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五条いりえ
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2015/11/23

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  • 月夜の晩に変わる君 1

    ***「……俺、明日実家に帰るから」「へぇ。なんや心変わりでもあったんか? たしか自分、嫌いやったやろ? 実家」 西院学園高等部三年の寮の一室で、俺こと若槻和志(わかつきかずし)は、ルームメイトの三谷龍二(みたにりゅうじ)とゴールデンウイークのお互いの予定を話し合っていた。 俺は、ルームメイトになった当初、龍二が両親との折り合いの悪さから逃げ出す為に寮に入ったと聞いた事があった。 さらに、その事実を...

  • 月夜の晩に変わる君

    和志が知った龍二の秘密、それでも自分は……。GWの休みを境にして突然態度が豹変した親友に振り回される話。 学生モノ。...

  • Impression(番外編)

    「いらっしゃ~い。待ってたよ」「なんだよ……ただの健康診断だろ」 にこにこ笑って、俺の両肩を叩く。うざったい奴。 なんで、こんな場所でにこにこ笑えるんだコイツは。それが、東堂洋介が、雪村ユイに持った最初の印象だった。――――それ以外の感想は、無い。 普通だったら、他人の外見から、優しそうだの怖そうだの先に印象付けるのかもしれないが、自分は多分異常なのだ。他人の外見などどうでもよかった。 けれど、目の前に...

  • I will find 21(END)

    屋上で佇んでいる東堂の後ろに雪村が立つ。「これで良いんだろ。雪村」「……そうだなぁ。あとは、君が幸せになってくれれば僕は言う事無いんだけど」「それは、無理だ。それにあいつらが、これから幸せになるなんて保証はないだろ、これから軍との追いかけっこの始まりだ。だから」 東堂の言葉を雪村は制する。「ねぇ洋。もう終りにしようか」「……」「僕は、君が此処に居て色んな事思い出して辛いのをこれ以上見てられないんだ」...

  • I will find 20

    黒埼が案内したのは、屋上だった。 まだ夜が明けきっていない。薄暗いなか、冷たい風が自分たちに吹き付ける。それでも広い周りの砂地や遠くの町がぼんやりと浮かび上がって見えていた。 この国境近くの施設だけがやはり孤立しているのかもしれない。「驚いたよ」「何がですか?」「雪村とそして君に対してかな」「俺も驚きました。黒崎さんが、自分と同じ様な事考えてたから」「え?」「記号の名前、俺だって未だに拘ってるん...

  • I will find 19

    *** 黒崎が廊下に出るとそこには先客がタバコをふかして佇んでいた。 ふらりと現れた黒崎をちらりと一瞥して雪村は、タバコを勧めたが黒崎はそれを断った。「最低だ。私は結局自分の事しか考えてないのだから」「当たり前じゃないか、ある程度の利己主義がなければ、人間なんてすぐ死んじゃうよ」 柵にもたれ掛かっていた雪村に黒埼は言った。「それでも、私は……私はジェイが望んでいる答えを知っているのに、何も言わなかった…...

  • I will find 18

    黒埼の腕の中にジェイは居る。どんなに強がっていても大人に見えてもまだ子供だった。 黒埼は、そう思って、ジェイの頭をゆっくりと撫でる。段々と泣き声が止み呼吸が整ってきたジェイは、このまま寝てしまうのではないだろうか、というような目をしていた。 黒埼は思う。 この子はやはりこんな所にいるべきでない。こんな場所でなく安心して眠れて、安らげる場所が……。*** ジェイの『視線』には、気付いていた。あの日、出...

  • I will find 17

    *** 東堂が、自室部屋の前に立った時ドアの鍵は外れていて隙間が少し開いていた。この部屋の鍵を持っている人間を、 東堂は、自分以外もう一人しか知らない。「……ユイか」「ジェイ君に何したの」 部屋に入った東堂の前に、雪村は立ちはだかった。 厳しい声は、平生の雪村のそれではなかった。時々見せる、雪村の暗い悲しみの声。「何も……ただ、事実を見せただけだ。この世の常ってやつをね」 パシンっと高い音が響く。雪村は...

  • I will find 16

    *** 窓のカーテンの隙間からの光が眩しかった。目を開ければ、隣のベットに雪村の姿は無く、ジェイ一人だった。体を起き上がらせるのが酷く億劫だった。それでも、重い体を無理矢理起こして、洗面台の方へ歩いていく。 適当に身支度を済ませると、外へ出た。自分は、軍へ志願する事で、ある程度の自由な身を手に入れた。敷地内は自由に歩いていいし、申請すれば外へ出かけてもいい。 ただ、軍を裏切れば、即、死、という事を言...

  • I will find 15

    ジェイが深い眠りに入った頃、雪村は、そっとベットを抜け出し、冷たい空気に満たされた廊下にでた。手には数枚の書類を持っている。「眠れないのか」 暗闇の向こうから、聴き慣れた声が聞こえた。暗さに目が慣れると姿を確認できる。「瑛も眠れないのかい、薬処方してあげようか?」「俺は見回り」「そっか、お仕事ご苦労様。俺もこれから仕事だよ」「こんな夜中に?」「これでも、夜中は病人さんのお世話で忙しいんだよ」「……...

  • I will find 14

    *** 緩慢な動作で廊下を歩き、やっとの事で自室にあてがわれている部屋に着いてドアを開けると、全く予想をしていなかった声が聞こえた。「……おかえり」「……雪村さん」 にこりと微笑んだ雪村は、正面のベットにゆったりとした格好で腰をかけていた。「ユイでいいのにさ。まぁ呼び方なんてどうでも良いよ」 そう言いながら、部屋の奥にある仕切りの向こうの給湯スペースへ入って行った。「コーヒーで良いかな」「いえっ、俺がし...

  • I will find 13

    *** 服を着たジェイの元に今度は数回ノック音が聞こえた。慌てて返事をしてドアを開けると走ってきたのか黒埼が息を切らせて立っていた。 いつまでも事実を告げずにこの場所で居る事は出来ない。いつかは知られる事、そして、いつかは話さなくてはいけない事。「軍に志願したと聞いた」「……はい」 ゆっくりと告げたその事実に、黒埼は顔を背けた。どうして…君みたいな子が……となんども小さく呟く。「俺が、決めました。ここで働...

  • I will find 12

    *** 入り口の吹き抜けた場所に二つの足音が、聞こえる。一つは黒埼のものもう一つは東堂のもの。 すれ違いざまだった。東堂は、黒埼に結果を告げた。「志願したよ軍に」「っ……」 振り返り驚愕した黒崎の顔を東堂はにんまりと微笑んで見つめ返した。「嘘だと思うなら確かめてみれば良い。あいつは可愛いよ、誰にも逆らわない、きっと此処でも上手くやっていく」「……お前には情が無いのか」 情があれば、自分の握っている情報を...

  • I will find 11

    *** 当てがわれた部屋は、自分が今まで過ごしてきた部屋の数倍綺麗な部屋だった。 部屋には、ベットが二つ備え付けていた。 ジェイが相部屋だろうか、と考えたその時丁度に部屋のドアが開いた。「君が新人さん?こんにちはぁ」「あっ……その……」 ジェイが言いよどんでいる間に目の前の男は自己紹介を始めた。「僕は、雪村 唯(ゆきむらゆい)といいます。皆は、ゆきとかユイって呼ぶよ。よろしくね」 にこりと微笑んだ雪村は...

  • I will find 10

    *** ジェイは、いつの間にか眠っていた。部屋の高い位置にある窓から差す細い光。とろとろとまどろんでいた視界がだんだんと覚醒してくる。 数年ぶりに何もする事の無い時間を過ごした。うつ伏せていた頭を上げて椅子に座りなおすと、背骨の辺りが、キシキシと少し痛む。 外は暖かいのだろうか。ふとジェイはそんな事を考えた。こうして、自分が無意識に息をしている間に何人この外で働く人は死んでいっているのだろうか。 外...

  • I will find 9

    *** ジェイの答えは、一日と考える時間も必要無く、決まっていた。例え自分の憎むべき場所でも、ビーを売れない。もしも生きる道が残っているなら、死ぬ気も無かった。 それが、例え自分が誰かに玩具の様に扱われるという事でも。一生続く苦しみでないなら、耐えれると思った。 けれども不思議だった。もし司法取引をすれば新しい名前と住む場所をもらえるのだ。魅力的な条件だ。それほどまでにあの場所に愛着を持っていた自分...

  • I will find 8

    ***「知らなかった。あの少年と知り合いか?」 リノリウムの床に黒埼以外の靴音が聞こえた。声の主は、ジェイを補導した男だった。ネームプレートには、輝かしい階級章と『東堂洋介』と名前があった。「それがどうした」 怒りを含んだ黒埼の声をあざ笑うかのように東堂は、口端は、引き上げ黒埼の肩を叩いた。「司法取引を勧めるだと?甘い奴だ。そんな事をして幸せになれると思っている所が甘い。あいつの身内は誰も居ない、こ...

  • I will find 7

    *** この前と同じ道順で、いつもより早足で歩いていた。こんな夜更けには、まず間違いなく施設への収容の為に補導官が歩いている。だから、ジェイは歩く時もできるだけ人通りの少ない所を、足早に歩く。 この国では、国の発展の為と言って沢山の労働人員を集めている。 人が、欲しいのだ。その為に無料でこき使える、しかも保護という大義名分が使える点で、施設への収容は、日に日に厳しくなっていた。 いくら奇麗事を並べて...

  • I will find 6

    ***「珍しいこともあるもんだ」 いつもなら、店主は、ジェイが来た時、目を覚ますことは、ほとんど無いのだが、この日は、木戸の開く時の音と共に店主は、入り口に目をやった。「こんばんは」「いやいや、本当に珍しい。小さいのはどうした?」「今日は、俺だけ」「そうか、そうか」 店主は含み笑いを漏らしただけで、それ以上の詮索はしなった。「それで、この前の人の仕事きてる?」「ん?おぉ、きとるよ。お前さん指名でな」...

  • I will find 5

    ***「何、あんた、昨日客より先にイっちゃったんだって?あの男笑って楽しそうに私に報告しにきたわ」 ジェイとビーが、おばさんと呼んでいる女が、部屋の角に座って休んでいるジェイを、上から睨み付けて声をかけた。 葉巻の煙がジェイの顔にかかって、苦しそうに咳き込んだが、それが気に入らなかったのがジェイは左手で頬を叩かれた。「っ…すいません」 日に何度言うかわからない、謝罪の言葉を唱えた。「私もねぇ、面倒みた...

  • I will find 4

    *** 薄暗い部屋。間接照明の光だけが灯っている部屋。で、じくじくと燻る熱に涙を零していた。「んんっ……やだぁっ……」「気持ち良いかい?」 下腹のでっぷりした中年男は、ジェイの体中を嘗め回しなら卑猥な台詞を言い続けた。 気持ち良いかと聞かれれば、いいえとは、ジェイは言えない。 舌で乳首を舐められれば、下半身は嫌でも勝手に反応して勃ってしまうし、それが、普通だと思わないとやっていけない。 頭がおかしくなっ...

  • I will find 3

    店を出てから、数分歩くと。汚い鉄骨マンションが建っていた。 この町が緑があふれて、沢山の笑い声が聞こえて、キラキラとしていた頃、此処は子供達が遊ぶような住宅地だったらしい。 今は、そんな雰囲気は、欠片も存在しない、卑猥な色合いの切れ掛かった電灯が似合っていた。 オートロックが壊れ入り口のガラスが割れているマンションには、管理人なんかもう居ないのだろう。そこらじゅう荒れ放題だった。 誰に断る必要も...

  • I will find 2

    ***「こんばんは、おやっさん」 この言葉に対する気のいい返事は望んでいない。 この店『ROOK』の店主は、この時間ストーブの前の椅子で寝ているのだ。 ジェイは、さっき少し休んだ所で寝てしまったビーを背負い直すと、暗い木の階段を登りだした。 歩くごとに気味の悪いギシギシと壊れそうな音がする。 そろそろ、板を換えないと、そのうち怪我人がでるに違いない。 その怪我人が、自分達でないことを願うばかりだ。 与え...

  • I will find 1

    他人の笑い声が、こんなにも気持ちが悪いと感じたことはなかった。 胃の中には、何もない筈なのに、ずしりと重い石のような物が入っている感じがする。 けれど『こんな所が嫌だから何処か他へ行きたい』と、そんな文句を言ったところで、改善されるとも思わないから、お互いに目が合っても、そういう言葉を交わすことは無い。 じっと今のその状況に耐えていた。降り注ぐ侮蔑の言葉と、哀れみの声。 暴力を振るわれる方がどれ...

  • Kyrie eleison 2 ~嘘つきの家~

    「どけっ」 冷たい声が、天井から降ってきた。これが神の声なら良かったのに。 それは神ではなく、つい最近。……もとい結構前にも出会っていた 『牧師』さんで――――。「ケイ、もう少し優しく……」「だったら出て行けばいいだろ」 サドリーがしぶしぶベットから起きて目をあわすと、ケイは急に体を強張らせた。 サドリーはその様子を見て、にこりと笑う。「……出て行かないよ」 サドリーは、数週間ケイと一緒に生活をして、気付い...

  • Kyrie eleison 1 ~曖昧な恋の法則~

    主よ憐れみ給え キリスト憐れみ給え…… 日曜日の厳かな教会の朝。田舎の教会で少ない信者。 そしてさらに、お年寄りばかりが信者である。 その為、当たり前だが、年々お祈りに来る人は年を重ね、そしてこの世を去っていく。 結婚式よりも葬式の比率が多くなった。 新しい信者が増える事は多分この先無いのかもしれない。 この教会の牧師であるケイは、信者を送り出した後、聖書をパタンと閉じ、溜息をついた。「こんな所...

  • 更新履歴

    2015/11/23 過去サイトの小説を掲載...

  • 探し物を見つけよう

    両親が死んだ事によって、男娼館で働くようになったジェイ、大切な弟分を守るために頑張っていたある日、ジェイは奇妙な客にであってしまって……パソコン整理中に見つけた高校の時にチマチマ書いてたモノ。軍モノが書きたいと思って書いてたはず。ほとんど改稿していませんが、タイトルだけ変えました。...

  • Kyrie eleison

    牧師のケイとピアニストのサドリーの話 連作 ピアニスト×牧師 寂れた教会で牧師をしているケイ、自分の気持ちを表現するのがヘタクソで意地っ張り。そんなケイは、ある日礼拝の後で教会の椅子で眠り込んでいるサドリーと出会って……。...

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