<以下の記事は2013年12月13日に書いたものですが、内容を一部修正して復刻します。>「誰(た)そ我にピストルにても撃てよかし伊藤のごとく死にて見せなむ」という短歌がある。これは石川啄木の歌だが、知っておられる人も多いだろう。伊藤とは伊藤博文のことで、1909年10月に彼が今の中国・黒龍江省のハルビンで、朝鮮の民族活動家・安重根(あん・じゅうこん)に暗殺された直後に作られた歌である。意味は「誰か私にピストルでも撃ってくれないか。伊藤のように死んで見せよう」というものだろう。私は啄木の研究家ではないが、この歌は明らかに伊藤博文の死を悼んで作られたものだと思う。そして、当時23歳の血気にはやる啄木らしい、侠気に満ちた青年の歌だと言えるのだ。それほど、伊藤博文の“存在感”は大きかったのだろう。ここで伊藤の歴史...石川啄木と伊藤博文と安重根