chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
増田再起
フォロー
住所
品川区
出身
釧路市
ブログ村参加

2014/09/19

arrow_drop_down
  • プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」7

    ようやく坊守文子の身の上話が終わり二人きりになった妙子と奈美恵には足のしびれを隠す余裕はありませんでした。この騒ぎが久しぶりに会った二人の距離を縮めます。会うのは法事などの特別な日以外にない親戚同士、会話は近状報告的なものになりますが、日ごろ会わないという気安さが本音の話を引き出します。妙子には夫の正二の健康状態が気がかりでした。妙子「実はね・・・いや、いい。なんでもない」奈美恵「いやね、なによ言いかけて。溜まったものがあるんだったら、吐き出した方がいいわよ。お互い忙しくしてるんだから、何か聞いてもすぐ忘れちゃうわ」妙子「そうか、会うのは法事ぐらいなもんだものね、お互いに」奈美恵「そうよ。ここで吐いたものはお祖父ちゃんが全部持って行ってくれるわ」妙子「そうか、そうだね」妙子「実は・・・先生の事なの」奈美恵...プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」7

  • プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」6

    「ご住職はお元気ですか」「お元気でねえの」「ご病気ですか」「死んじゃったの」・・・この会話、2年前に住職を亡くなってから寺を訪れる檀家さんと絶えず行われてきたので、今ではその後の説明が立石に水です。奈美恵「・・・あのう、いつですか?」文子「もう二年前さ」奈美恵「ああ、そうでしたか」妙子「亡くなった原因は?」文子「脳溢血さ」妙子「あらまあ」文子「いやあ、人の命なんてあっけないもんだよ。檀家さんの葬式やってさ、炬燵で一杯やってたらコロッだもの。あとウントモスントモ言わねえんだから、まあまああっけないもんだ」奈美恵「そうだったんですか」妙子「あの、お幾つで・・」文子「ああ、七十五だ」妙子「あゝ、そうですか」奈美恵「早かったですね」文子「なに、飲んべえで高血圧だもの遅かれ早かれって感じだべさ」文子「まあ、逝くのは...プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」6

  • プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」5

    聖司が一服の為席を外したのと入れ替わりに正一の姪の赤坂奈美恵と義妹の角田妙子が凍えて走り込んで来ます。奈美恵「ああ、助かった」妙子「ウウ・・歯の根が合わないわ」何と言っても3月の北海道は東京の人間には応える寒さです。妙子「アーッ、火って有り難いわよね。フワって寒さから解放される」文子の声「失礼します」慌てて防寒着を脱ぎ、正座する二人。お茶うけを持った文子入って来て。文子「(居住まいを正し)本日は遠路はるばるご苦労様です。法要は十一時からですのでこちらでしばらくお待ちください」奈美恵「本日はよろしくお願いします」妙子「お願いします」まあ、型通りのご挨拶です。文子「寒かったしょ」奈美恵「ホテル出た時はすごく晴れてたからこんなに寒いとは思いませんでした」文子「放射冷却ってやつだ。お決まりだよ」奈美恵「ひさしぶり...プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」5

  • プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」4

    住職の様子を聞いた聖司への返答が「死んじゃったの」じゃそりゃあ驚きます。聖司「エッ・・・エエ―ッ!」文子「あれまあ、知らなかったのかい」聖司「ええ、初めて聞きました」文子「葬式には正一さんが来てくれてたから、てっきり・・ああそうかい、知らなかったんだ」聖司「ええ。ああ!知らぬ事とはいえ・・ご愁傷様です。・・・あのう、いつ?」文子「もう二年前さ」聖司「ああ、そうでしたか」ここを先途と住職の没後の苦労話が披露されます。文子「ちょうどコロナの最盛期だったから葬式も身内だけでひっそりとやったんだが、いやあ、人の命なんてあっけないもんだよ。人の葬式やってさ、炬燵で一杯やってたらコロッだもの。あとウントモスントモ言わねえんだから、まあまああっけないもんだ」聖司「あのう・・・どうして・・」文子「ああ、どうして死んだって...プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」4

  • プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」3

    暫くして玄関の引き戸が勢いよく開きます。その瞬間吹き込む風が音を立てます。誰か来たようです。聖司の声「今日は」遠く風の音。聖司の声「すいません・・・あの・・・どなたかいませんか」風の音。聖司の声「・・・(大きく)すいません!」文子の声「(大きく)ハーイ」聖司の声「(大きく)あのう、角田ですけど」33回忌の法事の一番乗りは施主正一の甥っ子の角田聖司です。余程寒かったと見えて入って来た聖司は手っ取り早く股火鉢ならぬ股ストーブで暖を取ります。この股ストーブってのが暖を取るのに手っ取り早いんです。接待に来た文子に慌てる聖司に。文子「いいからいいから、そのまんまでいいから。まだ寒いショ」聖司「・・ああ、そうですか。それじゃ失礼して」聖司、文子の言葉に素直に甘えます。この二人の関係は正造の葬式以来の付き合いですから3...プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」3

  • プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」2

    さてこの芝居の舞台は北海道のある町です。時は3月。暖冬とはいえ北海道ですから寒風が吹きすさぶ厳しい寒さの中、角田家の33回目の法事が執り行われようとしています。ここは角田家の菩提寺泉水寺。この寺は嘗て炭鉱で栄えた町にあったが、今は炭鉱の閉鎖と共に市内からのバスも1時間に2本という寂れた場所となっていた。時刻は午前9時。角田家の法事は午前11時予定なのでまだ角田家の者は来ていない。泉水寺の坊守の武田文子が武田家を迎える準備に控えの間に現れた。外では寒風が吹き、時折うなりをあげて通り過ぎる。寺内とはいえすっかり冷え切った控えの間は地元の人間にも寒さがこたえる。文子「うう・・凍れるねえたらしばれるよ・・・なしてこったらトコに生まれたんだべな、まったく」石油ストーブをつけ部屋を暖める文子。文子と角田家は長い付き合...プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」2

  • プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」1

    さてこの度の公演は角田家の先代当主角田正造の三十三回忌に集う五人の人間物語でございます。まず登場人物の紹介と参りましょう。まず法事が執り行われる菩提寺泉水寺の坊守(住職の奥さん)武田文子。演じますのは永井利枝〈劇団芝居屋)角田家本家長女故角田佳奈の娘、赤坂奈美恵。演じますのは増田恵美(劇団芝居屋)角田本家次男、角田正二の嫁角田妙子。演じますのは細川量代(劇団芝居屋)角田本家長女故角田佳奈の長男、角田聖司。演じますのは木ノ下敬志(劇団芝居屋期間限定劇団員)。角田家当主、三十三回忌施主、角田正一。演じますのは増田再起(劇団芝居屋)。この五人がお送りいたします。お楽しみに。プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」1

  • 劇団芝居屋第42回公演「通る道」

    昨日、劇団芝居屋第42回公演「通る道」がお陰様を持ちまして無事千秋楽を迎えました。短期間の公演ながらお陰様で大好評の内に幕を下ろすことが出来ました。御来場の皆様ありがとうございました。次回公演を楽しみに。一覧を見るカレンダー<<3月>>日月火水木金土12345678910111213141516171819202122232425262728293031劇団芝居屋第42回公演「通る道」

  • 初日打ち上げ!!

    昨日は劇団芝居屋第42回公演「通る道」の初日でした。初日と言っても今回は三日間公演という短期な公演という事もあり、公開ゲネもやったので実質的には二回公演となりました。いや、疲れましたね。とはいえ、この疲労感を吹き飛ばしてくれるのがお客さんの反応です。お陰様で喜んでいただきました。いや、その後の初日打ち上げのビールの美味い事。この上ありませんでした。さて本日は二日目。褌を引き締めて頑張ります。初日打ち上げ!!

  • 小屋入り

    この小屋は今を去る22年前に我が劇団芝居屋が旗揚げ公演をした劇場です。青雲の志を持ちこの小劇場から出発したわけですが、志の稚拙さに気づき迷走の22年です。でもね、今回は自信があります。ようやく迷走を脱却し、明快な結論を提供できるという自信を持つ作品ができました。1時間30分決して退屈させない自信あり。それにしても22年前からここの劇場は何一つ変わっていません。こんな事ってあるんでしょうか。周りは今も新造、新築のオンパレードなのです、ここの外景は22年前のままです。開催劇団の舞台写真が飾られた階段を下がっていくとそこがスタジオあくとれです。漆黒に塗られた壁は汚れが目立たないための配慮でしょう。確かにその目論見は成功しています。更に下って行くと劇場が現れます。初演の頃はこの小屋でも大きく感じたものです。でも今...小屋入り

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、増田再起さんをフォローしませんか?

ハンドル名
増田再起さん
ブログタイトル
序破急
フォロー
序破急

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用