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  • 「なぜ隣人を殺したか ルワンダ虐殺と煽動ラジオ放送」を、現代の問題を語るために用いるのは問題が多いのでは。

    www.saiusaruzzz.com ↑の本を読み終わったタイミングで、ちょうどNHKで1998年に制作されたルワンダの虐殺についての番組を放送していたので、合わせて見てみた。 「なぜ隣人を殺したか」は、94年4月のジェノサイドの時に、幼い甥と姪を殺してしまった少年フランソワに焦点を当てている。 フランソワの父親はフツ族、母親はツチ族であり、兄はフツ族の女性と結婚し、姉はツチ族の裕福な家庭に嫁いだ。 94年の4月に裕福なツチ族だった姉一家は真っ先に殺されたため、フランソワの一家が幼い甥と姪をかくまっていた。 しかし兄が村の仲間に密告したため、村の人間たちが家にやって来る。 「甥と姪を殺さなけ…

  • ルワンダのジェノサイドはなぜ起こったのか。「ジェノサイドの丘 ルワンダ虐殺の隠された真実」を読んで考えたこと

    日本語で出版されている中では一番ルワンダで起こったジェノサイドについて詳細に描かれている「ジェノサイドの丘」を読み終わった。 ジェノサイドの丘〈新装版〉―ルワンダ虐殺の隠された真実 作者:フィリップ・ゴーレイヴィッチ WAVE出版 Amazon この本を読むまでは、元々潜在的に対立していた二つの民族のうち多数派であるフツ族がラジオの扇動によって暴発して、集団意識の中で虐殺に走った。 それくらいの理解だったが、この本を読んで認識を改めた。 そういう単純な構図でこの問題を「理解した」と思ってしまうのは、かなり不正確なんだなと感じた。 この本には現在のルワンダの大統領であるポール・カガメを始め、ジェ…

  • 【エルデンリングストーリー考察】三つの世界の可能性=源流から、ストーリーの全体像を考える。

    ストーリーの大まかな全体像について考えたことのまとめ。 「エルデンリング」のストーリーの前提 「律」が壊れているので、時系列や因果律が乱れている。 現在と過去と未来が同時に事象化しており、一人の人物(の可能性)が必ずひとつの実体に集約されているとは限らない。一人の人物の別の可能性が別人物として、同じ世界で具現化している(多くの場合、本人たちは血縁であると語る) さらにレイヤーを上げて見れば「事象を擬人化、物語化して語っている」 例えば「エルデの獣」=律であり、律に反する動きがマリカ、その律を強固にする動きがラダゴンである。律はその揺らぎを繰り返すことで、揺れ動きも含めた完全な世界=エルデンリン…

  • 【ドラマ感想】宮藤勘九郎脚本「俺の家の話」 物語の深層に眠る自己犠牲のストーリーに涙が止まらない。

    *本記事はネタバレ感想です。未視聴のかたはご注意ください。 第一話 濃すぎる家族の全力介護が始まる! Amazon 遅らばせながら宮藤官九郎脚本「俺の家の話」全10話を見た。 「俺の家の話」は、介護をされる父親と介護をする息子の親子愛、そして家に住む兄弟たちの家族愛の話である。 ジャンル自体はありふれているし、自分は親子愛、家族愛の話は余り興味がない。 にも関わらず「俺の家の話」は毎回毎回必ず泣いた。最終回に至っては、これを書いている今も、思い出すと泣けてくるくらいだ。 一体なぜ、この話はこんなにも泣けるのか。 他の話に比べて、とりたてて感動を誘うような措置が過剰であるとも思えない(むしろ控え…

  • 創作好きに色々な意味でぶっ刺さる。古屋兎丸「アマネ♰ギムナジウム(前半)」の紹介と感想

    アマネ†ギムナジウム(1) (モーニングコミックス) 作者:古屋兎丸 講談社 Amazon 後半は不満があるのだが真相が解明されるまでの前半部分が凄くよかったので、紹介したい。 創作好きなら、笑いと共感と苦笑いと変な声がいっぺんに出ること請け合いである。 主人公の宮方天音はドール作りが趣味の27歳の派遣社員。いつかドール作りを本職にすることを夢見ている。 ある日天音は、ドール作りの師匠である西園寺徳一から上質な粘土をわけてもらう。 天音は中学生のころ「トーマの心臓」に影響を受け「アマネギムナジウム」という話を作っていた。 そこに登場する七人の少年たちのドールを作ると、少年たちは完成と同時に動き…

  • 「独裁体制から民主主義へ ー権力に対抗するための教科書ー」が面白かった。

    「100分de名著」で取り上げられて話題になったジーン・シャープ「独裁体制から民主主義へ ー権力に対抗するための教科書ー」を読んだ。 独裁体制から民主主義へ―権力に対抗するための教科書 (ちくま学芸文庫) 作者:ジーン シャープ,Sharp,Gene 筑摩書房 Amazon 本書で上げられている独裁体制と戦う考え方の中で、自分は以下の三つが面白いと思った。 ①体制側に軍事力を行使させない。→軍や警察、官僚も体制に完全に従順ではなく、非協力的になるような状態になるように働きかける。 ②民衆が日常生活を送りながらでも抵抗運動に参加できる状態を作ることで、運動に広がりを持たせる。→日常生活が送れなく…

  • アフリカ系女性で初めてノーベル文学賞を受賞したト二・モリスンが描く、差別の構造と傷痕について「ビラヴド」

    ビラヴド (ハヤカワepi文庫) 作者:トニ モリスン 早川書房 Amazon アフリカ系女性で初めてノーベル文学賞を受賞したト二・モリスンが、実際の事件を基に奴隷制度の傷痕について描いた話。 奴隷としての過去を持ち、現在は自由の身になったセサは、娘のデンヴァーと二人で暮らしている。 母娘は平穏に暮らしていたが、家で起こる怪奇現象に悩まされていた。 そこにかつて、セサが奴隷として過ごしていたスイートホームで同じ奴隷の立場だった、ポールDがやって来る。 ポールDは屋敷から幽霊を追い払い、セサと愛し合うようになったが……。 序盤、セサの過去やなぜ幽霊に悩まされるようになったのか、なぜ幽霊に悩まされ…

  • NHK大河ドラマ「光る君へ」第六話まで見た忌憚のない感想・その恋愛描写は必要なのか。

    *前回。 www.saiusaruzzz.com これまで「自分は宮廷の権力闘争に興味はないし、藤原家の行く末もなるようになればいい」と距離を取っていた道長がいよいよ後に最高権力者になる片りんを見せ始めた。 痣だらけの顔の道兼と対峙した時、今まで通り気圧されるのかと思いきや「兄上には汚れ役になってもらわねば」と言った時には「おお、いよいよか」と気持ちが盛り上がった。 結婚や妊娠、恋愛、女子サロンの歌会、舞や漢詩の催しというめでたいもの、優雅なもののすべてが権力の構図に結びついている。 吐く言葉ひとつ、指先の動きひとつがすべてが政治的な文脈を帯び、解釈される。 「誰が誰を好きになるのか」 「どれ…

  • NHK大河ドラマ「光る君へ」第一話・第二話を見た忌憚のない感想

    楽しみにしていた今期の大河ドラマ「光る君へ」の第一話、第二話を見たのでその感想。 「面白かった。先が楽しみ」 「豪華で実力派の俳優陣の演技を見ているだけで楽しい」 全体的にはこういう感想だが、強いて言えば「個人のストーリー」と「(宮廷政治などの)社会構造的なストーリー」のつながりが気になった。 まだまひろが宮廷に関わっていないせいもあると思うが、接続のしかたが強引に感じた。 具体的には一話、二話でこのふたつの要素の接点になっている道兼の人物像だ。 一話の時点だと、兄との比較で苛立っていると分かるにせよ、それにしても理不尽なまでに粗暴すぎる。 弟にあそこまで理不尽に当たったりまひろの母親を衝動的…

  • 雨穴「変な家2」を謎解き推理して答え合わせしてみた&ネタバレ感想

    変な家2 ~11の間取り図~ 作者:雨穴 飛鳥新社 Amazon 一見無関係に見える11の間取り図とそこにまつわる謎から、背後に隠れている不気味なストーリーが浮かび上がる「変な家2」を読み終わった。 ひとつひとつの間取りにまつわる話は、単体だけでも面白い。 特に序盤の「①行先のない廊下」「②闇をはぐくむ家」「③林の中の水車小屋」「④ネズミ捕りの家」「⑤そこにあった事故物件」は、それぞれまったくの別の不気味さ、怖さ、謎があるため、読み進むごとに怖さが増幅していく。 「②闇をはぐくむ家」に出てきた、「どの家に住むかでどういう生活をするかが定まり、そのことによってある程度人格が形成されていく」「家の…

  • 【ゲーム感想】「ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島」の良かったところと気になったところを語りたい。

    「ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島」をクリアした。 ストーリーをクリアして、自由にビルド出来るこれからが本番という感じだが、せっかくなのでストーリーモードの感想を一通り述べたい。(ネタバレ注意) 〔新価格版〕ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島 - Switch スクウェア・エニックス Amazon モノづくりが大好きなビルダー(主人公)と破壊神シドーの友情ストーリーが胸熱すぎる。 ドラクエ自体が低年齢層も意識しているためか、ビルダーズ2のストーリーはそれほど複雑ではない。 主人公とシドーは出会ってすぐに友達になり、戦って冒険をしてモノづくりをして一…

  • 「自分と異質で相容れない考えは、自分にとってこそ必要である」と立花隆の言葉を読んで改めて思った。

    立花隆の「日本共産党の研究(一)」を読んでいる。 日本共産党の研究(一) (講談社文庫) 作者:立花隆 講談社 Amazon その中に書かれたこの文章が良かった。 私の基本的な社会観はエコロジカルな社会観である。多様な人間存在、多様な価値観、多様な思想の共生とその多様な交流こそが、健全な社会の前提条件であると考えている。 したがって、あらゆるイデオロギーとイデオロギー信者に寛容である。 しかし、その存在に寛容であるということは、それに対して無批判であるということは意味しない。思想とか価値観とかの間には、批判的交流があればあるほど豊かになると思うからである。 (引用元:「日本共産党の研究(一)」…

  • 急にマッピングがしたくなって、ゲームブック「パンタクル2」をやり始めた。

    www.saiusaruzzz.com 相変わらずゲームブック「ドルアーガの塔三部作」実況を見ている。 見ているうちに久しぶりに手書きマッピングをしたくなった。 ©しのゲーム 見るだけでときめく。 自分が知っている限りだと、ブロック(スクエア)数が表記されていて正確にマッピングできるゲームブックは「ドルアーガ三部作」と「ブラックオニキス」くらいだ。 ……と思っていたけれど「パンタクル2」もマッピングできると説明文に書いてある。 おなじみとなった、正確にマッピングできる地下迷宮に個性あふれる登場キャラクターたち。 そういえばプレイしたことなかったな、と思い、kindle版を購入。 本当は紙の本で…

  • 「賭博黙示録カイジ」再読。福本漫画の世界は、命を賭けて鉄骨歩きをしなければ「世間に入っていけない」

    *本記事には「賭博黙示録カイジ」のネタバレが含まれます。 『賭博堕天録カイジ 24億脱出編』 【無料公開中】 ヤンマガWeb 「カイジ」の「24憶脱出編」の冒頭数話が無料公開されていたので、読んでみたら面白かった。 (引用元:「賭博堕天録カイジ 24憶脱出編」福本伸行 講談社) *サムネの並びが「カイジだなあ」と思う。遠藤、ずっと電話をかけているなw 思い出したら、急に「黙示録」から読みたくなった。 「堕天録」までは実家にあるけれど、せっかくなのでkindle版を購入。 賭博黙示録 カイジ 1 作者:福本 伸行 フクモトプロ/highstone, Inc. Amazon 福本漫画の土台には…

  • 「ソ連や中国は(国家)資本主義であり、マルクスが想定したコミュニズム社会ではない」ということがわかりやすい「ゼロからの『資本論』」

    「資本論」入門書二冊目「ゼロからの『資本論』」を読んだ。 ゼロからの『資本論』 (NHK出版新書) 作者:斎藤 幸平 NHK出版 Amazon 池上彰の本が「わかりやすく伝えること」を第一にしているのに対して、「ゼロからの『資本論』」は著者の視点や主張がかなり強く出ている。 著者の視点が強く出ているぶん、読み物としては本書のほうが面白かった。 自分のように「『資本論』を読んでも『日本語でオケ』という感想しかない」人間は、両方読んで良かったなと思う。 www.saiusaruzzz.com 前半は「資本論」の内容についてなので、おさらいがてら読んだ。 「資本主義は商品(労働価値)と給与の差である…

  • ある作品を読むことで他の作品の理解が深まると、テンションが上がる。その2(「火山島」×「カラマーゾフの兄弟」)

    note.com ↑の話の続き&補足。 いま読んでいる「火山島」の7巻に、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」のオマージュシーンが出てきた。 反政府組織の裏切者である柳達鉱(ユ・タルヒョン)を、主人公の李芳根(イ・バングン)が糾弾する。 このシーンは読んでいて疑問が多い。副読本でもインタビュアーと作者のあいだで議論になっている。 でもほんとうにゲリラの人たちの名簿を警察に渡したかどうがというのは、李芳根もわからないわけじゃないですか。(略)実際に渡した場面は描かれていないわけですし。柳達鉱は尋問に対してゲロするわけでもないですし。そういったなかで殺されてしまうというのは、何か濡れ衣を着せら…

  • これ一冊で「資本論」の内容がざっくりわかる。池上彰「高校生からわかる『資本論』」はさすがのわかりやすさだった。

    池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」 (集英社文庫) 作者:池上 彰 集英社 Amazon 「資本論」の入門書を読み比べてみよう企画第一弾として、池上彰の「高校生からわかる『資本論』」を読んだ。 本書でも言われている通り、「資本論」はマルクス特有の造語(?)と持って回った言い回しによって敷居が高く感じるが、言っていること自体は今の時代でも(だからこそ)「そうだな」「なるほど」と思うことが多い。 「資本論」が最初に発表されてから150年後の現代は、まさにマルクスが「資本主義社会が進むとこうなるのでは」と書いた通りになっている。 やはり凄い人だったのだなと思う。 「資本論」は資本主義社会…

  • 「ゲームブック・ドルアーガの塔1巻『悪魔に魅せられし者』」の実況が面白い&ゲームブックの思い出話をしたい。

    ゲームブック「ドルアーガの塔一巻『悪魔に魅せられし者』」の実況動画を見ている。 #1 ドルアーガの塔で遊びます!【ゲームブック実況】 - YouTube ただ文章を読み上げるだけだったらどうなのか? と疑心暗鬼で見てみたが、 「ドラゴンクエストビルダーズ2」を使ってマップを立体迷路で再現して、横には平面図とステータスを出している。 普通に3Dダンジョンのゲームになっている。 *体長2メートルあるダブルヘッドのイラストが個人的にツボだった。 実況主のしのさんが、真剣に楽しんでプレイしているので(戦闘もちゃんとサイコロを振ってやっている)展開を知っていても見ていて楽しい。 「嘘をついている人間がい…

  • 哲学は「みんなが納得できる共通の原理」を、みんなで探すジャンルだったのか。

    竹田教授の哲学講義21講―21世紀を読み解く 作者:竹田 青嗣 みやび出版 Amazon ↑をもう一度読み直して、学んだこと考えたことのまとめ。 この本を三回通読して、自分が勘違いしていた*1と気付いた。 この記事では、自分が「哲学とはそういうものだったのか」とわかったことを書きたい。 一番「なるほど」と思ったのは、哲学は宗教などとは違い、特定の属性や共同体を超えて「万人が普遍的に『確かにそうだ』と思う原理を、誰が一番うまく当てるかを競うゲーム」だと言うことだ。 皆が時代を超えてひとつのことを競っているプラスうまく当てるために、前の時代や同時代の人間の考えを前提にするなり一部借用するなり批判す…

  • 「学問の自由、言論の自由とは何なのか。公共の福祉と対立した時、どう考えるべきか」についての学び。

    経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書) 作者:猪木 武徳 中央公論新社 Amazon メインは経済の話だが、それ以外もなぜそんな社会制度があるのか、どんなリスクに対応しているか、ということが書かれていて面白かった。 副タイトルである「文明社会の制度的枠組み」のほうが内容を表している。 中でも第七章に出てきた「学問、言論の自由はなぜ保障されているか」という話が面白かったので、メモがてら紹介したい。 物事を知る、あるいは自由に発言するということには、「私的」な精神的欲求と、「社会的」効果というふたつの側面が存在する。(略) 私的なレベルでの知る自由・発言する自由は、公共の福…

  • 「葬送のフリーレン」を「つまらない」と感じるのは何故か。

    *既刊のネタバレが含まれます。 葬送のフリーレン(11) (少年サンデーコミックス) 作者:山田鐘人,アベツカサ 小学館 Amazon 以前から気になっていたけれど、「葬送のフリーレン」を検索にかけると、「関連性の高い検索」で「つまらない」が出てくる。*1 実は「つまらない」と思う気持ちもわかる。 「葬送のフリーレン」はエンタメ作品とは思えないくらい、話の文脈が読み取りづらく不親切に出来ている。 客観視点でいながら、感情を高める演出もほぼないので、その描写の意図も読み取りづらい。バトル以外では登場人物の内面を長尺で説明することもないので、特定のキャラに感情移入して主観視点で話を楽しむのも難しい…

  • 【アニメ感想】「葬送のフリーレン」4話まで。原作とは違う視点が入れることで、物語のテーマの美しさがより際立つ。

    ※既刊11巻までの若干のネタバレがあります。未読のかたはご注意ください。 別に魔法じゃなくたって… 種﨑敦美 Amazon 「葬送のフリーレン」のアニメがついに始まった。 第一話を見て(おこがましくて申し訳ないが)「アニメになるならこういう要素を取り入れて欲しい」と思っていた風になっていて嬉しかった。 原作の第一話を読んだ時は読者にも、フリーレンとヒンメルの認識にどれほど落差があるかはわからない。 読者もフリーレンと一緒に思い出を追体験する。その思い出がヒンメルにとってどれほど貴かったかを知ることで、フリーレン(自分)にとってその思い出がどれほど得難いものかを知っていく。 だから原作の第一話は…

  • 「降り積もれ孤独な死よ」6巻までの時系列と謎のまとめ&感想

    「降り積もれ孤独な死よ」の6巻が発売された。 話も佳境に入っているようなので、頭の整理がてらストーリーの時系列と残っている謎をまとめてみた。 *ストーリーの時系列は単行本の末尾に掲載されているけれど、自分がわかりやすいように書き直してみた。 ◆ストーリーの時系列 1975年 青葉市でヒカリと灰川(佐藤)十三が出会う。 四葉不詳事件。 1976年 犬山秀二が蔵土で三十三名を殺害する。(蔵土事件) 1978年 冴木仁誕生。 1886年 灰川が邸宅を購入。 赤子の鈴木潤が養護施設の前で発見される。 1991年 ノッポが灰川に拾われる。(初めての子供) 1993年 マヤが灰川に拾われる。 1994年 …

  • 【VIVANT(ヴィヴァン)キャラ語り】ノコルというキャラの魅力に気付くまで。

    普段はほとんどドラマを見ない相方が観ていたため、結局何だかんだ一緒に最後まで観た。視聴率も良く、終わったあとの感想も盛り上がっている模様。 b.hatena.ne.jp このドラマで自分の心に一番残ったのは、主人公・憂助の義弟であるノコルである。 この記事では、自分の中でノコルの存在がどう変化していったかを話したい。 最初にノコルを見た時、「ベキやテントに、何か疑問や屈託を持って従っているのでは」と思った。 常に眉間に皺を寄せている。仲間が裏切っても動揺を見せず、淡々となすべきことをこなす。 表情は常に冷たいか不機嫌そうに見える。 仲間といる時もそうで、周りの人間とも距離感があり心を開いている…

  • 「社会科学は、なぜ社会運動と結びつきやすいのか」「社会科学と自然科学の違い」について、この説明に「なるほど」と思った。

    経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書) 作者:猪木 武徳 中央公論新社 Amazon この本に書かれている「社会科学と自然科学の違い」の説明と、それを前提にした「社会科学はなぜ、社会運動に結びつきやすいのか」についての下記の説明に凄く納得した。 (認識の二重構造) (略) 自然科学と社会科学の最大の相違点は、認識の主体と認識の対象との間の関係にある。 社会科学(もちろん経済学もそのひとつであるが)で取り扱う対象、すなわち「社会活動を営む人間」は、それ自身、現実を認識する主体でもある。 ところが、その主体を、さらに社会科学者が認識するという「二重構造」を社会科学研究は背負…

  • 【「エルデンリング」キャラ考察】「指痕爛れのヴァイク」は、なぜ狂い火を宿したのか&「狂い火」とは何かを考えた。

    二周目は神秘ビルドなので、「モーゴットの呪剣」をメインに使いつつ、ヴァイクの戦槍も使っている。 「狂い火突き」は強いのだが(しかし凄い名前だ)、いかんせん槍の扱いになれていないのでまったく使いこなせない。ヘリケーも同じ理由で使うのを断念したけれど。 ヴァイクは「エルデの王」に最も近いと言われながら、なぜ突然狂い火の下へ行き、焼け爛れたのか。 少ないテキストを元にして考えてみた。 まず「狂い火」とは何か。 シャブリリは、狂い火の病の起源とされ歴史上、最も憎悪された男である。 (シャブリリの叫び) シャブリリという名のその男は讒言の罰として、人々に瞳を潰され、やがてそこに狂い火の病を宿したという。…

  • 【エルデンリング考察】NPC協力サイン(金サイン)はなぜそこにあるのか、を考えてみた。

    レアルカリアの赤狼戦で、セレンの協力サインが出る条件がフロムすぎる automaton-media.com レアルカリアの「ラダゴンの赤狼」戦で、条件を満たせばセレンの協力サインが出る。 そう900時間プレイして判明したことが話題になっていた。 その条件が「レナラを倒せば、セレンが魔術師塊になる時点までイベントを進めること」らしいが、普通に考えれば……というより、どう考えてもその順番で攻略する人がいるとは思えない。 そんなややこしいことをしなくともセレンのイベントは最後まで見られる。 わざわざそんなことをして得られることが「赤狼戦でセレンに協力してもらえることだけ」。 ゲーム的に考えれば何十万…

  • 【映画感想】森達也監督「A/A2」 社会が自分から見て整然として理解できるように見えるときこそ、おかしいと思わなければいけないのかもしれない。

    地下鉄サリン事件、麻原彰晃逮捕後も教団に残った信徒の姿と各地で起こった住民による反対運動や住民と信徒の交流を追ったドキュメンタリー。 A Amazon 「A」は教団の広報副部長をしていた荒木浩*1を定点として追った作品だが、文字通り「映しているだけ」で何も劇的なことは起こらないし、荒木がオウムや麻原について突っ込んだ話をするわけでもない。 教団の生活と反対住民などへの対応が淡々と流れる。 なぜ高学歴の人ほどオウムに惹かれたのか よく指摘されるように、オウム真理教の幹部は高学歴者が多い。 「A」で定点となった荒木浩も京都大学の大学院に行っている。 宗教や神秘的なもの、精神的なものに惹かれるにして…

  • 【「エルデンリング」ストーリーを再考その2】メリナの正体について。

    www.saiusaruzzz.com ↑の記事の続き。 「エルデンリング」の世界は律が壊れているために、同一人物の別の可能性が同時に具現化している。 例えばモーゴットとモーグは「双子」となっているが、そうであれば「マルギットの拘束具」でモーグも拘束できるのはおかしい。 忌み子と呼ばれた呪われた者たち。 そのただ一人を、特に厳重に拘束するもの。 「双子だから『ほぼ同一人物』という扱いなのでは?」という考え方も出来る……というより、きちんと律に則って世界が構築されているのであればそうとしか考えようがない。 だが「エルデンリング」の世界では「同一人物の別の可能性が同時に具現化することもありうる」の…

  • 「エルデンリング」のストーリーを再考。シーフラ河・エインセル河とは何なのか、など。

    急に「エルデンリング」がプレイしたくなって、また一からやっている。 今回は神秘ビルド・マレー家の跡継ぎ(偽)蟻棘レイピア使い、ソロ縛りでプレイ中。エレメールが倒せなくて、我が家(嘘)を取り返せない。 一周目をプレイし終えた段階でストーリーについてはこうだろうと考えたのだけれど、二周目をプレイしていてまた思いついたことがあるので頭を整理しながらまとめたい。 メインストーリーである「黄金律」の破壊と再生について 「エルデンリング」のメインストーリー(マリカ関連)は、破壊と再生を繰り返すことで黄金律をより完全にするという二本指の意思に沿う物語だ。 www.saiusaruzzz.com 上記に書いた…

  • 三輪山、橿原神宮に行ってきた&「近畿地方のある場所について」が届くのが待ち遠しい。

    先日、仕事の関係で大阪に行くことになった。 その帰りに大神神社と橿原神宮に立ち寄った。 oomiwa.or.jp 大神神社の御神体である三輪山も登ってきた。上り下りで二時間半くらい。 木陰が多くて余り陽射しが入ってこないせいか、他の山にはない良く言えば神秘的悪く言えば不気味な雰囲気を感じた。 登る前は暑さで「大丈夫か?」と思うくらいへばっていたのに、登ったあと、凄く体がすっきりした感覚があった。 それが凄く良かったので、また近いうちに行きたい。 三輪駅周辺の電車に乗って、窓の外の風景を眺めたり街中を見たりしていると、「近畿地方のある場所について」の怖さや不可思議さの背景にあるものがわかるような…

  • 「火山島」1巻の感想。兄妹のイチャイチャが長い、男尊女卑思想がエグい、確かにドストエフスキーに似ている、など。

    火山島 1 作者:金 石範 文藝春秋 Amazon 二段組のページ構成で390ページなので、読むのが大変そうだなと思っていたが、意外や意外。長いとも思わずスルスル読めてしまった。 以下読んでいて面白いと思ったポイントと気になったポイント。 1巻の後半は主人公・芳根(バングン)と妹・有媛(ユウオン)のイチャラブがメイン 一番驚いたのはこれ。 一巻は前半は南承之(ナム・スンジ)という若者が主人公で、後半からもう一人の主人公・李芳根(イ・バングン)にスポットが当たる。 後半は、ほぼ芳根が妹の有媛とイチャついているだけだ。*1 読んでいると芳根は妹が好きなようにしか読めないが、あくまで「済州島四・三事…

  • 【映画感想】「リボルバー・リリー」の良かった点と不満だった点

    *ネタバレ注意。 綾瀬はるか主演、行定勲監督の「リボルバー・リリー」を観てきた。 映画『リボルバーリリー』公式サイト 良かった点 ①とにかく強くカッコよく美しい綾瀬はるかを撮りたいという目的が首尾一貫していた。 ②格闘シーンは見ごたえがあった。 ③出演者が豪華。 ④ストーリーがスピーディで退屈せずに見られた。 この映画の一番良かったところは、「戦う綾瀬はるかをいかに美しく撮るか」のためだけにすべてが存在しているところだ。 俳優陣もスタッフもその目的のためだけに一致団結している。 綾瀬はるかが演じる百合はそのことに十分納得できるくらい強く美しかった。 泥まみれになっても血まみれになっても、転げ回…

  • 「火山島」の第一章を読んで、歴史と創作の関係について思ったこと。

    www.saiusaruzzz.com 「火山島」の第一章を読み終わった。 第一章を読み終わった時点でも「知識としてはうっすら知っているけれど、詳しくは知らなかった」と思うことが多い。 創作は歴史そのものではなくあくまで創作として読まないと危ういけれど、その反面「その事実の中で実際、社会がどんな感じで、一人一人の人がどう生きていたか」という実感は得られやすい。 第一章は、日本に母親と妹を残して故郷の済州島に戻って来た南承之(ナム・スンジ)の視点で話が進む。 南承之は比較的貧しい境遇の出で、当時の一般的な韓国の人(特に若い人)の物の見方を踏まえているのだと思う。 「日本の支配が終わったら自由にな…

  • 朝鮮戦争の経緯を読んで、何かに似ていると思う&休戦七十年なので、積読していた「火山島」を読み始めた。

    読売新聞の「朝鮮戦争休戦七十年の特集」の番外編として、四人の識者が今後の朝鮮半島について見解を寄せている。 「現在の北朝鮮の体制は、そろそろ崩壊するのではないか」 「韓国の尹政権は北朝鮮との対話の窓口を閉ざしている。それは危うい」 など色々な意見が載っている。 その中で、北朝鮮の元外交官で現在は脱北して韓国の国会議員になっている太永浩氏が語る、「朝鮮戦争の経緯」が目を引いた。 韓国では、開戦当初は北朝鮮が優勢で、韓国はなすすべもなく釜山近くまで退却したと捉えられているが、金日成にしてみれば誤算続きだった。 金日成と後ろ盾だったソ連のスターリンは一週間以内に戦争を終わらせる予定だった。 奇襲攻撃…

  • 【「藪の中」愛好会】芥川龍之介「藪の中」のような話を集めてみた。

    「藪の中」は慣用句として用いられるくらい有名だが、「関係者の話が食い違っていて、真相がよくわからない話」のことだ。 芥川龍之介 藪の中 藪の中・将軍 アニメカバー版 「文豪ストレイドッグス」×角川文庫コラボアニメカバー 作者:芥川 龍之介 KADOKAWA Amazon こういう話をもっと読みたいが、調べかたが難しい。(「藪の中みたいな話」「藪の中に似た話」で調べても余り出てこない) 自分以外にも「藪の中愛好家」がいると思うので、自分が「これは良い『藪の中』」と思うものを載せておきたい。 「月明かりの道」ビアス 芥川龍之介は、この話に触発されて「藪の中」を書いたと聞いたので読んでみた。 雰囲気…

  • 【映画感想】「シン・仮面ライダー」 細かい粗は山のようにあっても、この話が好きだと思った理由。

    *ネタバレ感想です。未視聴のかたは注意。 シン・仮面ライダー 池松壮亮 Amazon 「シン・仮面ライダー」がアマプラ対象になっていたので早速視聴した。 見ているあいだ、「何かに似ているな」と思った。 思い出したのがこれだ。 CASSHERN 伊勢谷友介 Amazon 酷評されることが多いが、自分はかなり好きだった。 「シン・仮面ライダー」がいいなと思った部分と「CASSHERN」の良いと思った部分は似ている……というより同じだ。 酷評の中ではそこがマイナス部分である、とされている点が好きなのだと思う。 それが何なのだろう?と考えてみた。 自分がこの二作で一番好きな点は、監督の頭の中に作品の完…

  • 「エルデンリング」雑談。「モーゴットとモーグはお互いをどう思っていたのか」「ミケラとは何者なのか」など。

    急に「エルデンリング」がプレイしたくなったので、キャラを作り直して二周目をやっている。一周目は世界観についていくのが精一杯だったけれど、二周目はじっくり世界を味わえるので、初見とは違った楽しさがある。 エルデンリング カテゴリーの記事一覧 - うさるの厨二病な読書日記 世界観やキャラについてさんざん考えたけれど、思いついたことがあるので雑談したい。 「混沌(源流)から黄金の輪(律)を取り出す」過程を描いた物語 「エルデンリング」は、 黄金律は本来、トライ&エラーを繰り返し、永遠に連環し続けることが可能なシステム「完全律」を目指すものだ。 その中のエラー(ゲーム内で起こるイベント)の数々を視認す…

  • 【小説感想】「ノーカントリー・フォー・オールド・メン」はどんな話なのか。殺し屋シガーが何者なのかを考えながら語りたい。

    *ネタバレ感想です。未読のかたはご注意ください。 ノー・カントリー・フォー・オールド・メン (ハヤカワepi文庫) 作者:コーマック マッカーシー 早川書房 Amazon ">「ノー・カントリー・フォー・オールド・メン」(以下「ノーカントリー」)は映画化もされてマッカーシーの作品の中でも特に有名だ。 ">「ブラッド・メリディアン」とも「国境三部作」とも「チャイルド・オブ・ゴッド」とも「ザ・ロード」とも違う、(基本的には)犯罪エンタメ小説である。 ">物語の外枠である、麻薬カルテルの金を横取りした男が、その金を取り返そうとする殺し屋に追われるというストーリー部分が滅茶苦茶面白い。 ">展開がスピ…

  • 「世間では不評の作品だけど、私は大好きだ」という人の熱い語りが好き。

    「ソウルシリーズ」はナンバリングによって、世界観やシステムが大きく変わらない。 「無印」も「Ⅲ」もやっているし、評価が割れている「Ⅱ」を今さらやらなくてもいいかと思っていた。 それがこの動画を見たら、やってみたくなった。 ダークソウル2はプレイしなくて良いのか?→正直〇〇です、低評価の理由を多角的に分析解説 - YouTube 上記の動画は、不評だと言われている点について「それがなぜそう言われているのか」を述べ、妥当な部分は妥当と認めている。 例えば敏捷性がローリングの当たり判定やエストの回復速度に影響を与える点は、「『システムとキャラメイクがごっちゃになっていて、ステ振りの面白さを削っている…

  • 三人称一元視点において「視点が回ってこないキャラ」との恋愛展開は、叙述トリックのミステリーを読んでいるような面白さがある。

    変化草子〈1〉くぬぎの章 (大陸ネオファンタジー文庫) 作者:伊吹 巡 大陸書房 Amazon 子供のころ読んだ時はそこまで面白いと思わなかったが(なのでかなりうろ覚えだった。noteでタイトルを教えてもらった)大人になったいま久し振りに読んだら、滅茶苦茶面白かった。 時は清和天皇の時代。京の都では藤原良房が藤原家で初めて摂政の地位につき、これから藤原の世が始まろうとしていた。 仙術を操る偉大な妖狐・金剛と人間のあいだに生まれた半人半狐の少女くぬぎは、人間の母親を探すために山を下りて京にやってくる。 天皇の教育係を務める菅原道真と知り合い、追いかけてきた弟のちくまと共に居候になる。 そうして母…

  • 【読書感想】「チャイルド・オブ・ゴッド」 「ジョーカー」や「アンチマン」よりもラディカルな「社会から孤立し疎外される男の物語」

    チャイルド・オブ・ゴッド 作者:コーマック・マッカーシー,黒原 敏行 早川書房 Amazon 主人公のレスターの動向を終始追っている話なので、マッカーシーの小説にしては読みやすい。 マッカーシーの小説の特徴は ①叙景と叙事で成り立っていて叙情がほぼない ②引用符を使わず、読点がほぼない ③必要なことだけが端的に書かれているので、時系列が追いにくい 無味乾燥で取り付く島がないという印象なので、読みにくい、合わないという人もいると思う。 「ザ・ロード」はマッカーシーの小説の中では主人公親子のキャラが立っていてストーリーが追いやすい、情緒的な部分があり「優しい世界」なので読みやすいけれど、自分の中で…

  • 【ドラマ感想】「だが、情熱はある」 嫉妬や劣等やドス黒い感情を生む「たりてなさ」こそが自分だから、それでやっていくしかない。

    www.saiusaruzzz.com www.saiusaruzzz.com 「だが、情熱はある」が終わってしまった。 今回、若林が夜道で「自分の境遇が自分を取り巻く世界全体のせいのように思えて、何でもいいから怒りをぶつけたくて、もう少し長く目を合わせていたら、確実に殴りかかってきそうな男」と行き会うシーンがある。 男と出会った時、若林は男が発する凶悪なオーラにビビり、なるべく早くその場から離れようとする。 だがそのあと「自分はその男の気持ちが凄く分かる。君と僕は話が合うはずだ。だが、君はそう思ってくれないだろう」と述懐する。 このモノローグが心に沁みた。 若林は、その男と自分を分けているも…

  • 「暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史」 労働運動の裏面をのぞいて何とも言えない気持ちになる。

    暴君~新左翼・松崎明に支配されたJR秘史~ 作者:牧久 小学館 Amazon 「無力な労働者たちが結束して、自分たちを抑圧する権力(会社・経営者)と戦う」 内輪もめや内部分裂や裏切りや労使協調はあっても、労働運動は基本的にはこういうものだと思っていたが、見る目が変わった。 松崎明は労働組合を通して、JR東日本に強い影響力を持っていた。 なぜ、労働組合が会社に強い影響力を持つ「労使逆転現象」が起きたのか。 国鉄時代に松崎がいた「国鉄動力車労働組合(動労)」は、過激なストも辞さないために「鬼の動労」と呼ばれる組織だった。 JR東日本は国鉄時代に労働組合のストに悩まされていたので、「経営との徹底闘争…

  • 佐藤究のマッカーシーの作品の解説にいいねを百連打したい&「ブラッド・メリディアン」の感想続き。

    www.hayakawabooks.com 「それな!」という感想しかなく(失礼)いいねを百個くらい押したい。 特に文章に言及した箇所には共感しかない。 どのページを開いてもおわかりのように、コーマック・マッカーシーは会話にカギ括弧を使わず、地の文に読点をほとんど打たない。 だからといって、書き手の感情にまかせた饒舌に陥ることはなく、行為と事物が淡々と描かれる。 神なき時代の叙事詩的文体とも呼べる。 言うまでもないが、たんに文章からカギ括弧や読点を排除するだけでは、マッカーシーのような文体にはならない。 それは事実への冷徹な観察眼から生まれたもの(後略) (引用元「コーマック・マッカーシーが教…

  • コーマック・マッカーシーが亡くなったので、「ブラッド・メリディアン」をもう一回読む。やっぱすげえ。(小波感)

    www.hayakawabooks.com 朝イチでコーマック・マッカーシーの訃報を目にした。 もう89歳だったんだな。 一時期Twitterで流行っていた「名刺代わりの小説10選」を作るとしたら、必ず入るのがマッカーシーの「ブラッド・メリディアン」だ。 こんな小説を自分も書けたらなあ……なんて思っている話なのだ。(声が小さい) 凄惨な暴力だけが何の感慨もなく延々と続く無味乾燥な世界、「悪」という概念を超越した異常さと不気味さを持つ異形の判事。 歴史は、個という概念を抜き取られた人間を部品にして生成され、その建造物として世界は続いていくのだ、という冷徹な世界観。 私の記録簿に載ろうと載るまいと…

  • 【ドラマ感想】「だが、情熱はある」第九話 あの黒歴史が今の自分を支えている&このドラマが好きすぎて辛い。

    ドラマ「だが、情熱はある」オリジナル・サウンドトラック アーティスト:音楽:T字路s バップ Amazon 毎週毎週待ち遠しくて仕方がない「だが、情熱はある」の第九話を見た。 これは二人の物語。 何者かになりたくて、でも何者になればいいのかわからない。 でもここからもがき続ける。二人の本当の物語。 しかし、断っておくが友情物語ではなし、サクセスストーリーでもない。 そしてほとんどの人において、まったく参考にならない。 だが。 情熱はある。 このオープニングナレーションで、毎度毎度テンションが爆上がりする。 どう考えても、そこは泣くところじゃないだろというところで涙が止まらなくなる。 今回は、若…

  • 「ルポ 特殊詐欺」 なぜ、使い捨てられるとわかっているのに闇バイトに応募してしまうのか。

    www3.nhk.or.jp 大学に入学してわずか二か月で、闇バイトに応募して自動車事故でなくなった人の話を読んだ。 この息子さんは高校も成績優秀で、家族仲も父親と二人で外食するくらい良好、この事件を起こすまで問題行動もなかった。 闇バイトによって使い捨ての末端人員を集める犯罪の構造は、東京で起こった強盗殺人でだいぶ一般的に広まっている。 それなのに、特に金銭的に困っているわけでもない人が闇バイトに応募するのは何故なのか。 そのことに興味を持って、加害者側の実態を追った「ルポ 特殊詐欺」を読んでみた。 ルポ 特殊詐欺 (ちくま新書) 作者:田崎基 筑摩書房 Amazon 細かい事情は各々違うの…

  • 読むことが楽しみな面白い本が一冊あれば、けっこう幸せに暮らせる。

    いま読んでいる「暴君~新左翼・松崎明に支配されたJR秘史~」がめっちゃ面白い。 暴君~新左翼・松崎明に支配されたJR秘史~ 作者:牧久 小学館 Amazon この時代の労働闘争は、組織内の勢力争い、暗躍に権謀術策、社会に対する考え方や革命に対する路線の違いによる対立などがあって、下手なフィクションよりも読んでいてワクワクする。 暴力事件も絡んでいる実際の歴史を辿った評伝なので、「面白い」ということにためらいもあるけれどそれが正直な感想だ。 松崎明は黒田寛一の唱えた理論に心酔しつつ、それを自分が生きている国鉄(JR)の労働闘争の現場で実践的なものとして応用している。 「私の場合は、やはり労働運動…

  • 「語ることができないこと」に意味がある。「隠蔽するための物語」について。

    *「隠蔽するための物語」と思われる話についてのネタバレが含まれます。 www.saiusaruzzz.com 「一方通行の家」が自分にとって面白かった理由である「隠蔽するための物語」(造語)について話したい。 「隠蔽するための物語」とは何かは、以前↓のnoteに書いたことと重なる。 創作において「『作品が語ることができないこと』に注目する」という考え方。|うさる 「ある作品において重要なのは、それが言っていないことがらである。これはしばしば不用意にそう表示されているような『それが言うことを拒絶していることがら』とは同じものではない。(略) これよりもむしろ、作品が言うことをできなかったことがら…

  • 【漫画感想】「一方通行の家」は、「隠蔽するための物語」として抜群の出来だった。

    一方通行の家 - 屋嘉壱 少年ジャンプ+ 今朝、読んだ「一方通行の家」がめっちゃ面白かった。 *以下ネタバレ注意(未読の人は、上のリンクから先に本編を読むことをおすすめします。) 明確に「おかしい」とは言えないが、奇妙な違和感がある。 この漫画は一読すると違和感が満載だ。 「一方通行をしない人は、消えてしまう家」という表向きの怪奇、そこに特に抵抗なく住んでいる晶以外にも不可解な点がある。 自分が一番引っかかったのは、空き巣が空き巣に見えないところだ。 この物語はこういう違和感がある箇所が多い。 頭で考えれば「違和感があるけれど、決定的におかしい」とは言えない。だが直観的に「何かおかしい」「…

  • 「宗教は物語で、哲学は言語ゲーム」 竹田青嗣が語る「宗教と哲学の違い」がわかりやすくて面白かった。

    竹田教授の哲学講義21講―21世紀を読み解く 作者:竹田 青嗣 みやび出版 Amazon 個々の人物の思想の説明もわかりやすく面白かったけれど、それ以上に「哲学を読む時にどういう角度で読むべきか」「哲学とはそもそも何なのか」という話が面白かった。 その中で特に「宗教と哲学の違い」の説明が印象的だった。 ふつう哲学というと、なぜ世界は存在するのか、自分の存在の意味は何か、死んだらどうなるか、それから、なぜ人は生きて苦しむのか、というような、世界や自己の存在についての根本の問い(謎)を問うものだ、という俗説がある。 だけど、あんまり信用してはいけない。 そういう「存在の問い」は、むしろ哲学の先行者…

  • 「人間は流行り病だ。そばにいるものから毒していく」 名作と名高い「天使の詩Ⅰ・Ⅱ」をもう一度プレイしたい。

    突然、「天使の詩」のことを思い出して猛烈にプレイしたくなっている。 子供のころ、ⅠもⅡ(堕天使の選択)もプレイしたはずなんだけれど(ストーリーやムービーを見たことは覚えているし)ゲーム自体は頭から吹き飛んでいる。 Ⅰのエンディングは子供心に多大なショックを受けたので、そのせいで記憶がぶっ飛んだのかもしれない。 「天使の詩」の何がよかったか。 一番はケルト神話をモデルにした世界観だ。 ストーリーも音楽もすべてが美しかった。 余りにプレイしたい欲が高まって、他の人の感想を読み漁っている。 やはりみんな感じることは同じなのか「ゲーム自体は普通のRPGだけれど、音楽とストーリーが良かった。名作」という…

  • 「帝銀事件と松本清張 74年目の真実」の感想 「事実」は多勢の認識によって作られているものに過ぎないのかもしれない。

    年末に見逃した「帝銀事件と松本清張」が、たまたまテレビをつけたら放映していたので視聴。見たのは第二部のドキュメンタリー部分。 www.nhk.or.jp 結局「帝銀事件」の真相は未だに分かっていない。 731部隊の人間が、秘密兵器の実験を行っていた登戸研究所から青酸ニトリールを持ち出し、帝銀事件を引き起こした。 米ソの対立が激化していた当時の状況下では、GHQは731部隊の実験データが何としても欲しかった。生き残りの部隊員全ての戦争犯罪を不問に付す代わりに、データを渡すように取引を行っていた。 そのさなかに、部隊の生き残りが日本中を騒がせた凶悪事件を起こしたとなると取引が表沙汰になる可能性があ…

  • 【小説感想】村上春樹「沈黙」。ネットでは「顔というものを持たない人々」にならないようにしないといけない。

    突然、村上春樹の「沈黙」が読みたくなったので再読。 短編集「レキシントンの幽霊」に収録されている短編。 レキシントンの幽霊 (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon 村上春樹の作品にしては珍しく、起こる事象が現実的で具体的、抽象度が低いので読みやすい。「好きな作品」としてちらほら名前を見かける。 テーマはいじめだけれど、「生きる姿勢」を率直に語っている。 「ドライブ・マイ・カー」もそうだったが、この鋼鉄の精神はどこから来るのだろう。 長編の主人公たちが状況に流されがちなのとは対照的だ。 未読の人のために筋を簡単に説明すると、主人公の大沢は同級生の青木という男に事実無根の噂を流されて…

  • 【ドラマ感想】山里亮太と若林正恭の青春を描いた「だが、情熱はある」が、上質なルサンチマン文学すぎる。

    南海キャンディーズの山里亮太とオードリーの若林正恭の半生を描いた「だが、情熱はある」の第三話を見た。(一話と二話は見損ねた) 山里と若林はもちろん知っているけど、それ以上のことはほとんど知らないので、完全にドラマとして楽しんでいる。 創作として見ると、無茶苦茶上質なルサンチマン文学だ。 このドラマ、どのエピソードを見ても「ああ……」と思う。 特に若林と父親の会話が、「俺おまか」と思うくらい既視感があった。 どこの家もこんな風なのだろうか。 若林が言う「俺がおかしいのか、周りがおかしいのか」というのは、不遇感をこじらせる時期に浮かぶおなじみの思いだ。 どこまで「俺を認めない世界がおかしい」と思え…

  • 変化が速い時代だからこそ、スルメゲーをじっくりやりこんでしゃぶり尽くしたい。

    「九龍妖魔學園紀」を購入したまま忘れていた、とふと思い出した。 九龍妖魔學園紀 ORIGIN OF ADVENTURE -Switch アークシステムワークス Amazon 2004年に発売されたゲームだが、switchとPS4に移植されて評判も良い。 元々、アトラスの学園ジュヴナイルものが大好きだった。女神転生は「if」が一番好きだし、ペルソナも1が好きだった。 非日常的な危機と青春時代の日常や悩みが溶け合っているところがいい。 「九龍妖魔學園紀」は学園生活を送るADVパート、遺跡を巡る探索パートに分かれてる。 ADVパートで仲間と交流したり、アイテムを探したりして、探索パートをこなす。3D…

  • 対話型AI「チャットGPT」に小説のあらすじを考えてもらったら、思った以上に学びが深かった。

    shinonomen.hatenablog.com ↑の東雲さんの記事を読んで滅茶苦茶面白いと思い、自分も「Chat(チャット)GPT」に「400字で小説のあらすじを考えて」と頼んで三種類出してもらった。 タイトルのみ自分で考えた。 あらすじ① 世界にひとつだけの美術品 "> ある日、主人公の高橋真一は街で美術展を開催していた。 "> 彼は会場で美術作品を鑑賞していたが、ひとつの絵画に目が止まった。それは美しい花が描かれた絵だった。 "> 真一はその絵の現代美術としての価値を見いだし、一目惚れしてしまう。 "> しかし、真一が購入しようと思ったとき、その絵画はすでに売り切れていた。 "> 彼は…

  • 筒井康隆「虚人たち」を読みながら「去人たち」を読む。物語とはつくづく「現実的ではない」

    kyojintachi.k2cee.com 最初「去人たち」を読んだ時に、よく意味がわからなかった。確か「Ⅱ」の途中で読むのを止めたと思う。 筒井康隆「虚人たち」のオマージュだと聞いたので、「虚人たち」を読めばわかるのかなと思っていた。 最近そのことを思い出して「虚人たち」を読みながら「去人たち」を読み始めたんだけど(ややこしい)、嘘みたいに面白い。 「虚人たち」は「物語」は「意味」によって支配されていることを、登場人物がメタ視点で理解しているという実験的な試みをしている。 ・ある登場人物は、自分が物語の中で「ある事象を目撃すること」ということしか存在の意味を持たないことをわかっている。そのこ…

  • 【漫画感想】残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」 暗い世界に閉じ込められた少年たちが辿る残酷な運命。

    ライチ☆光クラブ 作者:古屋 兎丸 太田出版 Amazon ぼくらの☆ひかりクラブ 全2巻セット Amazon 既に映画化されていることも知らず表紙買い。 江戸川乱歩に代表される、退廃的で耽美で残酷描写があるインモラルな世界観だ。「グランギニョール」というジャンルがあるのを初めて知った。 残酷描写にそこまで興味がないし好きでもないのだが、これは凄い良かった。 常川、それはある共同体においてはそう規定される。 しかし僕の血は常川か? No。 僕の肉は常川か? No。 常川とは曖昧で実体がない。 この光クラブにおいて、我はゼラと規定される。 (引用元:「ライチ☆光クラブ」 古屋兎丸 太田出版/太字…

  • 「実際の物事や人物を元にしたフィクション」は、自分の中で「名作・傑作」であるほうが問題が根深い。

    「フィクション」と銘を打っている場合は、まずはフィクションとして読む。 問題があれば指摘すると思うが、自分は自分にとってつまらない作品はすぐに忘れるので「フィクションと、モデルとおぼしき実際の物事や人物との関係性の問題をどう考えるのか」というところまでいかない。 自分の中でこの件で一番悩むのは「創作として名作、傑作なので否定できない場合」だ。 2018年6月にこの件について考えた時に、自分の中ではこういう結論だった。 自分が「実話をモデルにしたり元にした創作品で、その存在を否定する」のは以下の条件がすべてそろったときだ。 ①著者がその事件を基にしている、と明言している。もしくは特定の事件をモデ…

  • 【小説感想】実際の事件を基にして発刊中止になった「パルチザン伝説」 これを「個人的な物語」と読めないところに分かり合えなさを感じる。

    文藝賞の最終候補になり単行本化が決まっていたが、抗議によって急遽発売中止になったいわくつきの作品。 パルチザン伝説 作者:桐山 襲 河出書房新社 Amazon 東アジア反日武装戦線が起こした事件をモデルにしているため、抗議を受けて発売が困難になったらしい。自分は「虹作戦」よりも「三菱重工爆破事件」を「M事件」としてそのまま用いていることが気になった。 創作の表現は自由で守られるべきだと思うけれど、実際のどの事件をモデルにしているかはっきりとわかる、しかもその事件を否定せずに描かれていると創作としての評価云々以前に忌避感がわく。三菱重工爆破事件は亡くなっている人もいるし。 それ以外も終戦間際に内…

  • 「忌録 document X」の考察をしてみた。

    忌録: document X 作者:阿澄思惟 A.SMITHEE Amazon そういえばkindleで購入したなあと思い出し読んでみた。 考察をやってみたが、うまくつながらない部分が多い。細部を詰めるには材料が少なすぎるので、これは細部を詰めると迷路に迷い込むパターンかなと思った。 なので考え方を変えて、つながりそうなキーワードを拾ってみた。 ①白チ(知的障害・心神喪失) 美咲は知的障碍者だった。(みさき) 川上喜代子は七歳まで白チだった。(みさき) 結城フクは統合失調症(みさき) 光子ボサツを見ると心身喪失状態に陥る。(光子ボサツ) 坂本夫妻の前の前の入居者の夫は狂死した。(忌避) ②女の…

  • 「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972-2022」感想。左派はなぜ衰退したか。

    www.saiusaruzzz.com www.saiusaruzzz.com 戦後の左翼の歴史を追う池上彰と佐藤優対談本の三冊目。 1970年前後を境に学生運動を中心とした新左翼の活動は衰退していき、左翼の活動は労働運動に主戦場を移していく。 三冊目では、左派(の理念)がなぜここまで世間からの支持を失い衰退していったかを追っている。 自分が「左翼が衰退した一番の理由」と感じたのはここだ。 佐藤:(前略)現代のリベラル派は効率性や合理性を保守派以上にありがたがる傾向が強いので想像しにくいかもしれませんが、むかしの左翼や労働組合にとって作業の分業化や機械化によってもたらされる仕事の合理化は、人間…

  • 【ゲーム感想】「鳥類弁護士の事件簿」逆擬人化×歴史モノ×逆転裁判。重厚なストーリーが面白かった。

    鳥類弁護士の事件簿 -Switch レオフル Amazon 「なぜに鳥」と思ったが面白かった。 ルイ=フィリップ治世下で起こったフランス二月革命が背景のストーリーで、その時代の雰囲気や歴史の経緯が十分に楽しめる。 ルイ=フィリップはペンギンでアホの子らしさが出ていて可愛かった。ちゃんとイギリスに亡命する。 作りは昔懐かしの推理ADVで「逆転裁判」からインスパイアされたらしい。 ゲーム部分はテンポが悪く微妙だが、ストーリーとキャラクター、映像と演出がそれを補って余りある。 ミニゲーム付きドラマと割り切れば、十分面白い。 一番好きなのはココリコだが、他のキャラも味があって良かった。 女革命家のボー…

  • 「ひとり出版社」ってどうなの? 調べてみて感じたこと、考えたことまとめ。

    情報が多様化している今は、本に限らず「大勢のターゲットに向かって作る」よりも「必要としている人を絞って、その層に最適化したものを作る(発信する)」方向にさらに進んでいくのでは、と思う。 本を作成・販売するまでの過程を考えるとツールを使えば一人でも出来そうだ。動画もゲームもアプリも個人が作れる時代なのだから、本も作れるだろう。 一人で作れて販売も出来るなら、一人で出版社をやっている人がいるのでは。 そう思って調べたら下記の二冊が出てきたので、試しに読んでみた。 ひとり出版入門: つくって売るということ 作者:宮後 優子 よはく舎 Amazon 小さな出版社のつづけ方 作者:永江 朗 猿江商會 A…

  • ブログという世界の面白さは、ひとつの記事を読んだだけではわからない。

    note.com 以前、noteで「大勢の人をターゲットにするのではなく、自分と趣味が同じ人が空いた時間に覗きに来てくれるギャラリーを作る」という考え方はいいなと書いた。 SNSが大規模なショッピングモールへの出店なら個人サイトは自宅を改装したカフェのようなもので、一番の特長は「そのサイト全体を自分の世界観で統一出来ること」だ。 yaswatercolor.hatenablog.com 「次に読者になりたいブログ」ですすめられてたまたま読んだブログが、自分がイメージする「個人経営のカフェのようなブログ」だった。 いくつか記事を読んだけど、どれも読んだ瞬間に「凄い!面白い!」「こんな考えがあると…

  • 「自分が所属するコミュニティの価値観に沿う過激さを競い、その忠誠心と引き換えに承認を得る」新左翼が過激化した原因は、現代にも通じるものがある。

    前巻の感想。 www.saiusaruzzz.com 激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972 (講談社現代新書) 作者:池上彰,佐藤優 講談社 Amazon 戦前からの左翼の歴史を振り返った「1945-1960」に続いて、「激動 日本の左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」を読み終えた。 学生運動が一番盛り上がり衰退していった時代の話だが、有名な事件や事柄の周辺事情やつながりも書かれていて面白かった。 本書の最後で「なぜ『世の中を良くしよう』と多くの学生が参加した運動が、最終的に過激で凄惨なものになってしまったか」を話している。 佐藤:(略)ナショナリズムにおいては、「…

  • 文庫本の一ページの文字数は何文字が読みやすいか? 比べてみた。

    文庫本を作ってみたいと思ったので、一ページの文字数は何文字くらいが読みやすいか、家にある文庫を元に考えてみた。 出版社によっても違うし、出版年数によっても違うし、シリーズによっても違うので「タイトル・出版年数」を参考に記載しておいた。 各出版社の文庫の一ページの文字数 (13種類・アイウエオ順) ・岩波文庫(「ムシュー・テスト」初版2004年) 40文字×15行=675文字 ・角川文庫クラシックス(「阿Q正伝」初版1961年) 42文字×18行=756文字 ・河出文庫(「無知の涙」初版1990年」) 45文字×20行=900文字 ・講談社文芸文庫(「補陀落渡海記」初版2000年) 40文字×1…

  • 「真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960」感想 わかりにくい左派の歴史がスルスルとわかる。

    池上彰と佐藤優の対談形式の本「真説 日本左翼史 戦後左派の源流」の一冊目、1945-1960の歴史を読んだ。 真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960 (講談社現代新書) 作者:池上彰,佐藤優 講談社 Amazon 共産党の除名問題の時に「新左翼が起こした事件を見れば、共産党がどういう組織かわかる」*1という意見を見て、「新左翼って共産党の暴力革命の放棄への批判から生まれたんじゃなかったけ?」と思ったのが、この本を読むきっかけになった。 読むと大筋では 佐藤:(略)革命は暴力によらなければ不可能だと信じる者たちは共産党に見切りをつけ新左翼党派を結成した(後略) (引用元:「真説 日…

  • はてなポイントが余っていたので13000ポイントでスターを購入してみた&はてブの改善案についての雑感。

    五秒で話し終わるいきさつ。 はてなブログプロの更新のために購入したポイント(14400ポイント)を忘れたまま、他の方法で支払った。→はてなポイントは廃止になります。→ガーン。 しょうがないからはてなスターを買うか。 13000ポイント分購入。 結果。 一生かかっても消費出来なさそうな(しなさそうな)スターを手に入れる。 スター廃止になったら、その直前にスター祭りをひっそりとやろうと思う。 先日発表されたはてブの改善案についての雑感。 bookmark.hatenastaff.com ◆人気コメントのアルゴリズムの変更。 人気コメントはつけられた順の場合も多く、意味が余りないので廃止でもいいので…

  • 【漫画感想】「水溜まりに浮かぶ島」全5巻が、打ち切り臭い終わり方でも面白いと思った理由。

    *ネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 水溜まりに浮かぶ島(1) (イブニングコミックス) 作者:三部けい 講談社 Amazon 巷で言われているように打ち切り臭い、もしくは飽きて終わらせたのかと疑うような終わり方だったが面白かった。 湊と黒松は何のために、何によって入れ替わったのか? 「水溜まりに浮かぶ島」は、湊と黒松が入れ替わることによって二人の運命が交差して話が進む。 しかし、作中で ・二人は何が原因で入れ替わったのか?(原因) ・二人は何のために入れ替わったのか?(目的) は明らかにされない。 作内だけならまだわかるが、「水溜まりに浮かぶ島」は、作外視点でみても二人の「入れ…

  • 【映画感想】「MERU/メルー」 人がなぜ山に登るかはわからないがこの映画は凄い。

    MERU/メルー (字幕版) コンラッド・アンカー Amazon 正確には映画ではなくドキュメンタリー。 ヒマラヤ山脈の中で前人未踏だった、「MERU/メルー」に三人の登山家が到達するまでの話だ。 有名なエベレストはネパール側からシェルパなどの協力を得て登るが、「MERU」はインドのカトマンズを拠点に登る。 映画はテントの中のシーンから始まるが、このテントは何と崖に吊られている。地面ではなく文字通り宙づりになっている。 ということからもわかる通り、出てくる話の全てが登山家ではない人間には理解しがたい話ばかりだ。 三人の登山家がチームを組んで登るが、リーダー格であるコンラッド・アンカーは登山界で…

  • 好みの疑似百合について語りたい。

    「男の娘な彼氏」が掲載されているということで「学園の王子とゲーム実況者」を購入。 学園の王子とゲーム実況者 1 (角川コミックス・エース) 作者:バラ子 KADOKAWA Amazon *表紙は本編。疑似百合はスピンオフの短編が載っている。 個人的には「疑似百合」であれば ①男キャラのほうは「女性に間違われる(男の娘)」以外のもうひと要素欲しい。 ②女の子は「天然可愛い系」が好み。 「嫉妬しちゃう?」とか言われたら、「余裕」って感じの子よりも、キョトンとするタイプかワタワタするタイプが好みなのだ。 つるとうさぎは単体のキャラなら滅茶苦茶好みだ。(特にうさぎ) 自分の中では疑似百合は、意外と右側…

  • 【小説感想】高山真「エゴイスト」 恋愛小説かと思いきや……。読後にタイトルの意味を考えて深く頷いた。

    鈴木亮平主演で映画化された「エゴイスト」の原作を読んだ。(映画は未視聴) 鈴木亮平の寄稿文によると、作者にRと呼ばれる恋人がいたこととその母親と交流があったことは事実らしいが、「小説」と銘を打っているので「小説として」読んだ感想を書きたい。 「エゴイスト」は恋愛小説ではない。罪を犯した*1主人公による懺悔と赦しの物語である。 *以下ネタバレを含むので、未読のかたは注意。 エゴイスト (小学館文庫) 作者:高山真 小学館 Amazon 恋愛小説のはずなのに、という妙な違和感。 主人公の浩輔は友人の紹介で出会ったパーソナルトレーナーの龍太に惹かれる。初めて会った時から強く惹かれて、龍太から別れを告…

  • そう言えば、冷戦下の白色テロを描いたコンテンツは「返校」くらいしか知らない。

    先日買った「世界」3月号に、「冷戦期の大量殺害をグローバルに考察する」というタイトルで「ジャカルタ・メソッドー反共産主義十字軍と世界を作りかえた虐殺作戦」を紹介している記事があった。 共産主義思想への弾圧は戦前の話は比較的伝わってきている。 ただ冷戦下の話だと文化大革命や天安門事件、スターリンの粛清やキリングフィールドなどの共産主義側の残酷な歴史は知っていても、反共陣営の話はそう言えば知らないなと思った。 本書が描いているのは、アメリカが冷戦に勝利した背景にはCIAが東南アジアや中南米で展開した共産主義者絶滅プログラムがあったという、冷戦史の暗部である。 (引用元:「冷戦期の大量殺害をグローバ…

  • 伊藤昌亮「ひろゆき論ーなぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではないのかー」を読んだ感想。

    世界 2023年3月号 岩波書店 Amazon 伊藤昌亮「ひろゆき論」を読んだ。 この記事で一番良かったところは、自分自身の感覚や感情はおいておいて、「ひろゆきの言動への支持が広がるのは何故か」という理由を解き明かすことを重視しているところだ。 記事を読もうと思ったきっかけも「『自分が理解しがたい言動が支持される構図』を考えようという姿勢がある」という紹介を読んだからだ。 自分がこの記事の要点だと思ったのは、この部分だ。 (リベラル派の「弱者リスト」の構成員に含まれない)人々は、リベラル派のプログラムで救済されることはない。 (引用元:「ひろゆき論ーなぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではな…

  • 「他人から見た評価はわからないが、何故か心惹かれる創作」が、たまにある。

    *本記事には「サマータイムレンダ」及び「君が獣になる前に」のネタバレが含まれます。 客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ。 (引用元:「騎士団長殺し 第一部 顕れるイデア編(上)」村上春樹 新潮社 P256/太字は引用者) サマータイムレンダ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:田中靖規 集英社 Amazon ">今さらながら「サマータイムレンダ」全13巻を読んだ。(5巻まで読んで止まっていた) ">やり尽くされている感のある「ループもの」というジャンルの中でも、これは頭ひとつ抜けている。 ">「成功するまで何回も同じことをトライする」のではなく、作内…

  • 【漫画感想】さの隆「君が獣になる前に」6巻まで。この話の面白さは、「物語が語ることができないもの」にある。

    *ネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 君が獣になる前に(1) (ヤングマガジンコミックス) 作者:さの隆 講談社 Amazon 読めば読むほど連載でサスペンスは難しいと思う。 一冊の本ならラスト手前まで伏線を張りつつ緩急をつけて最後にどんでん返し、という「じっくりストーリーを作る」も出来るが、連載だとその話ごと(三話ごとくらいには)引きを作らないといけない。 そのため、サスペンスは後でゆっくり考えた時に「矛盾だらけだ」と感じても、読んでいる間が面白ければいいかなと思うようにしている。(読んでいるあいだに「うん?」と思うものはどうかと思うが) 「君が獣になる前に」も基本的には、この…

  • 【「エネアド(ENNEAD)」シーズン1考察】設定&疑問点からの考察まとめ。

    「エネアド(ENNEAD)」のシーズン1を読み返して設定と疑問点のまとめ、そこから考察をしてみた。(*シーズン1のネタバレあり。注意) エジプト神話の死生観を頭に入れると、話が理解しやすい。 シュト(影)と鏡、セクメトとハトホルの関係。 太陽神ラーの目的 その他の疑問 エジプト神話の死生観を頭に入れると、話が理解しやすい。 「エネアド」のストーリーは「エジプト神話」の死生観が大きく関わるが、特に詳しい説明がされずにそれが当たり前の前提として話が進む。 これを押さえておかないと話がわかりにくい。 「エジプト神話」において、人間は カー=魂 バー=個性、人格 レン=名前 シュト=影(人の中に潜んで…

  • 【小説感想】「クイズ」という異世界を描く、小川哲「君のクイズ」の三つの読みかた。

    インタビューの答えがそのまま書いてあった。 www.saiusaruzzz.com 小川哲のインタビューを読んで、「君のクイズ」に興味を持ち読んでみた。 自分は創作を読む時には作者という概念が頭から消えるタイプなのだが、これは読み終わったとあとに「インタビューの答えがそのまま書いてあったな」と思った。 *以下はネタバレが含まれる感想なので注意。 「君のクイズ」は自分にとって、三つの読みかたが出来る話だった。 ①クイズという競技の特性と競技者であるクイズプレイヤーの思考について。 ②クイズに仮託された主人公の世界観、人生観。 ③本庄絆に集約されるものへの皮肉。 「クイズ」という異世界。 クイズは…

  • 「読者がどんな本を買うかは、僕が決めることではない」直木賞を受賞した小川哲のインタビューが凄く良かった。

    "> ">2022年1月24日(火)に読売新聞掲載されていた小川哲のインタビュー「直木賞に決まって」がとても良かったので、特に印象に残ったところを抜粋して紹介したい。 高校生のころから、ずっと心に決めているルールがある。 「自分の力ではどうしようもないことに対して、必要以上に思い悩まない」ということだ。(略) 結果がついてくるかはあまり気にしない。自分に決められることではないからだ。(略) 自分が考えることを伝えることはできるけれど、他人の考えや信念を変えることはできないかもしれない。それは仕方がないことだ。(略) 僕ができることは、自分が信じる「面白さ」を追求することだけだ。(略) その結果…

  • 【映画感想】「THE FIRST SLAM DUNK」は、原作と何が違うのかを熱く語りたい。

    *本記事には映画「THE FIRST SLAM DUNK」、漫画「SLAM DUNK」のネタバレが含まれます。ご注意ください。 【映画パンフレット】 THE FIRST SLAM DUNK 監督:井上雄彦 声の出演:仲村宗悟、笠間淳、神尾晋一郎、木村昴、三宅健太 スラムダンク 東映 Amazon 噂にはちらほら聞いていたが、まったく別物で驚いた。ストーリーが土台から違う。 「主人公を宮城に変えた」というより、「描きたいことがまったく違うので、必然的に主人公が変わった」のではと思った。 原作者による「原作が解釈違い」である。こんなことがあるのか。 映画版と原作の違いは、23巻の水戸のセリフが表し…

  • 先日読んだ三角関係の恋愛漫画がすごく引っかかったので、何がそんなに引っかかるのか考えてみた。

    とある短編恋愛漫画の三角関係に引っかかるものを感じたので、何がそんなに引っかかるのか考えてみた。 諸事情*1あってタイトルは出さないが、読んだことがある人は設定ですぐに気付くと思う。 そこまで複雑な状況ではないので説明する。 状況説明 クロ、モモ、シロ*2は小学校時代からの幼馴染みで仲良し三人組。 クロはずっとモモが好きだった。 しかしある日、モモに「ずっとシロが好きだった。中学卒業と同時に告白しようと思っている」と言われる。 クロは何も知らないシロに策略を仕掛け、シロが告白を断る方向へ持っていく。 策略が当たり、シロはモモの告白を断る。 傷ついて落ち込んでいるモモにクロは告白し、二人は付き合…

  • 【ゲーム感想&考察】「夜廻」 ゲームとしては難ありだが、「夜の町を一人で探検する怖さ」が秀逸すぎる。

    *ネタバレあり。未プレイのかたはご注意ください。 夜廻と深夜廻 for Nintendo Switch - Switch 日本一ソフトウェア Amazon 感想:「夜」を怖さを「これでもか」と楽しめる。 「夜廻」の二周めをクリアした。 一周めは途中で嫌になるくらい死にまくったが、二周めはパターンを覚えていたのでさっくりクリアできた。 ゲームはごく単純なステルスゲームなので、面白さの肝がゲーム部分であれば二周めはやろうとすら思わなかっただろう。 二周めが面白かったのは、このゲームの難である「ゲーム性」がほぼなくなり、夜の町を歩き回る楽しさ、その雰囲気、謎めいたストーリーを十分楽しむことが出来たか…

  • エジプト神話の構造や要点がとってものみ込みやすい。「ゼロからわかるエジプト神話」

    「エネアド」にハマった勢いで、「エジプト神話について読んでみよう」と思い購入。 ゼロからわかるエジプト神話 (文庫ぎんが堂) 作者:かみゆ歴史編集部 イースト・プレス Amazon 作内で当たり前のように語られている「死者の魂を集めなければ呪いになる」などが、どういう設定なのかを知りたかった。 他の宗教のように「魂が離れたから死者になる」のではなく、「死者にとっても魂が重要なのだろう」と何となくはわかる。 ただ周辺の設定を理解していないと、作内で起こっている事象の意味が完全には把握できない。それでも十分面白いが、学べばもっと面白さが広がると思い読んでみた。 「エジプト神話」は、様々な地域の伝承…

  • 【漫画感想】モクモクれん「光が死んだ夏」2巻まで。ホラーではなく恋愛ものだった。

    「このマンががすごい! 2023」オトコ編で一位になった「光が死んだ夏」を二巻まで読んだので、その感想。(ネタバレ注意) 光が死んだ夏 1 (角川コミックス・エース) 作者:モクモク れん KADOKAWA Amazon 二巻まで読んだ感想は、「ホラーではなく恋愛モノだな」というものだ。 最近読んだものの中では「大蛇に嫁いだ娘」に似ている。 主人公のヨシキにとっては、光(に擬態しているもの)よりも村のほうが「異世界」であり怪物だった。 「村」はどこに行っても自然音がうるさく、思考を邪魔する。道に咲いているひまわりは不気味で、今にも動いてヨシキを食べそうに見える。 (引用元:「光が死んだ夏」1巻…

  • 【映画感想】「罪の声」 前半はスピーディな謎解き展開が面白い。後半は犯人たちの行動に「?」となる。

    *ネタバレあり。未視聴のかたは注意。 罪の声 小栗旬 Amazon 未解決のまま時効を迎えた「グリコ・森永事件」をモデルにした話。 前半は、一本の糸を引っ張ると芋づる式に謎が次々と明らかになっていくスピーディーな展開が面白い。 冷静に考えれば、いくら事件が時効になって過去の話になっているとはいえ、一介の記者がちょっと調べるだけでこんなに事件の背後や枠組みが明らかになるなら、警察がもう少し何とか出来たのではないか、聡一郎もよく青木組に捕まらなかったな、と思う。 ただこれだけ複雑な話をわかりやすく飽きさせず見せるためには、仕方がないのかもしれない、と納得できる。 問題は後半だ。 達雄が考えた犯罪の…

  • 「殺人を犯さなければ人間になれなかった」という矛盾をどう考えるのか。永山則夫「無知の涙」

    無知の涙 (河出文庫) 作者:永山則夫 河出書房新社 Amazon 「無知の涙」を初めて読んだのは、永山則夫がこの本を書いたのと同じくらいの年齢の時だった。 その時は「何の罪もない人を四人も殺しているのだから、どんな言葉も言い訳でしかない」という気持ちしかなかった。 今回久し振りに読んでみたら、以前とは見方が変わった。 「自分の苦しみに社会は応えようとしてくれなかった。顧みることすらしなかったのに、殺人を犯したら自己実現できてしまった」 この事実は、本人にとっては*1殺人さえ肯定出来てしまうような強烈な根拠になりうる。 「殺人を犯さなければ、自分は一生知識を与えられず牛馬のように生きていくしか…

  • 「2023年は、何に優先して時間を使うか」をきちんと考えて、それに取り組む年にしたい。

    2022年もあと三日だ。はええええ。 個人的には、2022年は遊び呆け過ぎたという反省が大きい。 ネットで色々やりすぎ。 7月時点で考えた「やりたいことリスト」が役に立っていなさすぎてびっくりする。 やりたいことがたくさんあって時間が足りない。焦らないように、「やりたいことリスト」を作って頭を整理したい。|うさる|note 7月に「これじゃあ駄目だ、使える時間は限られているのだから優先順位をつけなければ」そう思って頭を整理した。 何でも早く出来る、効率よく時間を使える人ならいいのだ。(羨ましい……) 自分はそうではない。何をやるにも時間がかかる。 単純に速度が遅いというのもあるし、例えば隙間時…

  • 本郷和人「承久の乱ー日本史のターニングポイントー」 「後鳥羽上皇はなぜ、幕府に戦をしかけたのか?」など、この時代のポイントがスルスルわかる。

    本郷和人の「承久の乱ー日本史のターニングポイントー」を読んだ。 承久の乱 日本史のターニングポイント (文春新書) 作者:本郷 和人 文藝春秋 Amazon 「鎌倉殿の13人」が始まるから書かれた本なのかなと思ったら、ドラマの情報が何もない段階で出版されたようだ。 ぼくはそもそもが、鎌倉時代を専門とする研究者です。(略) でもこのあたりのことって、なかなか大河ドラマにもならないし、大ヒット小説もないので、みなさんには縁が無い。(略) 北条義時、だれそれ? まあ、その程度です。 (引用元:「承久の乱ー日本史のターニングポイントー」本郷和人 P216 ㈱文芸春秋/太字は引用者) 初版が2019年の…

  • 【大河ドラマ「鎌倉殿の13人」感想】「義時、本当にお疲れ様」それしか出てこない。

    *ネタバレ注意。 ついに終わってしまった。「鎌倉殿の13人」が。 あれほど様々な人が出てきて、色々なことがあったにも関わらず、「鎌倉殿の13人」は自分にとっては最初から最後まで義時の物語だった。 伊豆の名のない家の次男坊に生まれて、気がいいだけの父親と気宇壮大な兄、気の強い姉と妹に挟まれて、家の中でさえ目立たない地味な存在だった。 義村が最後にぶちまけていたように、冴えない真面目であることだけがとりえの、その真面目ささえも、時に空気の読めなさや不器用さとして出てしまうような男だった。 表向きのことは人付き合いのいい父親や人を惹きつける明るさのある兄が引き受け、面倒な裏方のこと、細かいことは全部…

  • 【漫画感想】「住みにごり」2巻まで。引きこもりの兄、寝たきりの母、モラハラ気質の父、出戻りの姉。「家族」という異質で怪物のように不可解なもの。

    住みにごり(1) (ビッグコミックス) 作者:たかたけし 小学館 Amazon 主人公の末吉は都会での生活に疲れ、仕事を辞めて故郷に戻って来る。 実家は寝たきりの母親とその面倒を見るモラハラ気質の父親、離婚して戻って来た姉、そして二十年近く部屋に引きこもっている兄がいる。 「住みにごり」は、冒頭、引きこもりの兄が無差別通り魔殺人を行う夢から始まる。 末吉の家族は兄フミヤだけではなく、それぞれが問題を抱え、お互いに色々な感情を抱えている。家の中の空気は澱み続け、常に不穏な空気が流れている。 何かひとつ要素が加わったら即座に黒いものが溢れ、何かが暴発する。そういう状態から始まる。 だからストーリー…

  • 「承久の乱」について。他の歴史解釈と「鎌倉殿の13人」のストーリーの違い。&第47回「ある朝敵、ある演説」の感想。

    承久の乱「後鳥羽上皇」惨敗させた三浦義村の決断 歴史 東洋経済オンライン 社会をよくする経済ニュース 「吾妻鏡」における「承久の乱」が始まるまでの、主に三浦家の動きの解釈を書いた記事を読んだので、「鎌倉殿との13人」のストーリーと読み比べてみた。*1 *以下引用はすべて上記記事より。太字は引用者による。 義時が名指しされていることから、「後鳥羽上皇の目的は倒幕ではなく、義時を討つことだった」とする説もある。(略) 幕府の最高権力者である義時を征伐するということは、幕府を無力化することにほかならず、目的は「倒幕」以外のなにものでもない。これが「承久の乱」の始まりである。 「義時を討つ…

  • 「マツコ会議」感想。大人気ホラー作家・雨穴から大ヒットの極意を学ぶ。

    「マツコ会議」に雨穴が出る、ということで、朝から楽しみすぎてそわそわしていた。 23時の15分前には、やること全部済ませてテレビの前で待っていた。 最初、マツコが雨穴にもホラーにも余り興味がなさそうなのが気になった。 これは余り深堀りされず面白くないかもしれない。 そんな不安が心をよぎった。 だが後半は、マツコが雨穴の作品というよりは、雨穴という人に興味を持った感じが伝わってきた。 「だんだん可愛く見えてくる」 とマツコが言ったように、雨穴のキャラはホラーの語り手によくある「怖い」「不気味」「おどろおどろしい」という感じではない。「ゆるく抜けた」感じだ。 戦略的にやっているなら、「少し抜けたキ…

  • 好きなゲームミュージックの思い出を適当に語りたい。

    はてブのホッテントリにゲームミュージックの増田が上がっているのを見たら、急に話したくなったので話したい。 *発売からだいぶたったゲームのネタバレが多少含まれています。ご注意下さい。 最近何故かループし続けているのが、「ストリートファイターⅡ」のバルログのテーマ。バルログ自体はほとんど使ったこともなく何の思い入れもないが、曲は好きだった。 情熱、狂気、サディズム、美しさが凝縮されたような曲だな、といま聴くと思う。子供のころ、ストⅡのBGMに歌詞がついたのを友達から借りた記憶があり、何故か未だにバルログだけは歌える。 懐かしくて少し調べたら、海外ではバルログとベガの名前が入れ替わっているなど色々逸…

  • 【大河ドラマ「鎌倉殿の13人」】山本耕史が語る「三浦義村はどんな人物か」が面白すぎる。

    昨日も滅茶苦茶面白かった。 ここまでアッと言う間だった。 あと二回かあ。もっと続いて欲しいと思ってしまう。 と思いながら、今朝、三浦義村を演じる山本耕史のインタビューを読んだ。 www.nhk.or.jp 「演じる役だから考える」ということとは別に、単純に「演じる俳優が自分の役を他人として見た時に、どういう人間と考えているのだろう」ということに凄く興味がある。 山本耕史から見た義村像は、「そこが義村の面白さだよな」と何度も頷くものだった。 *以下引用は全て上記インタビューより。太字は引用者による。 義村は、自分の得になることのためなら何でもする人という感じがするんです。 だから、幼なじみである…

  • 「フェイクの氾濫に立ち向かうには」を読んで考えた、情報の見極め方、付き合い方。

    2022年11月27日(日)読売新聞朝刊に掲載された、シンポジウム「『虚実のはざま』報道から考える~フェイクの氾濫に立ち向かうには~」を読んだ。 情報の真偽の見極めかたや情報との付き合いかたについて、自分の考えと重なる部分が多かったので、頭の整理がてら感想を書きたい。 「陰謀論」には依存性があり、誰もがハマる可能性がある。 「コロナ陰謀論」を信じ、感染対策を拒否するようになった居酒屋店主や、一人暮らしの無職の男性らのケースを桑原記者が報告。 自粛要請などで廃業の危機にさらされたり、人と会う機会が断たれたりする状況でSNSの言説に引き込まれていったと明かし、「背景に社会への不満や不安、孤立などが…

  • 【漫画感想】BLに興味がない自分がドハマりした「エネアド(ENNEAD)」の、どこがそんなに面白いかを語りたい。

    "> ">今までBLはほとんど読んだことがなかったが、「エネアド(ENNEAD)」は無茶苦茶面白くハマっている。 ">個人的には「エネアド(ENNEAD)」はBLというジャンルを超えて、普遍的なことが描かれていると思う。 "> ">*ネタバレ注意。 "> 「エネアド」は、「普通の男・セト」が抱く「自分とは何なのか」という存在不安を描いた物語。 「エネアド」の主人公・セトは、善良で家族思い、友人を大切にし、社会で責任を果たし、乱暴な言動をとることもあるが基本的には優しいごく普通の男だ。 (引用元:「ENNEAD」5話 MOJITO) そんな「普通の男」であるセトが「社会の中で生きることによって封…

  • 【映画感想】「シン・ウルトラマン」シンプルでいながら一本芯が通ったストーリー。特撮やウルトラマンに興味がなくても面白かった。

    *本記事にはネタバレが含まれます。未視聴のかたはご注意下さい。 シン・ウルトラマン 斎藤工 Amazon 「シン・ゴジラ」が面白かったし、休みだし観てみるか、くらいの軽い気持ちで見出した。 意外や意外、まったく前知識のない人間でも開始五分で話にのめり込める。格闘あり、陰謀あり、笑いあり、葛藤あり、感動ありで二時間飽きることなくスルスル見れた。 最初の怪獣と二番目の怪獣は、寄りで見せられると明らかに古き良き昭和の作り物感がある。 それを見た瞬間にリアリティなんて木っ端微塵になる……と思いきや、まったくそんなことがない。 リアリティを感じるか否かというのは、実はリアルに則しているかどうかは余り関係…

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