佐藤慎一郎先生孫文は側近の山田に、「真の日本人がいなくなった」と呟いた。その山田の甥、佐藤慎一郎は敗戦まで二十年以上も中国社会で生き、その体験を通じて、戦後は中国問題の泰斗として要路に提言や気骨ある諫言をした人物である。その佐藤氏と筆者の応談は音声記録「荻窪酔譚」として残されている。いつもは荻窪団地の三階の居間で御夫婦とご一緒の酔譚だが、悩み,大笑、ときに不覚にも二人して落涙することもあった。「これもある」と、長押に設えた棚から降ろしたり、背後の書棚から引き出したり、それでも「ほかの方がご覧になるから」と遠慮すると、数日して依頼文を添えて送付していただく。すべて音声応談に関することだが、講話依頼の課題に逡巡すると、その音声を聞くたびに、無学な恥知らずを回想している。昨日のこと、アジアの「そもそもの姿」を考...中国人は中国人に戻り(還り)、日本はアジアに戻れば(還る)その一