第4場[10月下旬のある晩、上吉田村にある日下の家。藤吉がそっと忍び込んでくると、母のミツと妹のハルが驚いた表情で迎える。]ミツ「藤吉・・・大丈夫なの?」藤吉「うん、何とかやっている。二人とも元気だった?」ミツ「こちらは大丈夫だけど、お前のことが心配で夜もおちおち眠れなかったよ」ハル「兄さんったら何の連絡もないし、言(こと)付けでも良いからしてくれれば安心するのに」藤吉「ごめん、なにせ追われる身だからね。もっぱら群馬や長野に潜伏していたんだ。ところで、加藤さんから面倒を見てもらってる?」ミツ「ええ、それはとても。当座のお金も貸してくれたのよ」藤吉「それは良かった」ハル「母さんも私も働きに出るわ。加藤さんに早くお返しをしないと」藤吉「うん、あの人は“高利貸し”じゃないから助かるね。僕が何もして上げられなくて...明治17年・秩父革命(6)