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ただ好きだという、この気持ち。 https://kisschoko.blog.fc2.com/

お仕事系BL小説ブログ。医療系シリーズ中心に更新中。基本あまあま、時々じれじれヒリヒリ。R18あり。

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2014/06/22

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  • ◆ありふれた風景32(6-1)◆

    「すごい。美味しい」 心からそう言ってるのに、ハルタさんは疑わしそうな表情を崩そうとしない。「ほんとに?」 挙げ句の果てにそう問い返されて、俺はムキになった。「美味しいよ! 決まってるじゃん、ハルタさんがつくってくれたんだよ!? しかも、不特定多数のお客さんに向けてじゃなく俺に、俺のためだけにつくってくれたコーンスープだよ!? 美味しいよ、ものすごく!」 スプーン片手に言いつのる俺の剣幕に、ハルタさん...

  • ◆ありふれた風景32(5)◆

    そういうわけで、俺はコーンスープの調理にとりかかった。 この時期、生のスイートコーンは出回っていないので缶詰のコーン、それから牛乳と生クリームを使って、ポタージュ仕立てにする。 といっても作業工程は至ってシンプルだ。 一、コーンの水気を切って、フードプロセッサーにコーンと牛乳を入れて滑らかになるまで撹拌。 二、ザルでこしながら鍋に移し、最初に取り分けておいた粒コーンを加える。 三、中火にかけ、...

  • ◆ありふれた風景32(4-2)◆

    っていうのは今はおいといて。「店に出さない、のに、つくるの?」 戸惑いながら訊いた俺に、ハルタさんはこう言って笑った。「いわゆる裏メニュー、いや、賄いかな。うちの大事な店員さんに食べてもらう専用メニューだから」 これを聞いて、俺はとっさにハルタさんに抱きついてしまった。 そうしてエプロンをしたままの胸にほっぺたをつけて、こみ上げてきた言葉をそのまま口にした。 もう何回、何十回言ったか判らない、で...

  • ◆ありふれた風景32(4-1)◆

    コーンスープをつくる、と宣言したハルタさんに、俺はびっくりして問い返した。「それって冬のスープに新メニューが加わるってこと?」「いや、店には出さない」 ハルタさんは首を横に振って、そうして説明してくれた。今まで『もう一品』にコーンスープがなかった理由を。 ちなみにハルタさんはこういう説明がすごく上手だ。 多分、相手に合わせて言葉を変えて、一番伝わりやすい言い方をしてるんだと思う。それも無意識に。...

  • ◆ありふれた風景32(3-2)◆

    いや、もちろん旬はある。 店頭に出回るのはスイートコーンで、これはトウモロコシの中でも甘みが強い品種の総称だ。 そいつが一番美味しい時期は六月下旬から八月いっぱい。だから、季節のスープメニューに入れるとしたらその期間ということになる。 だが、湿度も気温も高くて二言目には暑いと言ってしまうような季節に、焼きトウモロコシならともかく熱いスープで、わざわざトウモロコシを摂取したいと人は思うだろうか。な...

  • ◆ありふれた風景32(3-1)◆

    コーンスープっていうのがな。正直、意表を突かれた。 もっともヒナタくんによると、コーンスープは毎年必ず入るけど、それ以外の種類も自販機によっては入ることもあるらしい。 だがそれは大体その年限りなのだそうだ。 ということはやはり、敵はコーンスープということだ。 で、そのコーンスープだが。 うちの店では「季節のスープ」と銘打って、年間通して何らかのスープを出しているけど、コーンスープだけはなかった。...

  • ◆ありふれた風景32(2)◆

    ハルタさんったら、俺、続けてちゃんと言ったのに。でも今はハルタさんのスープメニューで季節の移り変わりを実感してるんだよ、って。 なのにそれは頭から飛んじゃってるみたい。 自販機のスープ缶の話をしたらすぐ、近所の自販機を回ってきて、スープ缶を買ってきた。粒入りって書かれた、黄色い缶のコーンスープを。「敵情視察だ」 しかも本人は難しい顔をしてこんなふうに言う。それで俺はまた呆れてしまう。「ハルタさん...

  • ◆ありふれた風景32(1)◆

    俺の好きな人で、俺の店の唯一の従業員でもあるヒナタくんは、冬の訪れを飲料の自販機で知るのだと言う。「冷たい飲み物ばっかりだったのが、ちょっとずつあったかいのが増えてくんだ。コーヒーが一番早いかな」 そんなふうに話してくれたヒナタくんは、初めて出会った時から随分大人びた。 背丈も少し伸びたんじゃないかと俺は思うのだが、本人は伸びるような年じゃないと言って笑う。だが体格は確実に良くなった。それは俺の...

  • with、◆ファーストバイト(あとがき)

    というわけで終了しました、「with、」ハルヒナ編。いかがでしたでしょうか。 ほんとは二人の初えっち! とか! 書きたかったんですけど! でも計算してみたら、ヒナちゃんはまだ二十歳になってなかった。残念。 というかハルタさんがですね・・・。作中にヒナちゃんも言ってましたけど、大変頑固な人でしてね・・・。 あと1年くらいいいじゃん、もう一緒に暮らしてるんだし十八歳は突破したんだしさ、と、いくら作者が唆しても頑...

  • with、◆ファーストバイト(14)

    「・・・そっか」 じゃあ俺もハルタさんに保険証あげなきゃ、なんてまたバカなことを俺が考えてると知らず、ハルタさんは弁解する口調で言い募った。「ていうか大事だろ、保険証。きみね、今まで自分が持ってた保険証、ちゃんと見たことある? 『家族(被扶養者)』ってアタマに記載があって、『被保険者氏名』って欄にお父さんの名前があっただろ。・・・いや、あったんだよ! でもこれからは違う。きみのこと俺が引き取るっていうか...

  • with、◆ファーストバイト(13)

    「ふぁー・・・?」 また急に知らない単語が出てきて、目をぱちくりさせた拍子に涙がぼたぼたこぼれてしまった。ハルタさんが自分のエプロンの裾で、それをぬぐってくれる。「ファーストバイト。披露宴の演出だよ。新郎新婦が互いにウェディングケーキの一切れを食べさせ合うやつ。あれにも一応意味があるんだよ・・・ってヒナタくん?」 一般常識として知ってるだけだからね、と真顔で念を押されて、俺は思わず笑ってしまった。涙と相...

  • with、◆ファーストバイト(12)

    ぐすっ、と俺は鼻を鳴らした。何度も繰り返された否定の言葉がようやく頭にしみてきて、そうしたら余計に泣けてきてしまう。「急に、そんな、きちんと、されたら・・・突き放された、みたいな、これでもういいだろって言われてる、みたいな、気がして」 途切れ途切れにこう抗議したのは、だから、殆ど甘えてるみたいなもんだった。愚痴っていうか、言い訳っていうか。 そんな戯言、ハルタさんもまともに取り合わなくていいのに、...

  • with、◆ファーストバイト(11)

    「ハルタさん・・・」 なんだか泣きたくなってきた。なんで? って自分でも考えて、不意にひとつの考えに思い至る。そしたらもっと泣きたくなって、俺の眉毛と唇は自然に下がってしまった。「ハルタさんは、俺のこと、もう要らないの?」「えっ!?」 ハルタさんもさすがにびっくりしたみたいで、目を大きく見張って俺を見つめ返してきた。 その顔を見上げているともう我慢できなくて、俺はとうとうべそをかいてしまう。「ちょ、ち...

  • with、◆ファーストバイト(10)

    「あのね、ヒナタくん」 でもハルタさんは、俺がどんな反応を示すかなんて予想済みだったんだろう。俺が何か言うより早く、こう言った。今度は断固とした口調で。「三月からはもう、きみはバイトじゃない。うちの店の正規従業員だ。業務内容的にも就業時間的にも。俺は雇用主として、正当な給与を払う義務がある。福利厚生の面でもきちんと手続きする義務もある。わら、給与明細をみてごらん。ちゃんと引かれてるだろ、健康保険と...

  • with、◆ファーストバイト(9)

    「はいこれ。ヒナタくんのだよ」 ハルタさんはしばらく、俺に向かってそれを差し出した格好のままでいたけれど、いつまでも俺が受け取ろうとしないもんだから、こう言葉を足すと俺の右手を取って、それを持たせてくれた。 それ、っていうのは。「えと・・・?」 成り行き上、俺は自分の手に移されたものに視線を落とした。青くて小さいプラスチックのカードと、折り畳まれた細長い紙が挟まれた銀行の通帳へと。 ええと、と小声で...

  • with、◆ファーストバイト(8)

    こんなふうにして、ハルタさんの傍で過ごす二度目の三月が過ぎていき、そしてカレンダーは一枚めくれて、四月。 店のお客さんの顔ぶれにも少しだけ変化があった。 いかにも着慣れていないふうなスーツ姿を更にぐたぐたにした新入社員さんたち――って何故か百発百中で判っちゃう、不思議だねってハルタさんも言ってた――が仕事帰りに寄ってくれたり。 そういう人たちに、いらっしゃいませの代わりにおかえりなさいと声をかけたら...

  • with、◆ファーストバイト(7)

    って言うと、すごく可哀想っぽいけど。 でもほんとはそうじゃなかったってことも俺は知ってる。 被害者のまま、自己憐憫のぬるま湯に浸かって生きるのは、ある意味、ラクだった。 努力しなくていいから。自分を可哀想がっていればそれで良かったから。 ハルタさんに拾われた当初も、接客のバイトに甘んじてた間も、そのスタンスに変わりしなかった。ラクな方へ楽な方へ、って自分から流されていってた。それが習い性になって...

  • with、◆ファーストバイト(6)

    っていうのは置いといて。 手伝いレベルから脱した当初の俺は、単にハルタさんの邪魔をしてるだけだった。俺がいない方がきっとずっと作業は早くてラクなんだろうなって、実感としてそれが判った。 ハルタさんは俺を邪魔扱いしたりは全然しなかったけど、だから余計に身にしみた。 一日でも早くこんな状態を脱したくて、どうすればいいのか俺なりに考えた。 その結果トライしたことが正しかったのかどうかは判らない。けど、...

  • with、◆ファーストバイト(5)

    さらっと聞き流してしまいそうになるけど、これって大変なことだと俺は思う。 うちの店の客層、売れ筋、個人営業だからこそできること。そういうのをハルタさんは常に考えてるってことだから。 けど、そういえば料理そのものについてもハルタさんはそうだ。理詰めっていうか、理論先行っていうか。 ハルタさんにとって料理は「実験みたいなもの」なんだって。そういうとこも俺は好きだ。 随分脱線しちゃった。話を元に戻そう...

  • with、◆ファーストバイト(4)

    店としてはむしろ、これが目標なんだ。 このくらいのタイミングで値札を引っ繰り返してソールドにする。あるいは、明日のメニューに使い回せるくらいの仕込み段階で止める。っていうのが。 実際、ハルタさんはそうなるようにいつも調整して作ってる。季節とか気温とか、そういう要因も考慮した上で。 そういうのを俺は、調理場に立つようになってから初めて知った。 そりゃあ今までだって、売れ残りが賄いに回ってきたり、堀...

  • with、◆ファーストバイト(3)

    さて、ここで『もう一品』の基本情報をおさらいしてみると。 開店時間は十時半。だからハルタさんは五時半には起きて、仕込みを始めてる。 とはいえハルタさんは寝起きが悪いから、最初はぼーっとしてる。でもそれは受け答えだけで、手はきっちり動いてるのがすごい。 もちろん俺も同じ時間に起きて、ハルタさんと一緒に調理場に立つ。それでハルタさんが安心してぼーっとしていられるよう、気合いを入れて働く。 そして、開...

  • with、◆ファーストバイト(2)

    話を調理師試験に戻すと。 これぞ俺のバカさ加減の証明でもあるんだけど、何となく思い込んでたんだ。総菜屋さんで働くイコール実務経験、って。仕事の内容のことなんか、考えも及ばなかった。 一年前の三月初日。俺は高校の卒業式の後、そのまま家出してこの街に来た。そしてハルタさんに拾われた。住み込みのバイトっていう名目で。 その頃から確かに、漠然と考えてはいた。将来的には調理師免許を取りたい、って。受験資...

  • with、◆ファーストバイト(1)

    中学卒業以上の学歴と、飲食店調理場での二年以上の勤務経験。 アルバイトの場合は原則として週四日以上かつ一日六時間以上の勤務、そして「調理業務従事証明書」――職場の最高責任者による記入と実印の押印が必要――が要る。 って何の話かっていうと、調理師試験の話だ。それを受験するための要件。 ポイントは「飲食店調理場での勤務経験」って処。レジや接客の時間は、そこにはカウントされない。「うーん・・・ヒナタくんの場...

  • with、◆がらくた(あとがき)

    今回のお話、テーマは「ラブ増量」でした(失笑)。いや、ここんとこ、健全な話が続いてましたのでね。 でも本人が意気込んでた割には、終わってみたら大したことなかったような気がしてなりません。いかがでしたでしょうか・・・。 いえいえ、今回の真のテーマはラブじゃなくて、「ツンデレ忍足先生」と「黄昏れる佐上先生」ですから!(言い張る) やー、「誓うのは永遠じゃなく」の頃には、忍足先生のこんな姿を書くことにな...

  • with、◆がらくた(13)

    代わりにそう言い足すと、忍足はますます不愉快げに、眉間に皺を刻む。 しかし、肯定も否定もしなかったので、あー覚えてはいるんだなと佐上は一人頷いた。その訳知り顔が気に入らなかったらしく、忍足はじろりと佐上を睨む。「ていうか、少なくと俺に関しては逆効果。渉が欲しくて仕方なくなるだけ。ああそれとも、そういう俺をリクエスト?」 笑ってそう言ってやると、忍足はついにそっぽを向いてしまった。そんなわけあるか...

  • with、◆がらくた(12)

    佐上の下で何度も達して、もうへなへなになっていた筈なのに。 忍足は攻守交代すると言い張ってきかなかった。なので、上下を入れ替えてもう一戦。 それで二人とも力尽きて、手足をもつれ合わせたまま殆ど失神するようにして眠った。 その翌日も、前夜同様甘い時間が流れた――かといえば。「取り消さないからな」 シャワーを浴びて身支度を済ませた忍足は、いつもに増してとりつく島がなくて、しかも不機嫌だった。突っ慳貪な...

  • with、◆がらくた(11) ♥

    それからはスピードを上げ、同時に愛撫の濃度も上げて。 というよりも、否応なくそうなってしまって。「っあ、あ、ふ、っん、や、ひろや、そこっ、」「ここ?」「ちがぅ!」「知ってる。こっちだよね」「・・・あぁあっ!」 指と手のひらと唇と舌と歯と、それから欲望を漲らせた器官と。それら全てを使って愛おしむ。 自分と同じ器官が一揃い、愛する人にも備わっているということがとてつもない奇蹟に思える。 どこをどうすれ...

  • with、◆がらくた(10) ♥

    やはり顔を背けたまま、忍足はこくこくと頷いた。それから急に視線を上げ、険のある目つきで佐上を睨み上げてくる。「だから訓練しようと思ったんだ! こんなじゃダメだと思って! それにおまえだって、一人になりたい時くらいあるだろ!? そういうのも受け入れなきゃって、」「・・・あんたね」 忍足なりに危機感を抱いて、どうすればいいのかを一人で悶々と考えてその挙げ句のことなのだろう。 それが判っていて、判っている...

  • with、◆がらくた(9) ♥

    「おまえがっ、」「ん?」 不意に切羽詰まった声音を上げられ、佐上は顔を上げた。両手の指先はまだ、忍足の胸板の上に置いたままだ。正確には、つんと屹ち上がった尖りの周囲で小さく淡く色づく縁に。「俺、何か悪いことした?」「違っ・・・そ、じゃなくて」 いやだから可愛すぎるから。そう言いたいのをこらえ、佐上は忍足の言葉を待つ。指だけをゆるゆるとまるく動かして、愉悦とともに引き出そうとする。 この分だと相当とん...

  • with、◆がらくた(8) ♥

    タクシーに揺られていた時は、乱暴にむさぼらないと気が済まないと思っていたのに。 実際にベッドにもつれこんでからは、自分でも可笑しくなるくらいスローな動作で、佐上は忍足に触れていった。 求めてくる舌先をいなして、ついばむようなキスを繰り返す。唇、額、瞼、耳朶、こめかみ、そしてまた唇。「んっ・・・や、はやく、」 焦れて波打つ身体をなだめながら、佐上は忍足の鼻先に自分のそれを擦りつけた。猫の挨拶。「俺が...

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