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遠藤雷太のうろうろブログ
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2014/10/06

  • 作新学院高等学校『Passion』

    作新学院高等学校『Passion』2024/7/14男女2グループが一緒に修学旅行の計画を立てているうちに、女性が直面する社会的な負荷があらわになっていく話。序盤の会話。ありがちな言葉選びが少なく、内容はどうでもいいのに聞き続けられる。世の中の男性から女子高校生がどう見えているのか、直接的に語られている。短い時間でエピソードを詰め込み過ぎな感じもするけど、個人ではなくて、社会を描こうとすると必要なのかもしれない。だいぶん物事をわかっていなさそうな彼は、姉の存在がなかったら、一生こういう問題に気づくことはなかっただろうし、実際そういう人は多いんだと思う。なので、設定上の都合の良さは感じるものの、「いつかわかりあえる」という希望を語るのも、あるべき立ち位置ではある。高校演劇だと展開上の都合で使われがちな恋愛の...作新学院高等学校『Passion』

  • 星稜高等学校『神様の放送室』

    「2022上演6」星稜高等学校『神様の放送室』2024/7/1放送法の理想を掲げて一人校内放送を続ける放送部員のもとに、有能で訳ありの生徒が入部する話。社会問題を学校生活に置き換える手法で、本作品は放送法の話。コンセプトがはっきりしていて見やすい。加えて、抽象表現も取り入れ、演劇として、うまく題材を表現しようとする意思を感じる。高校生活のフィルターをひとつ挟むだけで、政治と放送の関係を直接的に風刺している。普遍性のあるテーマなので、時代を問わず長く上演される可能性がある戯曲。本作は友情を着地として気持ちよく終わるんだけど、本当に現実に対して誠実に作ろうと思ったら、映画の『新聞記者』みたいな薄気味悪いラストにしかなりえないのが悲しい。現実に負けっぱなしの大人には作れない作品とも言える。客席から頻繁に手拍子が...星稜高等学校『神様の放送室』

  • OrgofA『父と暮せば』

    2024/7/6・終戦後の広島、原爆で親しい人たちを失った美津江が、自分だけ生き残ってしまった罪悪感と、芽生えてしまった恋心との板挟みに苦しむ話。二人芝居。・自分が観た回は飛世早哉香さんと松井真人さん。・劇団あおきりみかんの松井さんはたぶん初めて。・終始、早口かつ言葉が全部クリアに頭に入ってくる。・父親の竹造は存在自体がイレギュラーな役で、時には怒り、時には囃す、常に場を動かす立場。・緩急も声色も自由自在で役の高い要求に応えていた。・竹造は幽霊なのか娘の想像なのかどちらだっけと思いながら見ていたら、セリフ的に想像のほうだった。・幽霊は人の死を矮小化する側面もあるので、こういう題材にふさわしくないのはわかる。・美津江の頭の中に竹造の人格が生成されて、彼女自身の思考を通さずに勝手に話し出す感じなのかな。・美津...OrgofA『父と暮せば』

  • 宇根 駿人、田島 佑規『クリエイター六法 受注から制作、納品までに潜むトラブル対策55』

    クリエイター六法受注から制作、納品までに潜むトラブル対策55宇根駿人翔泳社2024/7/5・クリエイターが直面する様々なトラブルの事例と、その対応策、予防策を紹介していく本。・関連する本はいくつもあるけど、特に口コミ評価が高かった。・電子版。巻末の参考資料リンクが便利。・法律系の話なのでもう少しとっつきにくいのかなと心配していたけど、簡単に通読できた。・著者は法律に詳しくない人に説明する機会が本当にたくさんあったんだろうなとわかる。読みやすい。・たしかにトラブルの話が多いけど、著作権の知識がないために、創作の幅を自ら必要以上に狭めてしまうことのないようにしてほしいということも書かれている。・実際、どこまでがオリジナルなのか、引用なのか、やっていいことと悪いことの線引きができていないと、必要以上に安全策をと...宇根駿人、田島佑規『クリエイター六法受注から制作、納品までに潜むトラブル対策55』

  • 毎日新聞校閲センター「校閲力講座・入門編」

    毎日ことばPlus2024/6/27・毎日新聞の校閲部による校閲講座。・単元ごとに20回。全部合計しても2時間なので1回当たりの時間は短め。各回に簡単なテキストや例題もある。・一気に見ることもできる長さだけど、簡単な例文もあるし、しっかり向き合うと時間がかかる。・集中力も使うので何回かに分けてじっくり視聴する。・ふだんそんなに表に出ることのないであろう担当の方が一生懸命話してくれる。・どの人も見た感じ個性的で似顔絵を描きたくなる。・要注意の同音異義語の具体例、知識として入れておくと役に立ちそう。・「対抗/対向」「人手/人出」「人口/人工」。意味もそんなにズレていないので、文脈次第で紛れてしまいがち。・萩と荻も、覚えるのをあきらめるくらい混同する。・両方植物だけど、荻上チキや荻野目洋子のおかげで荻のほうがや...毎日新聞校閲センター「校閲力講座・入門編」

  • DDT「髙木三四郎 vs スーパー・ササダンゴ・マシン ワンマッチ興行」

    2024/6/27・無期限休業が間近に控える髙木三四郎がスーパーササダンゴマシンと戦うワンマッチ興行。・二人とも硬軟どちらの試合もできるイメージだけど、特に軟の方向では業界トップクラスの対応力だと思う。・そんな二人のワンマッチ興行なので、ただのプロレス興行で終わるはずがなく、見る前から期待値が高い。・席の種類が51種類ある。制作段階からしっかり独自色を出している。というか、やりすぎている。・普通の席や穏当な特典も多いし、スタッフ体験席、誕生日お祝い席くらいまでならわかる。・記者のフリ席、引退セレモニー席、蘊蓄言いたい古参席と蘊蓄聞きたいビギナー席も面白いなと思える。・ただ、わざわざパネルを立ててほぼリングの見えない見切れ席、笑うとケツバット席、目隠しで試合が全く見えない席くらいになると、難解すぎる。・いっ...DDT「髙木三四郎vsスーパー・ササダンゴ・マシンワンマッチ興行」

  • DDT 「路上プロレス in 東京ドーム」

    2024/6/22リング以外の様々な場所でプロレスをするシリーズ。東京ドームという大箱中の大箱でも、無観客配信のみ、ワンマッチにすることで、興行全体のサイズを軽くすることができる。頭いいなと思うし、頭おかしいなとも思う。世紀の一戦、アジャコングによる国家斉唱がある。結構うまい。東京ドームは広い。フィールドで土まみれになったり、一番高いスタンドから落とされそうになっていたり、ブルペンで硬球ぶつけられたりする。レスリング技術で勝る鈴木みのると、かけひきで不意をつこうとする髙木三四郎。もともと対戦相手としての相性がいい。加えて、様々なプロレスラーやそれ以外のひとたちが乱入してくる。なぜかいる狂猿がなぜかある脚立と長テーブルを使って大家健にボディプレスしている。どういう文脈なんだ。笑ってはいけないシリーズのノリに...DDT「路上プロレスin東京ドーム」

  • 『ラーメン赤猫』(先行劇場上映)

    2024/6/21・猫たちが運営する「ラーメン赤猫」が、初のにんげんを雇い入れ、新しい体制を迎える話。・テレビアニメの先行上映。上映時間は短く65分。・原作は、いま自分が一番読み込んでいるマンガ。・近いうちにテレビや配信で見られると思うけど、TOHOシネマのサービスデーに背中を押される。・来場者プレゼントは書き下ろし風の色紙。かわいい。・ステッカーが良かったなと思っていたら、もう少し待てばもらえたらしい。残念。・原作1巻の城崎君が出てくる「マスクドエンジニア」のところまで。・猫がラーメンを作ったり、接客したり、経営したりする、多めにファンタジーが入っている話なんだけど、猫ならではの言動や制約をうまく取り入れていて、虚実の塩梅が絶妙な作品。・アニメの場合、マンガより自然に見ていられる幅がかなり狭まるので、最...『ラーメン赤猫』(先行劇場上映)

  • ジョージ・ミラー監督『マッドマックス:フュリオサ』(2回目)

    2024/6/17・一回目はほとんど情報を入れずに見て、色んな感想や解説を見聞きしてから二回目。スクリーンX。・二回目は全体図がわかっている状態なので、一回目よりかなり短く感じる。・「デスロード」の前日譚らしく、若干マッドじゃない人たちが生き残っていることにも気づける。・穏当な人は、何もかも奪われて死んでいくけど。・母親にしてもジャックにしても自ら捨て駒になったんだから、ちゃんと意を汲んで行きなさいよとは思ったけど、見捨てることができないのがフィリオサという人間。・似たことを宇垣美里さんが言っていて共感する。たしかにディメンタスとは全く違う。・子供フィリオサの背後で母の背中が燃えているシーンと、後のバレットファームで鉄格子ごしに火炎放射をうけるシーンが似ているのも、あえて重ねているのかもしれない。炎を背負...ジョージ・ミラー監督『マッドマックス:フュリオサ』(2回目)

  • ナイロン100℃『ゴドーは待たれながら』

    2024/6/17・誰かに待たれているゴドーという男が、いつどこで誰と会えばいいのか思い出そうとするが、最後まで思い出せない話。・ゴドーを待つ人々を描いたサミュエル・ベケットの古典的名作『ゴドーを待ちながら』。本作は待たれる存在であるゴドー目線で作られた話。一人芝居。・アイディアだけなら誰でも思いつく範囲だけど、実際に104分の戯曲を書いて上演するところまで持っていけるのがすごい。・初演は1992年で東京シティボーイズのきたろうさんが演じたらしい。・本作は大倉孝二さん。・一人芝居なので、ごく一部に「声」との会話はあるものの、ほとんど全て一人で喋り続ける。・当然セリフの量は膨大になるんだけど、それ以上に、わかりやすいあらすじはなく延々と堂々巡りを続ける話なので、これほどセリフ覚えが大変な作品はないのではない...ナイロン100℃『ゴドーは待たれながら』

  • 川田利明『開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える 「してはいけない」逆説ビジネス学』

    開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「...川田利明ワニブックス2024/6/15プロレスラーの川田利明が、運営するラーメン屋の苦労話を書いた本。本当に笑えない程度の現実的な愚痴を言いながらも、こだわりは捨てられないナルシシズム全開の内容。人には「絶対になるな」と言いつつ、自分は「今更やめられない」という矛盾。不器用キャラを演じていたと言っている。たしかに小さいスケールでみるととても器用なのにその生き方は不器用そのもの。世の中のあらゆる表現は発信者の人間性を見せるものだと思うけど、こんなにプロレスとラーメン屋の作風が一致していることがあるんだろうか。10年続いていると言っても、読めば読むほど次の一年が乗り越えられるかわからない。次に東京に行ったと...川田利明『開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学』

  • 男色ディーノ『イロモノの野望 透明人間と戦ってわかった自分の商品価値の上げ方』

    イロモノの野望透明人間と戦ってわかった自分の商品価値の上げ方男色ディーノ徳間書店2024/6/14プロレスラー、男色ディーノの半生をビジネス書の体裁でまとめた本。商品としての自分を分析したり、自身の商品価値が上がることになった出来事や、観客からいただいたクレームの紹介と、執拗にビジネス書っぽい形式にこだわっている。構成の都合でそうしているのもあるけど、素でそういうことを書くことへの照れもありそう。そもそもプロレスラーなのに、こんなテクニカルな書き方で一冊作れてしまうのがすごい。「価値のズラし」という考え方。プロレスである以上、勝敗が本筋なのは当然として、他の軸を設けて見せ場を作る。演劇でも映画でも大体面白い作品は複数の軸で楽しめるものだけど、プロレスにその考え方を応用している。ゲイに対するクレームとそのリ...男色ディーノ『イロモノの野望透明人間と戦ってわかった自分の商品価値の上げ方』

  • ジョージ・ミラー監督『マッドマックス:フュリオサ』

    2024/6/7・文明崩壊後の世界、拉致された少女フィリオサが、支配者たちのもとで成長し、やがて故郷に帰ろうとする話。・前作「怒りのデスロード」のフィリオサはひたすら凛々しく強い存在だった。・逆にどんな半生を送ったらあんな感じになるのか、説得力を持って見せられるのか、期待半分不安半分。・最初に出てきたフィリオサは、文明崩壊後とは思えない、かわいらしい普通の見た目の少女。・いかにも危なそうな連中に近づき、いきなりならず者たちに拉致される。唐突にも思える。・母親がフィリオサを助けるため、単身ならず者一派のアジトに乗り込む。迷いがなくて見ていて気持ちいい。自分の命の使い方も含めて合理的すぎる。・敵のリーダーはディメントス。バイク三台を中世のチャリオット風に並べた乗り物を操る。運転しにくそう。・のちのフィリオサを...ジョージ・ミラー監督『マッドマックス:フュリオサ』

  • 「葛西臨海公園・葛西海浜公園・マクセル品川アクアパーク」

    2024/6/10・せっかく海のある土地に来ているのだから、それらしい水族館に行ってみたいと思って、葛西臨海水族園に行く。・コガタペンギンのレンタルなど、札幌のAOAOとの縁もある。・結構な時間をかけて電車を乗り継いで行ってみて驚く。水曜日は休園日。・仕方なく、葛西臨海公園→葛西海浜公園→花と外野の大観覧車、そして東京湾を眺めつつ、東京旅行最後の一日がこれでいいのかと悩む。・観覧車のスタッフさんがとてもハイテンションだった。平日昼間、他にお客さんいなかったので戸惑う。・このまま帰札はどうしても受け入れられず、急遽マクセル品川アクアパークに向かう。・屋内にバイキング船やメリーゴーラウンドの遊具があって水族館らしからぬ内部。・気になる展示もあったがいったんスルーしてぎりぎりペンギンショーに間に合わせる。・ケー...「葛西臨海公園・葛西海浜公園・マクセル品川アクアパーク」

  • 「鈴本演芸場 5月下席 夜の部」

    2024/6/7・初めての寄席。・宿が上野近辺かつ、33tabの音声ガイド「タッグ街上野公園編」でも触れられていたので、鈴本演芸場を選ぶ。・昼の部と夜の部がある。夜のほうに行く。・ステージがあり、固定椅子が並ぶ。寄席と言っても、会場の雰囲気は映画や演劇とそんなに変わらない。・ただ、折り畳み式の棚がついている。飲み物や軽食を置いたり、ちょっとしたメモを取るときに重宝する。・最初から最後まで休憩含めて3時間ちょっと。・落語と落語以外がほぼ交互に演じられる。・高座を返したり、立て看板をめくっている前座(おそらく)の人が、長身、細もて、メガネ、ちょっと神経質そうな風体で、あんまり落語家っぽく見えない。名前はわからないけど、印象に残った。・開演時間の17時前から始まっていた。・奇術のアサダ二世さんは「今日はちゃんと...「鈴本演芸場5月下席夜の部」

  • 「東京国立博物館・常設展」

    2024/6/4・いろんな人が勧めていたものの、具体的に見たいものがあるわけではないので、ちゃんと楽しめるのか心配。・平日の朝からたくさんの人が並んでいる。外国人観光客がほとんどだったと思う。暑い。・館内には修学旅行生もたくさんいて結構な人だかり。・どうしても特別展の法然に興味が持てるとは思えなかったので、常設展のみ。・それでも広すぎて、いまだに全容を理解できていない。・33tabアプリでいとうせいこうさんとみうらじゅんさんの音声ガイドがあったので、東洋館から順番に見ていくが、現在は展示されていない品の解説もあって、都度画面の説明を見ないと理解しにくい。・音声ガイドとの付き合い方は難しい。・まずはたくさんの如来三尊仏龕がお出迎えしてくれる。・8世紀の唐で作られた作品群。三尊並んでレリーフになっている。同じ...「東京国立博物館・常設展」

  • 「すみだ水族館」

    2024/6/4・東京国立博物館に行く予定だったけど、月曜日で休み。・どうしようと焦った結果、すみだ水族館に行くことにする。時間が中途半端になってしまい、同施設内にある東京スカイツリーは諦める。・ペンギンと水族館が好きなので、個人的にはスカイツリーよりも水族館の優先順位のほうが高い。・そんなにネットの前評判が良かったわけではないけど、札幌のAOAOに足しげく通っているので、ペンギンを売りにする都市型水族館とはどんなものなのか興味があった。自分なら楽しめるはず。・最初はクラゲコーナー。ビッグシャーレというクラゲを見下ろすことのできる大型の水槽がある。・いろんなクラゲがいて、AOAOとの規模の違いを予感させる。・小笠原の海コーナーでシロワニを見たり、金魚のコーナーもきれいだったけど、なんと言ってもマゼランペン...「すみだ水族館」

  • 青森県立青森中央高等学校演劇部『もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』

    2024/6/4・青森にある高校の弱小野球部が、中途入部した熱血女子マネージャーと、東日本大震災で被災した元野球部と、イタコのおばあちゃんとともに甲子園を目指す話。・最初に出演者が舞台に集合してウォーミングアップするところから始まり、シームレスに本編に移行する。・出演者はおそらく30人弱。・完全素舞台、照明も最低限。小道具や舞台装置は肉体、音響効果は声ですべて表現する。・時々なんでそこにいるのかよくわからないモチーフの人たちもいたりするが、それも含めて楽しい。・演劇博物館の説明によると、被災地など、どんな場所でも上演できるようにこの形態になったとのこと。・実際、2011年~2020年5月時点で104ステージ上演されている。高校演劇史上、屈指の話題作であり、名作と言っていいと思う。・戯曲は読んでいたけど、や...青森県立青森中央高等学校演劇部『もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』

  • 『酒と涙とジキルとハイド』(2014年)

    2024/6/1・真面目でつまらない博士が性格を反転(狂暴化?)させる薬の発明に失敗し、研究結果の発表前日になって、たまたま目に付いた舞台役者にサクラをお願いする話。・博士が片岡愛之助、その助手が迫田孝也、博士の婚約者が優香、サクラの舞台役者が藤井隆の四人芝居。・演者の存在感をしっかり感じることができて、それなりに複雑な話が作れるという、いいトコ取りの四人芝居。・博士と助手の関係性が不穏。博士のほうが地位的には上なのに助手のほうが主導権を握っている。・不穏な理由は特に明かされないはず。・人間関係がすっきりしていて、何が起きているのか全部わかるお話の中で、謎めいた助手の存在がいいアクセントになっていた。・藤井隆が登場から汗だく。顔がピカピカしている。何かの伏線のように見える。・薬によって人格が反転してしまう...『酒と涙とジキルとハイド』(2014年)

  • 「KING OF DDT~20th Anniversary~FINAL!!」東京・後楽園ホール ARCHIVE DDT 2024.5.26

    2024/6/1※勝敗に関するネタバレがあり。・初めての後楽園ホール。・やや後方、正面の席(客席はリングの四方を囲んでいるが、撮影の関係ではっきり正面にあたる方角がある)。・ダークマッチから盛り上がっている。ヤジみたいな金切り声で若手の須見和馬を応援しているお客さんがほほえましい。・全16名の選手が参加したトーナメントのベスト4と決勝戦を今日一日で行う。・出場四人のうち三人が優勝経験者。最近の活躍ぶりからいかにもMAOが初めて優勝しそうな雰囲気。・ただ、煽り映像で「樋口さんに勝ったら優勝できる」と言っていて、かえって嫌なフラグを立てていた。・その試合、MAOはフィジカルで押す樋口の土俵に乗って攻撃を受け続ける。胸が真っ赤。・自分は樋口推しなのにMAOを応援したくなるような展開をうまく作っている。・耐えて耐...「KINGOFDDT~20thAnniversary~FINAL!!」東京・後楽園ホールARCHIVEDDT2024.5.26

  • シッダールト・アーナンド監督『WAR ウォー!!』(2019年)と新文芸坐オールナイト上映「リティク・ローシャンと一夜を共に」

    2024/5/30・新文芸座のオールナイト上映のに三本目。・時間的には午前4時過ぎくらいの開始。・さすがに眠くなってきたが、前の二作が楽しかったこともあり、序盤のうちはまだ余裕があった。・主人公の尊敬する先輩が軍を裏切って敵になってしまう話、でいいのかどうかは自信がない。・本作ではもう一人メイン級の人がいて、リティク・ローシャンが敵役に回っている(ように見える)ため、やや出番が少ない。・オールナイト上映が始まるときに、スタッフさんが「いつ寝てもいつ起きてもリティク・ローシャンがいるから安心してほしい」と言っていた。・嘘ではないんだけど、本作の彼はすこしだけ出番が少なめだったと思う。・すっかりリティクが好きになっていたため、彼が出ていないシーンは緊張感が保てない。・加えて、敵と味方が激しく入れ替わる話なので...シッダールト・アーナンド監督『WARウォー!!』(2019年)と新文芸坐オールナイト上映「リティク・ローシャンと一夜を共に」

  • シッダールト・アーナンド監督『バンバン!』(2014年)

    2024/5/30・新文芸座のオールナイト上映の二本目。・深夜一時過ぎだったと思う。事前に普段より多く寝ていたわけではないけど、まだ頭はしっかりしている。・婚活で出会った男が大泥棒だったという話。・その大泥棒役がリティク・ローシャン。・巨大なダイヤを盗み出すが、報酬をめぐり、交渉先の犯罪組織との関係を悪くしてしまう。・一方で、婚活を始めた普通の若い女性。たまたま婚活サイトでアポを取った男性が遅刻してしまい、リティクを婚活相手だと勘違いしてしまう。・温度差が極端。・状況的に極めてうさん臭い人間のはずなのに、リティクの人間力だけで魅力的に見えてしまう。・何かのショーに紛れ込んだリティクが、迫力ある音楽ともに踊りだすシーン。割と序盤だけど、本作のピークだった。アナ雪のレリゴーに匹敵する。・演出効果もあるけど、彼...シッダールト・アーナンド監督『バンバン!』(2014年)

  • ゾーヤー・アクタル監督『人生は二度とない』(2011年)

    2024/5/30・新文芸座のオールナイト上映の一本目。・開演時間になるとインド映画の配給担当スタッフのかたが出てきてあいさつ。拍手が起きる。・いかにも映画好きが集っている雰囲気。・勝手に想像していた、たまたま宿が取れなくて仕方なくここで一晩過ごす、みたいな人は見られなかった。・確かにただ寝るだけならネカフェのほうが安い。・結婚を間近に控えた男性が、親友二人とともに、男同士、独身最後の旅行を楽しむ話。・旅行先はスペイン。旅行先の体験や出会いを通じて、少しずつ三人の過去のわだかまりや、現状の困難さと向き合えるようになっていく。・少なくとも結婚、長期の海外旅行ができる程度に裕福な三人なので、多少ひどい目にあっても生々しくならない。いい意味で他人事として見られる。・スカイダイビングのシーンが長くてハラハラした。...ゾーヤー・アクタル監督『人生は二度とない』(2011年)

  • 「早稲田大学演劇博物館」

    2024/5/24・早稲田大学自体に行くのも初めて。・演劇博物館では、毎週金曜13時からボランティアの方のガイドを受けられるということで行ってみる。・HPを見ても情報量が多すぎるので、詳しい人に聞いたほうが早いなと思った。・いかにも大学らしい直方体の建物の並びに、あきらかに異質な西洋風の建物がある。・シェイクスピア作品が多く上演されたイギリスのフォーチュン座を模して作られた建物。演劇の舞台としても使えるそうだ。・建物の近くに坪内逍遥像。右手の色が剥げている。握手をすると早稲田に縁ができるというゲン担ぎがある。受験生ではないが、とりあえず握手しておく。・受付でガイド希望の旨を伝え、ご年配の女性に対応していただく。ガイドさんと一対一で館内をまわる。・長期休暇明けの仕事が怖いので、今回の旅行では人と話せる機会が...「早稲田大学演劇博物館」

  • 国立映画アーカイブ「NFAJコレクションで見る日本映画の歴史」

    2024/5/28・映画に関する知識は中の下くらいなので33tabというアプリでライムスターの宇多丸さんの音声ガイドが聴く。自分にとってのモグタン的な存在。・しかし、説明文とアプリの解説が重複していたり、聞きながら文字が読めなかったり、音声ガイドと実際の展示が一致しにくかったり、うまく使いこなせない。・展示を見る前にガイドを聞いたほうが良かったのかも。・映画の発明は1895年頃。アメリカ系(エジソン)とフランス系(リュミエール兄弟)がある。・スクリーンで観客に見せる方式だったリュミエール兄弟が先と言われることが多い。・映画以前の日本最古の記録映像から見られる。水車を踏んで田んぼに水を送る様子や、何かの踊り。街の往来と犬。・映像は想像よりはきれいで、加工された映像作品ではなくて、当時の生活がそのまま映ってい...国立映画アーカイブ「NFAJコレクションで見る日本映画の歴史」

  • PARCO PRODUCE『ハムレットQ1』

    2024/5/24・映像では何度もPARCO劇場の作品を観ているが、現地での観劇は初めて。・わりと暑い日に長々歩いた上に、ちょうどいい感じに休めるところがなく疲労困憊状態だった。みんな、あんな坂をのぼっていたのか。・中段やや下手。見やすい席でほっとする。・舞台装置がシンプルで美しい。・下手奥に向かってせり上がっている。上手側には瓦礫に見えるオブジェ。玉座にも使う。・ハムレットが父親の仇である叔父に復讐する話(何度も書いているとだんだん雑になる)。・ハムレット役は吉田羊さん。男性として演じる。・演者が女性であることの違和感はなかった。・一昔前だったら「女性が演じる意味とは」が重要になりそうだけど、トピックの一項目程度だったと思う。・商業レベルでも、こういう性別違いが当たり前になる傾向は進みそう。いい流れ。・...PARCOPRODUCE『ハムレットQ1』

  • 伊勢朋矢監督『日日芸術』とCINEMA Chupki TABATA

    2024/5/24・こちらの映画館は、耳や目が不自由な人も楽しめるユニバーサルシアターとのこと。・小さい映画館であることは知っていたけど、実際現地に来てみると思っていたよりもかなり小さい。20席。・どの席にも音声解説用のジャックがある。・ここに来て普段通りに映画を観ても仕方ないかなと、イヤホンをお借りして音声ガイドのみ鑑賞を試みる。・映像がなく、音声のみの作品なら、ラジオドラマみたいなものかなという素朴な疑問。・実際に体験してみると、映像を言葉で説明する音声ガイドと、映像表現自体を想定していないラジオドラマは似て非なるものだった。・そもそも映画でしか見られない作品は山ほどあるので比較自体あまり意味のないことだった。・自分は目を閉じていたけど、頭の中には映像が浮かんでいる。中途失明した人はともかく、元々目の...伊勢朋矢監督『日日芸術』とCINEMAChupkiTABATA

  • 「岡本太郎記念館」

    2024/5/23・新国立劇場からちょっと歩くと(迷ったので実際には結構歩いた)、岡本太郎記念館がある。・もともとは自宅兼アトリエだったようなので、美術館というより人の家にお邪魔するような感覚。・入館する前から、庭に異形のものたちがたくさんいる。・写真撮影OKかわからなかったので、先に受付で確認してから庭を散策する。・ドアの取っ手も岡本太郎風の足形だった。・変なオブジェだなと思っていたら、育ち過ぎたショウブだった。あんなメカっぽくなるんだ。・『犬の植木鉢』と、ベランダのミニ太陽の塔が圧倒的にかわいい。・マティスは当時の評論家から「野獣のよう」と言われ、野獣派なんて呼ばれていたけど、本人は「人々を癒す肘掛け椅子のような作品」を目指していたらしい。・半面、岡本太郎は困難を選べ、楽をするなというようなことを言う...「岡本太郎記念館」

  • 「マティス 自由なフォルム」

    2024/5/23・晩年の切紙絵が多いんだろうと思ったら、ごく初期の習作レベルの油絵から展示されていた。・近い時期に行われた別のマティス展とのすみわけはあるようだけど、本展覧会だけ見ても全体の流れはわかるようになっている。・最大の見どころは、マティスの集大成である、ヴァンスのロザリオ礼拝堂を完全再現した展示。・事前に山田五郎さんのYoutube解説、当日は安藤サクラさんの音声ガイドと、迎え撃つ気満々で鑑賞。・五郎さんの「マティスは同じモチーフを繰り返し描く」という話がいい補助線になった。・彫刻の『横たわる裸婦像Ⅱ』がのちの『大きな横たわる裸婦』だし(順番は前後するかも)、『アンリエット』の連作も写実→極端なデフォルメ→それらのハイブリットと、繰り返し製作されている。・日本の漫画を想起させる作品も目に付く。...「マティス自由なフォルム」

  • 新国立劇場『デカローグ5・6』

    2024/5/24・ポーランドの映画監督キシェフロフスキーが旧約聖書の十戒をテーマに作成した10本の中編映像作品のうち、第5話と第6話を演劇に翻案した作品。・事前にドラマ版のDVD-BOXで全話視聴して予習十分。・知識ゼロの状態からだいぶん愛着は沸いているものの、第5話と第6話は、端的に言って話が嫌い。・舞台化したら印象が変わるかもしれないし、行きがかり上、見ない選択肢はない。・そんな心持ちもあり安価なテラス席を購入。下手側。・舞台に対して椅子が垂直方向に並んでいるのでずっと左横を向いて観劇することになる。・加えて左隣の人(舞台に対しては前方の人)が前傾姿勢。舞台の左側半分が見えない。アナウンスしていたのに。これは声掛け案件かと思っていたら開演10分位で姿勢を変えてくれた。・第5話は、無軌道な若者がタクシ...新国立劇場『デカローグ5・6』

  • TLPW「TJPW LIVE TOUR 2024 SPRING」

    2024/5/23・最初にアップアップガールズ(プロレス)のミニライブから始まる。・アイドル詳しくないけど、イベントの始めに唄うのは一種の景気づけのようなものなのかな。・演劇の場合、作中ならあるけど、開演の前に唄うのは聞いたことないかも。場合によってはアリかも。・原宿ぽむが気になる。名前も衣装もあんまり見たことない感じ。・前々から目には入っていたけど、あんなにはっちゃけた感じだったっけ。・対戦相手にリング上で551を貢ぐという浅はかすぎる作戦が楽しい。・妙に体が硬い感じとか、動きに変な癖があって面白い。・動きに関してはプロレスラーとして未熟な部分かもしれないので、今後変化していくのかもしれない。・一連のイベントの中で、かなり高度なことができる選手と、まだ初心者マークが取れていないような選手が共存している。...TLPW「TJPWLIVETOUR2024SPRING」

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』キェシロフスキ監督に関する”100の質問”

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/5/20『デカローグ』DVD-BOXの特典映像。マスコミが監督キェシロフスキーを囲んで質問漬けにする42分間の映像。本当に100問があったかどうかはわからない。最初から「あなたは賞を取っているが観客の関心を獲得していない」と指摘され、ピリッとした空気になっている。監督の「検閲の話をするのは好きだ」「機能している機関が好きだから」「検閲は嫌いだ」の流れがいかにも一筋縄ではいかない。フランスの批評家に比べてポーランドは…みたいなことを言ったりもする。同じヨーロッパの中でもやっぱり温度差がある。監督の「神は至高の存在だが仲介者は必要ない」もいい。もともとドキュ...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』キェシロフスキ監督に関する”100の質問”

  • 『バベル 7.16』

    2024/5/19・2016年のアヴィニョン演劇祭で上演された、15国籍23人のダンサーとミュージシャンによるパフォーマンス。・女性の一人語りから始まる。AIのような無機質な語り口で言語としての身振りについて語る。手話のようにも見えるがだんだん複雑化していって、人間として見るには不自然な機械的な動きになっていく。・次に登場人物が集まってきて同じように動くんだけど、見た目も服装もバラバラで、同調性は強調せずに、同じ振り付けで動くことで違う部分をわかりやすく見せている感じ。・多国籍の演者たちが言葉、踊り、歌、それぞれの異なる見せ方で小さなシーンを作って、それらを組み合わせて構成している。・こういう作品だと、全体に対して今がどれくらいなのかわかりにくいので、どんなに高度なことをやっていても長く感じてしまいがち。...『バベル7.16』

  • DDT「KING OF DDT~20th Anniversary~2nd ROUND」

    2024/5/17・最初の3WAY、中盤からどんどんテンポが上がっていき、最終的には平田一喜の高速タップでフィニッシュ。・あのタップが許される選手ってなかなかいないような。・飯野雄基のセクシーエルボー不発の流れも、頭で考えると不自然なところがたくさんあるんだけど、動きのテンポ感でちょうど良い加減になっている。絶妙。・中村圭吾人気で相対的にヒールっぽくなってしまった上野勇希。実際、あんまりヒールっぽい動きが似合わない。反面、勝俣瞬馬はうまくハマっていた。・サウナカミーナはサウナでつながっているユニットだから、チーム内にベビーとヒールが共存していてもおかしくないのかもしれない。・ピンポイントで蛇界入りしたHARASHIMA。・あんまりこういうことするイメージ無かったけど、たぶん彼なりの蛇界的なムーブが徹底して...DDT「KINGOFDDT~20thAnniversary~2ndROUND」

  • エルンスト・ルビッチ監督『生きるべきか死ぬべきか』(1942年)

    2024/5/17生きるべきか死ぬべきか(字幕版)キャロル・ロンバード1939年ナチス占領下のポーランドで、舞台役者の夫婦とファンの空軍兵士が、劇団員の力を借りながら、ゲシュタボのスパイを退けようとする話。序盤、ウェルメイドなコメディが始まりそうなお膳立てをしておいて、ナチスの侵攻でぶち壊してくる。ほんと戦争は趣味が悪い。『ガザの美容室』はクライマックスがその感じだったけど、この作品では前振りに使っている。作中劇はタイトル通りの『ハムレット』。オフィーリアのセリフが少ないことを逆手にとって舞台裏の重要人物にしている。上手い。「TOBE~」でプロンプをもらっているのはホントどうかと思う。みっともない。逢引するための途中退席なのに、めちゃめちゃ目立ってしまうのおもしろい。中盤以降の何がどうなってそうなっている...エルンスト・ルビッチ監督『生きるべきか死ぬべきか』(1942年)

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第10 話 ある希望に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/5/17父親の遺品から高額の切手が出てきたことをきっかけに、息子兄弟が取得条件の厳しいある切手を手に入れようとする話。兄は家庭を持つ会社員風で、弟は根無し草のミュージシャン。対照的兄弟は好み。お互い人生うまくいかないこともあるし、大した交流もなかったけど、兄弟仲は悪くない。お兄さんが時々板尾創路さんに見える。借金もあるし、切手なんてさっさと売ってしまうかと思ったら、兄弟は父のコレクションを売らない決意をする。不自然な感じはなかったけど、うまく理由を言語化するのが難しい。兄の常軌を逸した選択とその顛末は悲惨としか言いようがないのに、見ているとちょっとニヤニ...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第10話ある希望に関する物語

  • DDT「KING OF DDT~20th Anniversary~1st ROUND」東京・後楽園ホール ARCHIVE DDT 2024.5.5

    2024/5/7・ダークマッチ。あの秋山準でこんなに笑えるのか。・秋山選手、DDTの正式所属になっていることを見た後で知ったけど、それにしても。・最初のところだけで止められてよかった・直前の札幌大会を見たばかりなので、松井レフリーのしらじらしさが際立つ。・ポイズンJULIE澤田選手ほんとに久しぶりに見た。・オーソドックスなプロレスの攻防に呪文を加えることで飛躍的にバリエーションが増える。・場外ダイブを呪文で自爆させるところ。・あんなにヒヤヒヤしない電流爆破バットはない。・人間換算の年齢的には信じられないくらい動いている。ほんとに人間ではないのではないか。・それなのにピュアな一面もあってかわいらしすぎる。・王者上野勇希と社長高木三四郎。勝敗より、どんな試合になるのか楽しみな組み合わせだった。・プロレスの会場...DDT「KINGOFDDT~20thAnniversary~1stROUND」東京・後楽園ホールARCHIVEDDT2024.5.5

  • ジョン・フォード監督『幌馬車』

    2024/5/8馬の売人をしていた男二人が、西部開拓をめざすモルモン教徒の一行の道案内を引き受け、一行の乗っ取りを企てる悪漢たちを退ける話。シンプルな構成。時間も86分しかない。砂漠ばかりの厳しい行程でも、彼らの案内と、踊り子の一行も合流し、結構楽しそうに見える。情熱のあるリーダーがすぐに声を荒げて仲間に注意されている。危うさもふくめて人間らしいかも。物腰が柔らかく怪我人なのに殺すときは殺す悪漢のリーダー。仲間たちも含めて、一目でならず者だとわかるのがおもしろい。馬の扱いがすさまじい。人を乗せたまま荒ぶっていたり、横転したり、下り坂を駆けおりたり、水に飛び込んだりする。自転車くらいの気軽さで馬に乗りこなしている。ここまでの馬描写は、もう現代ではできなくなってそう。馬映画として映画史に残りそうな作品だった。...ジョン・フォード監督『幌馬車』

  • 大阪御ゑん祭『夫人マクベス』

    2024/5/7・近藤芳正演じるマクベス夫人が、「マクベス」をモチーフにした4本の短編を渡り歩いていく話。・各話はそれぞれ起・承・転・結と銘打たれていて、それぞれ別々の団体が担当している。マクベス夫人だけ通しで登場する。・各話なんとなくマクベスの最低限の骨組みを拾いつつ作られている。・オープニング。各チームが狭い舞台上に密集しているなかマクベス夫人が前説を行う。期待感が煽られる。・最初は大阪万博のデザイナーの話。大型受注を受けたデザイン事務所のCEOをダンカン王になぞらえて、マクベス夫人がデザイナーの夫に彼を殺させる話。・時事ネタではあるけど特に批評性はなさそう。・LGBTのしつこいイジリは何の意味があるんだろ。・次の話はカラオケボックスみたいなところで王様ゲームしている若者たち。・マザコン息子マクベスが...大阪御ゑん祭『夫人マクベス』

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第9 話 ある孤独に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/5/7夫が性的不能になってしまい、中年夫婦の関係性が危うくなってしまう話。自動車にガソリンを入れるときのノズルが意味ありげにアップになったり、夫が自転車に乗っているときに体を不自然にバウンドさせたり、ガタガタの下り坂から川に突入したり、真面目なのか滑稽さを出そうとしているのか、よくわからない描写が多い。妻は若い愛人を作って不倫している。自身で関係を清算しようとしているが、すでに疑心暗鬼になっていた夫にはバレてしまう。自分が性的不能だからと怒れない夫に対して、妻は怒っていいと伝え、関係性の回復に向けて一歩進む。それだけでは終わらず、もうひと展開あって、すっ...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第9話ある孤独に関する物語

  • DDT「DRAMATIC DREAM TOUR 2024 in SAPPORO【DAY2】」

    2024/5/6・オープニング。どこかで聞いたことのあるようなマイクアピール合戦。そういうご当地感の出し方もあるのか。・もともと好きな人は楽しいし、今なら配信でいろいろ見られるから意外と間口は広いはずだし、全く知らない人でももはや古典化している掛け合いそのものの力強さで盛り上がれる。客を選ぶようで意外と強い。・男色ディーノという存在。世の中のセクハラに対する考え方とか、ヒールとか、人気ヒールのベビー化とか、下ネタの塩梅とか、ベテランレスラーとしての立ち位置とか、見れば見るほど思考を求められる。深い。・大社長の長期休業は寂しい。それすらネタにするのはさすがだった。・最後は謎に平田一喜と松井レフリーが入れ替わっておしりにはさまれていた。・試合中、ヨシ・タツの「おまえ喋りすぎだ」という指摘。たしかにみんな喋るん...DDT「DRAMATICDREAMTOUR2024inSAPPORO【DAY2】」

  • DDT「DRAMATIC DREAM TOUR 2024 in SAPPORO【DAY1】」

    2024/5/5・会場はホテルの宴会場。小さいながらも豪華なシャンデリアで高級感がある。客席とリングの距離が近い。・試合会場の近くに住んでいるし、チケット代もいつも通りだったし、仕事じゃなきゃ行ったのに。・会場に一人くらい知っているひといるかなと思ったけど、やっぱりいなかった。・小さい会場だからか、全体的に突飛な試合はあまりなく、シンプルで速く細かい攻防が多かったような。・それだけに男色ディーノの異物感が際立つ。入場時、挙手制で襲われる客を選んでいるところがちゃんとアップデートされている。・瞬間瞬間で、キスするなり、いたずらするなり、バリエーション変えてリアクションする反射神経。・ただし味噌は色んな意味でダメだと思う。・斗猛矢は10年以上前に一度見たっきりだったけど、上半身、特に胸回りがすごく分厚くなって...DDT「DRAMATICDREAMTOUR2024inSAPPORO【DAY1】」

  • シェイクスピア『ハムレット Q1』(光文社古典新訳文庫)

    ハムレットQ1(光文社古典新訳文庫)シェイクスピア光文社2024/5/4安西徹雄訳。解説を参照すると、ハムレットにはいくつかの底本があって、まずは1603年刊のQ1版と1604年刊行のQ2版、そのあと1923年に初めての全集に掲載されたF1版がある。Q1版は最初の出版物ではあるものの、海賊版扱いされがちで、オフィシャル色が強いのはQ2版とF1版。そんなに違うもんなのかなと、実際読んでみると、全然違う。マニアックな方向ではなく、ものすごくわかりやすくなっている。そもそも長さがQ2の半分ほどしかない。読みやすいし、たぶん演劇になればはるかに見やすい。Q1版は読んだことなかったのに、記憶にあるハムレットという物語は、こちらのバージョンのほうが近い。少なくとも、マンガの原作や子供向けバージョンを作るなら、こちらを...シェイクスピア『ハムレットQ1』(光文社古典新訳文庫)

  • シェイクスピア『ハムレット』(ちくま文庫)

    シェイクスピア全集(1)ハムレット(ちくま文庫)W.シェイクスピア筑摩書房2024/5/4松岡和子訳。初めて読んだわけではない、はず。近々、また演劇作品のほうを見に行くので予習がてら読んでみる。こういう古典はネタバレや先入観なしに見たいとか考えずに済む。名作という評価が定まっている作品だから言えるけど、戯曲で読むとあらためて登場人物が何を考えているのかよくわからず、とにかく冗長に感じる。過度な説明や言葉の装飾は、今ほどの照明や音響効果が期待できない当時のイギリスの演劇環境であれば、それほど違和感はなかったのかもしれない。あらすじを知っている状態で読んでいるからついていけるけど、まっさらの状態で読んでいたらたぶん理解できなかった。特に母であり、宿敵の妻でもあるガートルードがよくわからない。息子を愛しているの...シェイクスピア『ハムレット』(ちくま文庫)

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第8話 ある過去に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/5/2倫理学を教える大学教授が、二次大戦中にかくまうことのできなかったユダヤ人の女の子と、長い年月を経て再会する話。世の中には救う側と救われる側の人間がいるという不公平を描いた話でもある。倫理の講義という舞台装置が効いている。倫理学では一般的なことなのかもしれないけど、どんな人間にも善の部分はあるという話がおもしろい。性善説、性悪説という言葉には大した意味はない。命の恩人へのお礼なのに、そのお礼すら素直に受けられない人に対して、「あの人は苦労しすぎたのよ」という言葉が優しい。再会すべき二人が再開した様子だけを見せる、物語の中のクライマックスの部分だけど切...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第8話ある過去に関する物語

  • アキ・カウリスマキ監督『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』(1986年)

    2024/4/30造船会社の社長が殺され、息子ハムレットと伯父が対立する話。シェイクスピアの『ハムレット』を現代企業の権力闘争に置き換えた話だと言えば聞こえはいいけど、全体的にすごくざっくりしている。ハムレットの有名イベントは一通りこなしているものの、本作品における展開上の必然性はあまり感じられず、原作がそうだから入れておいたという感じ。事務的。ネットでは「コメディ」と紹介されているけど、シリアスとコミカルの境界線がわからず、疑心暗鬼になりながら見続ける。ハムレットがまるっこいおじさん。この違和感は覚えがあるなと記憶をさかのぼっていくと、昔テレビでやっていた新春かくし芸大会の長編ドラマだった。伯父の毒殺も雑で回りくどい。真相が輪をかけて雑で回りくどい。そういう入れ子式の構造を狙っていたのかもしれないけど、...アキ・カウリスマキ監督『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』(1986年)

  • DDT「ネタバレ禁止興行 vol.1」

    2024/4/29ネタバレ禁止興行とあるのでどこまで感想を書いていいのかわからない。DDTのことをちゃんと知っているかどうかで、楽しめる度合いが全然違うタイプの試合が多い。こんなハイコンテクストなプロレスの興行って今まであったんだろうか。本当に文科系プロレスだった。それでも観客がちゃんと盛り上がっていてえらい。第一試合から不条理演劇を見ているような気持ちになった。ネタバレが禁止というより、広く拡散されると高確率で怒られるという意味ではないかと思いながら見ていたら、出場選手も同じようなことを言っていた。上田優希選手のことは知らなかったor印象に残っていなかったけど、今回の興行で好きになった。本当におつかれさまでしたとねぎらいたくなった。こんなに混沌とさせておいて、ひとつの興行としてちゃんと場を締めることはで...DDT「ネタバレ禁止興行vol.1」

  • 高木三四郎『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』

    年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで高木三四郎徳間書店2024/4/28高木三四郎へのインタビューと、藤田晋、ケニー・オメガ、倉持由香それぞれとの対談。表紙がいい。事務仕事している人たちと、元気いっぱいのプロレスラーのギャップがありすぎて、たぶん違うのにコラージュっぽく見える。対談では大社長が聞き手として優秀。グラビア業界の話すらプロレス用語に置き換えつつ理解しようとしている。世界でも有数のプロレス団体になっているのに、まだまだ上を目指している。そのために新しいことをどんどん取り入れようとしているし、選手たちの自主性を尊重するのもその一環。強い上昇志向と現場で培った実戦的な柔軟性。納得。無料興行のマネタイズ、飯伏幸太のデビューの話、鈴木みのるとのかけひき、ハッスルの感想、青木真...高木三四郎『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』

  • DDT「Judgement2022~DDT旗揚げ25周年記念大会~」

    2024/4/26・2022年開催。前に見た東京女子とあわせて2DAYS。なので、観客は発声禁止、手拍子のみ。・ダークマッチの時間差タッグマッチが豪華。・出てくる選手たちがどんどん大型化していく。・アンドレザジャイアントパンダのタッグパートナーにスーパーササダンゴマシーンという、偶然にしては出来過ぎの組み合わせ。・山里亮太さんによる開幕肛門爆破。・いろんな意味で絶対ミスってはいけないところでミスっていたらしいけど、さすがの対応力だった。・開幕第1試合はKO-D10人タッグ選手権。・大鷲透と組むと荒々しくなるヨシヒコが楽しい。・いま蛇界転生が見られるとは思わなかった。・大社長と中澤マイケル戦。見た目のわりにプラケースが危険。肩のあたりが気持ち悪い感じで流血していた。・LiLiCoの引退試合。人前であんなに内...DDT「Judgement2022~DDT旗揚げ25周年記念大会~」

  • 劇団words of hearts『この生は受け入れがたし』

    2024/4/26・東京から東北の寄生虫研究室に異動してきた研究者とその妻が、環境の変化に対して正反対の反応をしてしまう話。・会話はほとんどが津軽弁と福島弁、そして標準語。・おそらく俳優さんのほとんどはネイティブではないので、方言指導を経て、上演に臨んでいる。・聞いていて言葉の区別や練度がわかるわけじゃないけど、会話のリズムはよく、緊張感を損なわず聴き続けることができた。・文字にすると意味の分からないようなフィラー的な声を自然に差し込んでいる。・話にわかりやすい起伏が少ない平田オリザ戯曲では、会話の精度が一番大事。・個人的に好きでたまに目にしている生き物情報がなぜかハマって心を見透かされた気分になる。・レイコクロリディウムとかフタゴムシとか。カタツムリは見た目がかなりグロテスクになるので、舞台上で鮮明な映...劇団wordsofhearts『この生は受け入れがたし』

  • チャールズ・チャップリン監督『街の灯』(1931年)

    2024/4/25・目の見えない女性にお金持ちだと勘違いされた浮浪者のおじさんが、精神不安定な本当の金持ちに振り回されながら援助を続けようとする話。・無声映画。大げさで記号的な浮浪者の動きと、ほとんど存在しているだけの女性の組み合わせがぴったりあっている。・お酒で記憶を無くすというところまでは理解できるけど、再び酒を飲むと過去の泥酔時の記憶がよみがえるというのは、どういう理屈なんだろう。・こちらが先なんだけどどうしてもドリフを思い出す。・上目づかいで愛想笑いしてるところは手塚治虫マンガも思い出す。・どちらも、アンド検索したらたくさん記事が出てきたので、一般常識の範囲らしい。・唐突に始まったボクシングのシーンは、過去作のアレンジとのこと。・その過去作『拳闘』のシーンが特典映像に入っている。見てみるとそちらの...チャールズ・チャップリン監督『街の灯』(1931年)

  • 東京女子プロレス「GRAND PRINCESS '22」(東京・両国国技館 2022.3.19)※4/23時点で無料配信中

    2024/4/23・前に見たDDT興行から5年後2022年の東京女子。・感染症対策のため観客の声援や飲食禁止。コロナ自粛期から時間がたつと、意味がわからなくなる人は増えそう。・知ったばかりの「爆れつシスターズ」のお姉さんが引退。身内対決は燃えるし、悲壮感もなくていい温度感。・高木三四郎選手が大社長ではなく、ただの社長だと挑発されていたけど、相変わらず大人気なかった。・早起きして準備したボディペイントと、女性以上に立体感のある大胸筋の組み合わせが生々しい。・操からハイパーミサオになっていたの混乱する。・美威獅鬼軍の入場が楽しそう。あれ、舞台に上がるような人でやりたくない人いないんじゃないか。・ユニット名はなんでヤンキー仕様なんだろう。・メスと注射器という一線を越えている凶器。・ラム会長は貫禄がありすぎる。レ...東京女子プロレス「GRANDPRINCESS'22」(東京・両国国技館2022.3.19)※4/23時点で無料配信中

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第7話 ある告白に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/4/22ある女性が、若くして出産した結果、母親に娘を奪われてしまう話。解説によると、第八戒「あなたは盗んではならない」がモチーフらしい。それで母親に娘を奪われた女性のエピソードを扱う飛躍具合が好き。一番小さい子供を祖母と母で奪い合う感覚は結構いろんな家庭で見られると思うけど、立場の強い弱いがはっきりしすぎている。実の母親のほうがどんどん追い込まれて誘拐まがいのことをしてしまう。三代それぞれの立場で盗む盗まれるの見え方が全然違うのがおもしろい。小さな子供からしたら、自分がずっと母親だと思っていた人が祖母だったから逃げようと言われてもついていけない。落ち着い...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第7話ある告白に関する物語

  • DDT「Ultimate Party 2019 ~DDTグループ大集合!~」

    2024/4/22・DDTはDVDや配信でも見ていたもの、最後に見たのはいつか思い出せないくらい前。ライブで観たのは一回だけで長井満也選手が試合していた。・プロレス自体も最近スターダムの配信を見始めたくらいで、かなりご無沙汰。・配信時間6時間半に怯む。二日に分けて視聴。・DDT、BASARA、東京女子、ガンプロの4ブランド、全14試合、80人を超える選手たちが試合している。・アイアンマンヘビー級選手権では平田一喜が畳みかけるような入場順に翻弄されていた。好感を持った。・歴代王者の一覧がなぜか英語版Wikiにしかない。・そういう大会だからそういうものなんだろうけど、とにかく一試合あたりの参加選手が多い。・3WAYの6人タッグと4WAYタッグは人数多いのに知っている選手が少なくて困る。・戦いよりワクワクが上回...DDT「UltimateParty2019~DDTグループ大集合!~」

  • トム・マクナブ『遥かなるセントラルパーク』

    新装版遥かなるセントラルパーク(上)(文春文庫)(文春文庫マ1-4)トムマクナブ文藝春秋新装版遥かなるセントラルパーク(下)(文春文庫)(文春文庫マ1-5)トムマクナブ文藝春秋2024/4/18・1931年、ロサンゼルスからニューヨークまでアメリカを横断する三千マイルのフットレースが実行される話。再読。・3月21日から6月20日の三か月かかる。・最初のうちは、競技というよりお祭りや興行に近い。・参加ランナーは一部を除いて記念出場どころか食事目当てだし、サーカスの一団を引き連れて、行く街々でショーを披露する。おしゃべりラバのフリッツ見たい。・世界的な不況のなか、起死回生を狙うランナーたちは高額賞金を狙ってしのぎを削る。・一方で、前例のない巨大レースの運営は、ニューヨークまでたどり着けるかどうか、賭けの対象に...トム・マクナブ『遥かなるセントラルパーク』

  • ままごと『わが星』

    わが星「OURPLANET[DVD]ままごとHEADZわが星柴幸男白水社2024/4/16・地球と月とその家族の在り様を、時報のリズムに乗せて言葉とダンスで表現していく話。話なのかな。・作中で、幼い女の子であるちいちゃん(地球)とその幼馴染の月の関係性を人の一生分一気に見せる。・最初は『わが町』と関係ないのかなと思ったけど、この部分だけ取り出すとやっぱり発想元と思われる。・最初の時報のリズムにあわせて群唱するところは躍動感があってかっこいいんだけど、なかなか話に入っていかないので少し不安になる。・抽象表現が多いと、全体の尺の中でどのくらい進んでいるのかわかりにくいので長く感じやすい。・本作では、ちいちゃんと月の二人の物語が組み込まれていて、そういうストレスは少なかった。・それだけなら良くも悪くも単なる「い...ままごと『わが星』

  • 関根光才監督『太陽の塔』(2018年)

    太陽の塔2024/4/16・岡本太郎の作品や人柄を、10個のキーワードをもとに、様々な立場の人が証言していくドキュメンタリー。・自分にとっての岡本太郎は、幼いころ、テレビで「芸術は爆発だ!」と言っているギョロ目のおじいさん。・後になってたいへん優れた芸術家であり、ただの変わったおじさんではないことに気づかされた感じ。・亡くなったのは1996年だが本作の公開は2018年。東日本大震災後。わりと最近。・最初は万博というテーマで当時の様子を解説していく。・当時も色々あったんだろうけど、カジノの前座として公費を浪費している今の大阪万博と比較すると、盛り上がり方にかなり差があるように見える。・1970年から少しでも進歩しているのか、退化しているのか。・当時の万博のテーマ、科学の発展による「人類の進歩と調和」に岡本自...関根光才監督『太陽の塔』(2018年)

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第6話 ある愛に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/4/16望遠鏡で隣の建物の情事を覗き見していた若い男トメクは、覗きの対象の女性マグダと仲良くなるが、性行為がうまくいかなくて自殺未遂する話。解説文の(彼の視姦は性的なものではなく)「むしろ純粋な愛の対象を見守るまなざしとしてのみ心に残る」と自分の印象が全然一致しなくて困る。彼女に会いたいがために、郵便局員が為替関連の書面を偽造するのもやりすぎに思える。好きな人をクレーマーに仕立てたのも陰湿すぎる。1988年のポーランドならOKなんだろうか。女性がそれに対して寛容すぎるのも変な誤解を招きそうだし、あげく手首を切って自殺未遂なんてただひたすら面倒くさい。性交...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第6話ある愛に関する物語

  • ダニー・ネフセタイ『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』

    イスラエル軍元兵士が語る非戦論(集英社新書)ダニー・ネフセタイ集英社2024/4/1イスラエル空軍に在籍経験があり、今は日本で家具を作っているイスラエル人が著者。情報量が多い。最初に文章内でちゃんと右派と左派を定義しているところが信頼できる。政治の話題で使われる「右」や「左」は、人によって意味が全然違うので、言葉としての機能を失ってることが多い。本書では言葉を尽くして抑止力としての武装を否定している。キリがないという。アメリカの銃規制みたいだなと思う。自分自身、現時点で日本の非武装化は現実的ではないと思うけど、とりあえず理想を掲げて、そこに近づこうとすることは大事。今は逆行しているのが残念。現実に敗北している。一方で対パレスチナに関するイスラエル人の考え方、気持ちはわかる。肯定はできないけど、身近に同じよ...ダニー・ネフセタイ『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』

  • 劇団あはひ『流れる —能“隅田川”より』(2022年)

    2024/4/8・松尾芭蕉と弟子の曾良が川の渡し守のところで、訳あり気な女と舟守と子供に出会う話。・「奥の細道」ではなく、能の「隅田川」がベース。・能という伝統芸能の敷居の高さはいったん脇に置いて素直に会話が楽しい。・ライターの貸し借りだけでひと笑いある。・舟守のところに自分が行くか弟子に行かせるか二人でいくかという、どうでもいいやり取りがおもしろい。・物腰のやわらかな芭蕉になごむ。・曾良は無自覚に失礼な人だと見ていたけど、女性と話す時はちゃんとしている。・アレンジは現代劇風。服装や小道具、言葉遣いや会話も現代人どうしのやり取りに聞こえる。曾良が黒のダウンジャケットを着ている。・「ご当地俳句読み倒れツアー」。・時代感があるのは、川の船着き場みたいな場所だけ。・舞台はモノクロ。きわめてシンプル。・映像でも奥...劇団あはひ『流れる—能“隅田川”より』(2022年)

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第5話 ある殺人に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/4/9タクシー運転手を殺した若者が死刑になる話。その若者と、彼の弁護士、被害者の三者の目線で構成されている。若者が凶行に及ぶ過程がよくわからない。たぶん、わざとそういう風に見せている。無軌道な若者がためらいながらも一線を越えるという話は、類型がたくさんありそう。理不尽だけど、不運なタクシー運転手は、あんまり共感できないような人間性でバランスをとっている。十戒で言うと、第6の「人を殺してはいけない」らしい。ただ、殺人NGは一般常識の範囲なので、かえって難しいお題なのかも。どこまで現実に即しているかわからないけど、死刑の準備や段取りが生々しい。日常業務として...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第5話ある殺人に関する物語

  • 黒澤明監督『生きものの記録』(1955年)

    2024/4/8・終戦から復興しつつある日本で、ある老人が水爆や原爆の恐怖から逃れるため家族を連れて南米に逃げようとする話。・今の感覚で見ると、年を取ってから陰謀論に染まってしまい、せっかく築いてきた財産を切り崩していく感じに近いのでわりと共感できる人は多いかもしれない。・ただ、よく見ると結構違う部分もあるので、そのまま入れ替えられるような話でもない。・例えば、戦争からの時間が浅い。終戦から10年。戦争(特に原爆)で人が死ぬということが、今とは比較にならないくらい身近なことだったりする。・彼の恐怖には根拠がある。・未来人である自分は南米に逃げることが正解か不正解か知っているけど、これだって後出しに過ぎない。・家族にジュースをふるまったり、必ずしも悪人というわけではないのが厄介。フード理論的に重要な行動。・...黒澤明監督『生きものの記録』(1955年)

  • 松井周の標本室『標本(複写)』(2021年)

    2024/4/8光合成できる特殊体質だと気づいた俳優が、その後の生き方に悩む話。ほぼ一人語りの進行。演者は金子岳憲さん。客席に向かって劇場やコロナ禍について語り掛けつつ、少しずつフィクションの割合を増やしていく。完全に話に入った後は、複数の登場人物を一人で演じながら進行する。座っていないだけで、落語のテンポ感に近い。主人公を脇に置いて、女性二人がつかみ合い、たたき合いをするシーンも、動作の単純化、取捨選択が巧みで、全くテンポを損なわずに一人二役を演じていた。終盤の、プログラムをミスったMMDキャラみたいな機械的かつ非人間な動きもおもしろかった。「余らせたもの」というキーワードは、あまり理解できなかったけど、突然変異と自然淘汰による進化論的なことなのかなと考えたりした。なので、光合成ができたからって、生き残...松井周の標本室『標本(複写)』(2021年)

  • ヨハン・ヨハンソン監督『最後にして最初の人類』

    最後にして最初の人類ティルダ・スウィントン2024/4/4作曲家のヨハン・ヨハンソンの音楽と、古典SF小説をもとにした20億年後の人類からのメッセージ、旧ユーゴスラビアの戦争記念碑「スポメニック」の映像を組み合わせた作品。公式HPにもあったけど、物語ではなく、映像と音楽を使った詩でいいんだと思う。スポメニックのことは知らなかったけど、説明がなくても、その奇妙さと大きさに魅了される。たしかにSFっぽい見た目だし、異世界のそういう兵器なんだと言われたら納得してしまうくらい。ネットで画像は見られるけど、大きさあってのものだと思うので、実物を見てみたい。逆によく知っていたら、なんで戦争記念碑と20億年後の未来が融合しているんだろうとノイズになりそう。映っている物体の数々が未来の人類の成れの果てなのかなと考えたりし...ヨハン・ヨハンソン監督『最後にして最初の人類』

  • クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』

    2024/4/2・原爆の父と言われたオッペンハイマーの評伝劇。・180分ある。家でサブスク視聴するには厳しい長さ。こういう作品こそ映画館がはかどる。・せっかくの話題作なのでIMAXにしたけど、会話が9割だったので、そこまでこだわらなくてよかったかも。・ただ、ロスアラモスの原爆実験はすさまじい。クリストファー・ノーランがCGを使わないということくらいは知っていたので、ますます凄みを感じる。・爆発時の数字を聞いて、単に大きな爆弾が炸裂したと思って喜んでいるライト層と、とんでもない異常な規模だとわかる専門家たちの表情の違いも見どころ。・彼のキャリアの振り返りと、戦後の公聴会のシーンが切り替わりながら話が進む。・最初、公聴会で調査しているのは人道的な意味での是非なのかな、ちゃんと検証しているアメリカはえらいなって...クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第4話 ある父と娘に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/3/29仲良し父娘の娘が、父の机の引き出しから「死後あけること」と書かれた手紙を見つけてしまい、開封するかどうか迷う話。DVDの解説によると、十戒の中の「あなたの父母を敬え」という第五戒がテーマらしい。直接表現しているわけではないので、一致していると言えばしているし、よくわからない。どちらかというと、親とは何かという話。踏み込んだ表現もあるけど、比較的穏当な話だったと思う。過去3回もそうだけど、登場人物の顔が強い。今回も娘の顔が強い。演者はアドリアンナ・ビエェンスカ。名前を覚えられる気がしない。話はとてもシンプルで、なんなら既視感もあるくらいだけど、娘の...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第4話ある父と娘に関する物語

  • 「5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]」

    2024/3/29・デンマークの王子ハムレットが、前王である父親の幽霊からの命令を受け、新しい国王となった叔父に復讐しようとする話。ミュージカル。・役者は男性5人のみ。ハムレットは一人が演じ、他の四人で残りすべての登場人物を演じる。・ハムレットの母親ガートルードや恋人オフィーリアも男性が演じる。恋人同士のやり取りもギャグに逃げず、真正面から演じている。すごく真面目。・登場人物の紹介、関係性、展開、うまく編集されていて2時間弱。わかりやすいのでシェイクスピア作品の入門編としてもおすすめできそう。・ハムレット以外の演者は、一つの役でも異なる演者が担当したりする。なので、衣装が重要。・演じているほうは混乱しないのかなと思ったけど、楠美津香さんみたいな人もいるから今さらか。・着替えは舞台上で見せる方針で、仕草や照...「5GuysShakespeareAct1:[HAMLET]」

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第3話 あるクリスマスイヴに関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/3/26クリスマスイブの夜、タクシー運転手の男のところに元恋人がやってきて、彼女の現恋人が行方不明になったから一緒に探してほしいと言われる話。…だと思うけど、よくわからない。本編も1時間弱。30分くらい見て話に付いていけず、最初から見直してみたけど、よくわからなかった。主人公の男は妻がいるのに、元カノの頼みに応じて一晩を一緒に過ごす。妻には「車が盗まれたから警察に通報しておいて」という言い訳をする。意味がわからない。妻に内緒にすること、言い訳に盗難被害という嘘をつくこと、実際に警察へ通報させること、どれも飲み込みにくい。一歩間違えたら逮捕されるし、実際逮...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第3話あるクリスマスイヴに関する物語

  • ベン・モンゴメリ『グランマ・ゲイトウッドのロングトレイ』

    グランマ・ゲイトウッドのロングトレイルベン・モンゴメリ山と溪谷社2024/3/26・1955年、女性で初めて全長3300㎞のアパラチアントレイルを踏破したエマ・ゲイトウッドを紹介するノンフィクション。・当時の彼女は67歳。1955年5月2日から同年9月25日までの146日、起伏の激しい山岳道を、単純計算で1日あたり20~25㎞くらい歩き続けた。・激しい起伏、足場の悪さ、記録的なハリケーン、ガラガラヘビなどの危険な動物たち。・本の大部分はこの最初のトレイルの様子と、彼女の生い立ちの紹介にあてられている。・過酷なトレイルでも、彼女にとっては楽しいことだったらしい。実際、彼女は一回では満足できず、二回目、三回目と挑戦している。・一方で、彼女の生い立ちのほうで語られる、夫からの暴力は目も当てられない状態。・時代背...ベン・モンゴメリ『グランマ・ゲイトウッドのロングトレイ』

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第2話 ある選択に関する物語

    デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)デカローグDVD-BOX/クシシュトフ・キェシロフスキ(監督)です。ノーブランド品2024/3/26不義による妊娠をしてしまった女が、生むべきかどうか判断するため、意識不明になってしまった夫の主治医から話を聞き出そうとする話。姦淫という十戒らしいテーマ。ただし、十戒に対応しているのは偶像崇拝の禁止らしい。どの部分が対応しているのかはよくわからない。「私は私だけの神を持っている」というセリフなのかな。十戒をそのまま組み込むのではなくて、作り手側が、それに対してどのように考えているかを作品にしている感じ。夫が回復して一緒に暮らせるようになるなら、不義による子供は生めないという考え方って、個人的にはあんまりピンとこない。自分は父親とは血がつながってい...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第2話ある選択に関する物語

  • NODAMAP『赤鬼』

    赤鬼[DVD]野田秀樹、富田靖子、段田安則、アンガスバーネット、AngusBarnettカズモ2024/3/25村の嫌われ者の女が、海から漂着してきた「赤鬼」と出会う話。小さめの演技スペースを客席が囲む会場。四人の俳優が、それぞれのベースの役と、シーンに合わせて様々な村人の役を演じる。切り替えが早く、時々ギャグも入るので、見ているほうも忙しい。演者たちの瞬発力はさすがだし、最前列のお客さんに話しかけたり、バッグをお借りして攻撃したりする。楽しそう。嵐の表現や、ボールとポールで船に見立てるのもちゃんとそのように見える。さすが。赤鬼は外国人のことなのかなと思ったけどそういう感じでもなさそうで、人間として考えていいのか、よくわからなかった。話の筋自体はとてもシンプルなので、何の話かわからなくなるということはない...NODAMAP『赤鬼』

  • ケン・クワピス監督『ロング・トレイル!』(2015年)

    2024/3/24老年の作家が思い立って全長3500㎞のアパラチアントレイルに臨む話。もともとコミュニケーションの苦手な人が、よき理解者と出会って長年一緒に暮らしているうちに、ますます他者との距離感がとりにくくなっている感じが生々しい。相棒は彼よりもヨボヨボのおじいさん。老年だからというより、完全に山歩きをナメていて、踏破できそうな要素が全くない。熊との遭遇や滑落のような絶体絶命のトラブルもどこか呑気。かなり薄められている。熊と対峙して逃げずにちゃんと威嚇したのはよかったけど、人の食い物を奪って去っていくのは餌付けと変わらないのでかなり怖い。アパラチアの熊はそういうものなのか。途中で泊まったホテルはちゃんと料金を払ったんだろうか。諦めさせようとする妻のまわりくどい説得や、途中から同行するうっとうしい女性ハ...ケン・クワピス監督『ロング・トレイル!』(2015年)

  • 岡真理『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』

    ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義岡真理大和書房2024/3/22今起きているガザの問題、というか今のイスラエルという国家の問題点を解説した本。自分の知識では軽々しく事の是非を判断することはできないけど、態度を保留にすれば中立になれるわけでもない。むずかしい。実際、イスラエルが目指しているのはまさにそこ。周囲の人々に態度を保留させているかぎり、イスラエルはジェノサイド(大量殺戮)を続けられる。なので、病院や難民キャンプを襲っている時点でイスラエルの擁護は厳しい、くらいは言っておきたい。大国アメリカも親イスラエル系のロビイストが力を持っていて、止めるどころか支援を続けている。日本にも似たような話はあって気が滅入る。ユダヤ人の国と言いつつシオニズムは敬虔なユダヤ教徒に認められていないという話、イスラ...岡真理『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』

  • クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第1話 運命に関する物語

    2024/3/22モーゼの十戒をモチーフにした短編10作品のうちの一話目。理知を重んじるインテリ親子が、運命からの逆襲に遭う話。理知と信仰の対比(本当に対比になるかどうかはあやしいかも)が軸になっている、哲学的かつ宗教的な話。50分強と短く、単純な構図で、心配していたほどのストレスはない。十戒のひとつ「あなたは私の他になにものも神としてはならない」を犯した親子が悲劇に遭うという道徳的な話に見えなくもないけど、その神やら運命やら何か得体の知れないものに屈服するのか、抗い続けようとするのか、その人の生き方が現れる瞬間を描いた話とも言える。動物がよく出てくる。血の付いた鳩や犬の死体など、人を不安にさせる動物たち。今見るとかなり旧式のパソコンの緑色の光が、人間らしさとの対比のように使われている。派手な装飾はないけ...クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第1話運命に関する物語

  • 黒澤明監督『椿三郎』(1962年)

    2024/3/19・椿三十郎を名乗る浪人が、冤罪で拘束された城代家老を救おうとする若者たちを助ける話。・その若者たちが九人もいる。似たような若い武士たちが彼のあとをウロウロついていく。・椿三十郎は若者たちを一人も殺さないようにゴールに導く。ゲームの『レミングス』っぽい。・金魚のフン状態の若者たちの中でも決して埋もれない田中邦衛の顔面力。・96分。時間が短い。内容も軽い。巨匠の作品という感じがしない。・各登場人物の役職や身分がよくわからないまま見ていたけど、その時その時で登場人物たちが何をしたいのかがわかりやすく全然ストレスにならない。・囚われのお姫様ならぬ城代家老のおじいちゃん。命の危機だったのに、己の馬面をネタにしてのほほんと若者たちを笑わせている。胆力があるとも言えるけど、ゆるい。・家族の危機なのに奥...黒澤明監督『椿三郎』(1962年)

  • Nibroll/ミクニヤナイハラプロジェクト『リアルリアリティ』

    2024/3/18プロジェクションマッピングとコンテンポラリーダンスと音楽を組み合わせた舞台芸術。ダンスは演劇ほど演者の表情に焦点がないので、見た目が暗くなりがちなプロジェクションマッピングとは相性がいいのかもしれない。最初パネルに、不自然な姿勢で首を吊る人々の映像がたくさん映し出される。自分にはタイトルと、実際の表現の関係性はよくわからなかったけど、とりあえず生と死のモチーフが繰り返し出てきているよう。数字の海に流されていく死体のようなもの。暴力や戦争のようなもの。棺桶のようなもの。地層のように世代が移り行く感じ。衣裳を脱ぐ動きが多いのも代謝の表現なのか。なので、テニスと新体操っぽい部分は唐突な感じはした。もともとダンスと親和性の高い音楽に、照明効果も加わって多層的に見られる仕組み。というか、照明効果が...Nibroll/ミクニヤナイハラプロジェクト『リアルリアリティ』

  • 山田洋二監督『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(1975年)

    2024/3/16・寅次郎が飲み屋で謎の爺さんを拾ってきたことをきっかけに、なぜか市役所の接待を受けたり、金をだまし取られた芸者の話を聞いて、我が事のように怒ったりする話。・最初の夢シーンは『ジョーズ』のパロディ。ジョーズが1975年、本作が1976年。早い。想像していたより死に方が雑すぎて笑った。源公むごい。・こういうバカバカしいシーンの場合、味付け濃いめの渥美清の演技と、自然な感じの倍賞千恵子の演技を並べると、さくらのほうに違和感と面白味を感じてしまう。・寅次郎が目まぐるしい。・甥っ子のお祝いをしてくれる。人からバカにされたと拗ねる。居酒屋で無一文の爺さんを見かけたから立て替えてやる。家に泊めてやる。高名な先生だとわかると金づるにしか見えなくなる。接待を受けたあとにとらやの飯に文句を言ってイヤな顔をさ...山田洋二監督『男はつらいよ寅次郎夕焼け小焼け』(1975年)

  • 根本宗子監督『20歳の花』

    2024/3/1420歳の花が、好きな作家とSNSで交流するようになって、心を乱される話。5分前後のエピソードが10話。演劇ともミュージカルとも連続ドラマとも言えるし、それぞれとはちょっとずつ違うとも言えるような映像作品。赤と青を基調にした美術が賑やかで楽しい。たまたま最近よく見ているマティス感がある。出演している人が根本宗子さんだと勘違いしていて、イメージと違うなと思っていたら、別人だった。演者は田村芽実さんのみ。誇張気味の演技と、コロコロ動く表情がかわいい。そして、ずっとボヤいている。歌もよくなじんでいる。音楽はチャラン・ポ・ランタンの小春さん。配信作品だから尺の自由度は高いと思うけど、あえて短く区切ってオープニングとエンディングの繰り返すことでリズムを作っている。SNSで知り合った人がイメージと違っ...根本宗子監督『20歳の花』

  • 北海道立近代美術館「AINU ART―モレウのうた」

    2024/3/8・モレウ(渦巻の文様)を軸にアイヌ文化の芸術や工芸品を集めた展覧会。・アイヌの文様はかっこいいと思うものの、それほどアイヌ文化に馴染みがないので距離感が難しい。・それこそ『ゴールデンカムイ』のような自然とともに生きているイメージが強いけど、あれは昭和初期の話だし、ステレオタイプの押し付けはあまり良いことではない。・芸術と伝統は、近いところにあるわりに、相性がよくないと思っているので、現代のアイヌ文化ってどんな感じなのか気になっていた。・あと、自分は落書きしたくなると、必ずぐるぐる渦巻を描いてしまうので親近感もある。・と思っていたら、世界のぐるぐるを集めたパネルコーナーもあった。ぐるぐる大好きなのは世界共通らしい。・北海道に住んでいなくても誰もが一度は目にするだろうアイヌの文様が刺繍されたタ...北海道立近代美術館「AINUART―モレウのうた」

  • 株式会社オフィスインベーダー『飛び降りたらトランポリン』

    2024/3/7疫病の感染者を殺す花火を発明した男が、感染者を殲滅したい権力者と、感染者たちの間で板挟みになる話。主人公はヒラガバンナイという発明家で、コロリという病原体、エレキテル、からくり人形の女の子を発明しているという、江戸時代風のファンタジー。コロナ禍以前の2008年の作品で、今はたまたま『オッペンハイマー』が話題。疫病と大量殺人兵器を扱って全体的にコメディタッチなのは、どうしても隔世の感を抱いてしまう。このころは平和だった。たぶん今上演したら全然違うタッチになるんじゃないかと思う。目まぐるしくシーンが変わっているのに、高低の演技スペースとステージの穴もうまく使いこなしていて、転換の手数が多い。演者の技術は全員安定していて、特に刀の使い方が全員すごくきれい。そして速い。ほとんどの感染者が死んだだろ...株式会社オフィスインベーダー『飛び降りたらトランポリン』

  • ペリン・エスマー 監督『リア女王 ~村を巡る陽気なおばちゃん劇団~」(2019年)

    2024/3/6・トルコの辺境の村をめぐって「リア王」の上演を続けるおばちゃんたちを撮影したドキュメンタリー。・リア王なのに結構ゆるい雰囲気。そんなところでセリフの練習をやってるんだというところから始まる。・見た目も言動もおばちゃんとしか言いようがなく、舞台にあがると豹変するという感じでもない。・反面、演劇を上演するまでがとにかくハード。・整備されていない片側崖の山道を延々と移動していたり、遊牧民の小さな集落を訪ねたり。・現地に到着すると、出演者たちが街を歩いて住民とコミュニケーションをとる。・宣伝には違いないんだけど、「よかったら遊びに来て楽しいよ」くらい感じで押しつけがましさがない。・おばちゃんという属性に意味付けし過ぎるのはよくないけど、これがおじさんだったり、テレビタレントや芸術家っぽかったりする...ペリン・エスマー監督『リア女王~村を巡る陽気なおばちゃん劇団~」(2019年)

  • マチルダアパルトマン『すべての朝帰りがいつか報われますように』

    2024/3/5一年前に公園で死んだ一人の男を偲んで、彼と因縁のある女性たちが集まって缶蹴りをする話。夜の公園という、なにかと若者たちをそわそわさせるロケーション。年齢的にも世代的にも缶蹴りはないだろうと思うけど、それをさせてしまう夜の高揚感には何となく覚えがある。ピザは選んでいる時が一番楽しいという話に共感する。何事もサクサク決められる人をうらやましく感じることは多いけど、うだうだ考える楽しさもある。たぶんサービス精神だと思うんだけど、カメラが近めなのと、時間の編集が入っているので、舞台をどうやって使っているのか、場面転換をどう見せているのかがよくわからなかった。個人的な好みかもしれないけど、時間の編集が入ると、演劇を見ている感じが結構目減りする。団体のことも作品の内容も知らなかったけど、とりあえず見て...マチルダアパルトマン『すべての朝帰りがいつか報われますように』

  • 明和電機「ナンセンスマシーン展」(札幌国際芸術祭2024/SIAF2024)

    2024/3/3・明和電機は20年くらい前にCDを買って社歌も歌えるが、最近の活動はよくわからない程度の知識。・お兄さんが定年退職していたのも知らなかった。・筑波大学の学生時代、魚器、EDELWEISS、VOICEMECHANICS、TSUKUBAの各シリーズ。・特に学生自体の創作物が楽しい。・「新しいびっくり箱を作りなさい」という発想を引き出す課題のほうも面白い。・創作ノートの展示を見ると、学生時代から魚器にかけて、世界と自分の間には何かあるのかなど、実に若者らしい問いを持って、創作していたことがわかる。・結果、魚と電気屋に行きつく飛躍。天才。・明和電機を知って10年以上のブランクがあったのに、当時と同じようにその造形にわくわくできた。強い。・魚を殺すことが前提のアートもあって、今の感じからは想像しにく...明和電機「ナンセンスマシーン展」(札幌国際芸術祭2024/SIAF2024)

  • マーティン・スコセッシ監督『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

    2024/3/1・仕事を求めてオクラホマ州に移り住むことになったアーネストが、地元の有力者である叔父の言いなりになって、オセージ族の連続殺人計画に飲み込まれていく話。・実際の事件をもとに作られた3時間26分の大長編。・アカデミー賞10部門ノミネートの記念上映で、実際見た人の評判もいい。それなのに、最初の20分くらいは何が起きているのかよくわからず、不安になる。・徐々に登場人物の関係性、凶悪な行為、計画がわかってくるにつれ、話が加速していく。中だるみしなかった。・後日譚の見せ方も好き。もうちょっと見たくなる。・なので実時間ほど長くは感じないんだけど、それでも映画館の環境あっての作品ではある。・オセージ族は、保留地から石油が採掘され、裕福だったため、白人入植者に権利を狙われているという背景。・結構な数のオセー...マーティン・スコセッシ監督『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

  • アガリスクエンターテイメント『令和5年の廃刀令』

    2024/2/26・帯刀が常識となった令和五年の日本社会で、廃刀令の是非を問うタウンミーティングの様子を描いた話。・『12人の怒れる男』『12人の優しい日本人』と同じ系譜の話。実際、展開も似ている。・登場人物が事件をほぼ他人事として扱う「~優しい日本人」に比べて、各々の信念や利害がしっかりしている。・結果、支持派と否定派の入れ替えによる起伏は少なめで、どちらかというと人物描写に重きを置いている。・裁判員裁判よりもっと非現実的なシチュエーションだからこそ、登場人物の実在感が大切。・肯定派と否定派のバランスをとるのはとても難しいけど、かなり注意深く練りこまれていたと思う。・最初の「刀は日本の心」おじさんの言っている理屈は、そのまんまアメリカの銃規制反対派に置き換えられる。・帯刀という現実の日本人から見るとバカ...アガリスクエンターテイメント『令和5年の廃刀令』

  • Mako『保健室からの手紙』

    保健室からの手紙:養護教諭という生き方(エッセイ)Mako2024/2/252023年3月に退職した養護教諭が、34年間の教員生活で培った仕事に対する考え方を、一日の時系列や印象に残ったエピソードとともに書いたエッセイ。前に読んだ養護教諭の方と雰囲気が似ているものの、詳細は結構違うのでたぶん別人。保健室の先生は普段何をやっているのかよくわからないので、こういう具体的な仕事の内容を書いてもらえるとイメージがつかみやすい。ありがたい。事務仕事や直接生徒をケアをする仕事も多いけど、それより、野球のバックアッププレイのような何かあった場合に対応するための仕事が多いように見える。大体は意味がなく終わるけど、これを大事だと思えるかどうかで全然違う環境になりそう。保健室の性質上、生徒に忙しいと思わせてはいけないという話...Mako『保健室からの手紙』

  • ブリッツ・バザウーレ監督『カラーパープル』

    2024/2/22・父親や夫に虐げられながら生きてきたセリーが、いくつかの出会いを経て、自分の居場所を見つける話。・場所はアメリカの海岸沿いにある田舎町。1909年から40年くらいの長期間の話。・登場人物のほとんどが黒人なので人種的な差別は少ないが、とにかく女性の地位が低すぎる社会。・差別される側の人間が差別しないわけではないという、当たり前のことが再確認できる。・若い女性が問答無用で連れていかれるのは、知識としてそういう時代なのはわかっていても、実際に生身の人間同士のやり取りを見ると、相当キツい。・姉妹が仲良しなのでより悲劇性が増す。妹側の視点でもうひとつ話が作れそう。・人種差別描写が少ないと言っても、とても印象的な場面で出てくるので、これはこれで厳しい。・ソフィアの変遷がすばらしい。絶望から復活のとこ...ブリッツ・バザウーレ監督『カラーパープル』

  • ロブ・コーエン監督『ワイルド・スピード』(2001年)

    2024/2/19潜入捜査中の警察官ブライアンが、潜入先のターゲットであるドミニクと仲良くなり、彼にゼロヨンレースので負けた借りを返す話。最初からノリのいい音楽と光沢のあるタイトルロゴ、次々と出てくるきれいな自動車。自動車の話になると、当たり前のように日本企業名が出てくるところに時代を感じる。シーンとシーンのつながりがよくわからないところはあるけど、レースのスピード感は気持ちいいし、お酒でも飲みながら細かいことを気にせずに観るタイプの作品なんだと思う。武装したトレーラーの運転手、どちらかというと被害者側なのに、作品内では悪役になるという変なバランス。不自然なほど顔も映さないのは、観客に感情移入させないためか。反面、ドミニクの仲間たちは、メカニック風の食前のお祈りはおもしろかったし、電子レンジにキレ散らかす...ロブ・コーエン監督『ワイルド・スピード』(2001年)

  • NTL『オセロー』

    2024/2/18・ムーア人の軍人オセローが、腹心のイアーゴーの謀略で妻の不貞を疑い始め、結果みんなが不幸になる話。・オセローの演武から始まる。たぶん、彼の屈強なフィジカル面を示すのは、後の展開との対比として重要。・イアーゴーの間接的に人を不安にさせる言動が巧みなので、四大悲劇では『オセロー』が一番好きだった。・久しぶりに見たら、そのイアーゴーの策略が何でもかんでもうまく行き過ぎていて、逆にノイズになる。・自分の感覚だと「これからこんな悪いことするぞ」と一人語りすると何らかの邪魔が入って頓挫するはず。・彼は悪意の塊だったけど、悪意すらなく彼と同じような言動をとる人は、現実に結構いるような気がする。・舞台演出も衣装も抑制が効き過ぎて見え、中盤くらいまでは少し物足りなく感じてしまう。・途中15分の休憩とスタッ...NTL『オセロー』

  • 名越文代「保健室: 元養護教諭が『歳時記とエッセイ』で綴る現役養護教諭へのメッセージ」

    保健室:元養護教諭が『歳時記とエッセイ』で綴る現役養護教諭へのメッセージ名越文代2023/2/16社会人経験もあり、1968~1997年まで小学校の養護教諭を務めた名越文代さんの散文集。前半は歳時記と称して、養護教諭の目線で見る小学校の一年間をひと月ごとに軽い筆致でつづっている。現役の養護教諭に向けられて書かれているものだからか、時代が変わっているからなのか、表現の問題なのか、うまく意味をつかめないところもあったが、当時の養護教諭がどういう気持ちで業務にあたっていたのか、共感できるところもある。挨拶ひとつとっても気を遣いながら日々の生活を送っているところが印象的だった。後半は、退職後、社会人学生として大学に再入学した話や留学の話、人形浄瑠璃など。大津市の小学校に勤務されていたとのことで、滋賀県が県内の小学...名越文代「保健室:元養護教諭が『歳時記とエッセイ』で綴る現役養護教諭へのメッセージ」

  • 『マティスを旅する』(家庭画報特別編集)

    マティスを旅する家庭画報特別編集世界文化社2024/2/13マティス展の予習がしたくて、たくさんある入門書の一つを読んでみる。最初に彼が「集大成」とした《ヴァンス・ロザリオ礼拝堂》の写真が並ぶ。生誕から順番でもいいけど、わかりやすいところから挙げてくれるのは助かる。ステンドグラスの双子窓《生命の樹》、陶版画《聖ドミニコ》、それらにはさまれるように主祭壇上の磔像とキャンドルスタンド。建築や立体物のイメージはあんまりなかった。上祭服までデザインしていた。ちょっと舞台衣裳っぽいなとおもっていたら、実際にそういう仕事もしていたそうだ。磔像ってこんなに抽象化していいものなんだ。絵柄はふんわりしていて、素人にはわかりやすくすごいとは言いにくい作品が多いけど、斜に構えず受け入れるところから始めたい。昔から何となく好きだ...『マティスを旅する』(家庭画報特別編集)

  • AOAO SAPPORO「にちにちパス」

    2024/2/13・AOAOSAPPOROのフリーパスチケット。・自分が購入したときには、90日間17~22時の期間で利用可能。3500円。・水族館としては小ぶりだけど、施設内にコワーキングスペースがあるとなると、その有益性は一変する。・街中のスタバやドトールに行くような感覚で入れる。・11月上旬に購入して3か月間、画像フォルダを見るかぎり、週1回以上は入っている。・完全に作業場所目当てなのも味気ないし、たぶんそういう意図で販売しているチケットではないから、少しでも馴染もうとクラゲペンを買ったり、シロクマベーカリーで飲食したりする。・クラゲペンはペン先の反対側にクラゲがついていて書くときにすごく揺れる。普通に使いにくい。・イワトビペンギンのパフェは、ココアパウダーがこぼれるのでトレイ必須。・ガチャポンでイ...AOAOSAPPORO「にちにちパス」

  • ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」『幸せの黄色い私たち』(DAY2)

    2024/2/10・ポッドキャスト番組「オーバー・ザ・サン」の公開イベント。二日目。テーマは《はしゃぐ》。・二人が本人役を演じる寸劇が始まる。寸劇だと思って見ていたら、90分くらい続いた。・今回のイベントの準備期間中、ポッドキャスト収録の舞台裏という設定。・たぶん、お客さんが予想していた、あるいは求めていたのは初日のポッドキャストの延長のような感じだったと思うので、たいそう困惑したはず。・ただ、一日目と二日目にかけられた労力で言えば、一対九くらいの差がある。・セリフ覚えるだけでも相当大変だし、ダンス、マジック、ドラム、一つのイベントに詰め込んではいけない量の新しいことに挑んでいる。・だからひとつひとつの内容というよりも、良い年齢の大人が、なりふり構わず新しいことに挑んでみるというチャレンジ精神のほうを見る...ジェーン・スーと堀井美香の「OVERTHESUN」『幸せの黄色い私たち』(DAY2)

  • OrgofA『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』

    2024/2/5・お互い既婚者なのに一夜を共にしてしまった男女が、一年に一度二十五年間、同じホテルにて逢瀬を続ける話。・OrgofA上演の本作は2019年以来2回目の観劇。・開場中、ホテルマン姿の明逸人さんがずっと客席に向かって語り掛けながら、客席の空気をほぐしている。・長尺・翻訳物・ほぼ古典と人を緊張させる要素が多いので、そうやってお客さんにリラックスしてもらうのはコメディにとってとても大切だと思う。・自分が観たのは年代ごとに3組の男女が演じるスペシャル回。六人の演者による二人芝居。・どんな役者でも、一人の役を二十五年分も演じると、絶対に実年齢と合わない年代を演じることになる。・それも役者の腕の見せどころだけど、各年代を実年齢に近い人が演じると、別種の納得感が生まれる。・序盤は本庄一登くんと小野寺愛美さ...OrgofA『SameTime,NextYear-来年の今日もまた-』

  • ジェーン・スー『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』

    揉まれて、ゆるんで、癒されて今夜もカネで解決だ(朝日文庫)ジェーン・スー朝日新聞出版2024/2/5ジェーン・スーさんによるリラクゼーションサロン体験記。内容は『孤独のグルメ』の業種違いバージョンといった感じ。マッサージや整体といった比較的しっかりしたものから、謎の金属の棒や、よくわからないけど小顔になるドライヤー、ショウガにヨモギ、蛇床子なる漢方、スピリチャルの一歩手前、なんなら片足は踏み出しているくらいの怪しげな民間療法も試している。マッサージ自体は好きだし、いろんな形態に興味はある方だと思うけど、そんなに金はかけてられないから、近所の秘境を探索するようなこういう本は楽しかったりする。揉まれる側が施術者の力量を見抜く話はすごくよくわかる。揉まれの名人。それぞれのエピソードが短くて軽い。iPhoneサイ...ジェーン・スー『揉まれて、ゆるんで、癒されて今夜もカネで解決だ』

  • ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督『FLEE フリー』(2021年)

    2024/2/5・アフガニスタンで育ったアミンが亡命したときの様子を振り返る話。・アニメなのは個人が特定されると危険だから。・なので、本作のジャンルはドキュメンタリー。・一昔前のストップモーションアニメみたいに動きがカクカクしているけど、この不穏な題材にはあっている感じ。・政権に対して批判的な言動を示したという理由で彼の父親が逮捕されている。その後、どうなったかは描かれていない。・前に見た『生きのびるために』もアフガニスタンだった。あそこ、もう少し何とかならんのか。・とはいえ、これは本当にヨソの国だけの話なのかな。例えば、戦時中の日本はどうだったのか。・特高、五人組、非国民なんて言葉を連想すると、あんまり違わないような気がする。・歴史は繰り返すと言うし、日本人には亡命先も無さそうだから、なすがままになりそ...ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督『FLEEフリー』(2021年)

  • ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」『幸せの黄色い私たち』(DAY1)

    2024/2/4・堀井美香さんとジェーン・スーさんが語らうポッドキャスト番組「オーバー・ザ・サン」の公開イベント。配信チケットで視聴。・ほぼ二人の会話とリスナーからのメールだけで毎週毎週1時間前後のエピソードが配信されている。・親戚のおばさんたちの話を聞いているような安心感とは裏腹に、それぞれの固有スキルに基づいたモノの見た方や生き方にいちいち発見があって楽しい。・でも、聞き終わるころには全部忘れちゃってるくらいの軽さ。ストレスがない。・媒体が媒体なのでもっとこじんまりとしたイベントかと思っていたら、本会場の東京を含め、ライブビューイングで全国八か所同時中継。・ステージは回転するし、ミラーボール、派手なかきわり、演出効果もろもろ豪華。・普段は暗く人気のない通勤退勤路のお供として本ポッドキャストを聴いていた...ジェーン・スーと堀井美香の「OVERTHESUN」『幸せの黄色い私たち』(DAY1)

  • 劇団fireworks『≒生活。』

    2024/2/3・本来なら去年上演されるはずだった作品の振替公演。・札幌で暮らす以外に共通点のない人々が、ある出来事で知り合い、それぞれの生活を少し前進させる話。・地下鉄の再現度が高い。実写ならものすごい手間とお金がかかるようなことを演技と演出だけで見せる。・繰り返すことで生活のリズムも見えてくる。・そんな一地方都市の生活の断片をつなぐ前半。・札幌に住んでいる人なら、ああわかるわかると思える小さいエピソードがたくさん詰め込まれている。・それなら札幌に住んでいない人には伝わらないんじゃないかと言うのはだいぶん野暮で、そういうツッコミには「札幌に住んでいなくても、札幌に住んでいるような感覚を共有できるところがいい」と返せる。・当たり前の話だけど、人生は一回しかないので、自分が住んでいるところ以外には住むことが...劇団fireworks『≒生活。』

  • 「『池袋ポップアップ劇場 season2』Vol.11」

    『池袋ポップアップ劇場season2』Vol.112024/1/29・4団体の20分程度の短編演劇4作品を上演。シンクロ少女『レディ・オブ・イーストタウン』・余命幾ばくもない男が、同郷というだけでほぼ他人の元オリンピック選手に最期を看取ってもらおうとする話。・その奇妙な状況に至る経緯についてはほぼ説明がない。・元選手の女性は50歳を超えて、人生がうまくいっていない。身につまされる。友達できてうれしそう。・「タトゥーと人間性は関係ない!」。たしかに。・ああいう感じで元気なまま死ねるなら悪くなさそう。HYP39Div『万歳夫婦』・夫婦漫才の夫のほうが、妻への嫉妬を拗らせて離婚寸前になるが、妻が陰で夫に尽くしていたことを知って、漫才の本番中に和解を試みる話。・妻役の表情豊さんの声質、圧力がものすごく漫才師っぽく...「『池袋ポップアップ劇場season2』Vol.11」

  • ジェーン・スー『ひとまず上出来 (文春e-book)』

    ひとまず上出来(文春e-book)ジェーン・スー文藝春秋2024/1/28・ある中年女性の心と体に起こっていることを、力強く、かつ繊細に言葉にしたエッセイ集。・著者はジェーン・スーさん。よく出演されているラジオやポッドキャストを拝聴している。・特に通勤時と退勤時には大変お世話になっている。・「あの人の頭の中どうなってるの?」と言いたくなるような人が「まあ、こんな感じですわ」みたいなノリで頭をカパッと開けて見せてくれたような内容。・初期の本に比べてそこまでフックが効いた内容ではないんだけど、読み味が軽くて、次の用事があるまで延々と読んでいられる。・勝手に著者に対して親しみのようなものを感じているせいもあるけど、それにしても文章うまく、あこがれる。・書き出しが一番好きなのは、《あれ、歪んでいませんか?》の回。...ジェーン・スー『ひとまず上出来(文春e-book)』

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