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  • 【ドラマ感想】山里亮太と若林正恭の青春を描いた「だが、情熱はある」が、上質なルサンチマン文学すぎる。

    南海キャンディーズの山里亮太とオードリーの若林正恭の半生を描いた「だが、情熱はある」の第三話を見た。(一話と二話は見損ねた) 山里と若林はもちろん知っているけど、それ以上のことはほとんど知らないので、完全にドラマとして楽しんでいる。 創作として見ると、無茶苦茶上質なルサンチマン文学だ。 このドラマ、どのエピソードを見ても「ああ……」と思う。 特に若林と父親の会話が、「俺おまか」と思うくらい既視感があった。 どこの家もこんな風なのだろうか。 若林が言う「俺がおかしいのか、周りがおかしいのか」というのは、不遇感をこじらせる時期に浮かぶおなじみの思いだ。 どこまで「俺を認めない世界がおかしい」と思え…

  • 変化が速い時代だからこそ、スルメゲーをじっくりやりこんでしゃぶり尽くしたい。

    「九龍妖魔學園紀」を購入したまま忘れていた、とふと思い出した。 九龍妖魔學園紀 ORIGIN OF ADVENTURE -Switch アークシステムワークス Amazon 2004年に発売されたゲームだが、switchとPS4に移植されて評判も良い。 元々、アトラスの学園ジュヴナイルものが大好きだった。女神転生は「if」が一番好きだし、ペルソナも1が好きだった。 非日常的な危機と青春時代の日常や悩みが溶け合っているところがいい。 「九龍妖魔學園紀」は学園生活を送るADVパート、遺跡を巡る探索パートに分かれてる。 ADVパートで仲間と交流したり、アイテムを探したりして、探索パートをこなす。3D…

  • 対話型AI「チャットGPT」に小説のあらすじを考えてもらったら、思った以上に学びが深かった。

    shinonomen.hatenablog.com ↑の東雲さんの記事を読んで滅茶苦茶面白いと思い、自分も「Chat(チャット)GPT」に「400字で小説のあらすじを考えて」と頼んで三種類出してもらった。 タイトルのみ自分で考えた。 あらすじ① 世界にひとつだけの美術品 "> ある日、主人公の高橋真一は街で美術展を開催していた。 "> 彼は会場で美術作品を鑑賞していたが、ひとつの絵画に目が止まった。それは美しい花が描かれた絵だった。 "> 真一はその絵の現代美術としての価値を見いだし、一目惚れしてしまう。 "> しかし、真一が購入しようと思ったとき、その絵画はすでに売り切れていた。 "> 彼は…

  • 筒井康隆「虚人たち」を読みながら「去人たち」を読む。物語とはつくづく「現実的ではない」

    kyojintachi.k2cee.com 最初「去人たち」を読んだ時に、よく意味がわからなかった。確か「Ⅱ」の途中で読むのを止めたと思う。 筒井康隆「虚人たち」のオマージュだと聞いたので、「虚人たち」を読めばわかるのかなと思っていた。 最近そのことを思い出して「虚人たち」を読みながら「去人たち」を読み始めたんだけど(ややこしい)、嘘みたいに面白い。 「虚人たち」は「物語」は「意味」によって支配されていることを、登場人物がメタ視点で理解しているという実験的な試みをしている。 ・ある登場人物は、自分が物語の中で「ある事象を目撃すること」ということしか存在の意味を持たないことをわかっている。そのこ…

  • 【漫画感想】残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」 暗い世界に閉じ込められた少年たちが辿る残酷な運命。

    ライチ☆光クラブ 作者:古屋 兎丸 太田出版 Amazon ぼくらの☆ひかりクラブ 全2巻セット Amazon 既に映画化されていることも知らず表紙買い。 江戸川乱歩に代表される、退廃的で耽美で残酷描写があるインモラルな世界観だ。「グランギニョール」というジャンルがあるのを初めて知った。 残酷描写にそこまで興味がないし好きでもないのだが、これは凄い良かった。 常川、それはある共同体においてはそう規定される。 しかし僕の血は常川か? No。 僕の肉は常川か? No。 常川とは曖昧で実体がない。 この光クラブにおいて、我はゼラと規定される。 (引用元:「ライチ☆光クラブ」 古屋兎丸 太田出版/太字…

  • 「実際の物事や人物を元にしたフィクション」は、自分の中で「名作・傑作」であるほうが問題が根深い。

    「フィクション」と銘を打っている場合は、まずはフィクションとして読む。 問題があれば指摘すると思うが、自分は自分にとってつまらない作品はすぐに忘れるので「フィクションと、モデルとおぼしき実際の物事や人物との関係性の問題をどう考えるのか」というところまでいかない。 自分の中でこの件で一番悩むのは「創作として名作、傑作なので否定できない場合」だ。 2018年6月にこの件について考えた時に、自分の中ではこういう結論だった。 自分が「実話をモデルにしたり元にした創作品で、その存在を否定する」のは以下の条件がすべてそろったときだ。 ①著者がその事件を基にしている、と明言している。もしくは特定の事件をモデ…

  • 【小説感想】実際の事件を基にして発刊中止になった「パルチザン伝説」 これを「個人的な物語」と読めないところに分かり合えなさを感じる。

    文藝賞の最終候補になり単行本化が決まっていたが、抗議によって急遽発売中止になったいわくつきの作品。 パルチザン伝説 作者:桐山 襲 河出書房新社 Amazon 東アジア反日武装戦線が起こした事件をモデルにしているため、抗議を受けて発売が困難になったらしい。自分は「虹作戦」よりも「三菱重工爆破事件」を「M事件」としてそのまま用いていることが気になった。 創作の表現は自由で守られるべきだと思うけれど、実際のどの事件をモデルにしているかはっきりとわかる、しかもその事件を否定せずに描かれていると創作としての評価云々以前に忌避感がわく。三菱重工爆破事件は亡くなっている人もいるし。 それ以外も終戦間際に内…

  • 「忌録 document X」の考察をしてみた。

    忌録: document X 作者:阿澄思惟 A.SMITHEE Amazon そういえばkindleで購入したなあと思い出し読んでみた。 考察をやってみたが、うまくつながらない部分が多い。細部を詰めるには材料が少なすぎるので、これは細部を詰めると迷路に迷い込むパターンかなと思った。 なので考え方を変えて、つながりそうなキーワードを拾ってみた。 ①白チ(知的障害・心神喪失) 美咲は知的障碍者だった。(みさき) 川上喜代子は七歳まで白チだった。(みさき) 結城フクは統合失調症(みさき) 光子ボサツを見ると心身喪失状態に陥る。(光子ボサツ) 坂本夫妻の前の前の入居者の夫は狂死した。(忌避) ②女の…

  • 「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972-2022」感想。左派はなぜ衰退したか。

    www.saiusaruzzz.com www.saiusaruzzz.com 戦後の左翼の歴史を追う池上彰と佐藤優対談本の三冊目。 1970年前後を境に学生運動を中心とした新左翼の活動は衰退していき、左翼の活動は労働運動に主戦場を移していく。 三冊目では、左派(の理念)がなぜここまで世間からの支持を失い衰退していったかを追っている。 自分が「左翼が衰退した一番の理由」と感じたのはここだ。 佐藤:(前略)現代のリベラル派は効率性や合理性を保守派以上にありがたがる傾向が強いので想像しにくいかもしれませんが、むかしの左翼や労働組合にとって作業の分業化や機械化によってもたらされる仕事の合理化は、人間…

  • 【ゲーム感想】「鳥類弁護士の事件簿」逆擬人化×歴史モノ×逆転裁判。重厚なストーリーが面白かった。

    鳥類弁護士の事件簿 -Switch レオフル Amazon 「なぜに鳥」と思ったが面白かった。 ルイ=フィリップ治世下で起こったフランス二月革命が背景のストーリーで、その時代の雰囲気や歴史の経緯が十分に楽しめる。 ルイ=フィリップはペンギンでアホの子らしさが出ていて可愛かった。ちゃんとイギリスに亡命する。 作りは昔懐かしの推理ADVで「逆転裁判」からインスパイアされたらしい。 ゲーム部分はテンポが悪く微妙だが、ストーリーとキャラクター、映像と演出がそれを補って余りある。 ミニゲーム付きドラマと割り切れば、十分面白い。 一番好きなのはココリコだが、他のキャラも味があって良かった。 女革命家のボー…

  • 「ひとり出版社」ってどうなの? 調べてみて感じたこと、考えたことまとめ。

    情報が多様化している今は、本に限らず「大勢のターゲットに向かって作る」よりも「必要としている人を絞って、その層に最適化したものを作る(発信する)」方向にさらに進んでいくのでは、と思う。 本を作成・販売するまでの過程を考えるとツールを使えば一人でも出来そうだ。動画もゲームもアプリも個人が作れる時代なのだから、本も作れるだろう。 一人で作れて販売も出来るなら、一人で出版社をやっている人がいるのでは。 そう思って調べたら下記の二冊が出てきたので、試しに読んでみた。 ひとり出版入門: つくって売るということ 作者:宮後 優子 よはく舎 Amazon 小さな出版社のつづけ方 作者:永江 朗 猿江商會 A…

  • ブログという世界の面白さは、ひとつの記事を読んだだけではわからない。

    note.com 以前、noteで「大勢の人をターゲットにするのではなく、自分と趣味が同じ人が空いた時間に覗きに来てくれるギャラリーを作る」という考え方はいいなと書いた。 SNSが大規模なショッピングモールへの出店なら個人サイトは自宅を改装したカフェのようなもので、一番の特長は「そのサイト全体を自分の世界観で統一出来ること」だ。 yaswatercolor.hatenablog.com 「次に読者になりたいブログ」ですすめられてたまたま読んだブログが、自分がイメージする「個人経営のカフェのようなブログ」だった。 いくつか記事を読んだけど、どれも読んだ瞬間に「凄い!面白い!」「こんな考えがあると…

  • 「自分が所属するコミュニティの価値観に沿う過激さを競い、その忠誠心と引き換えに承認を得る」新左翼が過激化した原因は、現代にも通じるものがある。

    前巻の感想。 www.saiusaruzzz.com 激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972 (講談社現代新書) 作者:池上彰,佐藤優 講談社 Amazon 戦前からの左翼の歴史を振り返った「1945-1960」に続いて、「激動 日本の左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」を読み終えた。 学生運動が一番盛り上がり衰退していった時代の話だが、有名な事件や事柄の周辺事情やつながりも書かれていて面白かった。 本書の最後で「なぜ『世の中を良くしよう』と多くの学生が参加した運動が、最終的に過激で凄惨なものになってしまったか」を話している。 佐藤:(略)ナショナリズムにおいては、「…

  • 文庫本の一ページの文字数は何文字が読みやすいか? 比べてみた。

    文庫本を作ってみたいと思ったので、一ページの文字数は何文字くらいが読みやすいか、家にある文庫を元に考えてみた。 出版社によっても違うし、出版年数によっても違うし、シリーズによっても違うので「タイトル・出版年数」を参考に記載しておいた。 各出版社の文庫の一ページの文字数 (13種類・アイウエオ順) ・岩波文庫(「ムシュー・テスト」初版2004年) 40文字×15行=675文字 ・角川文庫クラシックス(「阿Q正伝」初版1961年) 42文字×18行=756文字 ・河出文庫(「無知の涙」初版1990年」) 45文字×20行=900文字 ・講談社文芸文庫(「補陀落渡海記」初版2000年) 40文字×1…

  • 「真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960」感想 わかりにくい左派の歴史がスルスルとわかる。

    池上彰と佐藤優の対談形式の本「真説 日本左翼史 戦後左派の源流」の一冊目、1945-1960の歴史を読んだ。 真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960 (講談社現代新書) 作者:池上彰,佐藤優 講談社 Amazon 共産党の除名問題の時に「新左翼が起こした事件を見れば、共産党がどういう組織かわかる」*1という意見を見て、「新左翼って共産党の暴力革命の放棄への批判から生まれたんじゃなかったけ?」と思ったのが、この本を読むきっかけになった。 読むと大筋では 佐藤:(略)革命は暴力によらなければ不可能だと信じる者たちは共産党に見切りをつけ新左翼党派を結成した(後略) (引用元:「真説 日…

  • はてなポイントが余っていたので13000ポイントでスターを購入してみた&はてブの改善案についての雑感。

    五秒で話し終わるいきさつ。 はてなブログプロの更新のために購入したポイント(14400ポイント)を忘れたまま、他の方法で支払った。→はてなポイントは廃止になります。→ガーン。 しょうがないからはてなスターを買うか。 13000ポイント分購入。 結果。 一生かかっても消費出来なさそうな(しなさそうな)スターを手に入れる。 スター廃止になったら、その直前にスター祭りをひっそりとやろうと思う。 先日発表されたはてブの改善案についての雑感。 bookmark.hatenastaff.com ◆人気コメントのアルゴリズムの変更。 人気コメントはつけられた順の場合も多く、意味が余りないので廃止でもいいので…

  • 【漫画感想】「水溜まりに浮かぶ島」全5巻が、打ち切り臭い終わり方でも面白いと思った理由。

    *ネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 水溜まりに浮かぶ島(1) (イブニングコミックス) 作者:三部けい 講談社 Amazon 巷で言われているように打ち切り臭い、もしくは飽きて終わらせたのかと疑うような終わり方だったが面白かった。 湊と黒松は何のために、何によって入れ替わったのか? 「水溜まりに浮かぶ島」は、湊と黒松が入れ替わることによって二人の運命が交差して話が進む。 しかし、作中で ・二人は何が原因で入れ替わったのか?(原因) ・二人は何のために入れ替わったのか?(目的) は明らかにされない。 作内だけならまだわかるが、「水溜まりに浮かぶ島」は、作外視点でみても二人の「入れ…

  • 【映画感想】「MERU/メルー」 人がなぜ山に登るかはわからないがこの映画は凄い。

    MERU/メルー (字幕版) コンラッド・アンカー Amazon 正確には映画ではなくドキュメンタリー。 ヒマラヤ山脈の中で前人未踏だった、「MERU/メルー」に三人の登山家が到達するまでの話だ。 有名なエベレストはネパール側からシェルパなどの協力を得て登るが、「MERU」はインドのカトマンズを拠点に登る。 映画はテントの中のシーンから始まるが、このテントは何と崖に吊られている。地面ではなく文字通り宙づりになっている。 ということからもわかる通り、出てくる話の全てが登山家ではない人間には理解しがたい話ばかりだ。 三人の登山家がチームを組んで登るが、リーダー格であるコンラッド・アンカーは登山界で…

  • 好みの疑似百合について語りたい。

    「男の娘な彼氏」が掲載されているということで「学園の王子とゲーム実況者」を購入。 学園の王子とゲーム実況者 1 (角川コミックス・エース) 作者:バラ子 KADOKAWA Amazon *表紙は本編。疑似百合はスピンオフの短編が載っている。 個人的には「疑似百合」であれば ①男キャラのほうは「女性に間違われる(男の娘)」以外のもうひと要素欲しい。 ②女の子は「天然可愛い系」が好み。 「嫉妬しちゃう?」とか言われたら、「余裕」って感じの子よりも、キョトンとするタイプかワタワタするタイプが好みなのだ。 つるとうさぎは単体のキャラなら滅茶苦茶好みだ。(特にうさぎ) 自分の中では疑似百合は、意外と右側…

  • 【小説感想】高山真「エゴイスト」 恋愛小説かと思いきや……。読後にタイトルの意味を考えて深く頷いた。

    鈴木亮平主演で映画化された「エゴイスト」の原作を読んだ。(映画は未視聴) 鈴木亮平の寄稿文によると、作者にRと呼ばれる恋人がいたこととその母親と交流があったことは事実らしいが、「小説」と銘を打っているので「小説として」読んだ感想を書きたい。 「エゴイスト」は恋愛小説ではない。罪を犯した*1主人公による懺悔と赦しの物語である。 *以下ネタバレを含むので、未読のかたは注意。 エゴイスト (小学館文庫) 作者:高山真 小学館 Amazon 恋愛小説のはずなのに、という妙な違和感。 主人公の浩輔は友人の紹介で出会ったパーソナルトレーナーの龍太に惹かれる。初めて会った時から強く惹かれて、龍太から別れを告…

  • そう言えば、冷戦下の白色テロを描いたコンテンツは「返校」くらいしか知らない。

    先日買った「世界」3月号に、「冷戦期の大量殺害をグローバルに考察する」というタイトルで「ジャカルタ・メソッドー反共産主義十字軍と世界を作りかえた虐殺作戦」を紹介している記事があった。 共産主義思想への弾圧は戦前の話は比較的伝わってきている。 ただ冷戦下の話だと文化大革命や天安門事件、スターリンの粛清やキリングフィールドなどの共産主義側の残酷な歴史は知っていても、反共陣営の話はそう言えば知らないなと思った。 本書が描いているのは、アメリカが冷戦に勝利した背景にはCIAが東南アジアや中南米で展開した共産主義者絶滅プログラムがあったという、冷戦史の暗部である。 (引用元:「冷戦期の大量殺害をグローバ…

  • 伊藤昌亮「ひろゆき論ーなぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではないのかー」を読んだ感想。

    世界 2023年3月号 岩波書店 Amazon 伊藤昌亮「ひろゆき論」を読んだ。 この記事で一番良かったところは、自分自身の感覚や感情はおいておいて、「ひろゆきの言動への支持が広がるのは何故か」という理由を解き明かすことを重視しているところだ。 記事を読もうと思ったきっかけも「『自分が理解しがたい言動が支持される構図』を考えようという姿勢がある」という紹介を読んだからだ。 自分がこの記事の要点だと思ったのは、この部分だ。 (リベラル派の「弱者リスト」の構成員に含まれない)人々は、リベラル派のプログラムで救済されることはない。 (引用元:「ひろゆき論ーなぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではな…

  • 「他人から見た評価はわからないが、何故か心惹かれる創作」が、たまにある。

    *本記事には「サマータイムレンダ」及び「君が獣になる前に」のネタバレが含まれます。 客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ。 (引用元:「騎士団長殺し 第一部 顕れるイデア編(上)」村上春樹 新潮社 P256/太字は引用者) サマータイムレンダ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:田中靖規 集英社 Amazon ">今さらながら「サマータイムレンダ」全13巻を読んだ。(5巻まで読んで止まっていた) ">やり尽くされている感のある「ループもの」というジャンルの中でも、これは頭ひとつ抜けている。 ">「成功するまで何回も同じことをトライする」のではなく、作内…

  • 【漫画感想】さの隆「君が獣になる前に」6巻まで。この話の面白さは、「物語が語ることができないもの」にある。

    *ネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 君が獣になる前に(1) (ヤングマガジンコミックス) 作者:さの隆 講談社 Amazon 読めば読むほど連載でサスペンスは難しいと思う。 一冊の本ならラスト手前まで伏線を張りつつ緩急をつけて最後にどんでん返し、という「じっくりストーリーを作る」も出来るが、連載だとその話ごと(三話ごとくらいには)引きを作らないといけない。 そのため、サスペンスは後でゆっくり考えた時に「矛盾だらけだ」と感じても、読んでいる間が面白ければいいかなと思うようにしている。(読んでいるあいだに「うん?」と思うものはどうかと思うが) 「君が獣になる前に」も基本的には、この…

  • 【「エネアド(ENNEAD)」シーズン1考察】設定&疑問点からの考察まとめ。

    「エネアド(ENNEAD)」のシーズン1を読み返して設定と疑問点のまとめ、そこから考察をしてみた。(*シーズン1のネタバレあり。注意) エジプト神話の死生観を頭に入れると、話が理解しやすい。 シュト(影)と鏡、セクメトとハトホルの関係。 太陽神ラーの目的 その他の疑問 エジプト神話の死生観を頭に入れると、話が理解しやすい。 「エネアド」のストーリーは「エジプト神話」の死生観が大きく関わるが、特に詳しい説明がされずにそれが当たり前の前提として話が進む。 これを押さえておかないと話がわかりにくい。 「エジプト神話」において、人間は カー=魂 バー=個性、人格 レン=名前 シュト=影(人の中に潜んで…

  • 【小説感想】「クイズ」という異世界を描く、小川哲「君のクイズ」の三つの読みかた。

    インタビューの答えがそのまま書いてあった。 www.saiusaruzzz.com 小川哲のインタビューを読んで、「君のクイズ」に興味を持ち読んでみた。 自分は創作を読む時には作者という概念が頭から消えるタイプなのだが、これは読み終わったとあとに「インタビューの答えがそのまま書いてあったな」と思った。 *以下はネタバレが含まれる感想なので注意。 「君のクイズ」は自分にとって、三つの読みかたが出来る話だった。 ①クイズという競技の特性と競技者であるクイズプレイヤーの思考について。 ②クイズに仮託された主人公の世界観、人生観。 ③本庄絆に集約されるものへの皮肉。 「クイズ」という異世界。 クイズは…

  • 「読者がどんな本を買うかは、僕が決めることではない」直木賞を受賞した小川哲のインタビューが凄く良かった。

    "> ">2022年1月24日(火)に読売新聞掲載されていた小川哲のインタビュー「直木賞に決まって」がとても良かったので、特に印象に残ったところを抜粋して紹介したい。 高校生のころから、ずっと心に決めているルールがある。 「自分の力ではどうしようもないことに対して、必要以上に思い悩まない」ということだ。(略) 結果がついてくるかはあまり気にしない。自分に決められることではないからだ。(略) 自分が考えることを伝えることはできるけれど、他人の考えや信念を変えることはできないかもしれない。それは仕方がないことだ。(略) 僕ができることは、自分が信じる「面白さ」を追求することだけだ。(略) その結果…

  • 【映画感想】「THE FIRST SLAM DUNK」は、原作と何が違うのかを熱く語りたい。

    *本記事には映画「THE FIRST SLAM DUNK」、漫画「SLAM DUNK」のネタバレが含まれます。ご注意ください。 【映画パンフレット】 THE FIRST SLAM DUNK 監督:井上雄彦 声の出演:仲村宗悟、笠間淳、神尾晋一郎、木村昴、三宅健太 スラムダンク 東映 Amazon 噂にはちらほら聞いていたが、まったく別物で驚いた。ストーリーが土台から違う。 「主人公を宮城に変えた」というより、「描きたいことがまったく違うので、必然的に主人公が変わった」のではと思った。 原作者による「原作が解釈違い」である。こんなことがあるのか。 映画版と原作の違いは、23巻の水戸のセリフが表し…

  • 先日読んだ三角関係の恋愛漫画がすごく引っかかったので、何がそんなに引っかかるのか考えてみた。

    とある短編恋愛漫画の三角関係に引っかかるものを感じたので、何がそんなに引っかかるのか考えてみた。 諸事情*1あってタイトルは出さないが、読んだことがある人は設定ですぐに気付くと思う。 そこまで複雑な状況ではないので説明する。 状況説明 クロ、モモ、シロ*2は小学校時代からの幼馴染みで仲良し三人組。 クロはずっとモモが好きだった。 しかしある日、モモに「ずっとシロが好きだった。中学卒業と同時に告白しようと思っている」と言われる。 クロは何も知らないシロに策略を仕掛け、シロが告白を断る方向へ持っていく。 策略が当たり、シロはモモの告白を断る。 傷ついて落ち込んでいるモモにクロは告白し、二人は付き合…

  • 【ゲーム感想&考察】「夜廻」 ゲームとしては難ありだが、「夜の町を一人で探検する怖さ」が秀逸すぎる。

    *ネタバレあり。未プレイのかたはご注意ください。 夜廻と深夜廻 for Nintendo Switch - Switch 日本一ソフトウェア Amazon 感想:「夜」を怖さを「これでもか」と楽しめる。 「夜廻」の二周めをクリアした。 一周めは途中で嫌になるくらい死にまくったが、二周めはパターンを覚えていたのでさっくりクリアできた。 ゲームはごく単純なステルスゲームなので、面白さの肝がゲーム部分であれば二周めはやろうとすら思わなかっただろう。 二周めが面白かったのは、このゲームの難である「ゲーム性」がほぼなくなり、夜の町を歩き回る楽しさ、その雰囲気、謎めいたストーリーを十分楽しむことが出来たか…

  • エジプト神話の構造や要点がとってものみ込みやすい。「ゼロからわかるエジプト神話」

    「エネアド」にハマった勢いで、「エジプト神話について読んでみよう」と思い購入。 ゼロからわかるエジプト神話 (文庫ぎんが堂) 作者:かみゆ歴史編集部 イースト・プレス Amazon 作内で当たり前のように語られている「死者の魂を集めなければ呪いになる」などが、どういう設定なのかを知りたかった。 他の宗教のように「魂が離れたから死者になる」のではなく、「死者にとっても魂が重要なのだろう」と何となくはわかる。 ただ周辺の設定を理解していないと、作内で起こっている事象の意味が完全には把握できない。それでも十分面白いが、学べばもっと面白さが広がると思い読んでみた。 「エジプト神話」は、様々な地域の伝承…

  • 【漫画感想】モクモクれん「光が死んだ夏」2巻まで。ホラーではなく恋愛ものだった。

    「このマンががすごい! 2023」オトコ編で一位になった「光が死んだ夏」を二巻まで読んだので、その感想。(ネタバレ注意) 光が死んだ夏 1 (角川コミックス・エース) 作者:モクモク れん KADOKAWA Amazon 二巻まで読んだ感想は、「ホラーではなく恋愛モノだな」というものだ。 最近読んだものの中では「大蛇に嫁いだ娘」に似ている。 主人公のヨシキにとっては、光(に擬態しているもの)よりも村のほうが「異世界」であり怪物だった。 「村」はどこに行っても自然音がうるさく、思考を邪魔する。道に咲いているひまわりは不気味で、今にも動いてヨシキを食べそうに見える。 (引用元:「光が死んだ夏」1巻…

  • 【映画感想】「罪の声」 前半はスピーディな謎解き展開が面白い。後半は犯人たちの行動に「?」となる。

    *ネタバレあり。未視聴のかたは注意。 罪の声 小栗旬 Amazon 未解決のまま時効を迎えた「グリコ・森永事件」をモデルにした話。 前半は、一本の糸を引っ張ると芋づる式に謎が次々と明らかになっていくスピーディーな展開が面白い。 冷静に考えれば、いくら事件が時効になって過去の話になっているとはいえ、一介の記者がちょっと調べるだけでこんなに事件の背後や枠組みが明らかになるなら、警察がもう少し何とか出来たのではないか、聡一郎もよく青木組に捕まらなかったな、と思う。 ただこれだけ複雑な話をわかりやすく飽きさせず見せるためには、仕方がないのかもしれない、と納得できる。 問題は後半だ。 達雄が考えた犯罪の…

  • 「殺人を犯さなければ人間になれなかった」という矛盾をどう考えるのか。永山則夫「無知の涙」

    無知の涙 (河出文庫) 作者:永山則夫 河出書房新社 Amazon 「無知の涙」を初めて読んだのは、永山則夫がこの本を書いたのと同じくらいの年齢の時だった。 その時は「何の罪もない人を四人も殺しているのだから、どんな言葉も言い訳でしかない」という気持ちしかなかった。 今回久し振りに読んでみたら、以前とは見方が変わった。 「自分の苦しみに社会は応えようとしてくれなかった。顧みることすらしなかったのに、殺人を犯したら自己実現できてしまった」 この事実は、本人にとっては*1殺人さえ肯定出来てしまうような強烈な根拠になりうる。 「殺人を犯さなければ、自分は一生知識を与えられず牛馬のように生きていくしか…

  • 「2023年は、何に優先して時間を使うか」をきちんと考えて、それに取り組む年にしたい。

    2022年もあと三日だ。はええええ。 個人的には、2022年は遊び呆け過ぎたという反省が大きい。 ネットで色々やりすぎ。 7月時点で考えた「やりたいことリスト」が役に立っていなさすぎてびっくりする。 やりたいことがたくさんあって時間が足りない。焦らないように、「やりたいことリスト」を作って頭を整理したい。|うさる|note 7月に「これじゃあ駄目だ、使える時間は限られているのだから優先順位をつけなければ」そう思って頭を整理した。 何でも早く出来る、効率よく時間を使える人ならいいのだ。(羨ましい……) 自分はそうではない。何をやるにも時間がかかる。 単純に速度が遅いというのもあるし、例えば隙間時…

  • 本郷和人「承久の乱ー日本史のターニングポイントー」 「後鳥羽上皇はなぜ、幕府に戦をしかけたのか?」など、この時代のポイントがスルスルわかる。

    本郷和人の「承久の乱ー日本史のターニングポイントー」を読んだ。 承久の乱 日本史のターニングポイント (文春新書) 作者:本郷 和人 文藝春秋 Amazon 「鎌倉殿の13人」が始まるから書かれた本なのかなと思ったら、ドラマの情報が何もない段階で出版されたようだ。 ぼくはそもそもが、鎌倉時代を専門とする研究者です。(略) でもこのあたりのことって、なかなか大河ドラマにもならないし、大ヒット小説もないので、みなさんには縁が無い。(略) 北条義時、だれそれ? まあ、その程度です。 (引用元:「承久の乱ー日本史のターニングポイントー」本郷和人 P216 ㈱文芸春秋/太字は引用者) 初版が2019年の…

  • 【大河ドラマ「鎌倉殿の13人」感想】「義時、本当にお疲れ様」それしか出てこない。

    *ネタバレ注意。 ついに終わってしまった。「鎌倉殿の13人」が。 あれほど様々な人が出てきて、色々なことがあったにも関わらず、「鎌倉殿の13人」は自分にとっては最初から最後まで義時の物語だった。 伊豆の名のない家の次男坊に生まれて、気がいいだけの父親と気宇壮大な兄、気の強い姉と妹に挟まれて、家の中でさえ目立たない地味な存在だった。 義村が最後にぶちまけていたように、冴えない真面目であることだけがとりえの、その真面目ささえも、時に空気の読めなさや不器用さとして出てしまうような男だった。 表向きのことは人付き合いのいい父親や人を惹きつける明るさのある兄が引き受け、面倒な裏方のこと、細かいことは全部…

  • 【漫画感想】「住みにごり」2巻まで。引きこもりの兄、寝たきりの母、モラハラ気質の父、出戻りの姉。「家族」という異質で怪物のように不可解なもの。

    住みにごり(1) (ビッグコミックス) 作者:たかたけし 小学館 Amazon 主人公の末吉は都会での生活に疲れ、仕事を辞めて故郷に戻って来る。 実家は寝たきりの母親とその面倒を見るモラハラ気質の父親、離婚して戻って来た姉、そして二十年近く部屋に引きこもっている兄がいる。 「住みにごり」は、冒頭、引きこもりの兄が無差別通り魔殺人を行う夢から始まる。 末吉の家族は兄フミヤだけではなく、それぞれが問題を抱え、お互いに色々な感情を抱えている。家の中の空気は澱み続け、常に不穏な空気が流れている。 何かひとつ要素が加わったら即座に黒いものが溢れ、何かが暴発する。そういう状態から始まる。 だからストーリー…

  • 「承久の乱」について。他の歴史解釈と「鎌倉殿の13人」のストーリーの違い。&第47回「ある朝敵、ある演説」の感想。

    承久の乱「後鳥羽上皇」惨敗させた三浦義村の決断 歴史 東洋経済オンライン 社会をよくする経済ニュース 「吾妻鏡」における「承久の乱」が始まるまでの、主に三浦家の動きの解釈を書いた記事を読んだので、「鎌倉殿との13人」のストーリーと読み比べてみた。*1 *以下引用はすべて上記記事より。太字は引用者による。 義時が名指しされていることから、「後鳥羽上皇の目的は倒幕ではなく、義時を討つことだった」とする説もある。(略) 幕府の最高権力者である義時を征伐するということは、幕府を無力化することにほかならず、目的は「倒幕」以外のなにものでもない。これが「承久の乱」の始まりである。 「義時を討つ…

  • 「マツコ会議」感想。大人気ホラー作家・雨穴から大ヒットの極意を学ぶ。

    「マツコ会議」に雨穴が出る、ということで、朝から楽しみすぎてそわそわしていた。 23時の15分前には、やること全部済ませてテレビの前で待っていた。 最初、マツコが雨穴にもホラーにも余り興味がなさそうなのが気になった。 これは余り深堀りされず面白くないかもしれない。 そんな不安が心をよぎった。 だが後半は、マツコが雨穴の作品というよりは、雨穴という人に興味を持った感じが伝わってきた。 「だんだん可愛く見えてくる」 とマツコが言ったように、雨穴のキャラはホラーの語り手によくある「怖い」「不気味」「おどろおどろしい」という感じではない。「ゆるく抜けた」感じだ。 戦略的にやっているなら、「少し抜けたキ…

  • 好きなゲームミュージックの思い出を適当に語りたい。

    はてブのホッテントリにゲームミュージックの増田が上がっているのを見たら、急に話したくなったので話したい。 *発売からだいぶたったゲームのネタバレが多少含まれています。ご注意下さい。 最近何故かループし続けているのが、「ストリートファイターⅡ」のバルログのテーマ。バルログ自体はほとんど使ったこともなく何の思い入れもないが、曲は好きだった。 情熱、狂気、サディズム、美しさが凝縮されたような曲だな、といま聴くと思う。子供のころ、ストⅡのBGMに歌詞がついたのを友達から借りた記憶があり、何故か未だにバルログだけは歌える。 懐かしくて少し調べたら、海外ではバルログとベガの名前が入れ替わっているなど色々逸…

  • 【大河ドラマ「鎌倉殿の13人」】山本耕史が語る「三浦義村はどんな人物か」が面白すぎる。

    昨日も滅茶苦茶面白かった。 ここまでアッと言う間だった。 あと二回かあ。もっと続いて欲しいと思ってしまう。 と思いながら、今朝、三浦義村を演じる山本耕史のインタビューを読んだ。 www.nhk.or.jp 「演じる役だから考える」ということとは別に、単純に「演じる俳優が自分の役を他人として見た時に、どういう人間と考えているのだろう」ということに凄く興味がある。 山本耕史から見た義村像は、「そこが義村の面白さだよな」と何度も頷くものだった。 *以下引用は全て上記インタビューより。太字は引用者による。 義村は、自分の得になることのためなら何でもする人という感じがするんです。 だから、幼なじみである…

  • 「フェイクの氾濫に立ち向かうには」を読んで考えた、情報の見極め方、付き合い方。

    2022年11月27日(日)読売新聞朝刊に掲載された、シンポジウム「『虚実のはざま』報道から考える~フェイクの氾濫に立ち向かうには~」を読んだ。 情報の真偽の見極めかたや情報との付き合いかたについて、自分の考えと重なる部分が多かったので、頭の整理がてら感想を書きたい。 「陰謀論」には依存性があり、誰もがハマる可能性がある。 「コロナ陰謀論」を信じ、感染対策を拒否するようになった居酒屋店主や、一人暮らしの無職の男性らのケースを桑原記者が報告。 自粛要請などで廃業の危機にさらされたり、人と会う機会が断たれたりする状況でSNSの言説に引き込まれていったと明かし、「背景に社会への不満や不安、孤立などが…

  • 【漫画感想】BLに興味がない自分がドハマりした「エネアド(ENNEAD)」の、どこがそんなに面白いかを語りたい。

    "> ">今までBLはほとんど読んだことがなかったが、「エネアド(ENNEAD)」は無茶苦茶面白くハマっている。 ">個人的には「エネアド(ENNEAD)」はBLというジャンルを超えて、普遍的なことが描かれていると思う。 "> ">*ネタバレ注意。 "> 「エネアド」は、「普通の男・セト」が抱く「自分とは何なのか」という存在不安を描いた物語。 「エネアド」の主人公・セトは、善良で家族思い、友人を大切にし、社会で責任を果たし、乱暴な言動をとることもあるが基本的には優しいごく普通の男だ。 (引用元:「ENNEAD」5話 MOJITO) そんな「普通の男」であるセトが「社会の中で生きることによって封…

  • 【映画感想】「シン・ウルトラマン」シンプルでいながら一本芯が通ったストーリー。特撮やウルトラマンに興味がなくても面白かった。

    *本記事にはネタバレが含まれます。未視聴のかたはご注意下さい。 シン・ウルトラマン 斎藤工 Amazon 「シン・ゴジラ」が面白かったし、休みだし観てみるか、くらいの軽い気持ちで見出した。 意外や意外、まったく前知識のない人間でも開始五分で話にのめり込める。格闘あり、陰謀あり、笑いあり、葛藤あり、感動ありで二時間飽きることなくスルスル見れた。 最初の怪獣と二番目の怪獣は、寄りで見せられると明らかに古き良き昭和の作り物感がある。 それを見た瞬間にリアリティなんて木っ端微塵になる……と思いきや、まったくそんなことがない。 リアリティを感じるか否かというのは、実はリアルに則しているかどうかは余り関係…

  • 【映画感想】「すずめの戸締まり」に色々と疑問や不満を感じたので語りたい。

    「すずめの戸締まり」を観てきた。 リアルで知人から「面白かったか?」と聞かれたら、「けっこう面白かった」と答えると思う。 これはこれで素直な感想だ。 ただリアルではたぶん話さない、クソ面倒臭い疑問や不満もあるので、聞いてもいいという人は良かったらお読みください。 ※前振り。 www.saiusaruzzz.com ※以下ネタバレ注意。 ミミズは歴史を貫いて、この地に流れ続けるものである。 自分は「すずめの戸締まり」は、その場所に住む人、生きてきた人の「集合的記憶」をどう扱うべきか、という話として観た。 人の記憶(歴史)というのは、その地で育ってその地そのものになる。 その記憶の集合体が方向性を…

  • 「ほう、では見せてもらおうか。お前が言う『他者を真剣に知る』とは何なのかを」(2022年11月16日(水)読売新聞掲載の新海誠のインタビューの感想。)

    イキリタイトル済みません、新海作品のファンです。(秒で謝る) 2022年11月16日(水)の読売新聞に「すずめの戸締まり」と過去作品について、新海誠のインタビューが掲載されていたのでそれを読んだ感想。 新海誠の作品は、「自分にとってのみの世界の意味」を語っている。 この傾向は「秒速五センチメートル」で最も顕著で、「現実とは異なる法則の、『秒速五センチメートル』の世界で生きている人間から見た世界の姿」が描かれている。 「自分にとっての意味が全てであり、それによって世界の究極的な法則である時間も空間も超えうる」 自分は新海作品のこういうところが凄く好きだ。 若い頃は、自分自身が未知なる他者であり、…

  • ポストコロニアルフェミニストによる西欧知識人への告発。「サバルタンは語ることができるか」

    サバルタンは語ることができるか (みすずライブラリー) 作者:G.C. スピヴァク みすず書房 Amazon インド出身のフェミニズム批評家スピヴァクの代表作「サバルタンは語ることができるか」を読んだ。 この本は1972年に公開された「知識人と権力」というフーコーとドゥルーズの対談……二人を代表とする西欧の知識人への批判として書かれている。 独特の言い回しが多い思想的論文の中では比較的読みやすいものの、それでも意味がつかみづらい箇所がところどころあった。 自分が読み取れた限りの内容で、感想を書きたい。 *正確な内容は、原文を読まれることをお勧めします。 各章の内容 第一章 西欧知識人は思考の枠…

  • 【その2・王位継承の設定&ルール編】「HUNTER×HUNTER」の暗黒大陸編の設定が余りに複雑すぎるので整理してみた&王子たちについて雑感。

    「HUNTER×HUNTER・暗黒大陸編」の情報整理。 前回は「出航前の状況」を整理した。 www.saiusaruzzz.com 今回はカキン帝国の王位継承について、主に参加する十四人の設定を整理してみた。 カキン帝国王位継承戦の勝者の条件 十四人の王子のうち 「生き残った唯一名が王位継承者」 「それをどう解釈するかも含めての王位継承戦」(363話) 継承戦のルール ①王族殺しは一族もろとも処刑。(365話) ②王妃といえども王子を暗殺すれば投獄される。(360話) ③王子たちにとっても王族殺しは極刑。(389話) 王妃同士には序列がある。 ①下位の王妃から上位の王妃には連絡出来ない。 ②上…

  • 【その1・出航前の状況編】「HUNTER×HUNTER」の暗黒大陸編の設定が余りに複雑すぎるので整理してみた&自分にとって「HUNTER×HUNTER」が複雑な理由。

    *本記事には冨樫義博「HUNTER×HUNTER」の32巻以降のネタバレが含まれます。未読のかたはご注意ください。 HUNTER×HUNTER モノクロ版 33 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:冨樫義博 集英社 Amazon 11月4日に37巻が発売されたが、案の定以前の設定を忘れている。 また続きが出た時に、「どういう展開だったか」を一から把握しなきゃならない*1のは大変なので、次巻以降のために自分がわかりやすいように設定を整理しておこうと思った。 そもそもの始まり。カキン帝国が暗黒大陸への進出を宣言。 カキン帝国の国王ホイコーロが暗黒大陸への進出を宣言し、その総責任者としてネテ…

  • 創作で、キャラを分裂させて自己葛藤を描くときに重要になる「フェアさ」とは何なのか。

    *独自解釈に基づく話です。 *この記事には、ドラマ「Nのために」と漫画「アスペル・カノジョ」のネタバレが含まれます。 www.saiusaruzzz.com 「アスペル・カノジョ」は何かに似ていると思って、思い出したのがドラマ「Nのために」だ。 www.saiusaruzzz.com 自分の中ではこの二作は、両方とも「自分が持つ『生きづらさ』から避難するために一時的に分裂していた『自己』を、統合させる過程の話」だ。 「アスペル・カノジョ」では、メタ横井が自身の生きづらさを仮託した恵を切り離すことで、とりあえず作内の横井を生き延びさせた。 「Nのために」では、希美が生きるために捨てた「母親を捨て…

  • 【最終的な感想】今まで本当にごめん。「アスペル・カノジョ」は素晴らしい漫画だった。

    *漫画「アスペル・カノジョ」の結末までのネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 これまでのあらすじ。 「アスペル・カノジョ」は、主人公が「物語世界」にいない。 「なぜ、主人公のお前がここにいる?」という驚愕。 「アスペル・カノジョ」の真の主人公・メタ横井は、物語の外の世界にいる。 「作内横井」と恵は、両方ともメタ横井の分身である。 恵は、二人の横井の「生きづらさ」そのもの。 メタ横井は、自分と「自分の生きづらさ」が出会い共に生きる「アスペル・カノジョ」を描いた。 まとめ:観客席でずっと怒り続けていたから、自分も「参加した」という楽しさがある。 余談1:赤川は、社会に出て二十年後の横井…

  • 【漫画感想】「アスペル・カノジョ」自分がこの話に持った最大の疑問は、「なぜ横井がこの話は自分自身の問題と認めて、自分で物語を語らないのか?」ということだ。

    www.saiusaruzzz.com 六巻までで読むのを止めたが、「せっかくだし最後まで読もうかな」と思い、全12巻を読んだ感想。 読むのを止めた理由は、 「なぜ横井がこの話は自分自身の問題と認めて、主体としてこの物語を語らないのか?」 ということが納得にいかなかったからだ。 最終巻まで読んで「まあ仕方ないのかもな」と思い直した。 ただ「なぜ、『アスペル・カノジョ』は本来、横井が語るべき物語だと思うのか」をせっかく書いたので話したい。 *タイトル通り、主人公・横井に対して批判的な内容です。 自分が前回の記事で書いた、「『アスペル・カノジョ』は、横井→恵の『信仰型恋愛』ではないか」ということは…

  • 自分が横井に厳しすぎるんだろうな。

    www.saiusaruzzz.com www.tyoshiki.com 言及ありがとうございます。 記事を読んで「確かに最後まで読んでみないとわからないな」と思ったので最後まで読みました。 「アスペル・カノジョ」は「信仰型恋愛」なのに普通の恋愛のように恵が側にいて交流も出来るところがその型を隠蔽している、と思ったのですが、最後まで読んで「(自分が考える)信仰型恋愛」ではない、と納得しました。 この点については訂正します。 自分が考える「信仰型恋愛」は、 ①信仰者(主体)しか、その世界に存在しない。 ②主人公たちは相手の女性を閉じ込める力があるから、「交流・接触すること」は禁忌である。 基本的…

  • 【漫画感想】「44歳処女の末路」に自分がリアリティを感じない理由。

    noteのほうで、自己肯定感の低下には罪悪感ルートと無価値感ルートがあるのでは、という自分の考えを書いた。(※あくまで個人的な考え) 罪悪感と無価値感にまつわる、人間関係で生じやすい問題について考えたこと。|うさる|note 話を簡単にまとめると、 罪悪感ルート 「自分は状況を何とかする力があるのだから、責任がある。状況を何とかできなければ存在はマイナスである」という感覚から生じやすい。 高じると「価値の搾取」という支配を行いやすい。こじらせると被害者としての自分を一切認められなくなり「俺は強い。俺は悪である」という猗窩座のような状態になる。 無価値感ルート 「自分は弱く、世界を変える力がない…

  • 【漫画感想】「アスペル・カノジョ」を6巻まで読んだが、物語の構図に大きな疑問がわいて読めなくなった。

    *タイトル通り批判的な感想です。 アスペル・カノジョ(1) (コミックDAYSコミックス) 作者:萩本創八,森田蓮次 講談社 Amazon 「アスペル・カノジョ」を6巻まで読んだ。 どうにもこうにも読むのが苦痛になったので、読むのを止めた。 その理由を自分の頭の整理がてら書きたい。 読むのを止めた理由は、「発達障害の描写」とは関係がない。むしろその点については、発達障害の一事例を知れたのでとても良かった。 横井や恵に自分と重なる点が多くあり、作内で二人も言っているが、「自分だけじゃなかったんだ」と思うことが何回かあった。 この話が「発達障害自体がテーマ」(つまり恵のほうが主人公)だったら、たぶ…

  • 【小説感想】雨穴「変な絵」 謎めいたバラバラのピースが一枚絵になる爽快感がたまらない。

    *物語の核心以外の若干のネタバレがあります。未読のかたはご注意下さい。 楽しみにしていた雨穴「変な絵」が発売されたので、さっそく購入した。 ほぼ一気読み。 変な絵 作者:雨穴 双葉社 Amazon 前回の記事で書いた通り、雨穴の話は導入から中盤までは滅茶苦茶面白いのに、「落ちが強引すぎる」と思うことが多い。 しかし「変な絵」はそんなことはなく、オチまで大満足だった。 なぜ「変な絵」に限っては、「オチも大満足」だったか。 話の造りが従来のものと違うからだ。 ストーリー自体は(言っては悪いが)それほど大したものではなくありきたりなものだ。 だが「このストーリーをその角度から見せるか」「そういう構成…

  • 「変な家」「変な絵」で有名な雨穴のミステリー「謎解きモキュメンタリー動画」の感想まとめ。

    変な家 作者:雨穴 飛鳥新社 Amazon 「変な家」で有名な雨穴のYouTube動画を何本か見たので、感想のまとめ。 ★【奇妙なブログ】消えていくカナの日記(17:54) 見た中では一番面白かった。 内容はシンプルで雨穴の話にしてはオチに捻りないが、むしろそこが良かった。 他の話は自分の好みからすると趣向を凝らしすぎなのかなあと感じた。 ★とある一軒家で見つかった、不気味なビデオテープの真相 (49:00) 動画ではなくオモコロの記事で読んだ。 オチはツッコミどころが多いが、中盤までは安定の面白さだった。 ★【ミステリー】人形に録音された、子供の声の謎(49:58) これも面白かった。 オチ…

  • 冨樫義博「HUNTER×HUNTER」の連載が再開するので、31巻(ハンター協会会長選挙&アルカ編)から、36巻までストーリーをおさらいしたい。

    10月24日発売のジャンプから、「HUNTER×HUNTER」の連載が再開するらしいので、これを機会にうろ覚えの31巻からストーリーをおさらいしてみた。 *ネタバレ注意。 31巻~32巻「ハンター協会会長選挙&アルカ編」 前会長ネテロが死んだため行われたハンター協会の会長選挙と、念能力の誓約のために呪われたゴンを助けるために、キルアが奮闘する話が同時並行で進む。 まったく関連性のない話だが、最終的にうまく合流するので何となくつながっているように見える。 あれだけ色々と条件を説明しておいて「キルアの命令ならナニカはノーリスクで何でも聞いてくれる」というオチは、理屈だけで考えるとずっこけそうだ。 …

  • 【「エルデンリング」キャラ語り】「黒き剣のマリケス」の魅力は、その献身の意味のなさ、報われなさにある。

    *ネタバレ注意。 www.saiusaruzzz.com この記事で書いた通り、「エルデンリング」で一番好きなキャラは「黒き剣のマリケス(獣の司祭グラング込み)」である。 マリケスのどこが好きか? と聞かれると「全部」だ。その「全部」の中身である、どこがどう好きかを細かく語りたい。 好きなポイント① 第二形態のビジュアルが滅茶苦茶カッコいい(語彙力) マリケスの好きな点のひとつめは、第二形態のビジュアルの美しさだ。 ぬいぐるみみたいなグラングが、左手に埋め込まれた死のルーンの封印を解き、黒剣を引き抜く。そしてローブを脱ぎ捨てると、 (©フロムソフトウェア) これである。 初見ではムービーの余り…

  • 10月7日(金)のアメーバテレビのひろゆきの「辺野古取材を放送 “座り込み”めぐる議論」の冒頭五分を見た感想。

    「アベプラ」でひろゆき氏の辺野古取材を放送 “座り込み”めぐる議論で怒号が飛ぶ場面も…(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース 話題になっているのでちょっと見てみたが、開始五分くらいで頭が疑問だらけになった。 自分が見た冒頭の流れ。 ①ひろゆきが「座り込み場所」に行ったときに、誰もいなかったから看板の前で写真を撮り、「座り込み抗議が誰もいなかったので、0日にした方がよくない?」というツイートをして帰って来た。 ②ツイートに対する反応の中で「座り込みは工事車両が来る9時、12時、15時に合わせて行われます」というものがあったので、次の日の15時に再び座り込みの場所に向かった。 ③反応の通…

  • ミャンマーの問題の原因は何なのか。「ビルマ 危機の本質」

    www.saiusaruzzz.com ミャンマーの軍事クーデターについて上記の番組を見た時に、 なぜ軍がこれほど過酷に自国民を弾圧できるのか。軍の内部でも何か疑問は出て来ないのか。軍部のほうが選挙で選ばれた政治家よりも圧倒的に力が強いように見えるが、どうしてこんなパワーバランスになっているのか。 自分の中にこういう疑問があった。 その疑問については 「まがなりにも国家に所属する軍隊が、権力を握るためにクーデターを起こした」と考えていたが、そもそもミャンマー軍は政治からは……というより国家(国民)から完全に切り離された組織のようだ。 「国の軍隊」というより、「国の内部に存在する、国家とはまった…

  • 【大河ドラマ「鎌倉殿の13人」キャラ語り】魔性の女・りくの魅力は「私のことを殺そうとしたでしょ?」という言葉にある。

    ついに時政とりくが退場か。寂しいな。 特にりくは、こんなに面白い女性キャラをみたのは久し振りだと思うくらい魅力的なキャラだった。 りくという女性が、よく理解できなかった。 自分にとってのりくの面白さと魅力は、まったく理解できないところにある。理解するとっかかりすらない。 りくの言動は一貫性があるようでない。表層的には野心と上昇志向がモチベーションのように見えるが、本当に「偉くなりたい」と思っているようにも見えない。 一体、りくは本当は何を求めているのか。何がりくにとって重要なのか。 野心なのか、恐怖なのか、悲しさなのか、不安なのか、愛情なのか。 そのどれにも見えるし、どれにも見えなかった。 り…

  • 【映画感想】「竜とそばかすの姫」 細田守作品がなぜ面白く思えないのか。その理由を小一時間考えてみた。

    ※この記事には「竜とそばかすの姫」のネタバレが含まれます。未視聴のかたはご注意下さい。 ※タイトル通り、否定的な内容です。 竜とそばかすの姫 中村佳穂 Amazon 細田守の作品は「バケモノの子」以外は全部観ているが、観るたびに一体、なぜ面白くないのだろう*1と考えてしまう。 「細田守の作品の面白くなさ」は説明しづらい。 あと数センチずれれば、面白くなるのに、なぜその数センチをずらすのか? どの作品を見ても「その数センチが絶対必要だと思ってずらしている」とは思えない。 逆だ。 「その数センチが絶対必要だからずらしている」のではなく、絶対に譲れないポイントをつなぐためには、他の部分はズレてもいい…

  • 【漫画感想】「葬送のフリーレン」9巻まで。ヒンメルが生きた「今」とフリーレンの記憶が重なるたびに、涙が止まらん。

    *「葬送のフリーレン」9巻までのネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 葬送のフリーレン(9) (少年サンデーコミックス) 作者:山田鐘人,アベツカサ 小学館 Amazon アニメも始まるので、1巻から読み直そうと思ったら結局9巻までいっき読みしてしまった。 何を見ても、どの展開でも涙が止まらない。ずっと泣きながら*1読んでいた。(大丈夫か) 「葬送のフリーレン」は、終始一貫して「人を理解するとはどういうことか」を語っている。 フリーレンはエルフであることもあり、人を理解することが苦手だ。10年一緒に旅をしたヒンメルのことも、ヒンメルが死んでしまってから「何も知らなかった」と気付く。…

  • 映画「容疑者Xの献身」を通算五回は観ている人間の、超個人的物語解釈&泣きポイント。

    ※本記事には映画「容疑者Xの献身」のネタバレがあります。ご注意下さい。 容疑者Xの献身 福山雅治 Amazon 映画「容疑者Xの献身」*1を見るのは、通算五回目くらいだ。 この話の個人的な解釈を以前noteに書いたが、今回観て少し考えが変わった部分もあるのでもう一度考えを整理して書きたい。 映画「容疑者Xの献身」は、石神の信仰と殉教の物語。 原作「容疑者Xの献身」は、湯川と石神という二人の天才の才能がぶつかり合う、湯川が主人公のミステリーである。 映画「容疑者Xの献身」は、同じ筋だが描いていることはまったく違う。映画は石神を主人公とした信仰と殉教の物語である。 石神がルサンチマンに陥らなかった…

  • 【映画感想】芦田愛菜主演「星の子」 社会と教団に共通する構造を、新興宗教信者二世の少女の視点を通して暴く傑作

    *映画「星の子」のネタバレがあります。未視聴のかたはご注意下さい。 星の子 芦田愛菜 Amazon 現在、元首相殺害事件に関連して「宗教二世問題」が注目されている。 自分が見たところでは、「星の子」は「宗教二世問題」ではなく、*1それをモチーフにしてまったく別のことを描いている。 この話で最も重要なのは、ちひろ視点で見た時の伯父の言動の頓珍漢さ 「ひかりの星」の胡散臭さを的確に見抜き、ちひろの母親やちひろを懸命に信仰から引き離そうとする伯父一家が、ちひろの視点で見ると頓珍漢なことを言う話が通じない人たちに見える。 この話で最も重要な点は、ここではないか。 なぜ伯父一家が滑稽に見えるかと言うと、…

  • 学生運動当事者「n=1」のうちのオカンのフェミニズム精神。

    小説で「台風だしピザでも頼む?」と攻めが言い出した…倫理観の違いで読めなくなることあるよね「鬼畜攻めかよ」 - Togetter 先日、うちのオカンと話していたら*1 「あさま山荘」籠城―無期懲役囚・吉野雅邦ノート (祥伝社文庫) 作者:大泉 康雄 祥伝社 Amazon この本の話になった。 あさま山荘の立てこもった犯人の一人・吉野雅邦の生い立ちや、山岳ベースのリンチ殺人で亡くなった金子みちよさんとの交際について、吉野の親友の大泉康雄さんが書いた本だ。 自分は連合赤軍関連の本の中では、この本が一番好きなので意気揚々と 「あの本いいよね」 と言いかけた、まさにその瞬間のこと。 なんということでし…

  • 学生運動の背景を知ることが出来る本の紹介をしながら、適当に雑談をしたい。

    少し前にネットで学生運動の話をよく見かけたので、自分が今まで読んだり聞いたりした話と合わせて雑談したい。 この時代の学生運動周囲の話を見ていくと、そのセクトや大学によってだいぶ雰囲気が違う。(考え方が違うので当たり前だが) 例えば立花隆の「革マル対中核」を読むと、革共同から分裂したこの二党派の大きな違いは、労働運動へのスタンス、どれくらい力を入れていたかのようだ。 革マル派の主目標は、なによりも革命をになうことができるプロレタリアートの前衛党の組織作りにある。学生運動については、それ独自の革命的の機能は認めず、『プロレタリアートによる学生の獲得』がスローガンである。(略) いってみれば、革マル…

  • 人は、何を見て「この話は嘘臭い」と思うのか。

    ママ友と浮気してる 増田(匿名ダイアリー)は半ばモキュメンタリー的に楽しむものだと思っているので、嘘松でもいい。 むしろそういうものと思っているのに、嘘臭く感じてまったく乗れなかったのは何故か。 自分が「ママ友と浮気してる」から感じた「嘘臭さ」は、「ママ友同士の恋愛(同性愛)だから」ではない。 この話で一番引っかかったのは、「子供の像」が頭の中にまったく浮かばなかったところだ。 子供の年齢や性格によって、何に気を付けるか、どういう動きをしなければならないかが変わるので、子供がどういう子供かは重要だ。 子供が何歳くらいか、どんな性格なのか、おしゃべりなのか無口なのか、父親との関係はどうなのか、自…

  • 鈴木エイトが、旧統一教会の問題の要点、政治家とのつながりがどう生まれたのかを語った「9月2日大竹メインディッシュ 」が面白かった。

    podcastqr.joqr.co.jp 大竹まことと金曜日担当の青木理が鈴木エイトをゲストに招いて、旧統一教会問題について話を聞いている。 「問題がある団体の政治への影響への批判」と単純に訴えるだけではなく、「なぜ、そういうつながりが出来たのか?」という流れを分析している。 かなり興味深かったし、思ったよりずっと面白かった。 三十分足らずの短い放送で上記に張ったリンクからすぐに視聴できるので、興味がある人は直接聞いてもらったほうがいいと思う。 以下は自分が興味を惹かれた部分のメモと感想。 引用はすべて放送から。特に注意書きがない場合は、鈴木エイトの発言。 最初は鈴木エイトが旧統一教会に関わっ…

  • 「エルデンリング」を165時間かけてクリアしたので、好きなキャラ・好きな武器・お世話になった遺灰・好きなテキストなど色々なベスト5を振り返りがてら語りたい。

    165時間かけてようやくクリアした。 マレニアで心が折れたので、とりあえず一回クリアしようと思いクリアした。 エンディングはラニエンドこと「星の世紀」だった。フィアエンドも見ようと思ったが、セーブのしかたを失敗した。クソ。 二周目もやる予定だが、せっかくなので振り返りがてら色々な分野の個人的なベスト5を語りたい。 「エルデンリング」のストーリーは、元々はそうとうえげつない現実に「神話」を被せているのではないかと推測している。 【「エルデンリング」ストーリー雑談】考えれば考えるほど、悪意に満ち満ちていてたまらん。|うさる|note *ネタバレあります。 ELDEN RING Windows版 オ…

  • 【小説感想】「硝子の塔の殺人」が自分に合わなかった理由を細かく考えてみた。

    *記事の性質上、内容の核心的なネタバレが含まれます。本編未読の人は、まず本編を読まれることを強くおすすめします。 硝子の塔の殺人 作者:知念 実希人 実業之日本社 Amazon 公平に考えて、面白いと思う人もそうとういると思う。 出来不出来、是非の話ではなく、完全に個人的な趣味嗜好の問題だ。 自分がこの話に引っかかる理由は、自分の中の「そういうもんだライン」を超えているからだ。 「そういうもんだライン」とは 「自分の感覚では現実的ではない、そんなことはまずないだろうと思うこと」を、無意識のうちに「そういうもんだ、創作なんだから」で処理できる基準のことだ。 「無意識のうちに」がポイントだ。 「無…

  • 【漫画感想】「十角館の殺人」全5巻 原作ファンも驚く衝撃の展開と感動の結末に大満足した。

    *本記事には原作及び漫画版「十角館の殺人」の重大なネタバレが含まれます。未読のかたはご注意下さい。 *原作未読の人はもちろん、原作ファンにもぜひ読んで欲しい。全五巻。 十角館の殺人(1) (アフタヌーンコミックス) 作者:綾辻行人 講談社 Amazon 漫画版「十角館の殺人」が完結していたので、未読だった四巻と五巻を購入して読んだ。 エラリイの恰好良さが異常。 松浦さんのまさかの名探偵ぶりに驚いた。 原作の咬ませ犬ぶりが嘘のようだ。 「犯人は君だね」 (引用元:「十角館の殺人」5巻 清原紘/綾辻行人 講談社) 殺されたルルウの眼鏡をかけるエラリイ。 「……張り切っていたのにな、編集長」というセ…

  • 「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」感想 「事実」や「現実」に迫るために必要なのは、「解釈しないこと」に耐えることではないか。

    *批判的な内容です。 デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本) 作者:河野啓 集英社 Amazon 「事実に迫る」うえで必要な要件。 自分が考える「事実に迫るノンフィクション」に必要なことは、第三者が検証が可能なこと、それが難しいのであれば検証可能なように常に配慮することだ。 人は同じ出来事を体験してさえ、物の見方、覚えていること、認識のしかたは千差万別だ。 だから「事実を知りたい」と思うときは、「こうだろう」という先入観は排して、自分自身や検証する他人の思考を誘導しないように、まず事実のみを組み立てる。 「一般的に考えればこうだろう」と思うことでも、調べたりデータを取った…

  • 「この本を立ち読みしたことで、オウムを脱会できた」というレビューが、滅茶苦茶興味深かった。

    Amazonで 狂信―ブランチ・ダビディアンの悲劇 人はなぜ“メシア”を求めるのか 作者:ティム マディガン 徳間書店 Amazon という本を見つけた。 1934年にプロテスタント系の異端セクトとして誕生した宗教団体「ブランチ・ダビディアン」の話だ。 「ブランチ・ダビディアン」は1993年2月に「ウェーコ包囲」と呼ばれる包囲捜索を受け、子供を含む多数の犠牲者を出したことで有名らしい。 ブランチ・ダビディアン - Wikipedia ウェーコ包囲 - Wikipedia wikiの記事を読んでみたが、知らないことばかりでこんな事件があったのかと驚いた。三十年も前のことだから事件当時のことを知ら…

  • 「フェミニズム系批評」から学んだフェミニズムの歴史まとめ

    「現代批評理論のすべて」の「フェミニズム系批評」の歴史は、フェミニズムそのものの歴史とも大きく重なっている、またフェミニズム以外の思想から大きな影響を受けたり考え方を援用しているので、流れをまとめてみた。 *自分が理解した限りのことを書いているので、より詳しく知りたいかたは自身で調べたり実際に本を読むことをお勧めします。 第二派フェミニズムの祖 ・ボーヴォワール(1908-1986) 第二派フェミニズムの祖。 唯物論的フェミニズムが主柱であり「身体は状況である」とした。 現在では構築主義(バトラーなどポスト構造主義フェミニズムがもたらした、男女というカテゴリー自体の疑義)の観点から批判もあるが…

  • 人は惰性で、人を殺し続けることが出来る。

    www.saiusaruzzz.com 前回書いたこの記事で、「日本軍の指導者に共通していたもの」について考えたが、書き終えたあとどうもしっくりこない。 そんなときに黄金頭さんの記事のこの箇所を読んで「おおっ」と声が出た。 アイヒマンが定年まで仕事をして、「退職しよう」といったところで、それはもう手遅れなくらい死んで死んで死んでいるのではないか。人間の弱さや怠惰さ、惰性、無気力を甘く見ているんじゃないのか。 おれが弱さや怠惰、惰性、無気力の体現者としてそれを言う。おれも簡単に殺せるなら、殺し続けることができるかもしれない。それで飯が食えるなら、それが日常になるだろう。そういうタイプだ。 (引用…

  • 「ビルマ 絶望の戦場」感想 日本軍の指導者の欠陥は「道徳的勇気の欠如」ではなく、「興味のない現実は無視すること」ではないか。

    NHKスペシャル「ビルマ 絶望の戦場」を見た。 有名なインパール作戦が失敗に終わった後、ビルマで一年間続いた撤退戦の詳細を追っている。 太平洋戦争は「絶望の戦場」ばかりだが、ビルマ撤退戦も悲惨なものだった。 当時の日本軍指導者に欠けていたのは、「現実を現実と認識する誠実さ」ではないか。 ビルマ方面のイギリスの司令官だったウィリアム・スリムは、「日本軍の軍指導者には『道徳的勇気』が決定的に欠けている。自分が間違いを犯したこと、計画が失敗して練り直しが必要であることを認める勇気がない」と指摘している。 「この当時の日本軍指導者には、何か共通したものが欠けていた」というのは自分もそう思う。ビルマ戦だ…

  • 「綾辻行人になりたかった」という言葉は、わからないからこそ心に残った。

    実家の兄ちゃんが貸してくれた知念実希人の「硝子の塔の殺人」を読んでいる。 硝子の塔の殺人 作者:知念 実希人 実業之日本社 Amazon 物語が始まってすぐに、投薬方法の特許を持ち、莫大な資産を築いた登場人物が「私は綾辻行人になりたかったんだ」(P38)というセリフを言う。 自分は「他の誰かになりたい」と思ったことがないので、この言葉に微妙な引っかかりを覚えた。 「(誰かになりたいと思う)私」が絶対的に存在するものではなく仮説的なものでは、というしち面倒臭い話はおいておいて、その人になってしまったら、作品を読者として読めなくなる。 綾辻行人になったら「館シリーズ」を読み手として読む楽しさを味わ…

  • 「ブログはオワコンだ」と言われれば、「そうかもしれないが、それが何か?」としか言いようがない。

    先日、はてブで「ブログはオワコン(意訳)」という記事があがっていた。 以前「はてなはオワコン」記事をどこかで読んだような……気のせいか? まあ人のことは自分がとやかく言うことではないので、きっかけはおいておいて「ブログはオワコンか?」という話に絞って話したい。 「ブログはオワコンなのか」という問いに答える前に、「オワコン」とは何かを考えたい。 自分が考える「オワコン」とは、「時代の方向性と合っていないために、大きな展望は見込めないもの」だ。 「オワコン」で(大きな展望が見込めなくと)も、ごく少数の愛好者が細々とその特性を維持すればいい。 という意見もあるが、「少数の愛好者に向けて、細々とその特…

  • 【「エルデンリング」ストーリー考察】「陰謀の夜」と「巨人の火の釜」のエピソードの類似性から、世界の全体像を探る。

    *記事の性質上、ネタバレがあります。 「陰謀の夜」と「巨人の火の釜」は、エピソードの型が同じ。 この話は因果関係でストーリーを組むのではなく、神話体系や童話集のように立体的に話を捉えたほうがわかるのではないか。 そう思ったのは、「死のルーン・陰謀の夜」関連のエピソードについて考えた時に、話の型が「火の巨人のエピソード」とまったく同じことに気付いたことがきっかけだ。 「『①神様』が自分を『②滅ぼせるもの』をなくそうとするが、なくすことが出来なかったために封じて、それを『③部下』に見張らせる。しかし見張りの隙をついて滅ぼせるものが『④盗まれた』ため、『⑤神様』は『⑥殺されて』しまう」 この筋の①か…

  • 「現代批評理論のすべて」から、フェミニズム系批評を読み直した学びと感想。

    現代批評理論のすべて (ハンドブック・シリーズ) 新書館 Amazon 「現代批評理論のすべて」を読み直している。 以前は余り興味がわかなかったフェミニズム系批評、ジェンダー系批評、クィア批評、ポストコロニアル批評が、今回は面白く感じた。 初版が2006年なので、現在はこの地点から話が進んでいると思うが、とりあえず本書に掲載されている「フェミニズム系批評」について読んだ感想と学びを書きたい。 ①女として読み、女として書く 冒頭にフェミニズム批評の定義が書かれている。 中立や普遍の名の下に行われてきた文学作品の解釈や価値評価は、実は男性中心主義的なものに過ぎなかった。 この認識に基づいた文学批評…

  • 「スピノザ 人間の自由の哲学」 スピノザの人生、思想、哲学とは何なのかを分かりやすく教えてくれる。「入門書」の銘に偽りなし。

    スピノザ 人間の自由の哲学 (講談社現代新書) 作者:吉田量彦 講談社 Amazon ちゃんと「入門」書だった。 スピノザについて、前から知りたいと思っていたので読んでみた。 哲学の入門書は「入門」と銘を打っていても、とても「入門」レベルではないことも多い。 自分が求める「その人物と思想の入門書」は ①最初に、その人の思想の全体像が提示されている。 ②その人がどうしてそういう思想に至ったかの、背景(生い立ちや経歴など)が紹介されている。 ③各著作はその思想の中でどこに位置しているか、各々の著作にどういうつながりがあるかが書かれている。 ④できれば、その人物の人柄が分かるようなエピソードが入って…

  • 【エルデンリング考察メモ4】歴史編その2:黄金樹以前~最初の王ゴッドフレイの時代~黄金樹時代~焼失まで。

    *記事の性質上、ネタバレが大量にあります。 *他のかたの考察は一切見ていません。 前回。アステールが飛来して、永遠の都が滅びる→シーフラ、エインシル河両文明が生まれたところまで。 www.saiusaruzzz.com 年表 ・黄金樹以前→永遠の都が滅び、大樹根が形成される。 ・黄金樹前史→竜王プラキドサクスの時代。 ・豊穣の時代→黄金樹の誕生→黄金樹が太陽のように温かく、人々に恵をもたらした。すぐに終わる。 ・巨人戦争→黄金樹を燃やす巨人の大釜の火を消すために始まる。マリカは勝利したものの火を消すことが出来なかったため、火の僧兵を監視者として置く。 ・古い黄金樹の時代→ラダゴンとレナラが結婚…

  • 【エルデンリング考察メモ3】歴史編:永遠の都ノクローン、ノクステラ、シーフラ、エインセル文明について。

    *記事の性質上、ネタバレが大量にあります。 *他のかたの考察は一切見ていません。 前回。メリナの正体について。 www.saiusaruzzz.com 今回は永遠の都ノクローン&ノクステラ、シーフラ、エインセル文明について。 アイテムのフレーバーテキストを読むと、「黄金樹関連の話」と「永遠の都関連の話」はほとんど交わっていない。 源流から分離して、 ◆シーフラ河・ノクローン・黄金樹システム(黄金律)ライン ◆エインセル河・ノクステラ・輝石魔術関連ライン の二つのストーリーの流れがある、と考えたほうがわかりやすい。 源流。外なる神=永遠の暗黒=隕石=アステールが二つの永遠の都を滅ぼす。 「光の無…

  • 【エルデンリング考察メモ2】メリナの正体について/答えにたどり着くまでの迷走(ボツ案)/考察のやり方のルールなど。

    前回。エルデンリングの超ざっくりした世界観について。 www.saiusaruzzz.com 今回はメインヒロイン? メリナの正体についての考察。 (©フロムソフトウェア) 頭がはげるほど考えて、最終的に「こうではないか」と考えがある程度固まった。 他の人の考察をザっと見たけれど、自分が考えた案はなかった。(もしかしたら自分の観測範囲外で考えている人がいるかもしれないが) メリナの正体は「火」 「火の幻視を宿す者、その贄だけが、大釜の火で世界樹を焼くんだよ」 と指読みのエンヤが言っているが、ここで出てくる「幻視」はマリカの説明でも出てくる。 「女王マリカは、エルデンリングの宿主、その幻視を宿す…

  • 【エルデンリング考察メモ1】3分でわかる「エルデンリング」。ストーリーの大枠をものすごく簡単に説明。

    始めたら寝食を忘れる勢いで没頭してしまった、「エルデンリング」の考察メモ。考えている過程の段階なので、途中で考え直したり色々あるかもしれない。 考えがきちんとまとまったら、「まとめ記事」を作成しようと思う。*1 *記事の性質上、ネタバレが大量にあります。 *他のかたの考察は一切見ていません。 今回は、自分が理解した限りの「エルデンリング」のすさまじく大雑把な粗筋の説明。 「エルデンリング」は、何を目的としたどんな話か? 疑問①「『エルデンリング』はどんな話か?」 答え①「世界の律(ルール)を決める話」 疑問②「狭間の地には、律(ルール)がないのか?」 答え②「マリカが壊した。(エルデンリング=…

  • 【漫画感想】「親愛なる僕へ殺意をこめて」 殺人鬼やサイコパスは便利アイテムすぎるので一作に二人まで、というルールが欲しい。

    「親愛なる僕へ殺意をこめて」全11巻を読み終わった。 *犯人の名前など物語の核心に触れるネタバレ以外の、若干内容のネタバレがあります。未読の人は注意してください。 親愛なる僕へ殺意をこめて(1) (ヤングマガジンコミックス) 作者:井龍一,伊藤翔太 講談社 Amazon ①「衝撃的な引き」のための演出優先のため、演出が意味のないものになっている。 ②①を避けるために(演出を意味のあるものにするために)登場人物の造形が極端になる。 上記は、連載や連ドラでサスペンスをやる上で、引きを作るための必要措置とある程度は割り切って読んでいるが、「親愛なる僕へ殺意をこめて」は、よくある①のパターンは回避する…

  • 【創作ホラー】「『いないモノ』さま。」

    祖母の家にいると、常に誰かに見られているような気がした。 「それはね、『いないモノ』さまだよ」 僕の疑問に、祖母は答える。 「『いないモノ』さまはね、どんな小さな隙間にでもいる。蟻が這いこむような小さな隙間でもね。雨戸の戸袋の中に目を向けたらね、こっちを見ていたよ。『いないモノ』さまは、いつも私らを見ているんだ。見るためにいるからね」 「『いないモノ』さまは、それぞれの家にいるの?」 僕の質問に、祖母は答える。 「『いないモノ』さまは、一人しかいない」 「一人? 一人じゃ村のことを全部は見られないよね?」 「そんなことはない」 祖母は笑った。 「見えるよ。村の隙間は、全部つながっているから。見…

  • 今までに読んだ、見た、カルトについて描かれたコンテンツまとめ。

    カルト(というより、人を取り込む思想全般)について、自分が理解を深められたコンテンツを紹介したい。 オウム真理教関連 オウムと私 (文春文庫) 作者:林 郁夫 文藝春秋 Amazon 地下鉄サリン事件の実行犯の中で、唯一無期懲役となった林郁夫が書いた本。 この人は十代のころから宗教に関心が深く、元々は十年近く阿含宗の信徒だった。そこで悟りを得られなかったため、オウムに興味を持ち、オウムの修行のメソッドを見てこれならば悟りを得られるのではないかと思ったことが、入信のきっかけだ。 本書の中で林郁夫は犯行時の心境について、「自分以外の他人を『救うべき人』という概念でしか見ていなかった」と吐露している…

  • 【映画感想】「アメリカが最も恐れた男・プーチン」 プーチンの経歴とロシアの時事を追うには便利だが、視点の偏りが難点。

    アメリカが最も恐れた男 "プーチン" Evgeniya Albats Amazon ウクライナ侵攻よりも前の2018年の作品。 時間が1時間25分と短めなので、手軽に見れる。 いいところとしては、プーチンの経歴とロシアの時事との関係が非常にわかりやすい。 KGBに入隊して、旧東ドイツ・ドレスデンに配属される。 東ドイツでベルリンの壁崩壊を経験して祖国に帰ってくる。その直後にソ連が崩壊する。 失職して運転手などをして食いつなぐ苦しい生活を送ったあと、元KGBという経歴を買われて、サンクトペテルブルグの副市長の座につく。 副市長時代に富豪ベレゾフスキーに伝手が出来て、エリツィンを紹介されて大統領府…

  • 【エルデンリング考察メモ】世界観の基本的な考え方、魔女ラニについて、朱い腐敗とは何か、など。

    100時間近くプレイして、まだまだ先が見えてこない。三匹めの溶岩土竜をようやく倒した。 その後、アレクサンダーの入浴シーン?を観察して、亜人の女王マギを倒し、「源流の魔術師、アズール」の死体から魔法をもらったところだ。 今回は魔法補正の武器や使ってみたい魔術が多いので、二周目は魔術師キャラでプレイしようと思う。 一周目のクリアも先が長そうだが、今の時点で「エルデンリングの世界観はこう考えるといいのでは」ということを思いついたのでメモしておきたい。 今のところ、特に根拠のない印象論的なものだ。 恐らくこうだろうと思ったら、この考えを元に二周目はストーリーやイベントを見て行こうと思う。 「ソウルシ…

  • 古本の人の書き込みを見た妄想。「興味を惹かれて手に取ったけれど、難しくて挫折しそうな本」も、人と一緒なら読めるかもしれない。

    読売新聞の書評欄に金石範の「火山島」が紹介されていて、面白そうだなと興味を持った。 韓国では今も余り語られない、「済州島四・三事件」を題材にした小説だ。 早速Amazonで調べてみたが、電書も文庫も出ていない。出ているのは中古の単行本とペーパーバック版のみだ。 全7巻だが、古本すら出品されていない巻もある。 「どうしよう」と思いながら、うろうろと紹介や感想、済州島四・三事件の記事を読んでいたが、やっぱり読みたいと思い、とりあえず一巻を購入してみた。 すんごくいかつい本が来た。 ハードケース付きの蔵書版は好きだけど……置く場所に困る。 新品と言われてもすんなり信じてしまうくらい綺麗だが、中に書き…

  • 【NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」感想】頼朝の突然の死で前半戦終了。「鎌倉という磁場」によって、人間関係が徐々に歪んでいく恐ろしさから目が離せない。

    第26回「悲しむ前に」で頼朝が死んだ。 一時の「神回」続きから、ここ数回はそれなりの面白さに落ち着いていた。(それでも十分面白いのだが) しかし頼朝の死で、周囲の人間関係の不穏さが増して、自分が期待する面白さが戻ってきそうな予感がする。 特集 インタビュー 源頼朝役・大泉洋さんインタビュー ~源氏の嫡流ゆえの孤独~ NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」 上記のインタビューで頼朝を演じた大泉洋が、脚本についてこう語っている。 三谷さんは喜劇の脚本家だと思われているだろうし、実際そうなわけですけど、僕としては実はものすごく怖い話を書かれる人だと思うんですよね。(略) そんな三谷さんの描く怖い部分…

  • 「労働組合運動」というと、「沈まぬ太陽」を思い出す。

    労働者版のフェミニズムみたいなのってないかな? 完全にマジカルバナナ*1だが、「労働者の組合運動」を描いた「沈まぬ太陽」一巻二巻のことを思い出したので、話したい。 読んだのが大昔なので、かなりうろ覚えな記憶の感想だ。 「沈まぬ太陽」の第一巻第二巻は、日本航……じゃなくて国民航空の労働組合運動の話だ。 主人公の恩地は、人望がある、他になり手がいないという理由で、労働組合の委員長を引き受ける。 委員長になった後、会社側の懐柔策を拒否したために、誰も行きたがらないナイロビやテヘランなどの地に赴任させられるなど直球をパワハラを受ける。 確かナイロビだったと思うが、誰も他にスタッフがいない場所で一からオ…

  • 【漫画感想】「逃げ上手の若君」既刊6巻まで。北条時行が主人公の貴種流離譚。いいなと思ったところ、気になったところ。

    鎌倉幕府最後の執権・北条高時の息子で、幕府が滅んだあと、わずか八歳で流浪の身になった北条時行の一代記。 逃げ上手の若君 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:松井優征 集英社 Amazon 「鎌倉殿の13人」が面白いこともあり、馴染みがない人物なのでこの時代のこともわかるかなと思って読んでみた。 特徴的なデザインのキャラで構成される、世界観が魅力的。 主人公とその仲間(逃若党)以外は、ほぼおっさんしか出てこないが、すべてキャラが立っており、ひと目で覚えられる上に魅力的。 デザイン+ひと言説明で、どんなキャラかがすぐにわかる。 余りキャラの外見に興味を持たないほうだが、「逃げ上手の若君…

  • 【「進撃の巨人」キャラ語り】「自分の物語を生き続けたグリシャ」は、自分がなったかもしれない「父親像」そのものだった。

    人生で「父親」になることがないだろう自分が、もし父親になっていたらこうなっていたかもしれない、と思う「父親像」が「進撃の巨人」のグリシャだ。 自分の中で「父親」は「父でもあり息子でもある存在」だ。*1 「父親」は、突然「父親」として生まれ出るわけではない。 誰かの息子として生まれ、一人の男として生きて、父親になるはずだ。 だが大抵の場合、物語の中で「父」が出てくると前段階が抜けている。「父として」出てくるとき、「男としての部分」「息子としての部分」はかなり希薄になっている。 グリシャは「父としての自分」「男としての自分」「息子としての自分」を等価で保っている珍しいキャラだ。 (引用元:「進撃の…

  • 【書評】立花隆「中核VS革マル」上下巻 思想集団の対立は、どのようにしてエスカレーションし続けるのか。

    立花隆の「中核VS革マル」上下巻を読み終わった。 中核VS革マル(上) (講談社文庫) 作者:立花隆 講談社 Amazon 有名な連合赤軍事件を始め、学生運動の話を見ていると多数の党派と思想が飛び交う。 「ブントって何?」「革共同って何?」ということが整理されて書かれている。 現代では理解しがたい、なぜあれほど苛烈な暴力が運動に持ち込まれたのか、その思想的背景や経緯、歴史も辿れる。 先日、読んだ「文化大革命 人民の歴史 1926‐1976」の中で、残酷なリンチ描写が出てきた。「恐ろしい時代だ」と思ったが、本書に出てくる殺し合い(としか言いようがない)の描写もすさまじい。 特に下巻は凄惨な暴力の…

  • 【映画感想】「ちょっと思い出しただけ」 そもそも別れた人の誕生日って、覚えているものなのか?

    池松壮亮と伊藤沙莉が演じる元恋人同士の二人が、付き合っていた頃の六年間を思い出すラブストーリー。 監督脚本が「君が君で君だ」の松居大悟だったので、期待値高めで見始めた。 *ネタバレ注意。 ちょっと思い出しただけ 池松壮亮 Amazon 驚くくらい何も共感出来なかった。(と言うと、「つまらない」の意訳にとらえられるけど、文字以上の意味はない) 創作で恋愛を描く場合は、ある程度多くの人に共感してもらえるよう「恋愛描写のテンプレート」を用いる。 テンプレートがある程度確立しているから、「タイタニック」のように多くの人が経験したことがない状況の恋愛でも、共感や萌えを生み出せるのだ。 この映画は、恋愛描…

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