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紙ヒコーキ https://paperplane004.hatenadiary.jp/

年下攻め/大学生モノ/軍隊/耽美な雰囲気を目指し毎週日・火・木曜日更新中です。

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chaiとyukino
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2015/02/27

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  • サイト移転のご報告

    こんにちは、yukinoでございます。 先日アナウンスさせていただきましたように、当サイトは移転いたします。 新しいサイトが完成いたしましたので、皆様にご報告差し上げます。 URL【http://twinklestars1102.wix.com/kamihiko-ki】 上記からアクセスしてくださいませ。大変恐縮ながら、もしもブクマしてくださっていた方がいらっしゃいましたら、新しいサイトの方でお願いいたします。こちらのブログもしばらくは残しておくつもりですが、いつ消してしまうかわかりませんので…。 新しい方ではフレイムの最終話をアップしておきました。最後を迎えられて本当にしあわせだとおもいま…

  • あとがき

    話の更新を楽しみにしてくださっていた方がいらっしゃいましたら、大変申し訳ございません。yukinoでございます。 今回は今まで書いてきた短編、中編のあとがきを掲載したいと思います。このブログは作者が二人おりますし、それぞれがどんな思いでひとつずつの作品を書いているのか、恥ずかしながら少し語らせていただきました。次回の更新は未完成ダイアリーかフレイムの続きを予定しております。ここ最近、更新が不定期だったので、できれば日曜日までにあげたいと思っております…!ではまず、chaiのあとがきからご覧くださいませ! ◆chai あとがき Rick's Daily 003 yukinoの話を受けて、この愛す…

  • 美しい棘

    秋も深まり冬の音が微かに聞こえてくるこの頃は、どうしても人恋しくなる。久しぶりに取れた連休をこの日のために死守して、お洒落好きなレオンと並ぶために少し服を買い揃えるためにそのうちの一日を当てた。だが一人では心細く、センスがないのを知っていたから部下であり良き相談相手でもあるエリックを誘った。エリックは快くOKしてくれ、さっそく二人で買い物に繰り出している。 「秋物はいいですね、落ち着いた色合いが多いし他の季節には着られないような色のものばかりだ」「そうだな。今日はお前のセンスだけが頼りだからな。40手前の男に似合う服を選んでくれよ」「わかってますよ」 案の定、流行に疎いグレンにでもわかるような…

  • 【2-6】君が大人になる前に

    ”リゲル1、こちらいま着地。ターゲットへ向かいます”ザザ、という無線のノイズが耳に障る。 「キャプテン、ヴィンスさんたち着地したようです、オレたちもそろそろ」 ウィルが輸送機内の後部座席から声をかけてきた。レイフはパイロットであるバイロンに目配せをする。空軍からの付き合いは伊達じゃない。バイロンは何も言わず頷き、着地地点を探すためレーダーに触れた。 「それにしても、ここのところ多いですね」「ああ」「地図に落としてみても場所も定まらないし、規模は小さい。愚弄されてる気分になります。何かの陽動と考えるのが妥当でしょうか」 ウィルは顔をしかめた。今週はキャプテン補佐であるデールが非番で休みのため、キ…

  • 【2-5】君が大人になる前に

    ウィルがT-SATに来た秋から一年が経った。レイフはデスクに向かいながらウィルの最新の成績情報をパソコンで眺めながら思う。いつからか、ウィルは達観した風な様子になった。それはレイフだけがそう感じているのか、それとも周りもそう思っているのか、定かではない。ここ半年ほどは狙撃の訓練をエリオットに任せてやらせていたこともあって、関わることが少なかったというのもある。部隊での演習でも新しくミラチームに入った新人の育成がメインだったし、ここ数ヶ月はずっと医療チームと合同で進めていたプロジェクトのせいでなかなかウィルの訓練を見ることが出来なかった。エリオットからの報告は受けていたし、たまに出動したときに着…

  • 月の見える夜は

    アダムといるときの月はより一層綺麗に見える。本当に苦しい毎日の闘いの中でも、こんな夜を過ごせるなら長く続いてもいいと思えるのだ。そよ風に草木が揺れ、乾いた音が二人を包んだ。「いい夜ですね」「…そうだな」二人は夜間警備に当たっていた。部隊の仲間が休むこのキャンプを守るのが任務だ。この辺りは紛争の頻発地域である。しかしこのところは少し落ち着きを取り戻していて、今夜は空に曇りもない。 「お前と夜間警備に当たる日はなかなか気持ちいい夜ばかりだ」 アダムは真っ暗な地平線を眺めながら笑った。その横顔をエリスは盗み見る。 「不思議だ、実はオレもそう思っていました。この間、副隊長と夜間警備に当たったときは土砂…

  • 【13】フレイム 2003.10.24 -Craig side-

    "率直に言うと、気持ちの整理がついていないときのほうが楽だった。落ち着いて自分の余計な気持ちを片付けてみると、こんなにもピアーズが恋しい。" 久しぶりに日記を綴ろうと思ってしまったのは、きっと報われない恋の副作用だ。クレイグはソファに腰掛けて、ハードカバーの日記を手に取った。 ドイツでの新生活は思ったより刺激がなくて、宙を漂っているような感覚だった。勿論学問にはうってつけの環境で、仲間たちと切磋琢磨しながら毎日勉強する日々を楽しいと感じていなかったかどうかと聞かれれば「楽しい」という感情のほうが近いのだろう。知識を欲するままに得られるし、身体を動かしたければ二三人ピックアップしてバスケットコー…

  • バスルームに誘わせて

    久しぶりの二人での食事を終えると、フレディは立ち上がってコーヒーを入れた。今日は少し疲れているようだから、柔らかめのカフェオレにしよう。マグカップを用意していると不意に後ろから腕を回された。 「フレディ、ありがとう。すごく美味しかったよ」 ちょうどへその辺りにアルフの手が握られている。首筋にかかるアルフの吐息がくすぐったくなり、フレディは少し体をよじった。 「こちらこそ、お粗末様でした。あんなに幸せそうな顔で食べてもらえて本当に光栄です」 フレディが真剣な顔でそう言うと、アルフは彼の頭に手を置いて笑った。 「俺は世界一の幸せ者だな」 アルフの心底幸せそうな笑顔を見てフレディも胸があたたかくなっ…

  • 【12】フレイム 2003.3.16 -Piers side-

    ”ピアーズへ この手紙が届く頃には、ヨーロッパから帰ってきているでしょうか。 俺がこの先、第二のライフステージを過ごすことになるドイツは、お前のそのプランに含まれていたかな。俺はこれから、親父の学んだ大学に通うことになる。留学という名目だが、おそらくそのままその大学病院で勤務することになるから、次そっちで腰を落ち着けられるのは当分先だ、もしかしたら10年以上かかるかもしれない。 だから俺の人生において出会えてよかったと思える友人の一人であるピアーズへ、こうして柄にもなく手紙を書いてみている。 筆を執った理由はそれともう一つ。お前に謝りたいことがあるんだ。俺は出会ってからこれまでの約5年間、お…

  • 【2-4】君が大人になる前に

    翌朝は思っていたよりすっきりと起きられた。眩しい朝の光がウィルを照らす。冬の朝陽は弱く、温度も低い。ウィルは布団から出るとそのまま歯を磨いて顔を洗った。もう頭の中で今日一日のプランを考えている。 午前中に買い物を済ませてそれから支部でトレーニングをし、帰宅したら読みかけだった本を消化して一日を終えよう。なるべく何もしていない時間はなくしたかった。 ウィルの部屋は簡素だ。家は訓練のない日にたまに帰って寝るだけで、実際は殆ど寮で生活をしている。親が泊まりに来ることもあるがそれも殆どなくなってしまった。それでも寮だけで事足りると思っていた以前とは違い、いまはこうしてあの上司の姿を見なくて済む場所があ…

  • 【2-3】君が大人になる前に

    それからは物事がスムーズに進むようになった。訓練もエリオットが言うようにあれからすぐに慣れてきて、レイフにも褒められるようになった。 「今日、隊長に褒めてもらえたよ。最近調子いいなって」「よかったじゃない」「…セシリーのおかげだ」 そういって彼女の裸を抱きしめる。彼女の肌は吸い付くようになめらかでいつまでも触っていたくなる。 「ねえセシリー、今度映画を見に行かない?オレ、観たい映画があるんだ」「…映画は部屋でくつろぎながら観たいの。私、映画館のような箱は嫌いで」「…そう。仕方ないね」 納得出来なくても、セシリーの前では飲み込むしかない。彼女はウィルよりずっと大人で理性的だ。ウィルはいつも物分り…

  • 【2-2】君が大人になる前に

    「ウィル!遅いぞ!!」「ハイ!」 陸軍の訓練時代は得意としていた基礎訓練も、S-SATの中では全く歯が立たなかった。入隊してから一ヶ月が経とうとしているのに。 「もっと早く!そんなんじゃ敵に追いつかれる!」「ハイ!」 後ろからレイフが発破をかける。陸軍で一緒に訓練をした優しいレイフの面影はない。それもレイフなりに考えて、そう接するようにしているのだろう。ウィルもそれをわかっていたからレイフに悪いあたりをしたことはない。 戦時を想定し、積荷を背負いながら坂道や階段を登る訓練は、ウィルが陸軍当時から不得手にしていた訓練の一つだった。それにしても最下位を取ることはなかったし、むしろ陸軍の中では殆どの…

  • 【2-1】君が大人になる前に

    ※「アイデンティティーを刻む」の続きです 「今日からトロイア支部、レグルスに所属されることになったウィルフレッドだ。自己紹介を、ウィル」「ハイ。元陸軍特殊部隊第一小隊所属、本日からS-STAトロイア支部レグルスに入隊しましたウィルフレッド・ブラッドバーンです。宜しくお願いします!」 レグルス、アンタレス、リゲル、ミラのメンバーたちが歓迎の拍手をくれる。その中には合同演習で世話になったエリオットの姿もあった。みんなが心からウィルを歓迎してくれているのを感じて、ウィルの表情にほぐれた笑いが浮かぶ。 「いいですね、最近レグルスには若いのが入らなかったから」「そうだな」 声をかけて来たのはエリオットだ…

  • 夜にひかれて 003 -Darius side-

    呼び出したはいいものの、何をしたらいいのかわからない。なんと言えばいいかも正直考えたけどいい言葉が思いつかなかった。ただ、ブレントのあんな言葉を聞いたらいても立ってもいられなくなったんだ。 シャワールームから引き上げると、脱衣所にはダニエルとアレックスしかいなかった。二人で何やら話し込んでいて、俺とマルコは端っこで身体を拭く。着替え終わるとさっそくブレントにメールを打った。“どこへ行けばいい?”返事はすぐに帰ってきた。“寮のドア前で待ってます”いよいよだ。鼓動が痛いくらいに早まっている。こんなに緊張していたら訓練後の疲れた身体に障るんじゃないか。マルコに別れを告げ、脱衣所を出た。 緊張が止まら…

  • 【12】フレイム 2003.1.29~(1999.8.25) -Piers side-

    大学が長い春休みに入り、ピアーズは一層建築学の勉強に力を入れることにした。春休みのうちに色んな建築を見、歴史を知り、自分らしい意匠設計にたどり着くための材料を得たい。クレイグが自分を認めてくれている、信じてくれている、そう思うと苦手な構造分野の勉強も苦にはならなかった。 (やっぱり思い切って海外にでも行こうか、やっぱり自国の建築だけじゃ知れる歴史も少ない) ピアーズは自室で旅行雑誌を捲りながら迷っていた。行きたい国は数あるが費用も時間限られている。ツアー雑誌の価格を参考にしながら、ピアーズはひたすら思案した。だがこんな時間も楽しい。本当はクレイグと行きたいけれど、興味のない建築見学に付き合わせ…

  • 夜にひかれて 002 -Brent side-

    「あのさ、ブレント」 後ろから急に声を掛けられて、自分でも情けないくらい肩が震えた。ゆっくり振り返ると、オレが待ち焦がれていた顔。 「…キャプテン、びっくりしましたよ」「ああすまない」 キャプテンは少し気難しい顔をしていた。まあ、それはそうだろう。きっとこないだの返事をくれようとしている。 「どうしました?」 出来るだけその警戒心を解こうと微笑んだ。キャプテンはそんなオレの顔を見て、ようやく少し口角を上げる。 「あのさ、今晩、だいじょうぶか?」 覚悟はしていたけれど、いざこうして誘われるとすごくドキドキするものだ。返事を聞きたいけど、聞いてしまうのは怖い。それに、いまのキャプテンの表情からして…

  • 夜にひかれて 001 -Darius side-

    ロッカールームからはチームメイトの賑やかな声が聞こえてくる。その中にブレントもいるようだ。同僚といるときのブレントは明るく愉快で、戦場で見る厳しい表情のブレントとは全くイメージが違う。まあそんなギャップに惚れたのだけど。 「訓練だりー。暑いんだよ、今日はよ」「今日の最高気温何度か知ってるか?38度だってよ」「暑すぎだろ。溶けちまうよ。ブレント、お前よく愚痴の一つも言わずトレーニングなんてやってられるな」 訓練終わりのチームメイトたちがだべっているようだ。今日はたしかに暑かった。俺もこまめに水分補給を促したし、隊員もみんなそれに従ってくれていた。まあこんな暑い日には愚痴の一つや二つ、出るのは仕方…

  • 飲み会にて

    同じ飲み会に出たのは久しぶりだった。まだ片思いだった頃に一度、ベネットが来るからというので仕事そっちのけで直行したのもいい思い出だ。課の皆の顔が上気して赤くなり始めている。今日は早めに仕事を終わらせると言っていたのに、アイツはなにをやっているのだろう。 「先輩~!」 あちらこちらで俺を呼ぶ声がする。それは本当に嬉しい限りで、若手の育成というものはこういうところにやりがいを感じるのだ。つまり、やっただけ返ってくるということ。 「ベネットさん遅いですね!」 酔っ払ったベイジルが俺のグラスが空いているのを見て飛び跳ねた。 「あれ!先輩!飲んでない!珍しいです!」 ベイジルが笑う向こうからマルコの手が…

  • 【1-4】アイデンティティを刻む

    「あまり銃声も聞こえませんね」「まだ互いの様子を探っているんじゃないか?」ナイトビジョンを装着しながらウィルが囁く。ナイトビジョンであれば暗闇でも敵がいれば白く浮き上がって見えるが、それもない。レイフも裸眼であたりを伺っているようだ。「ウィル、攻めてもいいか?」「…勿論。どこまでもついていきます」そういうとレイフはわざと上空に向けて発砲した。二発撃つと、そのままウィルにしゃがめと指でサインを示す。陸軍の所長がレイフの参加を快諾したのも、こういう刺激を催すためだろう。陸軍の訓練生は守りに入ることが多い。「お前はここでライフルを構えていろ。俺は少し侵攻する」「わかりました」ウィルはスコープの端にレ…

  • 【1-1】アイデンティティを刻む

    ウィルフレッドの所属する陸軍の全日射撃訓練は初秋に行われる。防弾チョッキやヘルメット、夜間の射撃に備えてナイトビジョンスコープを取り付けたM16やFN FALライフルなど実際の装備と地図を持たされ、バディと共に林間に放り出される演習訓練である。弾は同じ経口の訓練弾を用い、生き残りをかけた全3日間の全日射撃訓練は、陸軍の訓練の中でもっとも過酷で実践に近い。 「全日訓練のバディ今日発表だったよな」「うん。ウィルは誰とだと思う?」「いや、…想像もつかないな。未だにあの組み合わせがどんなロジックで決定されるのかわからないし」 相部屋のヒューズと他愛もない話をしながらウィルは中央廊下を歩いていた。正直こ…

  • 【1-2】アイデンティティを刻む

    ――――「本日このような合同訓練の機会を与えて下さったレイフ・ベックフォード隊長に感謝して、挨拶の締めとさせて頂こう」 陸軍中部支部長の挨拶が終わり、合同訓練の時間が近づくにつれて一層訓練生たちの熱気が上がっていく。ウィルはそれを肌で感じて、自身も言葉に出来ない高揚感に満たされていくのがわかった。開式を終え、その場で待つように訓練生たちに指示が飛ぶ。ここからはそれぞれのポジションによって分かれて訓練を行うため、ヒューズとはここでお別れのようだ。 「…フレディ・マックス…ウィルフレッド・ブラッドバーン。よし、これで全員だな。俺は●147チームのフェリックス・エリオットだ。君たちと同じように後方支…

  • グラスを傾けて

    久々の二人での夕食に心が沸き立つのを感じる。最近は仕事が忙しく、悠々と食事を取ることすらままなかなかった。 包丁の切れ味はいい。丁寧に皮を剥かれた野菜を一口大の大きさに切り分け、鍋に放り込んだ。 不器用な上司は、よく料理なんてできるな、と苦笑いしていたが、フレディは料理が嫌いではない。基礎をきっちりやるとそれなりの味のものが出来る喜びがある。そして何より、愛する者の好きな味を自らの手で作り出すことが出来るのも料理をする者だけに与えられた嬉しい特権だ。 今日も疲れた顔で帰って来るのだろう上司に、彼の大好きな料理を食べさせてあげたいと思うのはきっと親心と似ている。上司に対して親心だなんてちゃんちゃ…

  • 【11】フレイム 2003.1.29 -Craig&Piers side-

    「お前もう寝る?」「うん、眠いし。まだ勉強すんの?」「どうしようかと思って」「いいよ、オレ明るくても寝れるから。あーでも上で寝るからあんま関係ないか」 ピアーズはそういって背伸びをした。2時間に渡るゲームで萎縮した筋肉を伸ばしている。 「…いや、まあでも明日勉強出来るしな」「嫌ってほどね」 クレイグの部屋はメゾネットになっている。高校時代は中二階を趣味の部屋としていたけれど、星が綺麗に見えることに気がついてからは寝室にすることにした。ベッドを置いて、好きなクラッシックを聞きながら、その低く斜めにかかる窓から毎夜星を見上げた。こういうときだけ、家が無駄に大きくて良かったと思う。高さのある屋敷では…

  • 【11】フレイム 2003.1.29~(1999.8.25) -Craig side-

    「なあクレイグ!回復持ってる?」「はいよ」 画面の中で、クレイグの使用キャラがピアーズの使用キャラに回復アイテムを使う。 「助かった。サンキュ。敵強いな」「向こうの衛生兵がまた厄介だな」「うん」「あとお前もう少し物陰に隠れたほうがいい、正面から行き過ぎるからダメージ食らいすぎるんだよ」「やっぱ正々堂々とね」 ピアーズは画面に夢中でクレイグには視線もくれない。クレイグはふと、そのピアーズの耳たぶをみた。そこに一点、塞がってはいるがピアスの穴の跡が残っている。それを見るたびにクレイグは、ひどい後悔に襲われた。心の一番奥をちくりと針で刺されるような痛みに似ていて、どれだけ時が経っても和らぐことはない…

  • 【10】フレイム(2003.1.27)~2003.1.29 -Piers side-

    ―――「お前今週も土日来るだろ?」そう声をかけられたのは、ジムの隣あったランニングマシーン上を走っていた時だった。いつもピアーズは耳にイヤホンをつけて走るから、トントンと肩を叩かれイヤホンを外した途端のことだ。 「ああ、別に他の予定もないし」「金曜の夜、サイモンとダーツ行くけどお前も行くよな」 当然のように聞いてくるクレイグが少し憎い。けれど自分は土日の予定を当然のように受け取っているしそれに合わせて日頃のスケジュールを組んでいる。学科の友人との遊びや予定は、すべて平日の夕方を使っているのだ。 「え、聞いてない」「でも?」 だから金曜日はダメだった。学科の友人と個展に行こうと言っていたのだ。だ…

  • 【9】フレイム 2003.1.29 -Piers side-

    クレイグの細い指がダートをつまむ。そして鋭い眼差しで的を射た。 「ナイス」「サンキュ」「相変わらず何やらせても器用だねえ」 クレイグの友人の一人であるサイモンは、医学部で、いつもクレイグと授業を受けているらしい。クレイグが放ったダートの刺さる位置を見て、ヒュウと口笛を吹いた。身なりもよく、質のいい育ちをしてきたのがよくわかる。そのくせユーモアも持ち合わせた男だ。 「ピアーズ?酒まだ飲むか?」 サイモンが振り返って窓際で建築学の本をめくるピアーズに問うた。ピアーズは本を置いて、窓の外を眺めた。曇ったガラスの向こうに、イルミネーションに飾られた街を見下ろせる。 「いや、いい。しばらくコレで満足だ」…

  • 【8】フレイム 2003.1.24 -Cheryl side-

    「クレイグ?どうしたの、気分でも悪い?」 シェリルがクレイグの額にそっと触れた。クレイグがゆっくりと瞼を開く。今日は二人でクレイグの家で勉強することになっていた。朝、確認の電話をしたとき少しバツが悪そうな様子だったのはこのせいだったのだろう。 「…いや、大丈夫」「大丈夫じゃないわ!顔色悪いし、熱もある」「シェリルは帰れ…この埋め合わせは、今度必ずするから」 そういってシェリルの手を優しく退ける。そうされてシェリルは、何も言えなくなった。その表情は辛そうで、いままで夢中になって文献を読んでいた自分に呆れかえる。苦しそうに息を吐くクレイグを見ていると、心の奥の母性が疼くのがわかった。確かにここでク…

  • 【7】フレイム (2003.1.22)~2003.1.29(2000.4.1) -Craig side-

    ―――ピアーズが遅くなったあの日。クレイグは講義中にあったピアーズからの不在着信になんとなく嫌な予感がして、ピアーズがいつも通る校門の前で待っていた。勿論家にも行ったが電気はついていなかったし、何より几帳面なピアーズが、クレイグの折り返しに応じなかったことが不自然だった。 もうかれこれ、3回はピアーズの携帯を鳴らしたがどれも留守電で途切れてしまう。今日は別に放課後特別約束をしていたわけでもないし、他に用事があるのかもしれない。けれどそれならやはり、ピアーズはクレイグの着信に気付いた時点でcall backを寄越すだろう。 (ピアーズ、どこで何してる…?) そしてシェリルが建築学科棟の方向へ一人…

  • 【6】フレイム 2003.1.22(2000.4.1) -Piers side-

    ピアーズは辛うじて歩を進めた。もうすっかり辺りは暗い。思い出したくないのに、教授の顔が、あの狂気に満ちた目が、触れてきた繊細な手指が、思い出されて仕方なかった。涙がぼとぼとと地に落ちる。 「ピアーズ!」 聞き覚えのある愛しい声にピアーズがはっと顔を上げる。闇にぼやけているのか、それとも涙か、眼前にはクレイグの姿が見えた。 「…クレイグ…」「こんな時間まで連絡寄越さないで何してたんだ?」 駆け寄ってきたクレイグが、急に呼吸を止めた。ピアーズの涙に、気づいたのだろう。クレイグの、親のような言葉に思わず少しだけ口元がゆるんだ。こんなに心配してくれる人がいるのだ。 「…何があった…?」 ピアーズは首を…

  • 【5】フレイム 2003.1.20~2003.1.22 -Piers side-

    "もしもしピアーズ?今日、行く?"「行くよ。四時限目終わったら行く」 三時限と四時限の間に、クレイグからかかってきた電話を取った。今夜は一緒にジムに行くのを予定していたから、それの話だろう。 "なら先行ってて。俺四限目終わってから教授の手伝いしなきゃなんなくなって"「わかった」"じゃあまた後でな"「ん」 それだけ言って通話を切る。いつも一緒に行くジムだが、その中で特に会話らしいものはない。クレイグはあまりプールにはいかないし、二人で並んでランニングマシンには乗るけれど、ただひたすら走るのに徹する。それぞれが自分のストイックを突き詰めるあの空気感がたまらなく好きなのだ。 ピアーズは大学から街に続…

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