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ユノさんとチャンミンさんが穏やかに、時に激しく愛し合うホミンホミンホブログです。鍵記事はヨジャ絡み!

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2015/10/26

  • シルクとコットン 641

    工場入り口のドアを開けて入ると、御曹司と秘書さんの背中が見えた。「あ、代表。」顔をこちらに向けていたイ・ジョンシン工場長がおれに気づいて声を上げ。御曹司と秘書さんが揃って笑顔で振り向いた。その顔が一瞬固まって、すぐにより大きな笑顔になった。「やあ、ユノさん。待ちきれずに来てしまいましたよ。」まったく悪びれた様子もなく満面の笑みの御曹司のとなりで、秘書さんはちょっと困った顔をして頭を下げる。どうやら...

  • シルクとコットン 640

    台所を手伝うというチャンミンに見送られ、玄関を出て、気合を入れるために大きく息を吐く。「よしっ!」と一歩踏み出したところで、後ろからチャンミンに呼び止められた。「ユノ、待って。」「どうした。」一瞬忘れ物したのかと頭をよぎったけど、工場まで行くだけだから何も持つ必要がない。「叔母さまがぼくにもいっしょに行けって。」「うん?」なんで?と出かかった言葉を飲み込んだ。「ぼくはユノのパートナーで会社の関係者...

  • シルクとコットン 639

    「ユノ?どうかしたの?」帰ってきたチャンミンは心配そうな顔でおれを覗き込んでくる。庭に停まったおれの車を見て、体調が悪くて帰ってきたとでも思ったんだろう。「それが、」説明すると、ただでさえ大きな目を倍くらいに見開いて。「何なの、その人たち!!?」と一声叫んで。おれの手を掴んで部屋に走り、手と顔を洗って着替えて。おれにもスーツを着させようとしたけど、断って。仕事に着ていった服だから、誰に見られても恥...

  • シルクとコットン 638

    家に着いたのは正午を回っていて。勝手口の前にはボテに大きくスーパーの名前が書かれた軽トラックが停まっていた。叔母さんだけ先に下ろして、車をチャンミンの車のとなりに停めて。買ってきた物と叔母さんの荷物を提げて玄関へ回る。叔母さんはもう台所に行ってるようで、テンションの高い話し声が聞こえた。お義母さんは言葉では遠慮してるけど、叔母さんが駆けつけてくれたことを喜んでいるようだ。普段は聞くことのない大きな...

  • シルクとコットン 637

    どうやらどんな料理を作るか、こちらから買っていくものはないか。そんなことを相談しているようだ。ふたりで相談がまとまって、こことあそこに寄れと言われておれは言われるままにそちらへ車を走らせた。チャンミンは仕事中だから連絡してないけど、帰ってきたらびっくりするだろうな。いや、ぷりぷりと怒るかもしれない。何にしろ、人騒がせなお坊ちゃんだ。「ねえ、チェ家のお坊ちゃんはまさか泊まるなんて言わないわよね。」「...

  • シルクとコットン 636

    『代表!SJ商事の代表が今日の午後に工場を見に来るって連絡がきたんですが。』緊張した声でイ・ジョンシン工場長から電話がかかってきたのは、その週の土曜日の昼前だった。「え?今日?!」『ええ、急なことで申し訳ないけど、やっぱり機械が稼働しているところを見たいとおっしゃいまして。』なんと?!突然訪ねてくるなんてさすが御曹司!と感心している場合じゃない!通話を繋いだままトゥギヒョンに事情を説明したら、もちろ...

  • シルクとコットン 635

    家に帰ってチャンミンに、御曹司たちがウチに来たがっていることを伝えると、「へ?」と一瞬固まってから、おれをジト目で睨んだけど、「そう、仕方ないね。」とひとつうなずいて、「その人たちが本物のカップルなのかどうか、ぼくが確かめてあげるよ。」腕まくりする勢いで、頼もしい限りだ。お義母さんにも週末お客さんがくるかもしれないと伝えて。「チェ家の方ですか。おもてなしが難しいですね。」「そんなかしこまらないでい...

  • シルクとコットン 634

    試着室を占領しているわけにはいかないからそれぞれに考えることにして、夕方には釜山へ帰るというふたりにはタクシーを呼んだ。担当者と聞いて頭の固いお偉いさんを想像していたけど、話の通じる同年代のふたりでよかった。最初はおれ個人的には参加したくないと思っていたけど、担当者のふたりに会って楽しみにさえなってきた。トゥギヒョンは最初から乗り気だったから、楽しいを通り越して浮かれているように見える。事務室でふ...

  • シルクとコットン 633

    プサンから来たふたりがウチの店を見たいというから、いっしょに歩いて連れてきた。来るときは御曹司の車に乗せてもらってきたらしい。「せn、、ユノさんのショーの動画を観せてもらいました。特にここの一回目のショーは何度も観返しました。」ヒョクチェさんは舞台演出を勉強したんだったな。「そうですか。それはありがとうございます。」「いままで何度もショーの手伝いをさせてもらってきたけど、あんな斬新なショーは初めて...

  • シルクとコットン 632

    食事はランチでお手軽だとはいえ、コース料理だった。おれとトゥギヒョンにとっては懐かしい味で、パリ時代の思い出がよみがえる。いまそれを話すのは失礼だろうから、帰りにでもふたりで話そう。「チョン・ユンホ先生はずっとパリに住んでらっしゃったから、いつもこんな料理を召し上がってたんですか?」「いえいえ、そんなことはないですよ。パリにもいろんな国の料理が食べられる店がありますし、普段はサンドイッチとかハンバ...

  • シルクとコットン 631

    「お待たせしてしまって申し訳ありません。」窓からの眺望に気を取られて挨拶を忘れていた。「いえ、僕たちが早く来たんです。まだお約束の時刻にはなっていませんよ。」広々とした部屋の真ん中に6人掛けのテーブルがあり、全員から眺望が見えるように配慮してか窓に横向きに座るようになっている。テーブルの片側に御曹司と秘書が、もう片側に初めて会うふたりが座り。おれたちに気を遣ってくれたのか、窓に近い席を空けてくれて...

  • シルクとコットン 630

    エレベーターの扉が開くと、目の前に店のスタッフらしき人が立っていて、すぐに深く頭を下げた。あのロボットから連絡が行くようになってるんだろう。「チェ・シウォン様のお連れ様ですね。お待ちいたしておりました。どうぞこちらへ。」「チェ・シウォン代表はもういらっしゃってるんですか?」「はい、先ほど他のお連れ様とごいっしょにおいでになりました。」ってことはおれたちが最後だったか。そのレストランは最上階にあるか...

  • シルクとコットン 629

    御曹司と秘書は一度帰って出直すと言って帰っていった。車に乗るとき、助手席のドアを開けることまではしなかったけど、やっぱり運転は御曹司が、秘書は助手席に座った。「あれがあのふたりのスタイルなのかもな。」誰に言うつもりもなかったけど、トゥギヒョンが「そうなんじゃない?」と返事してくれた。正午近くまで仕事をして、トゥギヒョンと歩いてホテルに向かう。いつもは車で前を通るだけだからわからなかったけど、中に入...

  • シルクとコットン 628

    「お店はここからなら歩いてでも行けるところなんです。先月新しくできたホテルの最上階なんですが、ご存じないですか?」「あー、あのシャレたホテルですか。」ホテルができたのは知ってたけど、前を通っただけでどんな店が入ってるのかは知らない。「フレンチレストランでディナーが人気ですが、ランチもなかなかのものですよ。」ディナーか。近いうちにチャンミンといっしょに行こうかな。もちろん部屋も取って・・・「代表、正...

  • シルクとコットン 627

    翌朝、開店と同時にあのふたりが飛び込んできた。「ユノ先生!!ご決断いただいてありがとうございます!おかげさまでアンリ・アブリル先生もご参加くださることになりました!」「そうですか、それはよかった。」御曹司にすればアンリがメインだもんな。「それでプサンの担当者と顔つなぎさせていただきたいんですが、今日のランチでいかがでしょうか。」「は?それはまたずいぶんと急ですね。」「ええ、善は急げと言いますからね...

  • シルクとコットン 626

    おれの目には、たぶんトゥギヒョンの目にも、あのふたりは仲のいいカップルに見えた。だけど考えてみれば、プライベートならともかく仕事中に代表が運転する車の助手席に秘書が座るっていうのは考えられない。しかも帰りは、車のドアを開けて先に座らせることまでしていた。おれとトゥギヒョンだったから微笑ましく見てたけど、公道なんだから誰が見ているかわからないのに。「ごめん、ユノ。またぼく、よけいなこと言っちゃったね...

  • シルクとコットン 625

    「いや、カミングアウトできないから誰かに言いたかったって言ってた。」チャンミンは、自分の顎を親指と人差し指の第二関節あたりでつまんで考え込む。いまチャンミンの頭の中はコンピューターが複雑な計算をするように、猛スピードでいろんなことを考えてるんだろう。「ユノはカミングアウトしてるから、ぼくたちのことを知るのは簡単だよね。」「あー、たぶん。それにマダムリーと知り合いで、おれの情報を仕入れたらしいし。」...

  • シルクとコットン 624

    「あっ、ちg」違う、と言いかけて、前に『違う』と言ってしまってそこをツッコまれたことを思い出した。えっと、、「ユノはその人のこと、気に入ったんだよね?」目には怒りの炎がメラメラと燃えているのに口元は笑みの形に持ち上げるという、おれにはできない芸当をやってのけるチャンミンはとてつもなく恐ろしい。思わず「ひっ」と声を上げそうになって慌てて飲み込んだ。そんな声上げたら、火に油どころか短い導火線に火をつけ...

  • シルクとコットン 623

    「それにさ、トゥギヒョンもヒチョリヒョンもめっちゃ喜んでくれて。イェソニヒョンなんて泣くほど喜んでくれたんだ。」「へえ、そうなんだ。」「考えてみたらイェソニヒョンは、もちろんデザイナーとして自分の作品を発表してるけど、店はおれのだからどうしても影になってしまうんだ。」「あー、そういうものなんだね。」「だからか、イェソニヒョンは今回のオファーもおれ個人に来たもんだと思い込んでたくらいでさ。」「そうか...

  • シルクとコットン 622

    まるでおれの誕生日を祝うような夕食のあと、チャンミンと部屋に戻ってすぐに抱きしめた。「チャンミン、ありがとな。疲れてるだろうに、おれのためにいろいろ準備してくれて。」「ううん。けど、ユノがショーに出ることを喜んでるみたいでよかったよ。」「うん?喜んでないと思ったのか?」「だって、最初この話聞いたとき、ユノは乗り気じゃなかっただろ?」「ああ、確かにそうだけど。おまえがおれの背中を押してくれたから。」...

  • シルクとコットン 621

    「そのケーキはわざわざ買ってきてくれたのか?」「あー、うん。電話貰って母さんに話したら買って来いって。夕診まで時間があったから隣町まで行ってきた。」ちょっとふくれっ面で照れくさそうに言うチャンミンをいますぐ抱きしめたいけどパンチが飛んできそうだからあとにする。「そうか、ありがとな。」しかし、家族3人でホールケーキ2個か・・・「こちらのは冷蔵庫に入れておいて、明日お昼に来てくれた人に分けますよ。」「...

  • シルクとコットン 620

    いつもより30分ばかり遅くなって家に帰った。玄関を開けると靴脱ぎにはチャンミンの靴が行儀よく脱いであって。そのとなりにおれの靴を脱いで声をかけながら家に上がる。あれ?いつもならお義母さんかチャンミンが「おかえり。」と言いながらパタパタと走ってくるのに、今日は誰の声も聞こえない。もしかして誰もいないのか?なんて考えながら、とりあえずケーキを食堂に持っていくと、パンパンパ~ン!!突然鳴り響いた破裂音と、...

  • シルクとコットン 619

    おれはおれで、御曹司に連絡しようと店の電話を取り上げた。デスクの上に置いたままの名刺を手に取り、裏返してみたけど思い直して表の会社の番号をプッシュした。自分の名前を告げ、代表に繋いでほしいと告げると、音楽が流れて、『お待たせいたしました、秘書のチョ・ギュヒョンです。申し訳ありませんが、ただいま代表は別の電話に対応しておりますので、もうしばらくお待ちいただけますか。』あああの、代表のパートナーの秘書...

  • シルクとコットン 618

    イェソニヒョンから店に電話が来たのは、おれが帰り支度を始めたときだった。おれもそうだけど、イェソニヒョンも開店一時間前には店に来るらしく。出勤してすぐにメールをチェックしたらしい。『おめでとうユノ!』テンションが高いのはわかるけど、第一声がそれって?もしかしておれ、大事なことを書き忘れたのか?「イェソニヒョン、出るのはおれだけじゃないよ。イェソニヒョンもいっしょに出るんだよ。」『へ?うそっ!?マジ...

  • シルクとコットン 617

    「正直おれには関係ないイベントだと思ってたからよくは知らないんだけど、4日間いろんな会場を使ってやるらしいから、小さいところでやらしてもらおうとは思ってるんだけどさ。」「あー、そうねぇ・・・地味ならいいってもんでもないんだろうし。って、私が考えても仕方ないんだけどね。」「いや、叔母さんも戦力に入れてるから、何か思いついたら教えてよ。おれたちは、それこそ一般的なショーの形が身に付いちまってるから、そ...

  • シルクとコットン 616

    叔母さんのところに昼飯を食いにいって、御曹司のことを訊いてみた。「SJ商事のチェ家?知ってるわよ。確か最近息子さんに代表の座を譲ったのよね?」さすが叔母さんは顔が広い。「そうみたいだな。叔母さんが知ってるのは親のほうか。」「ええ。現会長夫人がウチの顧客だったけど。昔、ウチの父さんとそこのおじいさんが仲が良かったわよ?」仲が良かった?ただ取り引きがあっただけじゃなくて?「工場に来たついでに家に寄って碁...

  • ご挨拶

    4月になりました!!今年は桜の開花が例年よりも早く、すでに満開の知らせがあちこちから届いています。これは残念ながら入学式には葉桜かな(;'∀')気温も早くから上がって、3月中に夏日(最高気温25℃以上)を記録したところがちらほら。ここ数年、春から夏が早く、秋から冬も早く切り替わってしまって、日本の四季から春秋が消えてしまうかもしれません。これも地球温暖化の影響なんでしょうね。東方神起の2023年全国ツアー『CLA...

  • シルクとコットン 615

    いま午前11時前だから、パリは夜中の3時か。電話はダメだから、とりあえず店にメールしておくことにする。チャンミンももしかしたら気にしているかもしれないけど、こっちは午後1時頃に連絡するかな。アンリにはおれから連絡するのはおかしいから、御曹司から連絡が行って、それから向こうから「おい!誰か来てたんだって?」「びっ、くりした~」考え事をしているときに、突然大きな声を出されたら心臓に悪い。「ヒチョル、どう...

  • シルクとコットン 614

    「最終的にお引き受けするかどうかは、パリ店のデザイナーとも相談したいのですが。」「そうでしたね、あちらもチョン先生のお店ですもんね。パリのデザイナーの方のドレスも素敵でしたよ。お忙しいでしょうけど、ぜひごいっしょにプサンファッションウイークを盛り上げていただきたいです。」最初はあまりいい印象はなかった御曹司だけど、慣れてくればなかなかいい男じゃないか。イェソニヒョンに相談するとは言ったけど、たぶん...

  • シルクとコットン 613

    「パリ店のドレスも素敵でしたが、先生の作品は本当に素晴らしかった。モデルに素人さんを起用したことで作品の良さを表現しきれないのではないかと思いましたが、そうじゃなかった。ひとりひとりの体形の違いや素人のぎこちなさを忘れてしまうくらい生き生きと輝いていて見入ってしまいました。」「ありがとうございます。代表にそうおっしゃっていただけるとは光栄です。」どうやらこの人はおれの作品の良さをきちんとわかってく...

  • シルクとコットン 612

    「実を言うと、今回のプサンファッションウイークは僕が代表に就任して初めての大仕事なんです。」そうか、確かにどう見ても同年代だもんな。「だからどうしても成功させたいんですが、回を重ねて少し、、マンネリ化しているようでして。ASEAN諸国も我が国のブランドも新鮮味がないというか。何か新しい風を取り入れないとダメだと思ったんです。」「それでアンリ・アブリル先生を、ということですか。」「そうです。他にも何人かS...

  • シルクとコットン 611

    見つめ合い、いやにらみ合っていたけど、チェ・シウォンが先に目を逸らした。「駆け引きは無意味ですね。そうです、その通りです。アンリ・アブリル先生にお願いしたら、チョン・ユンホ先生といっしょならと言われました。ですから是が非でも承諾していただきたいのです。ですが、」ん?まだ先があるのか?「僕がチョン紡績さんのオーガニックコットンにほれ込んでいるのも事実なんです。」あ、そうか。アンリと接触しておれのこと...

  • シルクとコットン 610

    「あ、あの、チェ代表はカミングアウトされてるんですか?」おれもびっくりしたけど、トゥギヒョンはおれよりもっとびっくりしたようだ。いつもは冷静なのに、焦った様子で詰め寄るように問いかけた。「あー、いえ、残念ながら公にはしていません。でもあなた方になら話しても大丈夫だと思いまして。」「それは、、同類だと知らせて懐に入るため、ですか。」「お、おい、」自分が先に突っ込んだ質問をしたくせに、トゥギヒョンが慌...

  • シルクとコットン 609

    御曹司と秘書?を試着室にお通しして、ソファーに向かい合って座った。向こうは御曹司と秘書、こちらはおれとトゥギヒョン。腰を下ろすとすぐにミノがコーヒーを運んできてローテーブルの上に置いてくれた。「こちらのコーヒーは美味しいと聞いているので、楽しみです。」想定外の声掛けにびっくりした様子のミノだったけど、すぐに笑顔になって「ありがとうございます。お口に合いましたらうれしいです。どうぞごゆっくりなさって...

  • シルクとコットン 608

    御曹司を事務室にお通しするわけにはいかないから、試着室を使うことにして。おれもトゥギヒョンも店に出て待っていた。今日の店当番のミノとテミンにも要点だけ説明するとふたりとも喜んだけど。もうすぐSJ商事の代表が来ると言うと、今度は緊張すると言い出してにぎやかだ。まもなく店の正面に滑るように停車した白いベンツ。てっきり後部座席から降りてくると思っていたら、それらしい人は運転席から降りてきて。助手席からもう...

  • シルクとコットン 607

    翌日、店の開店を待っていたのか朝10時きっかりに店の電話が鳴った。トゥギヒョンが出たけど、いつもと様子が違う。「は、はい、店におります。はい、お待ちいたしております。」受話器を置いてほーっと長い息を吐いたトゥギヒョンに、思わず笑ってしまった。「どうしたんだよ、ずいぶん丁寧な対応だったな。」「笑い事じゃないよ、ここに来るって、おまえに会いたいって。」「何の話だよww いったい誰が来るって?」「SJ商事の...

  • シルクとコットン 606

    「こっちに帰ってきて店を出すとき静かに始めたかったのは、扱う素材が天然コットンだからなんだ。」「うん。」「『Cotton』は『U-know』とは違って、セレブじゃなく一般の人に、綿100%の肌触りを知ってほしい。着心地の良さを知ってほしい。そんな思いで作った店だ。」そうか、やっと自分の戸惑いの意味が分かった。「だから、ファッションウイークみたいな派手な舞台には乗せたくないのかもしれない。」チャンミンはおれの言葉を...

  • シルクとコットン 605

    「昔、関係があった人、じゃないんだね?」やっぱりそれを疑ってたんだな。「違う。誓って言う、それは違う。」おれがチャンミンの目を見つめてそう言うと、チャンミンの目の中にあったトゲトゲが消え、見返していたのがスッと逸らされた。「わかった。えっと、、ごめん、疑ったりして。」「いや、チャンミンが疑うのもムリはないよ。おれがパリでどう過ごしてきたか全部知ってるんだから。」「ふふ、ぼくだって人のことは言えない...

  • シルクとコットン 604

    「えっとその、パリの知り合いに出ないかってオファーが来たときに、おれもいっしょにって言ってくれたらしくて。」「そうなんですか。ユノさんはパリで有名なデザイナーさんだったんだから、お友だちもきっと有名な方なんでしょうね。」お義母さんはホッとしたように笑ってくれたから、友だちじゃないけどって言葉は飲み込んでおいた。けど、、、「ふーん。」チャンミンはまだ何やら腑に落ちてないようで。もしかしたら他の疑惑が...

  • シルクとコットン 603

    食堂に戻ると、お義母さんはもう食べ終えてお茶を飲んでいて、チャンミンのご飯ももう少ししか残っていなかった。チゲを温めなおそうと立ち上がりかけたお義母さんに「いいよ。」と断って。「ごめんかあさん、だいじょぶだった?」「ええ、大丈夫ですよ。ちょっとむせただけだから。それよりユノさん、何かあったんですか?」「うん。けど悪いことじゃないから心配いらないよ。」「さっきの様子だと大事件みたいだったけど?」「あ...

  • シルクとコットン 602

    『よかったな、ユノヤ。とうとうおまえもでっかいステージに立てるまでになったんだな。』「いやまだ決まったわけじゃないよ。」『何言ってる!まさか断るとか考えちゃいないだろうな。そんなことしたら俺との仲もこれっきりだぞ。』「仲ってww」恋人じゃあるまいし。『おい、俺はマジだからな。こんなチャンス逃すようなヤツとは今後一切仕事しないぞ。』そうか、チャンス、なんだよな。まだなんとなく実感が湧いてなかったけど...

  • シルクとコットン 601

    マダムリーの名前を出したときのアンリ・アブリルの態度で、彼女に頼まれたんじゃないとわかった。もちろん彼女が公明正大な人だってことはわかっている。それに、裏から手を回しておれをファッションウイークに出してくれるほど肩入れしてくれる義理もない。それでも、パリ時代に使えるモノは何でも使って引き上げてもらった経験があるから、どうしても頭の隅で考えてしまう。いまはもう、それを望んでいるわけじゃないけど。『と...

  • シルクとコットン 600

    そうだ、アンリ・アブリルのお母さんがこの国の出身で彼自身も韓国語がペラペラだったんだ。「チョン・ユンホです。ご連絡いただいてありがとうございます。」『やあチョン先生、さっそく電話くれてこちらこそありがとうございます。』「先生なんてやめてくださいよ、アンリ・アブリル先生。」『あはは、だったらキミも先生なんて呼ばないでよ。アンリと呼んでくれ。』いやいや、さすがに10歳も年上の人を呼び捨てにはできない。「...

  • シルクとコットン 599

    チャンミンが背中を叩いたり、水を勧めたりしているのに、片手を顔の前に立ててごめんと謝って。いまさらだけど席を立って、廊下に出た。『ほら、ユノだってびっくりするだろ?』「う、うん。けどなんで、」『それは書いてないからわからないよ。だからユノから連絡してほしいんだ。』「わかった。えっと、そっちはいま昼前だよな?」『うん。そうだ、このメールをユノの携帯に転送するよ。アンリの店と個人の電話番号が書いてある...

  • シルクとコットン 598

    総拍手数は無事に34万を超えています\(^o^)/キリ番を踏まれたのはもしかしたら『シルクとコットン』の過去話を読んでくださった方かもしれません。踏んでくださった方はもしよかったら、こっそり教えてくださいね(*´艸`*)_________「どうした、何があった?」食堂でチャンミンとお義母さんがいることも忘れて、つい電話にでてしまって。ふたりがびっくりして心配そうにこちらを見ているから、その場を離れることもでき...

  • シルクとコットン 597

    店の定休日は設けていない。チャンミンが、週一くらいは休みにしないとスタッフがかわいそうだと言うから考えてたんだけど。若い3人は自分たちで話し合ってうまく休みを取っていたし。この春からは4人になったから、適当に回しているようだ。何より、定休日を設けるなら平日の一日になるけど、おれは平日に休みがあっても仕方ない。だってチャンミンが仕事でいない家にいたっておもしろくもなんともないから。その代わり、ソルラ...

  • シルクとコットン 596

    総拍手数がもうすぐ34万ですよ、と昨日の記事へのコメントで教えていただきました。キリ番踏まれた方はお知らせください。リクエストをいただけたら、できる限りお応えいたします(*´艸`*)_________ウチのスタッフはおれも含め、専門大学(日本の専門学校・短大)卒だが、テミンは大学校を出ている。ていうか、おれはこの国では高卒なんだけど。だからってテミンが偉いわけではないし、本人もそれを鼻にかけるようなことは...

  • シルクとコットン 595

    チャンミンはこのところまた忙しい日々を送っている。綿畑を復活したころは張り切ってがんばってくれていたお年寄りたちが、ひとりまたひとりと体調を崩し。老夫婦だったりひとり暮らしだったりの患者さんのところには、看護以外にも何かと世話を焼きに行っている。チャンミンの勤め先であるソン医院では、おれたちのことをカップルだと見抜いた、当時中三だった娘さんはいまや立派な医大生で。上の息子さんはすでに大学病院の研修...

  • シルクとコットン 第四部 594話

    ミンソプとナヨンさんの結婚式から一年が過ぎ、おれたちの町に早い冬がやってきた。チョン紡績は業績が順調に延び、工場が手狭になってきたから新しい工場を建てる話が出たんだけど。おれが帰ってきて綿畑を復活させたときに、まだ作っていた水田や畑以外の休耕田や空き地を次々綿畑に作り替えてしまったから。工場を建てるためにせっかく作った綿畑を潰すのは本末転倒だし、どうしたものかと思っていたら、イ・ジョンシン工場長が...

  • 天使のお仕事 あとがき

    申し訳ございませんm(__)m毎度毎度突然現れる『完』の文字ですが、今回の『完』が一番びっくりしたというコメントをいただきました(;^_^Aもしも私が読み手ならたぶん、次は魔界のシーンだと思っていたでしょう。コメント主のk〇〇〇〇〇さんもそう思っておられました。そうなんですよね、もちろんそれも考えましたが・・・このお話は『悪魔と死神』『肌色の宝物』と三部作になるはずでした。前世の記憶がないおふたりが天界で再会...

  • 天使のお仕事 62

    『ユノ、チャンミン、くれぐれも気を付けて行くのだよ。』「「はい。」」おれとチャンミンが頭を下げると、ふわりと温かくて柔らかい何かでくるまれたような気がした。おれは直観的に、いま神様の御胸にいだかれている、と感じて涙がこぼれそうになった。『真っすぐに進めば外界に出る門がある。その門はキミたちのために開けておくから、もし辛いと感じたらいつでも帰っておいで。』いままでと同じように頭に直接響いたお声は、そ...

  • 天使のお仕事 61

    『これでキミたちはどこへでも自由に行き来できるし、どこに行っても汚れることはないだろう。』『だけどな、自分の中から汚れるやつはどうしようもないからそれだけは覚悟しておけよ。』自分の中から汚れる?『まあ、そうなったら魔界で面倒見てやるからよ。』ああ、そうか。天界の気が苦しくて魔界に送られたという天使さんたちみたいになるってことだな。『脅かすのはやめなさい、この子たちは大丈夫だから。』『へいへい、神様...

  • 天使のお仕事 60

    目の前の輝きは白銀に黒っぽい赤が混じってまぶしくなくなったけど、とにかく圧がすごい。体全体で踏ん張ってないと飛ばされるんじゃないかと思うほどだ。この場所全体が微かに震えているような気さえする。「すごいな。」「うん、飛ばされそう。」おれの手を握るチャンミンの手により一層力がこもって、おれの手がしびれそうだ。『よし、ふたりとも目を閉じていなさい。』神様の声で目を閉じたけど、次の瞬間目を閉じていても目が...

  • 天使のお仕事 59

    「ユノ、ぼくたち大丈夫だよね?」「ああ、だいじょぶだよ。神様がついていてくださる。」おれたちはひざまずいたまま、つないだ手を握りしめ合って待っていた。さっきより長くかかっているようだけど、本当にそうなのか、それともそう感じるだけなのか、おれにはわからない。『待たせたね。だがなんとかなりそうだ。魔王が協力してくれると言っている。』「魔王さまが、ですか?」『そうだ。私と魔王の気を練り合わせてキミたちに...

  • 天使のお仕事 58

    『ふむ、、確かに何の材料もなく考えることなどできないか。しかし、、』神様はきっと、おれたちが魔界に行って汚れてしまうことを心配してくださっているのだろう。おれだって自信があるわけじゃないけど。だけど、神様がおれたちに願い事をされたということはそれだけ信頼されてるってことだ。それならできる限りその信頼に応えたい。「死神さんたちは人間界でいるけど、魂は汚れてないんですか?」『彼らは天使たちにはない、特...

  • 天使のお仕事 57

    『どうだろう、キミたちふたりで私の手足となって働いてもらえないだろうか。』手足となって働くって?「何を、すればよろしいのでしょうか。」『人間界の気を浄化するためにできることがないかふたりで考えてほしい。』え?いや、いままで神様と魔王様が考えてきて、どうにもならなかったことをおれたちふたりでって。『先ずひとつ、悪魔が人間界に出入りしていることがわかっただけでも一歩前進したと言える。』それはまあ、チャ...

  • 天使のお仕事 56

    『ふふふ、キミはチャンミン、だったね。キミが正しかったようだ。』正しかった?『たったいま魔王と話したんだが、キミの言う通り、悪魔たちは魔王の目を盗んで人間界に出入りしているそうだ。』そうか、チャンミンはそれを言いたかったのか。もしかしたら魔王様は本当はそれを知っていたのかもしれない。だけど神様が人間界の気が乱れているのを心配しておられることがわかっているから、言えなかったのかもしれない。『これから...

  • 天使のお仕事 55

    『魔王と相談して、人間界に流入する魔界の気を止めたり、魂の性質を変えたり、いろいろ試してみたのだがうまくいかない。人間たちが自分たちで気を汚してしまうからだ。』チリョンさんも同じことを言ってたな。『気が汚れれば魂も汚れる。天界で天使たちががんばって洗っても追いつかないのだ。その上天使たちまで汚れてしまって、、』「魔界へ送られた天使さんたちは、、元気にされてるんですか?」悪魔になったとはいえ、もしか...

  • ご挨拶

    3月になりました!!2月は早足で逃げてしまったようで、気がついたら終わっていたという感じです(;^_^A『東方神起 LIVE TOUR 2023 ~CLASSYC』すでに参戦された方、いかがだったでしょうか。お尋ねするまでもなく、最高だった!!と思います。SNSでネタバレを拝見しているだけでワクワクします。今回日程があまりタイトでないと思っていましたが、そんなことはありませんでした。当たり前のことですが、おふたりは日本だけでなく...

  • 天使のお仕事 54

    「あの、、」チャンミンが言いかけてから、口をつぐんでうつむいた。『何だね?なんでも訊いていいのだよ?』神様がとても優しく声をかけてくださって、チャンミンも顔を上げる。「その悪魔、さんたちはいまも魂を食べているんでしょうか。」『いや、いまはもうそういうことはないと聞いているよ。最初のころ、魔王が魂を食べる際の規則を作ったのだが、その規則を守らずにムチャをする悪魔もいたようで、魔王も手を焼いていてね。...

  • 天使のお仕事 53

    『私は何度も何度もその子と話し合った。そのたびに教え諭したが、その子は変わらなかった。だから私はその子を追放することにしたのだ。』追放?けど、どこへ?『だが、そのまま放り出したのでは何をするかわからない。だから私の目が届くように【魔界】というものを造った。』へ?魔界も神様がお造りになったのか?!『そのころの天使の中には、天界の気が息苦しいという者がいて、その者たちもその子といっしょに魔界に送ったの...

  • 天使のお仕事 52

    「あの、、神様、その天使、ぼくたちの魂をふたつに分けてしまった天使は、、どうなったんですか?」『それは、、、』神様が逡巡していらっしゃる?天使は神様の子どもだから神様にも責任がある。もしかしてそれ以上の何かがあるのか?『あの頃はまだ、私も未熟でね。魂も天使たちもすべてが未熟だったんだ。』神様にもそんな時代があったなんて、すぐには想像できなかった。『その天使は、好奇心旺盛で自分の欲を抑えることができ...

  • 天使のお仕事 51

    ごめんなさい!!予約投稿したはずが、なぜか下書き保存になってました(-_-;)_________「そんなことが、、できるんですか?」チャンミンは神様の言葉の意味をすぐに理解できたようで、震える声で神様に尋ねた。『私も、、できるはずがないと思っていたのだがね。できてしまったんだよ。』「それでふたりは、、どうなったんですか?」ふたりっておれたちのこと、だよな。『最初の何代かはごく短い人生だった。寿命が短いだ...

  • 天使のお仕事 50

    『キミたちは何があっても人を恨んだり傷つけたりしなかった。逆に自分が悪いのだと卑下することもなかった。』自分ではわからないけど、神様がそうおっしゃるならそうだったんだろう。『キミたちはそのときそのときで最善の道を選んで精いっぱい努力していたよ。』「あの、神様はずっとおれ、私たちのことをご覧になってくださってたんですか?」『そうだよ、私にはキミたちの人生を見守る責任があったからね。』「責任、ですか?...

  • 天使のお仕事 49

    『そして、キミたちが不安を抱えていたことも知っているよ。』え?あ、そうか。おれたちが話し合っていたことは天使課の人たちに聞かれてたわけで、その内容は神様に報告されてたのかもしれない。『キミたちがあまりに美しい魂だから、気を抜いて話してしまったんだろうね。』「あ、あの、チリョンさんを叱らないであげてください。」「あれはぼくがあれこれ訊いたから教えてくれただけで、」おれたちふたりは慌ててしまって、神様...

  • 天使のお仕事 48

    無駄話していて神様をお待たせしてはいけないというチリョンさんに急かされて、あとをついて行った。すぐに見覚えのある門の前に着く。大きな扉が音もなく内側に開いて、「ではわたしはここで失礼します。」チリョンさんは頭を深く下げて戻っていった。残されたおれたちは顔を見合わせてから、手を繋いで門の中へ入る。前に来たときは何もわからないからキョロキョロしてしまったけど、今度はまっすぐ前を向いてしばらく歩いた。前...

  • 天使のお仕事 47

    そのあとしばらくは何事もなく過ぎ。ふたり、いつものように仕事場を離れて休憩しているときだった。「やあ、お元気そうですね。」「チリョンさん!?えっと、呼んで、、」おれは呼んでないけどチャンミン?と顔を見ると、ぶんぶんと顔を横に振る。「ええ、今回は呼ばれたわけではなく、お迎えに上がりました。」「お迎えって、、」あ、天使課へ?「神様がお呼びです。」「え?」思ってもいなかった言葉に、思わずチャンミンと顔を...

  • 天使のお仕事 46

    それからしばらくは何事もなく過ぎたけど、おれのとなりにいたひとがいなくなった。となりだからあまり見ていなかったけど、色が変わっている感じはなかったけどな。それから向かい側でおれの話をしっかり聞いてくれたひとも見かけなくなった。ひとり、またひとりと、いなくなっている気がする。いなくなってもすぐに新しいひとがくるらしく、数は変わらないようだ。いっしょに仕事していても親しくはないから顔もちゃんと覚えてい...

  • 天使のお仕事 45

    話し終わるとチリョンさんはすぐに戻っていった。きっと忙しい中をわざわざ来てくれたんだろう。おれとチャンミンは、みんなに話す言い方を考えてから仕事場に戻った。「あの、すみません。ちょっとお話があるんです。仕事しながらでいいので聞いてください。」この池の周りには30人くらいいるだろうか。その中で、手を止めて聞く態勢になってくれてのは三分の一くらいか。あとはおれのほうをチラッと見て仕事を続けているひとと。...

  • 天使のお仕事 44

    チャンミンさん♡お誕生日おめでとうございます!_________「なので、話すのは魂に話しかけると救える魂が増えることだけにしてくださいね。我々天使課のことは伏せてください。それと、、話すときは、増えるようだ、程度にされるのがよいと思います。」「もちろんチリョンさんたちのことを話すつもりはありませんけど、はっきり言わないほうがいいっていうのはどうしてですか?」「先ほども言いましたが、わたしたちには...

  • 天使のお仕事 43

    「そんなことができるのは、やっぱりあなたたちが真に美しい魂だからですね。」あまり褒められすぎると居心地が悪くなってくる。「えっと、それでおれたちはどうすればいいですか?みんなに話してもいいんでしょうか。」「そうですね、いいですよ。実を言うと、あなたたちの仕事の効率が他のひとたちに比べて格別に上がったことに注目していたんです。」あ、「じゃあ、おれたちが魂たちに話しかけてたことも?」「いえ、わたしたち...

  • 天使のお仕事 42

    「じゃあ仕事場に戻って、みんなに話してみよう。」そう言って立ち上がったらチャンミンがおれの手を掴んで止める。「それって、ぼくたちだけで決めちゃっていいことなんだろうか。」「え?」「天使課のひとが言ってたでしょ?『我々はみなさんの日ごろの仕事ぶりや言動を観察しています。』って。」「あ、ああ、確かにそう言ってたな。」ってことはいまも誰かがおれたちのことを?「だから相談してみたほうがいいと思うんだけど。...

  • 天使のお仕事 41

    「ぼくもね、ユノの真似をして魂たちに話しかけてるんだ。」体を離しても両手でおれの腕を掴んだままで、チャンミンも昂っているようだ。「ぼくはユノみたいに魂たちのことを思いやって話しかけるばかりじゃなくて、自分のことっていうか、そのときに浮かんだことを話しかけてるんだけど、」チャンミンの大きな目がおれの目をのぞきこんで、ちょっと大きめの口がよく動く。「ぼくもね、沈む魂が減ってるような気がしてたんだ。だけ...

  • 天使のお仕事 40

    それからは仕事中に、よく魂に話しかけるようになった。ひとつひとつが前世で人間として、どんな生活をしてきたのかはわからないし。ひとことで『汚れた』と言ったって、どんな罪を犯したのかだってわからない。きっとひとつひとつがまったく違う人生を生きて、まったく違う状況で、まったく違う罪を犯したに違いない。想像もできないけどたぶんみんな、何かしらそうならざるを得ない事情があったんじゃないだろうか。そんなことを...

  • 天使のお仕事 39

    「ふふっ、なんだか不思議だな。」ふたりで仰向けに寝転んで手を繋いだままで、チャンミンが急に笑いながらつぶやいた。真っ白い広い空間にふたりだけだから大きな声を出す必要はない。「うん?何が不思議なんだ?」「だって、さっきまですごくざわざわして不安だったのに、こうしてユノと手を繋いでいると落ち着いてきたんだもん。」「こうしてると落ち着くのはおれも同じだよ。さっきはめちゃくちゃびっくりしたからな。」「ユノ...

  • 天使のお仕事 38

    次の休憩でやっとチャンミンと話ができた。チャンミンもやっぱりモヤモヤしていたらしい。「ぼくもユノのとなりのひとは天使課へ異動になるかもしれないって思ったよ。けど、言えないよね。」「そうなんだよ、あれはナイショの話だからさ。」「うん。それに、、」「うん?」「もしも、もしもだよ?教えてあげて、そうならなかったら、きっとがっかりさせるだけになってしまうしね。」「あー、そうか。そうだな。そういうこともある...

  • 天使のお仕事 37

    天使課の話を教えてあげたらきっと喜んでくれるに違いない。おれはノドまで出かかった言葉を寸での思いで飲み込んだ。だってこの話は、おれたちを案内してくれた人とおれたちとのナイショの話だったから。となりのひとは、たぶんここにいるほとんどのひとも、真っ白な天使に色がついてどこかへ行ってしまうことは知っているけれど。ずっと真っ白のままだったら天使課に異動になることは知らないはずだから。いや、中には知っている...

  • 天使のお仕事 36

    おれたちは一生懸命仕事をした。もちろん休むことも忘れずに。毎日同じ作業の繰り返しだったけど、それでもおれたちは充実していた。でも、、、ふと周りを見ると、真っ白だったひとがぼんやり色がついているように見えて。気のせいかと思っているうちに、その人がいなくなってしまうことがあった。「あのひと、いなくなっちゃったね。」チャンミンも気付いていたのか、おれにだけ聞こえる声でポツンとつぶやき。「ああ。」おれもひ...

  • 天使のお仕事 35

    おれたちが質問攻めにして長いこと足止めしてしまったのにイヤな顔ひとつせず、「仕事はムリせず、適度に休みながらしてくださいね。」天使課の天使さんはにっこり微笑んで念を押すようにそう言ってから戻っていった。池に近づくと、おれたちに気づいた先輩天使さんが立ち上がって、おれたちが座る場所を空けてくれた。並んで座ったおれたちの両隣のひとが、仕事のやり方を丁寧に教えてくれて。おれたちはそのまま仕事を続けた。こ...

  • 天使のお仕事 34

    「あの、もうひとつ伺ってもよろしいですか?」チャンミンが遠慮がちに声をかける。「ええ、もちろんいいですよ?」「神様がお作りになった魂には傷も汚れもないんですよね?なのにどうして戻ってくると傷がついていたりするんですか?汚れは罪を犯したからだと聞いていますが。」「あー、そうですね。話せば長くなるんですが、、そもそも人間界には天界の気と魔界の気が混じって存在しているんです。」天界の気と魔界の気?「天界...

  • 天使のお仕事 33

    「この仕事をしてもらうのは、傷や汚れの元がないひとを選んでいるはずなんですけどね。」「それはどうやって調べるんですか?」「我々はみなさんの日ごろの仕事ぶりや言動を観察しています。」我々?観察?「だからあなたたちより長くここにいる天使さんでも、まだ外で仕事しているひとがたくさんいるでしょ?」あー、確かに先輩たちがいっぱいいたけど。そう言われても喜んでいいのかどうかわからない。「あの、、あなたは、」「...

  • 天使のお仕事 32

    「あっ」チャンミンが声を上げかけて、慌てて口を手で押さえた。「おわかりになりましたか。」「色が、、」その声で、おれの違和感の正体がはっきりした。「真っ白じゃありませんね。」おれたち天使は魂が具現化されたもの。顔はそれぞれ違うけど、体部分はみんな同じ真っ白の姿をしている。だけど、そこで作業しているひとたちは真っ白じゃなく、ほんの少し色がついていた。「あれってまさか、、汚れですか?」「そうです。」案内...

  • 天使のお仕事 31

    一時間早いですが、ユノさん♡お誕生日おめでとうございます!「あの、この作業場での異動はあるんですか?」「ええ、たまにありますよ。」「それって、、最終段階のひとが魔界におと、、異動になったらってことですか?」「おいチャンミン、」「ああ、そうですか。ご存じなんですね。そうです、汚れてしまった天使は魔界に異動になります。」『落とされる』というのとは感じが違うけど、魔界に行くことは間違いないんだ。「天使で...

  • 天使のお仕事 30

    「魂を洗う作業はいくつかの工程に分かれているんです。」あ、そういうことか。「ここと同じような池がいくつかあって、きれいにならなかった魂は次の池へ送られます。」「この水は、表の池と同じ清浄な水ですよね?」「ええ、そうですよ。」「その水で洗ってもきれいにならないんですか?」「残念ながらそういうことになりますね。なので次の池の水は少し温めてあります。」温める?どうやって?と疑問が浮かんだけど、尋ねても教...

  • 天使のお仕事 29

    「行きますよ。」案内のひとに促され、慌ててついて行く。「外観が建物に見えるのは、審査部に威厳を持たせるためじゃないかと私は思っていますがね。」威厳、、、なるほど、そういうことか。あれ?「でも、神様がいらっしゃるところは門だけでしたけど。」威厳と言うならあそこが一番必要なんじゃないのか?「あれは神様の御心ですよ。神様は常に皆と共にあられます。」つまり威厳は必要ないってことか?ぼんやりしていると迷子に...

  • 天使のお仕事 28

    それからしばらくして、おれたちは魂を洗う仕事場に異動になった。あの、魔界に落とされるという話を教えてくれた先輩は、おれたちを憐れむような目で見ていたけど。おれたちは別に怖いとも何とも思っていなかった。ただ、汚れた魂を傷つけずに洗えるかどうかだけが心配だった。チャンミンといっしょにあの建物の前に行くと、案内のひとがいてくれて。中へ案内されて驚いた。だって、建物だと思っていたのに中はいままでの仕事場と...

  • 天使のお仕事 27

    おれたち、特におれは一生懸命仕事をした。先輩たちはグループごとに談笑しながら楽しそうに仕事していて。最初、いろんなグループから誘われたのをやんわりと断っていたら、どこからも誘われなくなった。別に仲が悪いとかそういうんじゃないけど、おれはチャンミンといられればそれでよかったから。たぶんチャンミンだってそうだと思う。動物の魂は種族によって少しずつ大きさが違う。転生したときの体の大きさが違うから器の大き...

  • ご挨拶

    2月になりました!!一年で一番短い月なのに楽しいことが盛りだくさんです❤今日1日はニューシングルの発売日!6日はユノさんのお誕生日!11日からツアーが始まり!13日は東京・京セラドームチケット発売開始!16・17日はおふたりそれぞれのお誕生日イベント!!と、おふたりは本国と日本を行ったり来たりしてくださいます。先日ソルラル休暇で一時帰国されたのに、どうやらこっそり?戻ってきておられたようで。チャンミンさん...

  • 天使のお仕事 26

    おれたちは仕事を済ませ、いつものところで休憩する。「なんか、すごい話だったな。」「うん、悪魔と死神さんが仲良しになるなんてね。」「うん、敵同士なのにな。ってことは、異種族同士でも仲良しになれるってことなのか?」「どうだろう。動物っていっぱい種類があるみたいだからもしかしたらあるかもね。それよりさ、『恋人同士』ってどういうことなのかな。」「ドンヒさんは、ものすごい仲良しさんたち、って言ってたけど、お...

  • 天使のお仕事 25

    おれもチャンミンも興味津々で前のめりになっていた。「その決闘で悪魔をかばって死んだ死神がいたんだ。」ん?死神が悪魔をかばう?巻き込まれたとかじゃなくてかばって?頭の中でそのシーンを想像してイメージはできたけど、その理由がわからない。チャンミンと顔を見合わせると、チャンミンも訳が分からないって顔をしていて。ふたりして小首を傾げてしまった。「どうしてそんなことに?」「まあ、俺もウワサで聞いただけなんだ...

  • 天使のお仕事 24

    「で、悪魔の何を聞きたいの?」「えっと、どんなひとなのか、とか、どんな仕事をしてるのかとか。」「んー、そうだな。俺が直接会ったわけじゃないし、一口に悪魔って言ってもいろんなやつがいるだろうけど。いま言ってる子はめちゃくちゃかわいくて魅力的な子らしいよ。」かわいくて魅力的な子?「まあ、その子に会ったやつが感じた印象だから、誰が見てもそう思うかどうかはわからないけどね。」ドンヒさんがいたずらっぽくちょ...

  • 天使のお仕事 23

    魂をお迎えに行く機会は案外早くやってきた。チャンミンに指令が来たんだけど、おれもいっしょに連れて行ってくれて。門の外にやってきたのは知っているひとじゃなかったけど、ニコニコと愛想のいい死神さんだった。「初めまして、俺、ドンヒ。」「ぼくはチャンミンです。こちらはユノ。」「チャンミンさんとユノさん、だね。だけど魂はひとつだけだよ?」「ああ、えっと、ぼくたちはいつもふたりで行動してるから。」「あ、そうな...

  • 天使のお仕事 22

    「そんな、そんなことのために魂を食べるなんて、、」「うん、ひどいよな。」「あ、ちょっと待って!」「うん?」「人が亡くなるときって死神さんが魂をお迎えに行くんだよね?」「うん。」「悪魔は契約した人が亡くなるときにその魂を食べるんでしょ?」「うん。ん?あっ!」「それって取り合いになるってこと、なのかな。」「そうかもしれない。いや、もしかしたら契約した時点でこちらに連絡が来るとか、、はないかな。」「そう...

  • 天使のお仕事 21

    「ごめんチャンミン、おれ、」「ううん、ぼくだって腹が立ったよ。だけどあの人とケンカしたら、話が聞けなくなると思って。」「うん、そうだな。それにあの人に怒ってる場合じゃなさそうだし。」「うん。」おれたちは池のほとりの、もはや定位置になりつつある場所に座っている。周りのひとたちは同じ顔触れ、ってわけではないけど、それぞれが思い思いにくつろいでいる中で。おれとチャンミンだけが難しい顔をして、くっついて座...

  • 天使のお仕事 20

    「いままでだって何人かはいたんだ、そういう要領の悪いヤツが。」その言い方にムッとして、先輩の顔を睨みそうになったけど、となりのチャンミンの手がそっとおれの膝に触れた。「汚れが残ったって、こうやって動物に入れちまえばいいんだからさ。」そう言って、無造作に魂を器に放り込む。「あ」「あの!どうしてそれが最近増えたんですか?」「それがどうやら人間界の気が乱れてるらしい。」人間界の気?「俺もよくはわかんねえ...

  • 天使のお仕事 19

    「あ、あの、その話、詳しく教えてもらえませんか?」まだあまり親しくない先輩だけど、どうしても知りたくて話しかけていた。「え、あ、知らないのか?天使が魔界に落とされるって話。」「はい、聞いたことありません。」「そうか、、じゃあ教えてやるよ。おまえたち、汚れた魂を洗う仕事があるのを知ってるか?」「ああ、それなら知ってます。」チャンミンと顔を見合わせて、うなずき合った。「水くみ場の水で洗うんですよね?」...

  • 天使のお仕事 18

    いくら考えても結論は出ないから、おれたちは仕事に戻った。魂の大きさはできるだけ気にしないようにして。それに、動物の種族が違えば大きさも微妙に違ったから、そのうち気にならなくなっていった。ただ、いままで感じていた居心地の良さが少し変化したような気がする。おれはどうにも集中力が続かなくて、一休みすることが増えていた。「ユノ、そろそろ休憩しようか。」チャンミンはそんなおれの状態を感じ取って、自分は疲れて...

  • 天使のお仕事 17

    それからしばらく、おれたちは仕事をする気になれず、池のそばで座り込んで過ごした。ただ黙って、寄り添って、手を繋いで、そうすることで固まってしまった心(魂)が緩んでくるような気がした。「ありがと、チャンミン。」「ううん。大丈夫?」「うん、ずいぶん楽になった。」もしかしたらおれはホントに固まってしまっていたのかもしれない。だっておれたち天使は、魂が具現化した存在なんだから。「人の魂を動物に入れるなんて...

  • 天使のお仕事 16

    天界というところはとても穏やかなところだ。愛が満ちていて優しさがあふれている。始めのころにちょっとイヤなことがあったチャンミンもすっかり慣れて、仕事中に少しおしゃべりができるようになった。魂の扱いが上手になったおれたちは、次の仕事場に移ることになって。いままでは人間の人型に魂を入れる作業だったけど、今度は動物だ。動物の魂は人間のものに比べて少し小さいから、つまむのが難しく。おれはチャンミンよりも時...

  • 天使のお仕事 15

    「ねえユノ、死神さんたちってみんなあんなに優しいの?」「あー、どうかな。まだそんなに魂のお迎えに行ったことがないからわかんない。ヒチョルさんは前に会ったときも気さくで話しやすかったけど、全然しゃべらないひともいたよ。」「そうなんだ。だけど、死神さんって真っ黒だからちょっと怖い感じがしたけど、そうじゃないんだってわかってよかったよ。」「チャンミンは初めて会った死神さんがジョンスさんやヒチョルさんでよ...

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