「北方文学」第90号を発行しましたので、紹介させていただきます。今号は90号記念号なのでしたが、その割にはボリュームがありません。80号記念号などは300頁以上でしたのに、少し残念な気がします。評論が多いのが「北方文学」の特徴ですが、今号もロック評論あり、紀行文あり、音楽エッセイありといった具合で、文学のジャンルにとらわれない内容になっています。しかもいずれも力作で、文学のおまけとして雑誌の片隅に載っているというようなものではありません。巻頭は鈴木良一の「断片的なものの詩学――Ⅳ」「エフェメラを手に、幼年期の回想」です。エフェメラとは一時的な印刷物のことだそうで、昔の演劇のチラシなどを繰るうちに、作者の中に詩や幼いころの思い出などが生起してきます。鈴木が生まれる前、一九二六年木崎村小作争議の思い出も、母の...「北方文学」90号紹介