保護の花男くん 69

    「のぞ、今日の服もかわいい。」「え?」「似合ってる。」学校から15分程度歩くだけで、シャツが背中に纏わりつく季節。だから最近は、着替えを済ませてから勉強会をするのが日課だった。特にお気に入りでもない薄いピンクのオーバーサイズTシャツに、ハーパンというラフなスタイル。部屋着のような服をかわいいと褒められ、喜ぶというよりも不思議だった。「でも、これ何回も着てるし?」「知ってる。でも褒めると、口説かれてる...

  • 過保護の花男くん 68

    望海―――またハブられてる。悲しい。咲と進藤と田中が、最近俺がいなくても盛り上がってる気がする。朝も3人で楽しそうに爆笑していたし、進藤に抱き付かれていた咲の姿を思い出し、意気消沈する。俺には触るな触らせるな言うくせに、なんで自分は免除されてるのか意味が分からない。いや、本当は分かってる。―――だって、俺が嫌われたくなくて勝手に守ってるだけだもんな……。「のぞみん、帰らないの?」その声に顔を上げると、黒目...

  • 過保護の花男くん 67

    咲「石井がさ。この前の歯医者さんごっこから、ガチでのぞみんのこと意識してんの。」「あー、マジで?しゃあねえから今度首輪プレゼントしとく。犬好きだからペットにして飼ってやるわ。靴舐めさせよ。」「のぞみんが言うと冗談に聞こえないって。この前のガチでイケメンすぎたし。」「のぞ、今いい?」石井の話題で盛り上がっている池田とのぞに声をかけると、俺を見上げてため息を吐かれた。のぞにお友達宣言をされてから、ずっ...

  • 過保護の花男くん 66

    目の前に、好みの顔がある。涼し気な目元、シャープなフェイスライン。男は俺を見て、嬉しそうに微笑んでいた。だからネクタイを掴んで、そのまま引っ張る。すると、進藤の顔が鼻先にあって、慌てて手を離した。「あー、わり。」「全然。俺はこのまましてくれて構わないけど?」「しねえよ。」「手癖悪いのがでてんな?無意識とか末期じゃん。」「うるさい。」教室で咲の日直の仕事を待つ間、進藤の勉強する姿をただ見つめていた。...

  • 過保護の花男くん 65

    望海夏の陽射しは容赦なく、体力も思考力も根こそぎ奪っていく。昨日のことで、咲との間に溝が生まれてしまった。学校にはいつも通り一緒に登校したのに、いつもの会話はない。―――こんな風に気まずくなりたくないから、話を避けてきたのに……。3限目の校庭での体育。からっからに乾いたアスファルトに、生ぬるい風が気持ち程度に吹いている。広すぎる校庭で、CD合同での体育の授業。石井が得意のサッカーだったが、この前のような...

  • 過保護の花男くん 64

    咲―――のぞ、寝すぎ……。久しぶりの体育の授業。いつも適当に流してばかりののぞの本気モードを見れたのは嬉しかったけれど、6限が始まる前に既に夢の中に旅立っていた。どこでも秒で寝られる図太い神経に、笑ってしまう。―――本当に、危機感ないなー……。片肘をついて、のぞの寝顔を見ながら髪にそっと触れる。顔にかかった髪を耳に掛けて顔がよく見えると、綺麗すぎて心臓が痛い。「ガチ寝してんの?」進藤に声を掛けられ頷くと、ふ...

  • 過保護の花男くん 63

    望海「俺ハブって何こそこそ話してんの?」ほとんどバスケの試合に関わることもなく、出来る限り楽したいという考えが見え見えの田中と進藤を見つめる。ひとり汗だくになっている俺が、なんだか馬鹿らしく思えた。肩で息をしながらほとんど空になった水筒に口をつけると、呆れた様子の田中が水筒を恵んでくれる。先ほどの石井との行為で、頭の中が煩悩で埋め尽くされている。ヤりたくて、ヤりたくて、ヤりたくて……それしか俺の頭の...

  • 過保護の花男くん 62

    咲「お前らも、なんでのぞに聞いてんの?」「え、巧いから。」池田から、驚くほど端的な答えが返ってきた。「沢井にちゅうしてたの、すごかった!」「あれは絶対慣れてる。もはやプロだった。」「秒で勃たせてたもんな?」「30秒かかってなかった。カリスマ。てかレジェンド。」「押し倒すのもめっちゃ手慣れてたし、流れるような所作だった。美しかったわー。」「手コキも秒だったしな?」「ツボの突き方が巧いんだよ。」「わかる...

  • 過保護の花男くん 61

    咲とお遊び程度のバスケを軽く楽しんでから、暑さで倒れそうになりコートを外れる。咲は試合がよほど楽しいようで、最初からぶっ通しでずっとコートの中ではしゃいでいた。みんな暑くて動きたくないから、咲が1人でドリブルをしてゴールをするというワンマンプレーが繰り広げられている。キンキンに冷えた水筒のお茶をがぶ飲みしていると、池田がニヤニヤしながら近づいてきた。―――普通に、キモいんすけど……?「胡蝶ちゃん、ディー...

  • 過保護の花男くん 60

    「胡蝶ちゃんて、経験人数何人いんの?」地獄のような暑さの体育館で、汗を拭いながら床に軽快に弾むボールに目を輝かせる。咲の手慣れたボール捌きに見惚れていると、俺の隣に沢井が腰をかけて尋ねてきた。この前の揶揄いの色はなく、質問の意図も分からない。俺の視線を拒絶だと受け取った沢井は、焦ったように笑いかける。「あ、ごめん。これはセクハラ?」「いや、別にいいんだけど、数えてないから答えられないだけ。」「え?...

  • 過保護の花男くん 59

    教室に戻ってから丸2日間は、咲に始終くっついて過ごしていた。ひとりでいるとなぜか不安で、咲に触れていると誰がどこにいても安心できた。授業中も絶えず手を繋いで、トイレに行くのも背中にくっついていく。人見知りのガキのように甘えても、咲は文句も言わずに全部受け入れてくれた。なんかこの感じに既視感があると思えば、幼稚園の頃を思い出す。あの時は人見知りの咲を背中に庇い、どこに行くのも手を繋いでいた。それから...

  • 過保護の花男くん 58

    夏休みを迎える3週間前。定期テストを済ませ、テスト前で妙に張りつめていた校内が日常を取り戻しつつある。夏休み前ということで、また違った活気を生み出している下級生と俺たちとでは、大きく異なる。最後の夏に追いつけ追い越せの人生をかかったレースに、俺は乗りきれずにいた。みんなが自分のための勉強を勤しむ中、俺は咲の苦手克服のためのプリントを作成する。そんな静かな保健室で、遠慮がちにドアが叩かれた。恐る恐る...

  • 過保護の花男くん 57

    望海陽兄と登校した放課後。宣言通り、俺は美容院に顔を出した。通い慣れているこの場所は、最寄り駅から5駅ほど離れている。最近独立して立地は少し遠くなったが、変わらず通い続けているのは、腕の良さと彼の人柄だった。前の店と異なり、香水の匂いが控えられている。ツンと滲みるカラーの匂いは仕方がないが、他の美容院に比べて奥まった造りが有難い。他人にジロジロ見られることなく、半個室の椅子に案内された。咲は待合室...

  • 過保護の花男くん 56

    咲保健室を出て、廊下をひたすら歩く。まだHR前ということで、廊下は人の往来がやけに多い。それを軽やかにすり抜ける晴海さんの背中を、小走りについていく。晴海さんをみると、途端に足が止まる学生たち。そんな視線にも慣れた様子で、まっすぐに前を向いている。この人も他人の視線なんてまるで気にならない、のぞと同族の人間。見られることに慣れているどころか、日常会話並みに当然のことなんだろう。空き教室を見つけると、...

  • 過保護の花男くん 55

    望海―――俺は無理か。はっきりとした拒絶をされた。俺じゃ勃たないんだもん。触りっこなんて、できないじゃん。当たり前じゃん。俺と違って、男の裸で興奮しないんだから。真っ平らな胸。股間。骨ばった身体はやはり男のもので、女なのはやはり顔だけ。キスはできても、それ以上はなし。セックスの快感を知ってる俺に、それは辛すぎる。告るまでもなく、撃沈したわ。湯船に浸かりながら、咲の言葉を反芻していた。分かっていた事な...

  • 過保護の花男くん 54

    鼻先にニンジンをぶら下げていたおかげで、集中力が桁違いに上がった。いつもよりも早めに終わり、不自然なほど会話がぷつりと途切れる。ノートやら参考書を乱雑に片づけ始めるのぞをちらりと盗み見ると、俺の視線に気がついたのぞが髪を耳に掛ける。片づけなんて待ちきれずに、手を掴んで膝を突き合わせた。「していいの?」「大丈夫。咲に触られるのは平気だった。あと田中。進藤はまだ無理。」「確認なんだけど、田中とキスして...

  • 過保護の花男くん 53

    学校から帰り、いつものように俺の部屋での勉強会。ここにいると昨日のことを詳細に思いだしてしまい、さっきから落ち着かない。それなのに、のぞはいつもよりも落ち着いていて、昨日のことなど忘れてしまったのではないかと焦る。―――まさか、また夢じゃなかったよな……?「咲。」俺のテストをざっと見つめながら、話しかけられた。「なにか間違えたかな?」と思って近づくと、今度は俺をしっかりと見つめながら淡々と問う。「俺が...

  • 過保護の花男くん 52

    咲「今野、ちょい顔貸せや。」「はい。」最近の田中は本当に陽海さんに、言動がよく似ている。そのせいか、恋愛経験値に差がありすぎるせいか、全く頭が上がらない。中庭のベンチに腰をかけると、田中がいつもの笑顔を剥がした表情で見つめてくる。「のぞみんが泣いてる理由わかってる?」「いや、なんかあった?」「だから、お前とあったんだろ?」「のぞから聞いた?」「ベロチューしてしゃぶったんだろ?」「……はい。」大人しく...

  • 過保護の花男くん 51

    望海―――あー、やっぱ勃ってない。行為の後に咲の下半身を見て、一気に落胆した。キスも食べられそうなくらいがっついてきたから、「まさか、これは!?」と期待してしまった自分が憎い。そりゃそうか。これは咲の優しさだもん。興奮してたのは俺だけ。好きなのも俺だけ。咲のこれは恋愛じゃなくて、友愛なんだ。泣きそう。泣く。やっぱり、キスでとめとけばよかった。欲張って下半身なんて見せたから、咲に引かれたんだ。―――顔だけ...

  • R18過保護の花男くん 50

    「他に何された?」視線を外してそう問いかけると、のぞは俯きながら話してくれた。「ええと……しゃぶられた。」「はあ?何もされてないって言ってたじゃん!!!」「だって、ずっと怒ってたから、岩井たちのこと殺しそうじゃん。」恥ずかしそうに口元を隠してそう呟き、俺のことを困ったような瞳で見上げる。この前見た綺麗な竿を、あの岩井がしゃぶったのか?俺は見るだけで、泣く泣く我慢したのに??―――は、腹立つ!!!「俺も...

  • 過保護の花男くん 49

    咲「のぞ、沢井とキスしたの?」「あー、田中?」視線を合わすこともなく、俺のテストに赤を入れるのぞの横顔を見つめる。朝会った時よりも、顔色がだいぶ回復した気がする。最近は白いを通り越して青い顔をしていたから、かなり心配していた。のぞに聞いても「受験に集中しろ。」って怒られるばかりで、何も話してはくれない。田中や進藤に聞いても、本人に聞けって突き返されるから実情が全く分からなくて不安だった。早くのぞと...

  • 過保護の花男くん 48

    進藤と田中の保健室での小話「今野とのぞみんって、なんで付き合ってないの?」「それな。もはや宗教上の理由としか思えないわ。」「側から見てるとバカップルなんだけど、本人達だけ分かってないの謎すぎない?天然こわいんだけど。記念物として囲うしかなくね?」「胡蝶に聞くと、誘いにのってこないらしいから、俺の中ではEDってことでかたがついてる。」「それはないわ。修学旅行の時、立派に朝勃ちしてたし。」「オエ。いらん...

  • R過保護の花男くん 47

    「胡蝶ちゃん、やっぱり岩井たちにヤられたらしいよ。」「マジで?俺もヤりてえ!」「パンツも脱がされて、見つかった時ほぼ裸だったって。」「うわ、エロ。それ見たかったかも。修学旅行でもちんこ見られなかったしなー。でも乳首はえっろいの。普通に抜ける。」「まあ胡蝶なんて、普通に体操着とかでエロいしね。」「ホモだって噂あったよな?」「あれマジだったの!?てことは互いに同意あった感じかな?」「逆に被害者は殴られ...

  • 過保護の花男くん 46

    校長たちとの話し合いの翌日、俺は学校に向かった。時間を空けると行きにくくなるのが分かっていたし、咲に会って謝りたかった。行くなと止める陽兄には悪いけれど、鬱陶しい程の愛情をくれるこの人の傍にいると、どんどん弱ってダメになってしまう気がする。好奇の視線を全身に浴びながら、上辺だけの優しさにも耳を傾けず、黙々と教室を目指す。教室を覗くと、進藤の姿はない。―――あいつ、またサボりかよ。俺に気がついたクラス...

  • R18 過保護の花男くん 45

    望海校長に呼ばれ、俺は3日ぶりに学校を訪れていた。汗が首筋を通っていく感触がやけに遅く、不快だった。肌に張り付く生ぬるい空気を感じながら、陽兄と一緒にタクシーで校門をくぐると……好奇の目で俺を見つめる視線に、すぐに気がついた。平日の放課後。部活組がたくさんいる中で起こったこと、噂好きの生徒が何も知らないわけがない。人がいるのにやけに静かで、俺に気安く話しかける奴はいない。話しかけるわけでもないのに、...

  • 過保護の花男くん 44

    咲「大変、申し訳ございませんでした。」陽海さんが病院に顔を出したのは、のぞのことを見つけてから1時間後のことだった。救急車の手配をしながら、のぞを抱えて保健室に連れていき、田中がかやちゃんを呼びに行ってる間ものぞが起きない。死んでしまったのではないかと不安に駆られたが、脳震盪を起こしているようだという説明に少し安堵した。保健室に運ばれて10分もしないうちに、のぞによく似た恵さんが血相を変えて顔を出...

  • R18 過保護の花男くん 43

    「俺の舐めて興奮してんの?変態じゃん。」岩井の股の中心を、足の指で軽く突っつく。根元から裏筋を擦ると、面白いくらいに身体を仰け反った。「やめろ、やめろ」と言う割には、やめてほしい顔はしていない。それどころか自らベルトを外して、ファスナーを下ろしだす始末。―――めっちゃよさそうじゃん。こいつマゾか?知りたくないもない情報が頭をかすめ、足首をクロスさせて甲で挟み込んで擦りあげる。濡れてきた先端を足裏でぐ...

  • R18 過保護の花男くん 42

    ―――ここどこだ?霞む視界の中で目を開けると、さっきまでの図書室の風景とはまるで違っていた。月曜日の放課後。先週の金曜日の件があったから、咲にしつこいくらいに念を押され、図書室で大人しく待っていた。今日は進藤は塾の定期試験で、田中はいつも通りの部活。不安そうな表情をしている2人に、努めて明るく振舞った。最初は司書を合わせて3人いたはずだが、予鈴のチャイムにふと顔を上げると、気づけば図書委員の男と2人き...

  • 過保護の花男くん 41

    先生に報告して、いつものように咲の部屋で勉強会をしていると、急に背後から抱きつかれた。恋愛的なそれでも友愛的なそれでもなく、大型犬に圧し掛かられている気分。「のぞ。」「ん?どしたの?甘えただな。」咲の髪を雑に撫でて、胸を押す。甘えたも嬉しいけれど、急に抱き付かれては理性が持たない。努めて平静を装いながら、髪をかきあげる。「困ってることない?」「ない。」俺が即答しても変わらずにじっと睨みながら、泣き...

  • 過保護の花男くん 40

    「なあ、胡蝶似のAV見つけたから、一緒に見ない?」2限終わりにトイレに行くと、嫌な笑顔を浮かべた岩井がいた。毎日ここで会っている気がして、げんなりする。修学旅行から戻って、もうすぐ1週間経つ。シトシトとやまない雨が続いていて、梅雨前にも関わらず湿度が高い。そのお陰で猫っ毛の俺の髪は、風呂上がりのように湿っていた。修学旅行のトイレで誘われてから、学校に戻っても毎日変わらずにそれが続いている。いつになった...

  • 過保護の花男くん 39

    「ガチでやめろ!!恥ずかしくて死ぬとこだった!!」「あんな童貞やめといて、マジで俺にしとかない?」そう言いながら、ふわりと抱きしめられる。声にも顔にも余裕があるのに、耳に聞こえる進藤の心音はだいぶ早くて、すきだって身体中で叫ばれているようで気恥ずかしい。「しつこくてごめん。悲しそうな顔見てるのつらい。」悲しそうな顔してたか。バレバレか……。取り繕えないくらいの感情が、顔に溢れる。好きって怖い。バレそ...

  • 過保護の花男くん 38

    望海田中のTシャツと進藤のズボンを借りた咲は、見違えるほどにイケメンだった。ただのTシャツとジーパンというシンプルな装いなのに、素材のよさが惹きたってより魅力的に見える。「咲かっこいい!超かっこいい!!イケメン!!」ひとりでテンションが上がりまくって、スマホに咲の写真を何枚も収める。これ幸いとばかりに連写すると、困り顔の咲に頭を軽く撫でられた。「髪の毛もさ、ワックスつけていい?」「え?」「俺やったげ...

  • R18 過保護の花男くん 38

    咲気持ちよさそうに大きく伸びをすると、のぞの白い腹がちらりと見えた。少し気だるげで、事後のような甘い雰囲気に酔いそうになる。「あれ、のぞ。」「はよ。咲も起きたの?」「うん。」俺に向かって微笑みながら近づくのぞの寝癖を、軽く触れる。俺とは違いネコのように柔らかく、細い髪。のぞの身体は、細部に至るまで繊細にできている。髪の毛から徐々に視線を下げると、のぞのハーパンが膨らんでいることに気がついた。「なー...

  • 過保護の花男くん 36

    部屋に戻って数分も経たないうちに、宣言通り田中が顔を出した。「のーぞみん!夜這いにきました~~~!」「マジで来たの?」「来ちゃった。泊めてくれる?」「しゃあなし。初めてだから優しく抱いてやるよ。」「キャ―――!!のぞみんイケメン!!」悪ノリ全開の田中を足払いして倒してから、床で楽しそうに笑い転げる田中の腹を踏みつける。ドアが閉まりそうになると、田中が慌ててそれを制した。「ほら、入ろ?何ぼさっとしてん...

  • 過保護の花男くん 35

    咲と一緒に食堂を訪れると、すぐに学年主任に見つかり説教をくらった。でも、担任のふくちゃんが精一杯庇ってくれたお陰で、反省文や罰などのお咎めはなし。泣きそうな顔をして反省している風を装えば、ふくちゃんはちょろい。―――持つべきものは、ちょろい担任に限るわ。はっはっはっはは!メシの時間は少なくはなったが、その分咲と一緒にいられた。怒られていようが、咲が隣にいたらそんなことは気にならない。一緒にいられたら...

  • 過保護の花男くん 34

    望海は、恥ずすぎる~~~~!!!!てか……あれ、誰よ?咲じゃないっしょ!?咲はあんなこと言わないし、あんな顔しない!絶対しない!!俺の知っている咲とはまるで別人で、顔が熱すぎてグラグラ茹であがりそうだ。急いでシャツを身につけて、反応した下半身を手早く処理する。あばらが折れそうな程心臓が痛くて、胸を押さえながら慎重に脱衣所を覗く。咲がいないことに安心しながら、ドライヤーのスイッチを入れた。すると、鏡の...

  • 過保護の花男くん 33

    「めっちゃ狭かった。ほぼ電車の座席。」「マジか。」のぞがほかほかに火照った顔で、脱衣所から顔を出した。―――めっちゃめちゃかわちい。俺もちゃっちゃと浴びようとテレビを消して、脱衣所に向かう。すると、まだ着替えが済んでいなかったのぞに気がつき、思い切り身体を仰け反る。「あー、わり。」「何?大丈夫だよ。パンツはいてる。」―――いやいやいやいや、それ全然大丈夫じゃない。「服、着て。」「まだ暑いからドライヤーし...

  • 過保護の花男くん 32

    咲「のぞ、何してんの?」「風呂入りに来たに決まってんじゃん。なんの冗談?」「は?」「マジで?ラッキースケベじゃん!」「のぞみんと風呂入れるなんて最高ー!男でラッキー!」「キッショ。」―――え、マジで入るの?シャツのボタンを外しているのぞの指先を見つめていると、のぞと視線が絡んだ。でもこの前のような挑戦的な目はなく、すぐに逸らされる。この前の生ストリップでも見えなかった、シャツの中。期待と興奮と恐怖で...

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