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ポケットの中で映画を温めて https://blog.goo.ne.jp/yasutu_1949

今までに観た映画などを振り返ったり、最近の映画の感想や、本その他も綴っていきます。

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2015/07/04

  • 『トリとロキタ』を観て

    『トリとロキタ』(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟、2022年)を観てきた。ベナン出身のトリとカメルーン出身のロキタ。ふたりはアフリカからベルギーへたどり着く途中で出会い、強い友情の絆で結ばれていた。ロキタは、すでにビザが発行されているトリの姉と偽り、ビザを取得しようとしていた。トリとロキタはイタリア料理店の客に向けてカラオケを歌って小銭を稼いでいる。しかし、それは表向きで、実はシェフのベティムが仕切るドラッグの運び屋をしている。今日もベティムに指示され、ドラックを客のもとへと運ぶ。警察に目をつけられたり、常に危険と隣り合わせだ。ときに理不尽な要求もされる。それでも受け入れるしかない。人としての尊厳を踏みにじられる日々だが、トリとロキタは支え合いながら生活していた。ある日、ベルギーへの密航を斡旋...『トリとロキタ』を観て

  • 「大江健三郎」 氏の逝去の報に接し

    「大江健三郎」氏が亡くなったという。3月3日、老衰だとのことである。まだ88歳だったというのに。そう言えば、もう何年も近況の情報が聞けなかった。今現在、どのように過ごしてみえるのかと気にはなっていた。このブログ記事は書かないでおこうと思った。しかし、後々、大江はいついなくなってしまったのだろうと振り返ってみた場合のためにメモしておきたい。私が大江健三郎の作品に衝撃を受けたのは、家にあったそれこそ初期の全集の中の『奇妙な仕事』、『死者の奢り』を読んだのがきっかけだった。なぜ、学生がこのような作品を書けるのか、そのテーマの捉え方にとてもではないが想像を絶するものを感じた。私は大江よりそれこそ『遅れてきた青年』だったとしても、同じ20歳前後の人間として共感以上のものを感じた。それ以後、『われらの狂気を生き延びる...「大江健三郎」氏の逝去の報に接し

  • 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観て

    『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート監督、2022年)を観てきた。物語は、疲れ果てた主人公エヴリンの日常から始まる。経営するコインランドリーに監査が入り、国税局からイチャモンをつけられ、税金の申告をやり直さなければならなくなったのだ。故郷の中国からエヴリンの住むアメリカへやって来た父親は、相変わらず頑固で介護も大変。娘のジョイは元々反抗的な上に、恋人のベッキーの存在を理解しない母親に不満を抱いている。夫のウェイモンドは優しいが、優柔不断で頼りにならない。そんな中、国税庁で役人に絞られていると、突然夫が豹変。別の宇宙のウェイモンドだと名乗る彼はエヴリンに、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と宣告!まさかと驚くエヴリンだが、悪の...『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観て

  • 『別れる決心』を観て

    『別れる決心』(パク・チャヌク監督、2022年)を観てきた。男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュンと、被害者の妻ソレは捜査中に出会った。取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしかヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたヘジュンに特別な想いを抱き始める。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりだった・・・(公式サイトより)生真面目な性格である、釜山の警察署刑事・ヘジュン。妻はイポ市に住んでいて、週末に帰るという生活をヘジュンはしている。そんなある日、男が山頂から転落死する事件が発生する。ヘジュンは、その男の妻ソレをマークし秘かに監視する。だがその過程で、意識せずともソレの魅...『別れる決心』を観て

  • 『ケイコ 目を澄ませて』を観て

    『ケイコ目を澄ませて』(三宅唱監督、2022年)を観てきた。生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る・・・(映画.comより)昨年12月からの上映で、もう二か月以上経つというのにまだやっていたので観てきた。聴覚障害のある女性がプロボクサーとして努力するということ。そこには健常者にはわからない並々ならないハンディや苦労が絡むはず。それをこの映画は、ケイコを主人公に捉え、その日常風景も写しながら、人生にたいする戸惑い...『ケイコ目を澄ませて』を観て

  • 『コンパートメントNo.6』を観て

    『コンパートメントNo.6』(ユホ・クオスマネン監督、2021年)を観てきた。時代は1990年代。モスクワに留学中のフィンランド人・ラウラは、下宿先である同性の大学教授・イリーナと恋愛関係にあった。二人は北極圏の街ムルマンスクのペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く予定だったが、突然イリーナが断り、ひとりラウラは寝台列車に乗る。ラウラが指定席である二等客席の扉を開けると、そこには男が酔っ払いながら酒を飲んでいた。ロシア人の炭鉱労働者であるそのリョーハは、無作法な態度でラウラに絡んできた。最初は無視していたラウラだが、とうとうたまらず食堂車に逃げ込むのだった・・・個室列車でこんな無礼千万な男が同席になれば、誰だって、楽しいはずの旅が台無しになる。ましてやラウラは女性で、恋人イリーナが一緒でないために淋しい孤独な...『コンパートメントNo.6』を観て

  • 『逆転のトライアングル』を観て

    『逆転のトライアングル』(リューベン・オストルンド監督、2022年)を観てきた。モデルでインフルエンサーとしても注目を集めているヤヤと、目が出ない男性モデルのカール。美男美女カップルの2人は、招待を受けて豪華客船クルーズの旅に出る。船内ではリッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでもかなえる客室乗務員が笑顔を振りまいている。しかしある夜、船が海賊に襲われ難破し、一部の者は無人島に流れ着く。食べ物も水も何もない極限状態のなか、これらの間に生き残りをかけた生存競争が生まれ・・・(映画.comより一部修正)カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した前作の『ザ・スクエア思いやりの聖域』(2017年)の印象を思い出すと、“チョットしんどかったな”という思いがあるので、今回のこの...『逆転のトライアングル』を観て

  • 『イニシェリン島の精霊』を観て

    『イニシェリン島の精霊』(マーティン・マクドナー監督、2022年)を観てきた。本土が内戦に揺れる1923年、アイルランドの孤島、イニシェリン島。島民全員が顔見知りのこの平和な小さい島で、気のいい男パードリックは長年友情を育んできたはずだった友人コルムに突然の絶縁を告げられる。急な出来事に動揺を隠せないパードリックだったが、理由はわからない。賢明な妹シボーンや風変わりな隣人ドミニクの力も借りて事態を好転させようとするが、ついにコルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣言をされる・・・(オフィシャルサイトより)『スリー・ビルボード』の監督作品ということで、観なければと思い行ってきた。結果は、作品にどっぷり浸かることが出来、その内容の濃厚さに痺れた。日常的にコルムをパブに誘うパードリッ...『イニシェリン島の精霊』を観て

  • 『アナザーラウンド』を観て

    『アナザーラウンド』(トマス・ヴィンターベア監督、2020年)を観た。冴えない高校教師のマーティンと3人の同僚は、ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため、実験をすることに。朝から酒を飲み続け、常に酔った状態を保つと授業も楽しくなり、生き生きとするマーティンたち。生徒たちとの関係も良好になり、人生は良い方向に向かっていくと思われた。しかし、実験が進むにつれて次第に制御がきかなくなり・・・(映画.comより)高校で歴史を教えているマーテイン、他に体育のトミーと音楽のピーター。そして、心理学のニコライ。どちらかと言うとうだつの上がらない4人の教師だが、仲がいい。その4人が血中アルコール濃度0.05%が理想という仮説の検証をし...『アナザーラウンド』を観て

  • 『スティーブ・ジョブズ』を観て

    『スティーブ・ジョブズ』(ダニー・ボイル監督、2015年)をDVDで観た。1984年、アップル新製品の発表会本番40分前。今日の主役のパソコンMacintoshが「ハロー」と挨拶するはずが、黙ったまま。「直せ」とスティーブ・ジョブズは冷徹に言い放つ。15分前、音声デモと格闘するアンディを脅し、突然胸ポケット付きの白いワイシャツを用意しろとジョアンナに命じ、共同創業者で親友のウォズニアックから頼まれたAppleⅡチームへの謝辞をはねつけるジョブズ。そして2分前、自ら連れてきた新CEOのスカリーと舞台袖で交わした会話とは・・・(DVDパッケージ裏のあらすじから)1976年、スティーブ・ジョブズは友人のスティーブ・ウォズニアックが自作したマイクロコンピュータ「AppleI」を販売するために起業することを決意し、...『スティーブ・ジョブズ』を観て

  • 『バルド、偽りの記録と一握りの真実』を観て

    『バルド、偽りの記録と一握りの真実』(アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督、2022年)を観てきた。ロサンゼルスを拠点に活躍する著名なジャーナリストでドキュメンタリー映画製作者のシルベリオ・ガマは、権威ある国際的な賞の受賞が決まり、母国メキシコへ帰ることになる。しかし、何でもないはずの帰郷の旅の過程で、シルベリオは、自らの内面や家族との関係、自らが犯した愚かな過去の問題とも向き合うことになり、そのなかで彼は自らの生きる意味をあらためて見いだしていく・・・(映画.comより)この作品は来月になればNetflixで配信されるが、イニャリトゥの最新作となれば観ておきたい気があって劇場へ行ってきた。結論から言うと、正直相当しんどかった。映像の面白さ、例えば幻想的な場面とかシュールな感じも漂わせたりするかと思えば、一...『バルド、偽りの記録と一握りの真実』を観て

  • 『ノベンバー』を観て

    『ノベンバー』(ライナー・サルネ監督、2017年)を観てきた。エストニアのとある寒村。貧しい村人たちの最大の悩みは、寒くて暗い冬をどう乗り切るかだ。村人たちは“使い魔クラット”を使役し、隣人から物を盗み合いながら、必死になって生きている。クラットは牛を鎖でつないで空中に持ち上げ、主人の農場に届ける。クラットは農具や廃品から作られたもので、操るためには「魂」が必要となる。「魂」を買うために森の交差点で口笛を吹いて悪魔を呼び出しては、取引をするのだ。悪魔は契約のために3滴の血を要求するのだが、村人たちはそれすら勿体無いと、カシスの実を血の代わりに使い悪魔をも騙す。時は「死者の日」を迎える11月1日。死者が蘇り、家に戻ってご馳走を食べ、貴重品が保管されているかを確認する。死んでもなお、欲深い村人たち。若くて美し...『ノベンバー』を観て

  • 『百万本のバラ』

    以前から加藤登紀子の歌で馴染みの『百万本のバラ』を、最近、他の歌い手で聴いていたりする。歌っているのはYOYOMI(パク・ユンア)【YouTubeより】ロシアのアーラ・プガチョワの持ち歌であるこの歌の内容は、グルジア(現ジョージア)の画家ニコ・ピロスマニがフランス人の女優マルガリータに恋をし、彼女の泊まるホテルの前の広場を花で埋め尽くしたという逸話をもとにしている。【YouTubeより】百万本のバラ/アーラ・プガチョワ原曲である「マーラが与えた人生」は、バルト三国のラトビアの作曲家ライモンド・パウルスがソ連統治時代の1981年に作曲した。アイヤ・ククレが歌唱する歌詞は、大国に翻弄されるラトビアの苦難を暗示する内容で、現在のウクライナ・ロシアの関係に通じる。【YouTubeより】マーラが与えた人生/アイヤ・...『百万本のバラ』

  • 『ふたりの女』を観て

    『ふたりの女』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1960年)を観た。第二次大戦中、空襲が増すローマ。女手ひとつで食料品店をやり繰りするチェジラは、ひ弱な13歳の娘ロゼッタのために生まれ故郷に疎開しようと決意する。留守中の店の管理は、先立たれた夫の友人ジョヴァンニに託す。ジョヴァンニはチェジラに好意を抱いていて、チェジラは抗いながらもジョヴァンニに身体を許すことになる。生まれ故郷の村では、まだ食料困難までにはなっておらず、大勢の人が疎開して来ていた。その中の一人、青年ミケーレは何かとこの母娘に気を配ってくれ、ロゼッタはいつしか彼を慕うようになった。だが彼女は、ミケーレが母を愛していることに感づいていた。戦況はムッソリーニ政権が崩壊し、村を支配していたドイツ兵は逃走のための道案内としてミケーレを拉致して行った。...『ふたりの女』を観て

  • 『はちどり』を観て

    『はちどり』(キム・ボラ監督、2018年)を観た。1994年、ソウル。家族と集合団地で暮らす14歳のウニは、学校に馴染めず、別の学校に通う親友と遊んだり、男子学生や後輩女子とデートをしたりして過ごしていた。両親は小さな店を必死に切り盛りし、子供達の心の動きと向き合う余裕がない。ウニは、自分に無関心な大人に囲まれ、孤独な思いを抱えていた。ある日、通っていた漢文塾に女性教師のヨンジがやってくる。ウニは、自分の話に耳を傾けてくれるヨンジに次第に心を開いていく。ヨンジは、ウニにとって初めて自分の人生を気にかけてくれる大人だった。ある朝、ソンス大橋崩落の知らせが入る。それは、いつも姉が乗るバスが橋を通過する時間帯だった。ほどなくして、ウニのもとにヨンジから一通の手紙と小包が届く・・・(公式サイトより)ウニの家族の描...『はちどり』を観て

  • 『まぼろしの市街戦』を観て

    『まぼろしの市街戦』(フィリップ・ド・ブロカ監督、1967年)を観た。1918年10月。第一次世界大戦末期の北フランスの小さな町でのこと。イギリス軍に追撃されたドイツ軍は、その田舎町から撤退する際に、イギリス軍を全滅させるため村のある場所に大型の時限爆弾を仕掛けていった。イギリス軍司令官は、町に潜入し爆弾の時限装置の解除する役目を、たまたまフランス語が出来るというだけの理由で、通信兵である伝書バト係のスコットランド人、プランピック二等兵に命令する。町に侵入したプランピックは、残留していたドイツ兵と鉢合わせになってしまい、たまたま開門していた精神病院に逃げ込む。そこでは、老若男女の患者たちが戦争をよそに、楽しげにトランプ遊びをしていた。彼らに名前を聞かれたプランピックは、適当に“ハートのキング”と自称したこ...『まぼろしの市街戦』を観て

  • 『キャット・ピープル』(1942年)を観て

    『キャット・ピープル』(ジャック・ターナー監督、1942年)を観た。ニューヨークのセントラル・パーク動物園。セルビア出身でイラストレーターのイレーナが黒ヒョウをスケッチしながらクズを出したところ、通りがかった船舶設計師のオリバーが拾う。イレーナは、快活なオリバーに心を許し、家まで送ってくれた彼にお茶を振る舞う。その後、二人はお互い恋愛感情を抱き、やがて結婚にたどり着いたが、イレーナには秘かな悩みがあった。彼女の生まれたセルビアの小さな村は、昔から呪われた魔女の村として、嫉妬や欲望を持つ者はヒョウに変身すると言われていた。イレーナの父は森で不審な死に方をし、それが元で母親は猫女と罵られていた。そのためにイレーナはいじめのトラウマを持っていた。オリバーとイレーナは、結婚してからも寝室は別々のままであった。イレ...『キャット・ピープル』(1942年)を観て

  • 『黒い牡牛』を観て

    『黒い牡牛』(アービング・ラッパー監督、1956年)を観た。メキシコの田舎の貧しい農家に育ったレオナルド少年。母の葬式を終えた晩、落雷で倒れた大木の下敷きで死んだ母牛のそばに、生まれたばかりの黒い子牛をみつけて家に連れ戻る。父親から育てることを許可を得て、闘牛用の猛牛の子にも拘らず“ヒタノ(ジプシー)”と名付けられた子牛は少年によくなついた。だが「ヒタノは雇主である牧場主の所有だから烙印を押さねばならぬ」と父親から聞かされたレオナルドは、学校の先生の助けを借り牧場主に手紙を送る。それを読んだ牧場主は、子牛をレオナルドに譲ると約束した。2歳を迎えたヒタノは、逞しく育ち、闘牛用のテストにも勇猛ぶりを見せた。たまたま、レオナルドが学校を卒業した日、牧場主は自動車レースによる不慮の事故死をする。やがて牧場主の財産...『黒い牡牛』を観て

  • ジャン=リュック・ゴダール監督の逝去の報に接し

    ジャン=リュック・ゴダール監督が9月13日死去したと報道された。91歳だった。十代の頃、それこそ夢中になった監督である。フランソワ・トリュフォーと共にヌーベルバーグを代表するゴダールを知って、初めて観た作品は何だったかと記憶を遡る。『気狂いピエロ』(1965年)を封切りで観た時には、もうゴダールの作品を2番館、3番館で観ていたので何が最初なのかはよくわからない。それらの作品は、『女は女である』(1961年)、『女と男のいる舗道』(1962年)、『軽蔑』(1963年)、1963年公開の『小さな兵隊』。そして、『恋人のいる時間』(1964年)、『アルファヴィル』(1965年)。もっとも『勝手にしやがれ』(1960年)は案外、後の方で観たと記憶している。大半の内容をもう忘れてしまっているけれど、中でも『女と男の...ジャン=リュック・ゴダール監督の逝去の報に接し

  • アキ・カウリスマキ・5~『パラダイスの夕暮れ』

    『パラダイスの夕暮れ』(アキ・カウリスマキ監督、1986年)を観た。ゴミ収集人で独身のニカンデルは、毎日同じ仕事の繰り返しでも真面目に働いている。ある日年上の同僚から、独立してこの仕事を起ち上げようと誘われる。その日、うっかり腕に怪我をしたままスーパーに行ったニカンデルは、それを見たレジ係のイロナに手当てをしてもらう。独立に気乗りしたニカンデルは、英語リスニング教室まで通い出したが、勤務中同僚は、突然に心臓発作で亡くなってしまう。ショックを受けたニカンデルは、飲食店で大量に酒を飲んで暴れ、その挙げ句、留置場の厄介になる。留置場を出たニカンデルは、職場に掛け合って、同室だった失業中の男メラルティンを採用してもらい、二人はコンビとしてゴミ収集をし出す。スーパーのゴミ収集時、裏口にいたイロナを見たニカンデルは、...アキ・カウリスマキ・5~『パラダイスの夕暮れ』

  • 『回転』を観て

    『回転』(ジャック・クレイトン監督、1961年)を観た。ミス・ギデンスは、ロンドンの裕福な男性から甥と姪のための家庭教師として採用される。郊外の古い屋敷に到着したギデンスを、幼いフローラと世話人のグロース夫人が迎えた。少し経って、寄宿学校を退学させられた兄のマイルスが屋敷に戻ってくる。兄妹はギデンスになつき平穏な日々が続いていたが、ある日、庭から屋敷の塔を見上げたギデンスは、いるはずのない男が彼女を見下ろしているのに気づき、そこに行くとマイルスだけがいた。数日後、夕方に突然フローラがいなくなり、ギデンスが池の端まで探しに行くと、池の草むらの向こうに黒衣の女が立っていた。やがてギデンスは、屋敷で何かと不気味な人影を目撃するようになり、また、兄妹の行動にも割り切れぬものがあると気づかされる。そのためギデンスは...『回転』を観て

  • 『映画はアリスから始まった』を観て

    『映画はアリスから始まった』(パメラ・B・グリーン監督、2018年)を観てきた。ハリウッドの映画製作システムの原型を作った世界初の女性映画監督アリス・ギイの生涯に迫るドキュメンタリー。世界初の劇映画「キャベツ畑の妖精」など監督・脚本家・プロデューサーとして1000以上もの作品を手がけ、クローズアップ、特殊効果、カラー映画、音の同期といった現在の標準的な映画製作技法を数多く生み出したアリス・ギイ。リュミエール兄弟やジョルジュ・メリエスと並ぶ映画黎明期のパイオニアでありながら、これまで映画史から忘れ去られてきた。ベン・キングズレー、ジュリー・デルピー、アニエス・バルダ、マーティン・スコセッシといった映画人や、生前のアリス自身へのインタビューや、彼女の親族へのインタビュー、未編集映像などを通し、その功績と人生を...『映画はアリスから始まった』を観て

  • 『天国にちがいない』を観て

    『天国にちがいない』(エリア・スレイマン監督、2019年)を観た。スレイマン監督は新作映画の企画を売り込むため、故郷であるイスラエルのナザレからパリ、ニューヨークへと旅に出る。パリではおしゃれな人々やルーブル美術館、ビクトール広場、ノートルダム聖堂などの美しい街並みに見ほれ、ニューヨークでは映画学校やアラブ・フォーラムに登壇者として招かれる。友人である俳優ガエル・ガルシア・ベルナルの紹介で映画会社のプロデューサーと知り合うが、新作映画の企画は断られてしまう。行く先々で故郷とは全く違う世界を目の当たりにするスレイマン監督・・・(映画.comより)まず登場人物の主役は、スレイマン監督本人であるということ。その本人である人物が、ナザレの自宅、パリ、ニューヨークの町並みの中で、景色を見、そこの人々を見、多少の関わ...『天国にちがいない』を観て

  • アキ・カウリスマキ・4~『真夜中の虹』

    『真夜中の虹』(アキ・カウリスマキ監督、1988年)を観た。フィンランドの北の地の鉱山で働いてきたカスリネンと父だったが、閉山となり仕事がなくなってしまった。父はカスリネンにキャデラックを譲り自殺してしまう。カスリネンは有り金を全部下ろし、仕事を求めて南の地に向かってキャデラックを走らせる。途中、ハンバーガーを買うための財布を見た地元の二人組がカスリネンを殴り、その有り金すべてを奪って逃げてしまう。仕方なくカスリネンは日雇い仕事を始め、その日の食べ物と教会宿泊所に寝る場所を求める。そんなある日、駐車違反を取り締まり中の女性イルメリと出会う。二人は食事に行き、その日はイルメリの家に泊まる。イルメリは夫と離婚して息子リキと暮らしていて、家のローン返済のためにいくつもの仕事を掛け持ちしていた。カスリネンは仕事を...アキ・カウリスマキ・4~『真夜中の虹』

  • 『恋人たちの場所』を観て

    『恋人たちの場所』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1968年)を観た。アメリカから、ある豪華な別荘に洒落た身なりの女性ジュリアがやって来る。そして彼女は、空港で会ったイタリア人のバレリオのことを思い返す。バレリオは主婦であるジュリアに一目で夢中になり、住所と電話番号のメモを渡していた。別荘の部屋でテレビを付けたジュリアは、オートレース・エンジニアの彼が出ているのを見て、教えて貰った番号に電話する。ジュリアは、別荘にやって来たバレリオを相手に、理由も告げずに2日間だけの恋愛を許す。そして二人は親密になり、いつしか逢瀬を重ねて行き・・・男性がマルチェロ・マストロヤンニで、女性がフェイ・ダナウェイ。この二人がのっぴきならぬ思いで愛を交わす。ただ観客からすると、状況説明が不足していてどうもその愛がシックリ来ない。...『恋人たちの場所』を観て

  • アキ・カウリスマキ・3~『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』

    『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』(アキ・カウリスマキ監督、1987年)を観た。大企業の社長の座を自分のものにするため弟クラウスは、社長の飲み物に毒薬を垂らす。社長は亡くなり、その妻と愛人関係のクラウスは重役のポロニウスと結託する。ポロニウスは、会社株の51%を所有することになった社長の息子ハムレットを骨抜きにしようと娘オフェリアを近づかせる。案の定、ハムレットはオフェリアに夢中になり、だがオフェリアは“結婚するまでは”と身体を触らせない。ハムレットの母と再婚したクラウスは社長となり、この会社を利用して多額の保険金を搾取しようと企む。一方、ノホホンとした感じのハムレットは、会社のことはよくわからない振りをして、実はこの計画を盗聴していた。そんなある夜、ハムレットの前に父の亡霊が現われ、毒殺されたから自分の仇...アキ・カウリスマキ・3~『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』

  • 『君を想い、バスに乗る』を観て

    『君を想い、バスに乗る』(ギリーズ・マッキノン監督、2021年)を観て来た。最愛の妻を亡くしたばかりのトム・ハーパーはローカルバスのフリーパスを利用してイギリス縦断の壮大な旅に出ることを決意する。行く先々で様々な人と出会い、トラブルに巻き込まれながらも、妻と交わしたある“約束”を胸に時間・年齢・運命に抗い旅を続けるトム・・・(オフィシャルサイトより)オフィシャルサイトほか映画紹介サイトでは、なぜトムが決心しこのような旅をするのか、その目的を先に知らしてしまっている。作品では、その最終目的をラスト近くまで明かしていないのに無神経なことをするなぁと思い、その部分はカット。妻を亡くした90歳のトム・ハーパーは50年暮らしたスコットランド最北端の村ジョン・オ・グローツから、イギリス最南端の岬ランズ・エンドを目指し...『君を想い、バスに乗る』を観て

  • 『ベイビー・ブローカー』を観て

    今日封切られた是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』(2022年)を観て来た。古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨンが〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジンと後輩のイ刑事は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追ってい...『ベイビー・ブローカー』を観て

  • アキ・カウリスマキ・2~『白い花びら』

    『白い花びら』(アキ・カウリスマキ監督、1998年)を観た。フィンランドの小さな村でキャベツを作る幸せな夫婦、ユハとマルヤ。ある日、村にシェメイッカと名乗る男が車で通りかかる。車が故障したという男は畑にいたユハに助けを求め、ユハは快く車の修理を引き受ける。しかしシェメイッカは隙を見てはマルヤを誘惑、マルヤも彼を強く意識するようになる。再びシェメイッカが2人を訪れ、マルヤはシェメイッカと駆け落ちするが、2人が結ばれたあとシェメイッカの態度は豹変し・・・(映画.comより)ユハとマルヤの夫婦は、田舎に住んでいてもキャベツを作り売っては、手を取り合って子供のように幸せに暮らしている。そんな中、偶然にも通りすがりの男、シェメイッカのオープンカーが故障してしまう。親切なユハは車の修理を請け負って、その日はシェメイッ...アキ・カウリスマキ・2~『白い花びら』

  • アキ・カウリスマキ・1~『コントラクト・キラー』

    『コントラクト・キラー』(アキ・カウリスマキ監督、1990年)を観た。ロンドンで暮らす孤独なフランス人アンリは、長年務めた職場をあっさり解雇されてしまう。絶望して自殺を図るもことごとく失敗した彼は、ギャングのアジトを訪れて自分自身の殺害を依頼する。死を待つアンリだったが、パブで花売りのマーガレットに出会って恋に落ち、生きる希望を取り戻す。しかし、殺し屋はすでに差し向けられていて・・・(Wikipediaより)人付き合いもしない内向的な孤独な男、アンリ。これをジャン=ピエール・レオが演じる。ジャン=ピエール・レオと言えば、フランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』(1959年)から始まって、ジャン=リュック・ゴダール監督の作品などで馴染みの俳優。その彼が無口ながら味わい深い演技をする。もっともア...アキ・カウリスマキ・1~『コントラクト・キラー』

  • ロベール・ブレッソン・9~『湖のランスロ』

    『湖のランスロ』(ロベール・ブレッソン監督、1974年)を観た。時は中世。城に帰還したものの、聖杯探しに失敗し多くの戦死者を出したアルテュス王の円卓の騎士たち。その中のひとり、ランスロは王妃グニエーヴルとの道ならぬ恋に苦悩していた。神に不倫をやめると誓うランスロだったが、グニエーヴルにその気はない。仲間のゴーヴァンはランスロを心配するものの、権力を手に入れようと企むモルドレッドは罪深きランスロを貶め、自分の仲間を増やそうと暗躍する。団結していたはずの騎士の間に亀裂が入り始め、思わぬ事態が引き起こされるのだった・・・(テアトルシネマグループより)アーサー(アルテュス)王伝説に由来する円卓の騎士ランスロと王妃グニエーヴルの不義の恋。この恋に終止符と打つと神に誓ったランスロだったが、グニエーヴルの方は絶対諦めない。そ...ロベール・ブレッソン・9~『湖のランスロ』

  • ロベール・ブレッソン・8~『たぶん悪魔が』

    『たぶん悪魔が』(ロベール・ブレッソン監督、1977年)を観てきた。裕福な家柄に生まれた美貌の青年シャルルは、自殺願望にとり憑かれている。政治集会や教会の討論会に参加しても、違和感を抱くだけで何も変わらない。環境破壊を危惧する生態学者の友人ミシェルや、シャルルに寄り添う2人の女性アルベルトとエドヴィージュと一緒に過ごしても、死への誘惑を断ち切ることはできない。やがて冤罪で警察に連行されたシャルルは、さらなる虚無にさいなまれていく・・・(映画.comより)DVDには成っているが、ブレッソンのこの作品と『湖のランスロ』が日本初公開ということでミニ・シアターに行ってきた。作品の舞台はパリ。銃弾を2発受けて死んだ青年の6ヶ月前に遡り、その後の日常や行動を追っていく。で、その感想はと言うと、97分の作品がとても長く感じら...ロベール・ブレッソン・8~『たぶん悪魔が』

  • 『エール!』を観て

    『エール!』(エリック・ラルティゴ監督、2014年)を観た。フランスの田舎町で酪農を営むベリエ家。16歳の高校生ポーラの家族は、両親のルドルフとジジ、そして弟が聾唖者である。家畜を育ててチーズの販売で生計を立てる家族にとっては、ポーラは健常者との通訳、仲立ちとして必要だった。ポーラは、気に入る男生徒ガブリエルがコーラス部を希望したため、自分もオーディションを受け入部する。ポーラの歌声に才能を感じる音楽教師トマソンは、ある日、パリにある音楽学校のオーディションを彼女に勧める。ポーラは家族のことも考え内緒で、3ヶ月後のオーディションに向け歌の練習をトマソンの自宅で始めた。その頃、近く行われる村長選に父ルドルフが立候補すると言いだして家族は大忙しとなる。そんな中、ポーラは両親に歌のことを打ち明ける。ポーラの歌声を聴く...『エール!』を観て

  • 『希望のかなた』を観て

    『希望のかなた』(アキ・カウリスマキ監督、2017年)を観た。フィンランドの首都ヘルシンキ。トルコからやってきた貨物船に身を隠していたカーリドは、この街に降り立ち難民申請をする。彼はシリアの故郷アレッポで家族を失い、たったひとり生き残った妹ミリアムと生き別れになっていた。彼女を探し出してフィンランドに呼び、慎ましいながら幸福な暮らしを送らせることがカーリドの願いだった。一方、この街に住むヴィクストロムは酒浸りの妻に嫌気がさして家出し、全てを売り払った金をギャンブルにつぎ込んで運良く大金を手にした。彼はその金で一軒のレストランを買い、新しい人生の糧としようとする。そのレストランの三人の従業員たちは無愛想でやる気のない連中だったが、ヴィクストロムにはそれなりにいい職場を築けるように思えた。その頃カーリドは、申請空し...『希望のかなた』を観て

  • 『恋愛専科』を観て

    『恋愛専科』(デルマー・デイヴィス監督、1962年)を観た。名門女子大で「恋愛専科」という本を生徒に貸したが問題となり、自ら職を辞して、愛を知るためにローマにやってきた女教師のプルーデンス。船で知り合った金持ちの紳士ロベルトに紹介された下宿先で建築を学んでいるアメリカ人留学生ドンと出会い、恋に落ちる。プルーデンスはドンと一緒に夏のバカンスを楽しむが、二人の前にドンのかつての恋人で画家のリーダが現れ、プルーデンスにかつての関係を見せつける。ドンの心に未練があることを知ったプルーデンスはローマを離れ、帰国することを決意する・・・(ハピネットの内容説明より)ローマの名所旧跡から始まってイタリア北部マジョーレ湖を巡る、まさしくトロイ・ドナヒューとスザンヌ・プレシェットによる観光映画。と言っても単なる観光ものという感じで...『恋愛専科』を観て

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