第3場[8月中旬、上吉田村にある高利貸し・山中常太郎の家。常太郎と妻のヨネ。]ヨネ「あなた、借金をした農民がきょうも何人かやって来て、ご主人に会わせてくれとか、返済を延期してほしいなどと言ってきましたよ」常太郎「まったく困ったものだ。返済は延期できないと、この前はっきりと言っておいたのに。ほんとに図々しい奴らだな。借用証書にも返済期限がちゃんと書いてあるじゃないか」ヨネ「1年とか2年の“年賦払い”にはできないのですか?」常太郎「それは無理だ、そんなことをしている仲間はいない。もしそんなことをしたら、同業の連中に迷惑をかけることになる。借りたものをきちんと返すのが、当り前じゃないか。それに、仮りに年賦払いに変えたところで、あいつらはまた返済を延ばしてくれと泣きついてくるに決まっている。だらしない奴らだからな...明治17年・秩父革命(2)