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桐生
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2016/05/07

1件〜100件

  • 過保護の花男くん 20

    ーー何だコレ?咲の電話から15分と経たないうちに、激しいチャイムの連打で洗面所を飛び出した。髭を剃り、顔を洗って保湿して、前髪をアイロンで必死に整えてる間に来てしまった。最低でも20分は掛かると読んでいたのに、咲は予想を遥かに上回るタイムで登場した。ヨレヨレのダサい部屋着に軽いため息をつきながら、パチンコ屋並の騒々しい音を消すためにドアを開けた。のぞ!?え?あー、らっしゃい。なぜか八百屋のような掛...

  • 過保護の花男くん 19

    何度かコールが鳴るが、咲が出る様子はない。流石に授業中かと諦めて電話を切ろうとしたところで、息切れした咲の掠れた声が聞こえた。「もしもし?」いつもよりもぶっきらぼうで、焦った声。怒っているなってすぐに分かって、決意していた気持ちがすぐに引っ込む。「あー……いや、ごめん。授業中だよな?あとでかけ直すわ。」「トイレいるから大丈夫。なんかあった?」いつもよりも早口で、かなりイラついている。逃げられない雰囲...

  • 過保護の花男くん 18

    「よく眠れた?」その声にうっすらと目を開けると、なぜか先輩の顔。窓辺にいたはずなのに、気がつくとベッドに横たわっていた。瞬きを繰り返すと、雨の日のように頭が重い。「空気みたいに軽すぎるから、もっと食べたほうがいいよ。」そう言って笑うと、コンビニの袋を手渡された。中を覗くと、ペットボトルとプリンが入っていた。「なんでいるんすか?」「胡蝶ママに入れてもらった。綺麗な人だね。目元なんか胡蝶にそっくりだっ...

  • 過保護の花男くん 17

    望海咲に嫌われた。それだけは理解できた。なんで、どうしてが頭の中に次々と浮かんでいるのに……これ以上傷付かないで済む言葉が見つからない。電話をしようと何度も試みたけれど、これ以上嫌われることが怖かった。はっきりと咲の口から言葉を聞いたら、大袈裟でもなく心臓発作を起こす自信がある。気持ちは焦っていくのに、咲の言葉を咀嚼するだけでいつの間にか時間が経っていた。それでもまだ夜明けは遠く、びしょ濡れの枕とシ...

  • 過保護の花男くん 16

    どこいるのか連絡すれば一発だったのに、気持ちが先走って、何も持たずに飛び出してしまった。一度部室に戻ろうかとも過ったが、のぞの教室まで走るほうが早いように思えた。図書室を窓からざっと覗いたが、2人の姿は見えない。考えすぎだと頭では何度も否定するのに、気持ちだけがどんどん焦っていく。足がもつれて、鉛のように重く感じる。階段を2段飛ばしで駆け上り、のぞの教室に近づくにつれて深く。足の疲労よりも、気持ち...

  • 過保護の花男くん 15

    咲部活後に軽く自主練をこなして部室に戻ると、中で部員たちの賑やかな声が聞こえた。「なあ、知ってる?」「何が?」「先輩と胡蝶って、やっぱ付き合ってるぽいよ。」「まじか。丘野先輩のごり押しに、難攻不落の胡蝶もついに堕ちたか。」「てか胡蝶、男イけんの?」「あの顔だから、もう経験済みなんじゃね?」「マジか。俺も一回ヤらせてくれね~かな。」「お前彼女いんじゃん。」「全然ヤらせてくれないから、この前別れたわ。...

  • 雑談

    こんばんはーいつも遊びに来て頂き、ありがとうございます!新しいお話楽しんでもらえているでしょうか?まだまだ序盤という感じですが、最後までお付き合い頂けると幸いです。今、BTSの沼に堕ちています。K-POPは沼が深いと聞いていたのでなるべく避けて避けて生きていたのですが、彼氏の影響でまんまとハマりました。テテとジミン好きな人いますかー?もし観てない人がいたら、一緒に沼りましょうという軽い布教活動。観てない人...

  • 過保護の花男くん 14

    放課後の教室。咲が部活に勤しむ中、俺と先輩は試験勉強に精を出していた。先輩から受け取った答案を眺めながら、先輩からマンツーマンで指導を受ける。教師かと疑うほど先輩の助言は的確で、頭にすんなり入ってくる。「ああ、違う。ここは引っ掛け。」「え?」「もう少し本でも読んだら?読解力は全ての教科に繋がるよ。」「活字、苦手なんすよね。」「成績いいのにね。掲示板で名前見るから。」「先輩の名前も見ます。」「はい、...

  • R15 過保護の花男くん 13

    「ちょっと大きすぎたね。」俺の袖を見つめた咲が、ぼそりと呟く。「嫌味?」「え?いや、可愛いなって。」「え?」いつもの咲なら、言わないセリフ。嫌味や冗談で言われることはあっても、こんな本気のトーンで聞いたことはない。ぶわっと血液が全身に一気に駆け巡り、耳まで痒い。どう返したらいいのか戸惑う俺に、咲は我に返ったように急に照れだした。「いや、ごめん。なんでもない。」――嬉しいけど、恥ずい。咲といて、こんな...

  • 過保護の花男くん 12

    「結局、脱がなかったんだ?」体育館に行く途中で先輩に捕まり、仕方なく肩を並べる。先週まで暑い暑いと嘆いていたのに、今日の夕方はやけに冷える。ブレザーを家に忘れてきたことを後悔しながら、肩をすぼめた。「あいつは制服の中が透けて見えてるみたいなんで。」「それは羨ましい能力だね。」「あ、先輩って暇ですよね?」「こう見えて結構忙しいんだけど。」「試験勉強、教えてもらえません?」「家庭教師ってエロい響きだよ...

  • 過保護の花男くん 11

    放課後、桜井に促されて美術室に入った。油の混じった粘り気のある匂いが鼻につく。床は長年のしみでところどころ汚れていて、油絵のように塗り重なった汚れに歴史を感じた。いつも授業で使っている賑やかな教室の雰囲気とは異なり、寒くもないのにひんやりとした空気。それは静けさから来るものなのか、この部屋の主から漂ってくるのかの区別はつかなかった。今日は部活はないのか、部員は桜井だけ。立ち尽くす俺の背中を押して、...

  • 過保護の花男くん 10

    望海「あ~れ?先生、まだ来てないんか?」咲と一緒に保健室を覗くと、がらんとした室内は薬品の匂いで満ちていた。清潔そうなベッドが視界に入り、慌てて視線から追い出す。2人きりというのが、なんとなく落ち着かない。咲を丸椅子に座らせて、机の上を物色する。適当に蓋を開けると、アルコール入りの脱脂綿が見つかった。「擦り傷だから大丈夫だって。」「消毒と……絆創膏ゲット。」意気揚々と腕まくりをして、咲と向かい合わせ...

  • 過保護の花男くん 8

    咲「先輩。」「あー、お疲れ。口切れてたみたいだけど、大丈夫?」俺の声にくるりと振り返ると、嫌味なくらい綺麗な笑顔で微笑んだ。その笑顔さえも、癪に障る。別に、尊敬の念がないわけではない。生徒会が忙しいはずなのに、部活にもしっかり参加するし、試合でもしっかりと爪痕を残す。先輩の要領よくこなす姿が、俺が毎日毎日練習してやっと届く背中だと思うと……自分にも腹が立った。他校の女子から先輩宛の手紙やプレゼントを...

  • 過保護の花男くん 7

    望海あの日以来、先輩とはつかず離れずの関係が続いている。今までは声を掛けられなければ、挨拶すら交わさなかった。それなのに、最近では会えば必ず声を掛けられる。みんなの手前、上級生を無下にするわけにもいかず、最初は俺もそれに仕方なく応じていた。挨拶から世間話まで、特に会話に中身も意味もなかったけれど……先輩はやけに楽しそうで、いつのまにか俺も苦ではなくなっていた。返事を急かされるわけでもなければ、好意を...

  • 過保護の花男くん 7

    今野 咲本鈴が鳴る2分前、ぎりぎりで教室に滑り込む。のぞから受け取った紙切れをノートに必死に写していると、前の席の原田が振り返った。「今野、ペン貸して?」了解をとる前に机に転がったシャーペンを手に取るから、慌ててそれを奪い返す。「あー!それは絶対ダメ!!」「は?」原田から取り返したシャーペンを、大事にペンケースにしまい直す。呆気にとられた原田の手に、無理やり違うペンを握らせた。「あ、こっちならいい...

  • 過保護の花男くん 6

    「はよう。」「はよ。」後ろの席の桜井に声をかけると、イヤホンを外しながらちらりとこちらを見上げる。「今日も寝不足?」「あー、成長期だからかな?」「その割には縦にも横にも伸びてないみたいだけど?」「るせ。」この高校で、挨拶以上の言葉を交わす数少ない友人。最初は無口でつまらない奴だと決めつけていたけれど、こいつの絵は圧巻だった。文化祭で初めて見た、俺の身体よりも大きな油絵。絵のタッチがどうとか、構図が...

  • 過保護の花男くん 5

    「まさか、会えるとはね。」ファミレスで堂々と話せる度胸はないから、駅から離れたカラオケに腰を落ち着けた。とりあえずジュースで乾杯して、上機嫌な先輩が愛好を崩す。「先輩がなんでゲイアプリなんて登録してるんすか。」先輩の上機嫌とは裏腹に、俺の機嫌は下降していく。せっかくの金曜日が、先輩のおふざけのせいで台無しだ。「なんていうか、興味本位?」「ゲイじゃないのに?」「趣向で言えばバイセクシャルだから。」「...

  • 過保護の花男くん 4

    「のぞ、おかえり。」リビングを覗くと、よれたスウェットを着た赤ら顔の兄がいた。兄が就職して5年。実家から3駅ほど離れた駅近のマンションに一人暮らしをしているけれど、月に2、3日は定期的に顔を出している。仕事がどれほど大変なのかは詳しく分からないが、目の下にあるクマは会うたびに濃くなっている。「兄ちゃん、ただいま。」「なんかあった?」兄は昔から勘が鋭く、特に俺の顔色にひどく敏感だった。親はいくらでも騙せ...

  • 過保護の花男くん 3

    4人掛けのボックステーブルを覆いつくす皿の数。そこには気の向くままに注文した、和洋中節操のない品々が並んでいる。空腹で注文すると、どうしても頼み過ぎてしまう。―――それでも、さすがにこれは多すぎだろ。2人で食べるには1日分のカロリーを大きくオーバーした料理に、食べる前から既に胸やけを起こしそう。「望海、頼みすぎ。」「咲だって、横から色々頼んでんじゃん?」「望海はどうせあんま食わないくせに~。」「咲だっ...

  • 過保護の花男くん 2

    「のぞちゃん、だーいすき。」――いつからだっけ?咲が俺のことを“のぞ”じゃなくて、“望海”って呼ぶようになったのは……。満面の笑みで抱き付いて来た姿を思い出していると、狂ったサッカーボールがこちらに転がってきた。それを投げ返してやると、律儀に90度腰を曲げて、はにかんだ笑みを向ける。――かわいい。一年生かな?「がんばれー。」口角を上げるだけのお手軽な笑顔で手を振ると、短髪の少年の顔がさっと強張る。その姿に苦...

  • 過保護の花男くん 1

    胡蝶 望海バーナーで炙ったカラメルのような鎧を、常に纏っていた。外はパリッと歯ごたえがあるが、中はとろとろで柔らかい。中の弱い部分は誰にも触れられたくなくて、虚勢を張って壁を作る。その薄くて脆いカラメルを強固な鎧だと勘違いし、他者を断絶し、自分の世界に浸るのが中二病。その脆さに気がつきながらも、なかなか脱げないのが今の俺というところだろう。理想の自分と現実の自分との差。その大きさに比例して、中で閉...

  • 【あらすじ&人物紹介】

    【あらすじ】望海と咲は幼稚園の頃からの幼馴染。同じ小学校、中学校、高校と進学して……今も昔と変わらない関係を続けている。幼少期から目立った外見を持つ望海は、何度も性被害を受けてきた。そのトラウマから男性恐怖症だったが、思春期を迎えて自分が嫌っていた男に性的興奮を覚えるようになる。ゲイなのに男が怖いことに戸惑いながら、誰にも相談できずに苦しんでいた。何も知らない家族は、過去の経験から性被害を受けること...

  • 明日から

    こんばんは~思ったよりも時間あいてしまってすみません。まだ最後まで書き終わっていないのですが、前回同様見切り発車で始めたいと思います。NiZiU聞きながら作業しているんですけど、気がつくと動画見ちゃって全然進まない(笑)踊りながら歌いながらで全然集中出来ませんが、気分が上がるからついつい聞いちゃいます。アヤカとマユカ推しなんですけど、お仲間いますか~?今回は高校生の恋模様。『片思いの曲がり角』は大学生...

  • ただの独り言

    遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。小説とは全く関係ないのですが、『ミステリと言う勿れ』見ました?皆さん、見ました??漫画も面白かったので期待していたのですが、録画していた初回をようやく見て……好きが溢れてしまいました。出演者みんな好き。特に菅田将暉の下からのアングル堪らん。部屋ん中でマフラーしてるのも可愛すぎて、「可愛い」をリモコン握りしめながら1人で連呼...

  • 鏡越しの祈り 2

    ――これは、デート?確かに、三上さんから女の話は一切出なかったけれど、そういう人なのか?それとも常連のよしみで誘ってくれたのか、フレンドリーな彼からは判断がつかない。彼のことを考えていると、仕事が溜まりに溜まっていく。毎日当たり前にこなしていたはずなのに、指先が重い。それでも、なぜか焦る気持ちよりも、日に日に期待が膨らんでいく。自分がこんなにもポジティブな人間だとは、今まで気がつかなかった。ふわふわ...

  • 鏡越しの祈り 1

    うっすらとした視界の中、カーテンの隙間が少し明るい。重いからだをゆっくり起こすと、鼻先がかゆくて髪をかきあげる。―――あれ、随分伸びたな。他人事のようにそう思いながら、無造作にかきあげる。視界がクリアになると、綺麗な朝日が目に沁みた。――あの人と最後に会ったのは、いつだったっけ?姿勢はいつもしゃんとしていて、厚みのある体格と繊細な指先。そのアンバランスさが絶妙で、気がつけば足先が向いていた。カレンダー...

  • ご無沙汰してます。

    お元気ですか?まさか、こんな世界になるなんて夢にも思っていませんでした……。久しぶりにブログ覗いてみたら、コメントを頂いていたんです。時間が経っても読んでくれるひとがいることが嬉しくもあり、申し訳なさもあり。皆さんもそうでしょうが、生活スタイルが大分変わってしまって……お陰様で、毎日バタバタと過ごしています。突然ですが、短編書いてます。書き途中の話もたくさんあって、兄弟ものとか書きたい気持ちもうずうず...

  • はじめまして。

    はじめまして、管理人の桐生です。こちらは性描写を含むオリジナルBL小説置き場です。男性同士の恋愛話に不快感を感じる方、高校生を含む18歳未満の方、そのままお帰りください。甘く、切なく、最後は幸せな気持ちになれる話が書けたら……と思っています。Happy End主義、両思いになるまでじっくり時間がかかる話が好みです。まずは短編から気ままにアップしていきます。稚拙な話ではありますが、著作権を放棄しておりません。コピ...

  • こんにちはー

    こんにちはー!いつも遊びに来て頂き、ありがとうございます!でも、すみません。夏休みを終えてから時間がとれず、手が止まってしまいました。時間がある時にちょこちょこ亀ペースに進ませて頂きますので、気が向いたらまた遊びに来てください。暑い日が続きますので、どうぞご自愛ください。ではでは。桐生最後まで読んで頂き、ありがとうございました!!ランキングに参加しています。よかったらぽちっと応援お願いします!!に...

  • キミだけのヒーロー 10

    悠哉への恋心をはっきりと自覚したのは……俺が大学に合格した時だった。勉強漬けの毎日は苦しかったけれど、合格発表を悠哉と見に行った。番号を必死に探す怖いくらいに緊張した表情を横目に見つめていたら、その顔が一気に綻ぶ瞬間を見てしまった。眩しいくらいの飛び切りの笑顔で俺を抱きしめると、目尻に涙まで浮かべて喜んでくれた。その顔を見て、胸が苦しくて息が詰まった。悠哉は合格出来たことへの嬉し泣きだと思ったのかも...

  • キミだけのヒーロー 9

    ――悠哉がいなくなって、もう何ヶ月経つんだろう……?カレンダーを見つめてみても、それがいつだったかなんて正確には覚えていない。あまりにも突然失ったから、俺の時間はあの時からずっと止まったまま。春が終わる頃にはふらりと帰ってきてくれる気がしていたけれど、そろそろ秋を迎えようとしているのに……悠哉は一向に帰ってくる気配すらない。悠哉だけが俺のすべてだったのに……その彼までも失った今の俺に、何が残っているんだろ...

  • R よく晴れた日に。

    ※少し変態チックなR入りますので、苦手な方は注意してください。午前3時6分28秒。時計の横でうーうー……とスマホが唸る。目覚ましが鳴るまでは大分早く、ここで目を覚ましてしまったら負け。そう思い、きつく目を閉じて寝返りを打った。眠気と闘いながら課題を仕上げていたせいで、布団に潜ったのはほんの30分ほど前。これ以上睡眠を妨害されてなるものかと枕の下にスマホを埋め、もう一度うとうとし始めたところで……。うーうーうー...

  • あとがき

    こんにちはー!毎日足しげく通って下さり、ありがとうございました!!お陰様で無事に完結出来ました。って言っても、短編でしたが(笑)ブログ村と相性が悪いのか、Pingの設定が悪いのか記事が反映されなかったりで、ブログ村経由の方にはご迷惑おかけしました。かなり久しぶりの更新にも関わらず、以前来て下っていた方がコメント下さったり……お陰様で元気が出ましたー!!前に行った投票で、攻め目線のRというご希望だけは添え...

  • 見えない気持ち 7

    日向「喉乾いた。」「俺も。」汗だくの身体で寝そべっていると、司がゆっくりと身体を起こす。一糸まとわぬ姿で堂々とキッチンに向かい、ミネラルウォーターを手渡してくれた。身体に纏わりつく汗が不快で、でも空気は心地いい。くだらない話で盛り上がっていると、先ほど引っかかったことを思いだした。「てか、なんであの時間にシャワー?」「え?」「いつも寝る前じゃん?」俺の疑問に一瞬固まると、バツが悪そうに頭をかく。「...

  • R18 見えない気持ち 6

    司本当に分かっていない。こんな美味そうな尻、他にはないのに。キメが細かい肌は、ずっと撫でまわしたくなるし。運動嫌いのせいか、肌が薄くて色素も薄い。ずっと女役に徹しているせいか、元々のホルモンの影響か、全体的に毛も薄い。男を抱いているという感覚は、正直あまりないのかもしれない。女の子独特の丸みはないけれど、男という一括りに収めるには無理がある。そんなはみ出した存在が、堪らなく愛おしい。「日向、大丈夫...

  • 見えない気持ち 5

    「俺も、甘えすぎてたな。」「え?」「気づいてたけど、時間作れなかった。」「そっか。」――気づいてくれていたんだ。そのことに嬉しくなる。ちゃんと俺のこと、考えてくれてたんだ。「だから、この前も怒れなかったし。」「ん?」「夜遊びで朝帰り。」「あー……いや、別に何もしてないよ?」先ほどの甘い表情がすっと消え、疑惑の眼差しに変わる。前は苦手だと思っていたのに、今はこの眼が堪らなく好きだ。ぞくりとする程冷たい視...

  • 見えない気持ち 4

    ぱっと目が覚めると、室内は薄暗かった。どのくらい寝ていたのかも感覚では掴めず、ぼんやりと天井を見つめる。ただ、ぐっしょりと寝汗をかいていた。嫌な夢を見た気がするが、内容までは思いだせない。身体が重くて、でも熱は先ほどよりも引いた気がする。鼻を啜りながら、喉の渇きを潤そうとベッドから立ち上がった。リビングに続く扉をそっと開けると、司の姿がない。「あ、あれ……?」病気の時によくある心細さを感じ、喉の渇き...

  • 見えない気持ち 3

    次の日、顔を合わせた時は流石に気まずかった。それでも、怒られることはなくどこにいたのかしつこく聞かれることもなく……開口一番に言われたのは「あー……飯、食う?」自然過ぎて、不自然。罵倒してくれたなら、ごめんで済む話。でも、向こうがアクションを起こさないのに、こちらが言い訳を並べるのもおかしな気がして。あれから、中身のある会話を交わしていない。***お泊りデートの予定は、1ヵ月前に決まっていた。特に何かの...

  • 見えない気持ち 2

    久しぶりの夜遊びだった。司が珍しく遅くなると聞いて……そのタイミングで、二丁目の気の置けない友達からLINEが入った。「久しぶりに飲まない?」っていうお誘いに色々溜まっていたから、つい魔が差して軽い気持ちでOKを出した。別に、浮気をしようってわけじゃない。ただ、ちょっとした息抜き。司のことが嫌いになったわけではなくて……でも、たまに息が詰まる瞬間がある。言いたいことを、全て吐き出せるわけではない。だっ...

  • 見えない気持ち 1

    日向――気持ちが見えたらいいのに……。相手が何を考えてるのか、手に取るように読めたならこんな苦労しないのかもしれない。憂鬱な気持ちが頭を占拠し、肩がずしんと重くなる。重力に耐えかねて寝転ぶと、心が真っ黒に塗りつぶされていく気がした。外は眩しいくらいに晴れているのに心はどんどん濁っていく。温もりを求めて冷たいシーツに丸まり、感触を求めて軽すぎる枕を抱き込んだ。「38.2度か。」体温計を睨みつける司を見上げ、...

  • おはようございまーす!

    ご無沙汰しております。毎日暑くて溶けそうですが、いかがお過ごしですか?夏休みに突入しましたが、おじさん暇です。なので、この前の続きを今更ながら書こうかなーと思って開いてはみましたが……が、続きが全く浮かばない。本当に全く、少しも浮かばない。(ストーリーメモ残しとけよ……)なので、全く違う話ですみません。そして、前の話は中途半端すぎて、一時下げさせて頂きました。久しぶりに開いてみたら、書いてから大分時間...

  • 暫く留守にします!

    こんばんはーいつも遊びに来て頂き、ありがとうございます!休んでいるにも関わらず、ポチや拍手ありがとうございます!さて、タイトルの通りのお知らせです。久しぶりのエロシーンに突入しているのに、中途半端でごめんなさい。身内に不幸がありまして、暫く実家で暮らすことになりました。バタバタしているので更新は難しいかと思います。そのうち復活するので、また遊びに来ていただけると嬉しいです。ではではー桐生...

  • 投票にご協力お願いしまーす!

    こんばんはー突然ですが、アンケートのご協力お願いします!参考にさせて頂きます!FC2投票無料アクセス解析...

  • おはようございまーす!今日から!!!

    おはようございまーす!ええと、短編楽しんで頂けましたか?拍手をものすごい頑張って押して下さってる拍手職人様。いつもありがとうございまーーす!!!短編のあとがきにもちらっと書かせてもらいましたが司×日向のデートの短編をのろのろ書いてる途中でございます。書き終わり次第載せるつもりでしたが……もう、夏終わるじゃん!!!!真夏の設定で書き始めたのですが、もう9月とかおじさん信じられないよ……。なので、急遽見切...

  • 禍福は糾える縄のおかげ 3

    2人で転がるようにシングルサイズのベッドにダイブすると、ギイと悲痛な声をあげた。スポーツマンの大澤と、ここで勝負するにはあまりにもフィールドが小さすぎる。少し痛いのは我慢して床に転がると、大澤が馬乗りになった。俺の上でキスをしかける大澤のシャツの隙間から、背中に指を這わす。風呂上がりの湿った柔らかな肌が、手にフィットして心地がいい。「ずっと撫でまわしていたい」と思いながら、汗ばんだTシャツを脱がしに...

  • 禍福は糾える縄のおかげ 2

    「ど、どうすれば……。」今のところ、空は俺の味方をしてくれている。力強い大粒の雨が窓を揺らし、時折雷鳴が響いている。大澤をそのまま風呂場に直行させたはいいが、この後のことまで頭が回らなかった。部屋の中で右往左往しながら散らかった漫画や雑誌、DVDを無理やりクローゼットに押し込む。――もっと綺麗に片づけておけばよかった……。そう思いながら、流し台の上にある珈琲缶に手を伸ばす。「清水。」「え、お……。」声を掛け...

  • 禍福は糾える縄のおかげ 1

    「今日の1位はおうし座のあなた。ラッキーアイテムはミサンガ。最高の一日になるでしょう!」テレビから流れてくる星座ランキングを聞きながら、足首に視線を落とす。あの頃は虹色に輝いていたはずのミサンガも、今では大分薄汚れてしまっている。それでも、これを外せずにいるのは、大澤 崇の存在があったから。これが切れたら願いが叶う。そんなジンクスを本気で信じているわけではないけれど、外してしまうと彼への想いも断ち...

  • こんばんはー

    暑いですが、お元気ですか?唐突に、明日の10時から短編を載せる予定です。フジョッシーというサイトでコンテスト用に書いたものなので応援頂けると嬉しいです。こちらからサイトに飛べます→☆桐生...

  • ご連絡☆

    こんばんはー桐生です。コメントやメッセージなどで「好きなものを書いたらいいよー」というお優しいお言葉ばかり頂いて非常に恐縮です。また、休んでいる時にもポチや拍手ありがとうございます!仕事柄定期的に更新するというのが難しい状態なので突発的に書けたものを不定期で上げていく、というスタイルをとらせて頂きます。なので急に続編になったり、短編になったりがあるかと思いますがご了承頂ければ。ある方からの助言で、...

  • 片思いの終着地 7 END

    片岡 砂羽「頭、いてえ……。」頭を抱えるように薄目を開けると、そこは見慣れた薄茶色の天井。いつも暗い時間に目が覚めるのに、カーテンの隙間から降り注ぐ光は目に滲みるほど眩しかった。――今、何時だ?スマホを探そうと枕元で手を動かしていると、それを掴むより先にドアが開いた。「おはよう!でも、今はもうお昼だけどね。」そう言って微笑む陽菜季ちゃんに、唖然としながら身体を起こす。「なんでいるの?」そう捻りだした声...

  • 片思いの終着地 6

    6月というのが信じられない程、うだるような暑さ。真夏を彷彿とさせる、眩しすぎる太陽。ハーレーに乗っているというのに風を切る気持ちよさよりも、真上から降り注ぐ太陽が勝っている。――まさか、こんな店に二度来ることになるとは……。そう思いながらハーレーに跨ったまま中を確認すると、先ほどと同じ席に片岡の姿を発見した。――飽きもせず、よくこんな珈琲がまずい店に長居出来るもんだな……。そんなことを思っていると、ひょろ...

  • 片思いの終着地 5

    相葉 司「砂羽が、少しおかしいんだ。」シャワーを浴びてリビングに戻ると日向がぼんやりとした表情でテレビを見つめていた。見ていたというよりも、心ここにあらずといった様子で俺が出てくるのをただ待っていただけらしい。日向から片岡の名前を聞くのは久しぶりだった。俺にあいつの話をすることを、何度も躊躇していたんだろう。いつも気の抜けた顔が、やけに緊張している。話を聞いてみると……あれから授業にもろくに顔を見せ...

  • 片思いの終着地 4

    ある日の放課後。今日は部活もないし、遊ぶ予定もない。そろそろ帰ろうかと荷物をまとめていると、廊下を軽やかに走る足音。何度も聞くその軽快なリズムに、ヒナの姿が目に浮かぶ。外階段の掃除を終え、俺のために走ってきてくれてる。その音を聞きながら、ふと悪戯心が芽生えた。――寝たふりでもしてみたら、どんな反応するかな?そんな軽い気持ちで頬杖をつくと、勢いよく扉が開く。息を弾ませながら、ゆっくりと近づく足跡。声を...

  • 片思いの終着地 3

    中学生になってから、急にモテるようになった。ぐんと身長が伸びたせいか、バスケの試合で活躍していたせいか今まで見向きもされなかった練習試合でも女子の応援が増え、他校の女子から告白をされる機会も増えていた。小学校の時とは明らかに勝手が違い、どういう態度で接すればいいのか分からない。そんな時、告白された話をヒナに相談すると、途端に不機嫌になる。最初はモテ自慢だと誤解されているのかと思っていたが、その不機...

  • 片思いの終着地 2

    小学校2年生の冬、俺はこの街にやってきた。慣れ親しんだ土地を離れるというのは、俺にとって憂鬱でしかない。今まで仲良かった友達とは疎遠になるし、授業のスピードが速くてついていけない。もともと好きではなかった勉強がどんどん嫌いになり、テストはほとんど白紙で提出していた。学校に行くのが嫌で、友達と呼べる同級生もなかなか出来ない。1人放課後にバスケの練習をすることだけが、その頃の俺の生きがいだった。そんな...

  • 片思いの終着地 1

    片岡 砂羽心から何度も追い出そうとしても、また同じ夢を見てしまう。同じ場所に、引き戻されてしまう。腕の中にいた感触繋がった時の温度初めて見た表情あんなに幸せな時間だったのに夢の終わりで、いつも同じ台詞を最後に告げる。「もういい加減飽きてきたし、そろそろ終わりにしない?」その言葉で、幸せだった夢が、一気に悪夢に変わる。「同じ相手と何回もすれば、そりゃ飽きるだろ?」「砂羽とする前に他の男に何回も抱かれ...

  • 明日から……

    こんばんはーご無沙汰しております、桐生です。あまりにも久しぶりすぎて読んだことある方がまた見にきてくれていると嬉しいのですが……『片思いの曲がり角』を終えてから、大分時間が経ってしまいました。しばらく離れてしまうと、書くという癖がなくなってしまったせいかすっかりご無沙汰になっていました。長編をいきなり進めるにはあまりにも無謀なので(まず、内容をもう一度思い出しながら読み直さないと……という段階)一先ず...

  • アンケート結果☆

    こんな時間にこんばんは!投票アンケートにご協力いただいた皆様、ありがとうございました!!そしてコメントまで頂いて……ありがとうございます!参考にさせて頂きます!!多分1位と2位で接戦だったかと思います。見る度に順位が入れ替わるので、とても楽しく拝見してました。全投票数197票で結果は以下の通りでした。1位 日向と司の今後 (71票/36.0%) 2位 日向と司と砂羽の中学時代(砂羽目線) (64票/32.5%) 3位 砂羽の今 ...

  • アンケートのお願い☆(15日の日曜日まで)

    あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!!そして、前回の記事にたくさんのコメントや拍手本当にありがとうございました!!予想以上にたくさんのご感想を頂きまして嬉しくて何度も読み返しています。それとともに、サイドストーリーのリクエスト(?)をちょこちょこ頂きました。予定では『君だけのヒーロー』の続きを書こうかと思っていたのですが、今後に向けて読者さまにアンケートにご協力頂きたいと思い...

  • あとがき&今後の予定☆

    『片思いの曲がり角』に最後までお付き合い頂き本当にありがとうございました!!!全106話というだらだらとした長編にも関わらず……呆れることなく毎日のように遊びに来て頂いた方ポチや拍手で応援してくださった方毎日のように声をかけて下さった方本当にありがとうございましたーーーーーーー!!!拍手もまさかの10000拍手に達していて、もう驚きすぎて笑うしかないです(笑)いつもありがとうございます!そして……拍手職人のR...

  • R 片思いの曲がり角 106 END

    頭上に響く微かな物音に意識が浮上し、目を閉じたまま手を伸ばす。すると、鳴っていたのは俺のスマホではなく相葉のもので……いつもよりも長めに鳴る振動音に電話だと気がつき、目を閉じたまま相葉を揺する。「相葉?電話っぽいよ。」昨晩の酒とセックスで擦れてしまった声で呼びかけると……珍しく深く寝入っているのか、起きる様子はない。どうしようかと迷っていると、電話が切れてしまう。――あー、切れちゃった……。自分のスマホの...

  • R18 片思いの曲がり角 105

    すっかり長湯して風呂を上がると、すぐに飯の時間になった。目にも楽しい鮮やかな料理に舌鼓を打ちながら、デザートまでぺろりと食べ終えると……もう、一歩も動きたくないほど満腹で2人並んで畳に寝転びながら、しばし休憩することにした。「あー……食った!食った!すげー幸せ!!」大の字に寝そべりながら大堀はそう言うと、本当に幸せそうな表情でごろんとこちらに寝返りを打つ。食前酒が少し甘めで軽い口当たりだったせいか……大...

  • 片思いの曲がり角 104

    サボテンさんとは顔を合わせることもなく、車に荷物を詰め込んで目的地である草津温泉へと向かう。町田から高速に乗り、圏央道を経由し、渋川伊香保インターで降りる頃には大堀はすっかり熟睡モードに突入していた。時間にすると、4時間ほどの長い長いドライブ。途中渋滞に何度か足止めをくらったが、ほとんど休憩を入れずに走り続けた結果……チェックインの時間にはまだまだ余裕があった。インターを降りてすぐのコンビニで車を止...

  • 片思いの曲がり角 103

    「温泉、もうすぐだけど……どうする?」水曜日の夜にベッドに寝転びながらそう尋ねると……大堀は既に半分の目を擦りながら、俺の腕に頭を乗せてきた。「冴木さん、まだ目を覚まさないんだよね?」「病院に、顔出すか?」「そうしよっか?」「あれ、早く冴木さんに渡したいし。」2人に渡された紙袋に視線を向けると、大堀はにこっと嬉しそうに微笑む。「凄いよなぁ……。2人で1000折ったんだろ?」「らしいな。」2人の様子を思い出すと...

  • 片思いの曲がり角 102

    月曜日になっても、透からもサボテンさんからも何の連絡も来なかった。病状に変化はないということが、いいことなのか悪いことなのか……それすらもよく分からないが、やけに長く感じる時間の流れ。長かった月曜日が終わり、火曜日になっても連絡は来ない。連絡を待っているのがじれったくなり、火曜日の夜にサボテンさんに電話をいれることにした。たまたま外にいたのか、サボテンさんはすぐに電話に出る。少し枯れたサボテンさんの...

  • 片思いの曲がり角 101

    免許もないくせに、無理難題を吹っかけてくる大堀に急かされながら少し飛ばし気味にサボカフェまで車を回す。店に踏み込むと、まだまだ営業中にも関わらずがらんとしていた。日曜日は客が引けるのが早いとはいえ、流石にこの状況は素人目に見てもまずい気がする。テーブル席に男2人組がいるだけで、静かすぎる店内には洋楽がいつもよりも大きく響いていた。サボテンさんはカウンター席で暇そうに新聞を読みながら、優雅に珈琲を啜...

  • R15 片思いの曲がり角 100

    「……今日、どこ行ってたの?」親父に呼び出されてから、色々と1人で考えているうちにいつの間にか陽が暮れていた。大堀の勤務時間はとっくに過ぎていて、俺が店を覗いた時にはその姿は既になかった。早足で帰っては来たが、家に帰ると玄関でずっと待っていたらしい大堀にすぐさまそう問い詰められた。不安そうな顔で見上げる大堀の頭をくしゃりと撫でて、リビングに行くように促す。「ああ、ちょっと。」「ちょっとって?」ソファ...

  • 片思いの曲がり角 99

    日曜日。いつものように大堀のバイト先で課題をこなしているとカバンに入れっぱなしだったスマホが、ぶるぶると震える。ちょうど集中し始めたところで、放っておこうとしばらく放置していたが……いつまで経っても鳴り止むことはない。――クソ、しつこいな……。それと同時に冴木に何かあったのではと思い、イラつきながらも恐る恐るディスプレイを覗く。すると、相手が透ではないことに安堵しながらも、掛けてきた相手に眉を潜める。「...

  • 片思いの曲がり角 98

    12月の最初の土曜日に病院に顔を出すと、冴木はちょうど眠りについたところらしく透が傍で書類を読んでいた。いつものように花を活けて、飲み物を冷蔵庫に突っ込み……ペットボトルのひとつを透に渡して、その隣に腰をかける。「就職、決まったんだって?」「ああ。父さんから?」俺の質問にようやく書類から顔を上げると、顔にはくっきりと疲れの色が表れている。毎日面会時間ぎりぎりまでここに入り浸り、帰ってから仕事を片づけて...

  • 片思いの曲がり角 97

    家に着いても、繋いだ指先を離すことはない。大堀が何を考えているのかさっぱり分からないが、機嫌は先ほどよりも幾分か回復したように思う。しかし、何を話しかけてもイエスかノー以上の言葉を発することはなくソファに並びながら、無言でテレビを見続けるということをかれこれ1時間も続けている。機嫌がいい時なら、ごろんと膝に寝転んでくることもあるのに今日はそんな素振りは全くない。手を離すのが惜しくて、そのまま2人でぼ...

  • 片思いの曲がり角 96

    冴木の病状も大分落ち着いてきた11月の半ば。大堀は新宿でのバイトは辞めて、今月の初めから駅前にあるカフェでバイトを始めることになった。しかし、相変わらずバイトに忙しく、週末に一緒にスーパーに買い出しに行くくらいしか外出は出来ていない。毎週土曜日に冴木の病室に顔を出すと、決まって透が傍にいる。ほとんど腰を落ち着けることもなく、顔を出すだけは出してはいるが……以前のように会話を交わすことはない。冴木も透と...

  • 片思いの曲がり角 95

    すみません。更新遅くなりました……。日曜の朝になっても、冴木の意識がまだ戻らないという連絡を透から受けた。丸1日透が冴木の傍についているからと言われ、2人の時間を邪魔するわけにも行かず……顔を出すのは俺の時間割の関係で、水曜日に持ち越されることになった。大堀も結局代わりのバイトが見つからなかったせいで、いつもと変わらぬ日曜日を過ごす。いつものように大堀を見送り、いつものように煙草と珈琲を片手に課題を片...

  • 片思いの曲がり角 94

    夕方になって、ようやく冴木の病室の扉が開かれた。呼吸と心拍が回復したという説明を聞き、ほっと胸を撫でおろしながら透に続いて病室に恐る恐る入る。冴木は胸を大きく上下させながら、眉間に深い皺を寄せていた。ベッドサイドに設置されたモニターに脈拍、血圧、SpO2、呼吸数が表示されている。呼吸派が時折乱れるのが気にはなるが、他は綺麗な波を描いていることに一先ず安心した。いつも穏やかな冴木の初めて見る苦しそうな表...

  • 片思いの曲がり角 93

    透との電話を終えて、気持ちが少し軽くなった。なんだか、こちらが気にしていたのが馬鹿らしく思えるほど、俺のことは全く頼りにしていないようで……力が抜けたというか、気張っていたことが馬鹿らしく思った。透から見たら、俺はいくつになってもあいつの後ろをくっついていた子供と同しで……この関係性が変わることはないんだろうか。10年経っても、まだまだ追いつけそうにない。むしろ、逆に離されている気さえする。家から逃げて...

  • 片思いの曲がり角 92

    日曜日の昼前に、大堀はいつものようにバイトに出掛ける。それを不機嫌な顔で送り出してから、溜まっていた洗濯物と掃除を一気に片づけた。久しぶりにすっきりしたリビングで珈琲を飲んでいると、サボテンさんの顔が頭に浮かぶ。ずっと冴木が好きだと思っていたのに、いつの間に透へと気持ちが傾いたんだろう?祖父の頼みで透を預かっているとばかり思っていたのに……透は、サボテンさんの気持ちに気がついているのだろうか?考えて...

  • 片思いの曲がり角 91

    冴木の病院の帰りに、せっかくだからと鎌倉まで足を延ばした。七里ヶ浜まで出てみると、流石に夕方にはぐっと冷える。大堀の希望で海が見えるパンケーキが有名なカフェで腹ごしらえしてから、少し暗くなってきた砂浜を2人で歩いた。土曜日ということもあり、カップルが点々と歩いているが……暗くなってきたせいか、俺たちに視線を向ける人はいない。歩くたびに互いの手の甲がぶつかって、なんとなくその手を握ると……大堀も同じくら...

  • 片思いの曲がり角 90

    課題に追われる平日を終えて、ようやく迎えた週末。大堀は土曜日だけ休みを取り、2人揃って冴木の病院に向かうことになった。出掛けようとハーレーに跨った時、冴木がサボテンさんの珈琲がもう一度飲みたいと言っていたことを思い出した。新宿に寄り道してサボカフェに訪れると、サボテンさんはいつものようにカウンターで忙しなくオーダーをこなしている。席数はそう多くないものの、1人で切り盛りするには賑やかな店内。サボテン...

  • 片思いの曲がり角 89

    大学を終えて家に戻ると、大堀が珍しくソファに寝転んでいた。いつもならこの時間はバイトに精を出しているはずが、のんびりと部屋着で寛ぎながら……何やら熱心に雑誌を読んでいる。また鎌倉の特集記事でも載っているのかと思ったが……俺が近づくと、何やら難しい顔でそれを睨んでいることに気がついた。「何、見てんだ?」読んでいる雑誌をすっと奪うと、大堀は俺が帰ったことにも気がつかなかったのか……驚いた表情で身体を起こす。...

  • 片思いの曲がり角 88

    透に追い出されてタクシーを捕まえて家に帰ると、マンションの前に座り込んでいる人影が目に入る。まさかと思いながらも近寄ると、体育座りをしたまま顔を膝に埋めている大堀の姿を発見した。近くに寄っても動く様子はなく、まるで置物のように固まっている。「おい。」そう声をかけても、大堀はじっと動かない。こんなところで何をしているのかと聞こうと思ったが、顔をぐいっとあげると……目をしっかりと閉じて眠っていた。「……ま...

  • 片思いの曲がり角 87

    終電に飛び乗って急いで家に戻ると、リビングで寛ぐ父親と透の姿が見えた。2人はとても穏やかな雰囲気で話していて、まるで今まで透がいなかったことが嘘のように思える。透も、新宿で見かけたようなだらしない服装ではなく、きっちりとスーツを着てネクタイまで締めている。まるで、昔に戻ったかのようなその姿に、どう切り出せばいいのか分からなくなった。「司、こんな夜中にどうしたんだ?」父親は相変わらずな様子で、透と一...

  • 片思いの曲がり角 86

    女性との顔合わせを無事に済ませ、ぐったりとした気分で家に戻る。どこからどうみても育ちがよさそうな女性と当たり障りのない会話をして、始終慣れない作り笑いを浮かべていたせいか……タクシーで女性を見送る時には、既に地面に足がめりこむほどの疲労感を覚えていた。あの人と一生暮らす生活を考えただけで、気が重い。とてもきれいな女性だったとは思うが、道ですれ違ったとしてもきっと気づかない。興味が湧かなかったというか...

  • 片思いの曲がり角 85

    次の日の朝になっても、大堀が家に帰ってくることはなかった。そんなことは分かり切ったことだったが、残された大堀の荷物が目に入ると……それだけで昨日の燻っていた気持ちが再燃する。あんな追い出し方をしたことに、後悔してないわけがない。しかし、どう伝えたらいいのか分からなかった。父親からは朝メールがあり、夜9時に都内のホテルのラウンジを指定された。家からも学校からも近い場所で、アクセス的にも悪くない。それと...

  • 片思いの曲がり角 84

    そのまま帰ろうかと駐車場まで歩いていると、大堀のバイト先に見慣れた姿を見つける。いつものソファでくつろぐ姿ではなく、黒のスーツに身を包み、ネクタイまで締めていた。社会人にしては緩い服装ではあるが、いつもTシャツにハーパン姿に見慣れているせいか……どうも別人に見える。――外ではこんな顔してんのか……。いつもの姿に見慣れているせいか、どうも見慣れない。ちらちらと窓の外から仕事の様子を眺めていると……カウンター...

  • 片思いの曲がり角 83

    仕事中のせいか、何度もかけ直したが透には繋がらなかった。明日まで待ってもよかったが、大堀の帰りも遅いし……そのまま透のいる店へと向かう。***店に着くと、開店直後のはずだが既に席は粗方埋まっていた。ソファ席で客に笑いかけている透と視線が合うと、向こうは驚きながらもすぐにこちらに駆け寄ってくる。「司、どうしたの?」透が俺に話しかけただけで、周りの視線を痛い程感じた。ここで人目に晒されながら、落ち着いて話...

  • 片思いの曲がり角 82

    1週間で唯一3限までの水曜日、久しぶりに冴木の元を訪れた。既に行きつけになった花屋で花束を買い、近くのコンビニで飲み物を調達する。冴木の部屋を訪れたのは、面会時間終了まであと1時間に迫っていて……あまり長居は出来ない。それでも、次の土日まで時間を空けるのは、心がざわついて落ち着かなかった。***「ああ、君か。」先日と同じように、冴木はベッドで本を読んでいるところだった。1週間と少ししか時間は経っていないの...

  • 片思いの曲がり角 81

    *緩いR表現があるので、苦手な方はご注意ください。サボカフェを出て、大堀と家に帰ったのは……まだまだ明るい時間だった。せっかくのデートだしどこかで美味い物でも食ってこようかと思ったが、大堀も俺も人疲れしてしまっていて……結局、近くのスーパーで買い出しをした。2人並んでキッチンに立ち、会話も弾まないまま淡々と仕上げていく。それでも駅で手を繋いだり、人ごみに揉まれながらぶらぶらと歩くのに比べたら、気持ち的に...

  • 片思いの曲がり角 80

    結局、俺たちが辿り着いたのは、サボカフェだった。***車内でも嫌がる大堀を無視し、手は繋いだまま。最初は抵抗を見せていたが、俺が折れないのが分かると……大堀も徐々に大人しくなる。2人でドアの前に立ちながら無言で外の景色を眺めていると、最近では見慣れた建物が目に留まる。特に目的の駅なども決めてなかったが、新宿に到着すると……2人の間に言葉はないまま同時にホームに足裏をつけた。土曜日ということもあり、駅構内は...

  • 片思いの曲がり角 79

    これ以上デートに対して注文をつけられても対応できそうになかったから、大堀が風呂を上がるのを待たずに家を出た。待ち合わせの時間までは大分余裕があり、普段は立ち入らない小さな本屋にふらりと寄り道。すると、冴木が読んでいた短編集が目につき、手を伸ばす。普段は手に取ることもないが、特に何も考えずにそのままレジへと向かった。***駅前のカフェに入ると、ほとんどカウンター席で埋め尽くされていた。俺のようにひとり...

  • 片思いの曲がり角 78

    昨日は結局、大堀の希望に見合う宿を選ぶのに手間取ってしまい、どこにも出掛けられず仕舞いだった。夕飯の買い出しの時間もとっくに過ぎてしまっているのに、冷蔵庫は空っぽ。仕方なく深夜に2人でコンビニに出向き、簡単な夜食とデザートを買い込んだ。そんな長期に渡る作戦会議を終えたのは、午前0時を回っていた。せっかくの土曜日を1日丸ごと棒に振ってしまったわけだが……あーでもないこーでもないと計画を立てるのは、それな...

  • 片思いの曲がり角 77

    今日は大学が始まる前の最後の土曜。大堀は昼前からバイトで家を空けてしまうが、今はソファで寝転びながら熱心に雑誌を見つめている。冴木の病院には最低週に1度は顔をだし、その帰りにサボカフェで珈琲を飲みながら冴木の近況報告をするというのが、俺の主な土曜日の過ごし方となっていた。そろそろ大堀が出る時間だから、それに合わせて俺も出掛けようと準備していても、大堀は一向に動く気配はない。「今日のバイトは?」「……...

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