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Kalanmaniaへの道 https://kalanchoideae.blog.ss-blog.jp/

花卉と多肉植物にまたがるカランコエのマニアを目指して、気になる事項について調べた内容を綴っています。

もともと動物の分類額に興味を持っていましたが、ふとしたきっかけで興味を抱いたカランコエについて、疑問に思った事項を手探りで調べています。特にブリオフィルムとの関係について、最近の研究も踏まえて整理していきたく思っています。 多肉植物として扱われている腫の分類についても、徐々に調べたいと思います。

channa
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2014/03/23

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  • 生成AIの現時点の実力

    今の勤め先で新たな方針として、生成AIを使用した業務の効率化が挙げられた。会社ではGPT-3.5、GPT-4を使用していて、個人的にはExcelでよい関数やVBAを尋ねて重宝している。しかし一方で私の全く知らなかった情報も提供してくれることもある。例えば私の住んでいる私鉄の駅がJR東日本の埼京線にあるというようなことだ。住んでいていつの間に変わったのか全く気付かなかった。というようなパラレルワールド的な回答までしてくれる優れたものだ。 さて、自宅のPCではBingをブラウザとして使用していて、ここでもGPTを使用できる。Microsoft Copilotというのがそれで、GPT-4とBing検索を活用して回答を生成している(と、本人が回答した)。そこでこれがどのくらいの情報を提供してくれるのか色々質問して試しているのだが、Googleに比べてBingの検索機能が劣っているように感..

  • 暖冬の恩恵

    前年の冬季は厳寒で3ヶ月間に多くの弊害をもたらし、灼熱の夏季はこれまた多くの犠牲者を輩出した厳しい一年であった。その埋め合わせをするかのようにこの冬は暖かく、厳しい期間を乗り切った植物たちにとっては福音である。まだ安全圏に達するまでは1ヶ月半ほどあるとはいえ、今から氷点下になって氷が張ることはなさそうである(あくまで埼玉南部基準の話です)。ベランダで計っている気温の記録を見ると、6年振りに氷の張らない冬となる見込みだ。むしろ急な気温上昇と日射により、ベランダに置いているフレームのビニールシート内で高温障害にならないか心配である。これはこれで過去にも大きな犠牲を輩出したのではあるが、絶対的な低温のリスクと比べればまだ対処のしようはある。 暖冬のおかげで今季は様々な花が比較的早めに咲いた。いくつかは交配を試みていて、いずれ結果についても書いてみたいと思う。何しろビニールの中で真冬..

  • ガストニス・ボニエリ・アンカイジネンシスの謎

    前回はSmith教授たちのガストニス・ボニエリの論文を紹介したが、そのなかで変種のアンカイジネンシスKalanchoe gastonis-bonnieri var. ankaizinensisが認められずにシノニムとされたことを報告した。今までネット上や現物を見まわしたところ、あくまで見た目であるがガストニス・ボニエリには3つのタイプがあるように見受けられる。ひとつは日本では珍しい斑が少ないタイプ、それから国内で一般的に見られる密な斑のあるタイプ、そしてまず見たことがないほぼ無斑のもの(おそらくマダガスカル北東部産)の3タイプである。このうち密な斑のものがアンカイジネンシスだと思っていたのだが、認められないとすると原記載から見直してみる必要がある。 ということで、またいつものBoiteau & Allorge-Boiteau (1995)を見てみる。この本にアンカイジネンシス..

  • ガストニス・ボニエリの謎

    ガストニス・ボニエリK. gastonis-bonnieriの分類と命名に関する論文が2020年のBradleya誌に掲載された。その内容を今頃やっと確認したのだが、いろいろと面白い発見があったので記録しておきたい。 対象の論文は下記のものである。 Gideon F. Smith, Ernst Wolff, Luce Thoumin The taxonomy and nomenclature of Kalanchoe gastonis-bonnieri Raym.-Hamet & H.Perrier (Crassulaceae subfam. Kalanchooideae), with biographical notes on Gaston Eugène Marie Bonnier (1853–1922).  Bradleya 2020 (38), 94-103 ..

  • 熱波到来!! 燃える世界

    近年月に1度しか更新していないとはいえ、今月でこのブログも10年経った。思えば植物のことは何も知らなかったが、カランコエだけは詳しくなった。ことカランコエに関しては市販の雑誌・書籍が当てにならないので原記載をはじめとした論文に当たるようになったし、自生地も訪れて彼らの生きている環境を(少しだけ)知った。未だ興味は尽きないので、今から新たな10年に一歩踏み出したい。 そんな10年の節目というには皮肉だが、今年は先に記事でも書いたように10年に一度の寒波で植物たちは大過を被った。ディンクラゲイ、ミロティ、アルボレスケンス、フミフィカのダメージが大きかったことは先般既に報告したが、それまでの経験からするとセイタカベンケイ、ガストニス・ボニエリ、ミニアータ等も寒さには弱い。他のホビィストからの情報ではボグネリやヴィギエリもセンシティブとのことだが、我が家ではダメージは負うものの何とか..

  • ローズ門派の平定 その③

    これまでの2回で2つの論文を紹介し、ロゼイ種群も大分整理がついてきた。そして今回紹介する3番目の論文で殆どの問題が解決する。ここで取り上げられた問題はロゼイと呼ばれるカランコエに2型があることと、知られざる子宝草Kalanchoe bouvieriの正体についてである。 今度の論文はこれである。Shtein, R. & G. F. Smith(2021)The real identity of the Malagasy Kalanchoe rosei (Crassulaceae subfam. Kalanchooideae) finally resolved, and the description of a new species, K. perrieri.Phytotaxa 502 (3): 259–276 ロゼイKalanchoe roseiは1910年にPerrier ..

  • ローズ門派の平定 その②

    前回に続いてカランコエ・ロゼイ種群の謎を解き明かす論文の第2弾、Kalanchoe rosei var, variifoliaについて見ていきたい。例によって、まず論文のタイトルと掲載を紹介する。 Shtein, R. & G. F. Smith(2021) A new status for two varieties previously included in the southern Malagasy Kalanchoe rosei, now included in K. variifolia (Crassulaceae subfam. Kalanchooideae) Phytotaxa 496 (3): 228–244 さて今回は前回有効であると紹介した変種K. rosei var. seyrigiiと近縁のK. rosei var. variifoliaとの関..

  • ローズ門派の平定 その①

    いわゆる子宝草(葉縁不定芽を形成するBryophyllum亜属)からセイロンベンケイソウやガストニス・ボニエリの仲間を除いたInvasores節の中で、分類的に一番混沌としているのがロゼイKalanchoe roseiの一派である。ロゼイといわれている披針形の葉の植物はタイプ標本とどういう関係なのか、同様に変種のseyrigiiとは何なのか、等々問題山積で解決などしないかのように見えた。ところが2021年に事態は急速に進んだ。Ronen Shtein & Gideon F. Smithのコンビがロゼイ種群に関する論文を3篇続けざまに発表したのだ。 ロゼイ種群の分類学的問題は複雑なので、3つの論文を通しで読み解いていかないと理解がおぼつかない。論文は細かい問題にも触れていて、全部を網羅して紹介するのはちと難しいのだが、個人的に面白いと感じた部分を中心に要旨を紹介したいと思う。この論..

  • 所は何処、シコロベンケイ

    前回は一般的な種であるシコロベンケイKalanchoe daigremontianaが野生植物としては絶滅危惧種であったという、たいていの人にはどうでも良いが一部の人間にとっては衝撃的な内容の頭出しをした。また文献と標本から知られる採集地は下記の5ヶ所であり、このうち最後のIsaloとMakayは山地であるため、具体的な地名としては3ヶ所しかないということを述べた。 Mont Androhibolava (Onilahy) Marosavoha (Onilahy) Fiherena(na) river  Isalo Makay では具体的にその産地について見てみよう。前回述べたように具体的な産地名としては3ヶ所が知られている。しかし現在の地図上では正確な位置を知るのは難しく、仕方ないので大体の場所を地図にプロットしてみると、下記のようになる。地図の下半分を横切ってい..

  • シコロベンケイのバラード

    「嘘も100回言えば真実となる」法則はこの3年間の経験でよく理解できたと思うが、カランコエの世界でもそれより以前から間違いがまかり通っている。当ブログでも何度となく皮肉っている例で言うと、シコロベンケイの標準和名がコダカラベンケイソウなのだが、子宝草Kalanchoe laetivirensのことをコダカラベンケイソウと呼ぶことが多発するに及び誤認が定着してしまった。甚だしくは娘が中学生の時の教科書にも子宝草がコダカラベンケイソウとして扱われていたし、NHKの植物番組でも専門家の先生が思い切り間違っていた。こんな初歩的なことも巷では間違って流布されている現状がある。 さて、話は変わって、ペットとして人気のあるゴールデンハムスターは学術的に捕獲されたことは数度しかなく、現在飼育されているものは1930年に捕獲されたものの子孫である。生息地のシリアが危険な地域のため、野生個体群の研..

  • 子宝草とつる性カランコエの再編成(後編)

    前回はRonen Shtein & Gideon F. Smith (2021)のつる性カランコエの論文から正規に記載されたBryophyllum亜属の下位分類を紹介したが、今回は新たに記載されたInvasores節Vilana列の構成種について説明したい。 Vilana列とは簡単に言うと従来のbeauverdii種群である、つまり黒錦蝶Kalanchoe beauverdiiとして一括りにされてきた植物群である。かなり以前、当ブログで子宝草目録と銘打ってこの仲間を紹介したが、最終的に整理された内容はそれとは異なっている。その時の説明と比較して相違点を解説していくと却って混乱を招くこととなりそうなので、ここでは最新の分類のみを記そうと思う。 さて今回の再編でKalanchoe beauverdiiは4種に別れ、その他に他列の種との自然交雑種が2種あるのでInvasores..

  • 子宝草とつる性カランコエの再編成(前編)

      昨年のブログでも触れたように2021年はBryophyllum、それも子宝草の仲間に興味を持つ人間にとっては革命的な年であった。その口火を切ったのはつる性カランコエのレビジョンを扱った下記の論文である。 Ronen Shtein & Gideon F. Smith (2021) A revision of the climbing kalanchoes (Crassulaceae subfam. Kalanchooideae) of Madagascar including the description of Kalanchoe sect. Invasores and K. ser. Vilana Phytotaxa 482 (2): 093–120. この論文は論題にもあるように、つる性カランコエを扱いながらもBryophyllum亜属の分類体系の再構築に手を..

  • 寒波襲来!! 結晶世界

    世界各地の気温の変化を見ると上昇しているところもあれば下降しているところもあるが、かつての地球温暖化という言葉が近年は気候変動という言葉にすり替えて表現されているに苦笑してしまう。全体的には温暖化傾向にあるのかもしれないが、1850年代に小氷期が終わった地球が二酸化炭素と関係なくゆっくりと温暖化していくのは道理である。温室効果ガスのせいで温暖化していくのであれば、ノーカーボンなどとケチなことは言わずに温室効果ガスの90%以上を占める水蒸気を何とかしたらどうか。人間の活動と関係ないので、誰かの金儲けのネタにはならないが。。。 とかいう与太話はさておき、昨年・今年の冬の寒さを思うとカランコ趣味も不安定この上ない。ここ10年ほど冬のベランダの気温を見ているが、大体一冬に3回ほど氷が張る。例外的に2018-19の冬は氷が張らなかったし、翌年もかなり暖冬であった。大体氷が張る時期というのは..

  • ツィンギ・ドゥ・ベマラハのカランコエ

    マダガスカルを代表する動植物は日本においてもいくつか有名なものがあるが(バオバブやニチニチソウ、キツネザル、カメレオン、ヒルヤモリ、マンテラ等)、景観となるとムルンダヴァのバオバブの並木道とベマラハ国立公園のツィンギくらいしか知られていないのではないだろうか。ベマラハ国立公園はマダガスカル中西部に位置し、石灰岩が雨に侵食され鋭く尖った針の山のような景観が有名である。これをツィンギ・ドゥ・ベマラハと呼び、アクセスが致命的に悪い地域ではあるが、比較的よく知られた場所である。勿論、というか残念ながらというか、訪れたことはない。 ツィンギは刃物のように研ぎ澄まされており、同様な地形はマダガスカルの他所でも見られるが、ここは国立公園全体だと15,7000 haといったとてつもない規模である。このカルスト台地では十分な土壌が確保できないため、特殊な植物が見られるようだがカランコエとしては、5..

  • ストレプタンサとセラタ/学名の話題

    子宝草ではないが、同じブリオフィルム亜属で個人的に好きな種にストレプタンサKalanchoe streptantha Bakerがある。基本的に黄花の植物と思われているが、葉が短めで赤系の花のタイプも知られている。植物の学名は上記のように属名+種小名+記載者名で表すのが一般的であるが、一般読者向けの書物やブログでは記載者名は省略していることが多い。今回の話題はストレプタンサの記載者名の部分についての話である。園芸の世界でこの手の話はどうでもよいと思われているのか、興味を持つ人も少ないようだ。私は下手の横好きで園芸の世界に片足を突っ込んでいるのだが、元の趣味が動物なので分類学的な研究史と学名の変遷等にはついつい興味を覚えるので、お付き合い願いたい。Smith & Figueiredoの2019年と2021年の論文から拾った話題を紹介したい。 さて、ストレプタンサは1887年にBak..

  • 葉縁不定芽と交雑の方程式

    タイトルは洒落ただけでここで方程式を提示するわけではないが、子宝草同士の交配と不定芽形成について数少ないサンプルからオハナシを組み立ててみたい。 カランコエ属の中でもBryophyllum亜属同士の交雑品種はあまり出回っていないが、その中でも(個人的に子宝草と呼んでいる)葉縁不定芽を形成する種の交雑種は更に少なくなる。交雑品種を作出するのは主として花ものが多いため、商売にならない子宝草は交配することもないのだ。とはいえ我々はホートニィや不死鳥Kalanchoe x houghtonii(錦蝶K. tubiflora × シコロベンケイK.daigremontiana)という有名な人為交配の例を知っている。さらに自然交雑種としてマダガスカル南部から南西部にかけて発見された種としては、K. x lokarana, K. x richaudii, K. “Rauhii”, K. x p..

  • 錦は二色か

    最近はそうでもないのかもしれないが、昔はサボテンや多肉植物の斑入りというと「○○錦」という名が付けられていた。緑地に白か黄の斑が入って「錦」というネーミングも過剰だが、斑入りは華やかだという事なのであろう。カランコエもその例に漏れず、胡蝶の舞錦とか唐印錦、ベハレンシス錦、ファリナケア錦などいくつかあるが、何故か元の植物と違う種の斑入りに「錦」を付けた非常にわかりにくいネーミングとなっている。例外的に月兎耳錦と不死鳥錦は本当に月兎耳と不死鳥の斑入りである。 というわけで、今回は不死鳥錦について考えてみたい。 不死鳥錦は園芸品種なので、まずはICNのサイトで調べてみる。ICNはベンケイソウ科の栽培品種のセミオフィシャルな登録機関として機能しているようなので、学名はここのものに従うことにする。不死鳥錦を確認する為Kalanchoe x houghtoniiの項を見ると、品種とし..

  • 不死鳥のクラスター#3

    Shtein et. al.(2021)の論文中で不死鳥を含むホートニィKalanchoe x houghtoniiが4つのタイプに分かれると述べているので紹介しているわけだが、グズグズしているうちに3回目になってしまったので、今回で残り3タイプを一気に紹介する。 ■Morphotype B Baldwin(1949)が不稔性とした3倍体の交配種に該当する。葉身は三角形~卵形で、他のタイプや親植物より小型である。そのため一葉当たりの不定芽生産数が少ないので、スペインでは帰化しているという情報があるもののMorphotype Aより侵略性は低い。(「他のタイプや…」と書きながら何故「Morphotype Aより」としているのかは、下記の各タイプを参照。)花色はマゼンタというよりはオレンジ色が強い。 葉の両面や葉柄にも斑がある。若いときはシコロベンケイのように対生であるが、..

  • 不死鳥のクラスター#2

    前回に引き続き、今回はShtein et. al.(2021)の論文をもとにKalanchoe x houghtoniiの4つのタイプについて述べていく。最初に名前について整理しておきたいのだが、いわゆる「不死鳥」の学名はKalanchoe x houghtoniiということになるが、Kalanchoe x houghtoniiの和名というか栽培品種名は「不死鳥」ということにはならない。イコールで結べない訳は、「不死鳥」の名はKalanchoe x houghtoniiの中のひとつの品種につけられているに過ぎないからである。 例えば柴犬も秋田犬もトイ・プードルも学名はCanis lupus familiaris(取りあえずここではオオカミの亜種として表記)だが、Canis lupus familiarisの和名は柴犬ではなく「イヌ」である。その下の品種名があるだろう、と反論される..

  • 不死鳥のクラスター#1

    何年か前に千葉県印西市の某ナーセリーを訪れたとき、実感を伴って「温室の雑草」という言葉を認識した。そのときベンケイソウ科中心の温室は、夥しい数のキンチョウ・シコロベンケイ・不死鳥に占拠されたかの如き状態であった。個人的には笑みがこぼれてしまったのだが、高価な多肉植物趣味の人々から疎まれる理由も理解した。しかしながら、これらの植物についてどれだけの知識が普及しているかと考えると、少なくとも一般書店に並ぶような書籍には殆ど情報がないことに気づく。 多肉植物の栽培ではなく植物自体の説明を試みるような本で、これらのカランコエを扱っているものは皆無に等しい。それもその筈で、未だに分類学的な研究はほとんど進んでいないのだ。例えばキンチョウやシコロベンケイの地域による種内変異さえ、まともな研究はない。そんな中、不死鳥というよりKalanchoe x houghtoniiについては、少し前のクロー..

  • クローンコエ顛末記2021

    以前の記事で紹介したResende&Viana(1965)の論文では当時KalanchoeとBryophyllumを別属として扱う見解があったことから、シコロベンケイ×ラクシフローラをBryophyllum属の2種の交配株と見なしてBryophyllum ×crenodaigremontianumと呼んでいた。これはResende&Viana自身が正規の学名ではないと明記しているが、この名をKalanchoe属に変更するとKalanchoe ×crenodaigremontianaとなる。これをどう勘違いしたか巷のデマではKalanchoe ×crenatodaigremontianaと読み違えている。 そのこと自体は横目で流すとして、2020年に上記論文も参照してSmith(2020)はクローンコエを交雑種とした。その後約13ヶ月経ってクローンコエは再び独立種に戻った(Shte..

  • クローンコエ顛末記2020

    子宝草=クローンコエについては、今までこのブログで何回か「シコロベンケイKalanchoe daigremontiana とラクシフローラ(胡蝶の舞)Kalanchoe laxifloraの交配種」というISI(International Succulent Introductions)が流布したデマについては全否定しておいた。興味のある方は下記のリンク先を参照願います。 クローンコエ ~神話の崩壊~ https://kalanchoideae.blog.ss-blog.jp/2017-10-14 子宝草/クローンコエの真実を求めて(前編) https://kalanchoideae.blog.ss-blog.jp/2019-07-26 子宝草/クローンコエの真実を求めて(後編) https://kalanchoideae.blog.ss-blog.jp/2019-0..

  • 胡蝶の夢

    ブリオフィルム亜属Bryophyllumというよりその中の子宝草の仲間(Invasores節)で、最も好きな種であるラクシフローラKalanchoe laxifloraはマダガスカル中部から中南部にかけての中央高地帯に分布している。これと離れて南東部のタウラニャロTaolagnaro(フォール・ドーファン)付近からも記録があるが、これはKalanchoe ×lokaranaの誤認と思われる。K. ×lokaranaの原記載(Descoings, 2005)によるとラクシフローラと何かの交配種であろうとされているが、個人的におそらく両親はフェッシェンコイとマルニエリアナではないかと踏んでいる。このK. ×lokaranaにも2,3の型が知られており、以前子宝草目録で触れたサン・ルイ山Pic Saint Louisのものもその1型であろう。 近藤ほか(1983)によると、ラクシフ..

  • ウェンディの翼(後編)

    前回は個人的に花もので最も心惹かれるウェンディについて述べてみた。少し乱暴にまとめると、 ウェンディKalanchoe‘Wendy’(=‘Pearl Bells’一重)サニーバルーン(サニーデイ)Kalanchoe porphyrocalyx‘Sunny Balloon’(=‘Pearl Bells’八重、‘Dolly’)ということになる。 そしてウェンディの片親Kalanchoe porphyrocalyxは2変種が知られる。 ① Kalanchoe porphyrocalyx var. porphyrocalyx ② Kalanchoe porphyrocalyx var. sambiranensis このK. porphyrocalyxは今までBryophyllum亜属であったが、昨年変更があったので記録しておきたい。今まで当ブログで度々引用してきたBoi..

  • ウェンディの翼(前編)

    Kalanchoeという属名が女性名詞のためか(どうか分からないが)花ものカランコエの園芸品種名には女子名が使われることが多く、特にヨーロッパ物はその傾向が強い。これはK.blossfeldiana交配種に限らず、ウェンディ、テッサ、ミラベラなど下垂型の花のカランコエでも同様である。ピーターパン繋がりでもないだろうが、ウェンディの他にティンカーベルという品種もあった(過去形)。 ここはいずれ確認していかねばならないと感じているのだが、どうやらウェンディのKalanchoe ‘Wendy’という名は国際栽培植物命名規約上で公式な名になっているようである。そして以前何度かこのブログでも書いているようにウェンディはK. miniata × K. porphyrocalyxの交配種とされているが、表現形質としてK. miniataの影響は見て取れない。ウェンディと殆ど同じ(全く同じ?)品..

  • 葉形成熟

    現生両生類は無尾目・有尾目・無足目の3目に分かれる。具体的にはカエル類、サンショウウオ類、アシナシイモリ類である。基本的には卵から孵化した時点では幼生で、その後生長し変態して亜成体となり、さらに成長を続けるが、直接発生の種など、このパターンの例外も多々ある。例外の一例として、有尾目のうち一生水生生活をおくる種に見られる幼形成熟neotenyがある。幼生の形のまま、あるいは部分的に幼生の特徴を残したまま性成熟し繁殖可能となる現象で、有名なのはメキシコサラマンダーである。(この種の幼形成熟個体は近隣に生息するその他の数種をひっくるめてアホロートルと総称される。)オタマジャクシが変態してカエルにならず、オタマのままで繁殖するというのは知られていないが、有尾目ではそのような現象が何例も知られているのだ。 上記はカランコエと何の関係もないが、タイトルは両生類の幼形成熟とは裏腹に若いときと成熟し..

  • みそさん、ねこさんへのお詫びと回答

    このブログにコメントがつくことは少ないので油断していたのですが、立て続けに2件のコメントで不義理を働いてしまいました。「みそ」さんという方からコメントを頂いて、それに気づいたのは2ヶ月半後でした。更に、「ねこさん」のコメントには4ヶ月半も気づきませんでした。お二方とも気づいたときに返事は書いたのですが、なにしろ相当経ってからの返事なので見られない可能性もあると気づき、ここに概要のみ再録する次第です。 ちなみに以前はコメントがつくとメールが飛んできたのですが、So-netブログからSSブログに変わった際にメールアドレスをIDにしているため通知機能が使えなくなっていたのでした。ということが昨夜分かりました(遅かったですね)。 ≪みそさんのコメント≫ 子宝草目録2-① Suffrutescentes/胡蝶の舞とその仲間(https://kalanchoideae.blog.ss-b..

  • 街角のカランコエ;2021年の印象

    2020年、2021年とどこかがボロ儲けした煽りで大きな社会変革があったわけだが、季節性の流行り病の10~20%程度の伝播でパンデミックとうそぶかれて納得してしまうのは人が良いのか、バカなのか。世界中が大変なことになっているという喧伝はあったものの、数字を冷静に見ると実際大変だったのは欧米と一部の国だけではなかったのか。誰かさんの言う「ファクターX」というのは日本ではなくて、逆に欧米と一部の国が流行してしまう素地として持っている「ファクター」ではないのか。何しろ世界的に見れば日本は(自画自賛ぶりとは裏腹に)特別に成績が良いわけでもないし。 脱線が過ぎてしまうのでこれくらいにして、ともあれこの2年間は何とはなしにあたふたと過ぎてしまった感が強い。私がボケているだけかもしれないが、2020年と2021年の区別がつかないような感覚がある。個人的には失われた2年間である。パノプティコン(..

  • 2021年記載種総括

    少し前に「カランコエとブリオフィルム⑦ ハーフウェイ・システマティックス」という記事を書いて、今年はカランコエ属下位分類が激動の年であったことを紹介したが、新種記載もまた続々となされた。新種記載された種はInternational Crassulaceae NetworkのHPでRecent Updatesをチェックしていると分かるのだが、ここには新規記載種だけでなく学名が変更となったもの(先日紹介したK. humilis→K. prasinaのようなパターン)も含まれている。そこまで手を広げると収拾がつかなくなるので、ここでは新種記載されたものだけ取り上げたい。個人的なメモとも言えるが、もとより世界中の学術雑誌を網羅して監視しているわけではないので、目についたものだけである。動物分類学だとZoological Recordで探るのが定番なのだが、植物ではIndex Kewensis..

  • バラとローズのエニグマ(後編)

    前回は知られざるK. roseaの素性と、それに絡んで未だに知られざるK. carneaについても触れた。今回は更に知られざるもうひとつのK. roseaの話から入る。 Chevalierは1898-1899年の探検旅行にてフレンチ・スーダン(現在のマリ)で高さ1m、芳香のないピンクの花の咲くカランコエを発見し、K. rosea A. Chev.(1920)として記載した。明らかにKalanchoe rosea C.B.Clarkeの存在に気付かずに命名したもので、ホモニム(同名異物)となり不適格となる。しかしながらChevalierの原記載は非常に短いということはあるにせよ、原記載としての要件は満たしている。 現状はDescoings(2003)では保留扱い、the African Plant Databaseでは不適格、IPNI(the International ..

  • バラとローズのエニグマ(中編)

    世に蔓延るデマは人々の判断を狂わせ、亡国へと導く悪質な要因である的な言われかたをしているこの頃だが、確かに注射をめぐるデマには個人的にも辟易している。厚生労働省のHPを注意深く見ると注射したからと言って感染を防ぐ臨床的な根拠はまだなく、「(注射には)感染症の発症を予防する高い効果があり、また、重症化を予防する効果が期待されています」という書き方をしている(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0011.html)。「感染症の発症を予防」ということは感染しても発症しないという事であり、感染そのものの予防ではない。実際上記のサイトを見るとこの後に、「発症予防効果」「重症化予防効果」「感染を予防する効果」と説明が続いている。そしてこう書いてある「感染を完全に予防できる訳ではありません。ワクチン接種にかかわらず、適切な感染防止策を行う必要があります」..

  • バラとローズのエニグマ(前編)

    このブログでも最近度々名前が出るGideon Smith氏は南アフリカのネルソン・マンデラ大学教授で、アフリカ南部の多肉植物の権威と言っても良い存在である。アロエやアフリカ南部のベンケイソウ科のマニアならその名を聞いたことがあると思う。最近はマダガスカル産を含むカランコエ属にも手を伸ばし、多くの成果を発表している。そんな中で気になる論文に目を通していこうと思うのだが、なにしろ300編を超える論文を記している猛者で現在も毎月のように新たな論文を発表しており、後を追うのも容易ではない。なんとか個人的に興味のあるBryophyllum亜属だけでも見ていくと、このところ分類学的に外せない論文が目立っている。順を追って頭を整理していこうと思い、今回はこの論文を取り上げてみた。 Smith et Figueiredo, 2019. Aspects of the nomenclature of ..

  • ミニアータ系とは?

    最近のNHK趣味の園芸のテキストは少なからずマニア趣向な規格があったりしてなかなか楽しいが、以前当ブログでも触れたように2000年代のカランコエの記事にはなかなかマニアックな種をさり気なく載せていた。ALPガーデンの小林先生が執筆していたので、一般には入手し難いものもマニア向けサービスのように見せてくれていたのではないかと思う。 この時代のテキストには下垂型の花を咲かせる園芸品種も多数載っており、私にとっては垂涎の的だった(のだが入手できずに終わっている)。それらの品種を分類するのに「マンギニー系」とか「ミニアータ系」という言葉が使われている。これは品種開発時に交配する片親がマンギニーK. manginiiやミニアータK. miniataということである。マンギニーは多肉植物としても売っている紅提灯のことで、これを親に持つ園芸品種はテッサやミラベラなどのメジャーどころや名の分から..

  • カランコエとブリオフィルム⑦ ハーフウェイ・システマティックス

    2年前(2019.11)カランコエとブリオフィルムの6番目の記事を書いたが、最近になってその後の展開があった。まだ進行中で二転三転しそうなのだが、いつまで待つと一段落つくのか分からないので今回は中間報告的な内容となる。また、下手に詳しく紹介すると後々かなりの混乱を招く恐れがあるので、簡易な報告としたい。 前回の紹介論文(Smith et Figueiredo, 2018)以降にSmithを中心とした論文が幾つか出版されており、カランコエ属の下位分類が大きく変化しつつある。今回の紹介は2021年7月時点での状況である。 今まで当ブログではカランコエ属の下位に3節Section(Kalanchoe・Bryophyllum・Kitchingia)があると説明してきた。一方この3者を亜属Subgenusとする説があり、先のSmith et Figueiredo(2018)は亜属と..

  • ファングの学名

    最近はテレビを中心としたメディアの(垂れ)流す情報と違うことを言うと「陰謀論」と見なされ、その情報は嘘で発信者はトンデモ扱いされる風潮となっている。陰謀論は恥ずべき事で、相手にするのは低所得の頭の悪い人々だそうだ。実際大衆がそんな風潮に洗脳されるほど愚かだとは思っていないが、陰謀論の中にはトンデモなものがそこそこ混じっているのも事実だろう。故意なのかもしれない。 カランコエに限って言えば、当ブログも一般に流布している情報と違ったことは多々言っているので、陰謀論と見なされそうだ。というわけで、以下を信じるか信じないかはあなた次第、とでも言っておこうか。 さて、多肉植物として時々売買されているパープルストライプが美しいモザンビーク産のカランコエは、一般にフミリスKalanchoe humilisとされている。これが日本に紹介されたのは2002~2003年ごろと思うが、当時はフィゲ..

  • チンバザザ動植物公園のカランコエ

    マダガスカルの首都、アンタナナリボの中心地から南へ約2.5Kmに位置するチンバザザ(ツィンバザザ)動植物公園Parc Botanique et Zoologique de Tsimbazazaは、以前紹介したトリアラのアンツカイ樹林公園と並ぶ同国の2大植物園のひとつである。というよりマダガスカルでその他に公共の植物園があるのかどうか知らない。チンバザザでは彼の国の代表的な動物群であるキツネザルの仲間は充実した種数が見られ、小さな爬虫類館ではホウシャガメAstrochelys radiataやクモノスガメPyxis arachnoidesといったカメマニア垂涎の種やマダガスカルボアAcrantophis madagascariensisといった固有種が見られる。但しケージのガラスが汚いので、写真撮影には向いていない。しかもその建物が閉鎖されていることも多く、行けば見られるという訳でもなさそ..

  • Wikipediaを添削

    正直に言うと、Wikipediaの記事をそのまま信じてしまうことは多々ある。しかし、前提としてわかっていることではあるが、これはどこの誰とも知らない人が勝手に書き込んでいるものなのだ。それでも大半の記事は大変しっかりしているように見える。なのでついつい本気にしてしまうのだが、時々とても駄目な記事があったりする。何故か私の専門関連の記事はひどいものが多く、カランコエ関係も例外ではない。 日本語のWikipediaでカランコエ関連の記事には以下のようなものがある。カランコエキンチョウコダカラベンケイセイロンベンケイベニベンケイリュウキュウベンケイ 多くの項目は殆ど見るべき情報がなく、細かいことは見逃すとしても(例えば分布情報の抜け漏れなど)、明らかな間違いについて修正を試みたい。では上記項目を順に見てみよう。 ❒カランコエ・「花弁は5枚でやや反り返っていて、星の形に開ける。」⇒ 花弁は4枚..

  • 欠刻葉の誘惑

    皆さんは定説のように囁かれていることが、意外と根拠の薄いものと分かり唖然とした経験はないだろうか。(昨年来毎日テレビで『専門家(何の?)』がそんなことを言っているので、例に事欠かない状態ではあるが)例えばアミメニシキヘビは全長9.9mというもっともらしい(そういう記録があったと思わせぶりな)数字は、実はアバウトな30㌳という記述を翻訳したものだったとか、カランコエでは毎度こき下ろしているクローンコエがラクシフローラ(胡蝶の舞)とシコロベンケイの交配種という某氏の妄想に基づく風説もそんな好例だ。 有名な文献を信じて誰かが適当な引用をし、それを更に孫引きした情報が世に溢れかえっている状況の中で、上記のような例は枚挙に暇がないであろう。私も多くの論文に引用されている大元の文献を当たったところ、根拠も示さずさらりと断定的に記述してあるだけだったという経験が幾つもある。 さて、話は変わって個人..

  • 温室のカランコエ;新宿御苑/不定期巡回

    2016年6月に新宿御苑の温室は「定期巡回してもよい」と感じたという記事を記したが、その後4年半も行かず仕舞いであった。20年も暮れようとしていた頃、急に新宿御苑を訪れることになった。果たしてカランコエという視点から見て、久々の御苑温室は新たな魅力を増していた。   カランコエは基本的に乾燥地の植物(平たく言えば多肉植物)のエリアにまとめられているが、今回は沖縄の植物エリアにリュウキュウベンケイソウが地植えされていた。前回まではガラス張りの別室や特別展示だったが、勢いが増したか個体数が増えたか、地植えのリュウキュウベンケイソウは良く繁茂して花序も発達し始めていた。しかし残念ながら名札の学名は相変わらず「Kalanchoe integra」となっていた。何度か書いているようにリュウキュウベンケイソウはKalanchoe spathulataである。   ..

  • マニアのこだわり

    趣味の如何を問わず、マニアとは拘りである。拘りのない愛好者はマニアではない。健全な趣味人である。つまり、マニアは他人からすればどうでもいいようなことが気になるような人達なのだ。カランコエの人為的な品種(交配種含む)を追求するのもマニアだが、種分類を越えて種内変異(主に地域個体群)にまで食指を伸ばし始めたら、もう自分は別方向でマニアであると認めなくてはいけない。 もともとマニアになろうと思って始めたこのブログだが、マニアに近づくにつれ範囲を定めないと先の人生でえらいことになると気づいた。そこでカランコエ全般については緩く楽しむことにして、ブリオフィルム節(亜属とされることもある)のうちの葉縁に不定芽を生じる種群(所謂子宝草)についてのみ普通のマニアとして、トータルとして見たときにお気楽なカランコマニアとしてやっていければいいと、この頃そう思う。 さて、皆さんは伊豆七島に於け..

  • アフリカ南部のカランコエ

    2019年にBoiteau et Allorge-BoiteauのKalanchoe de Madagascar(1995)以来24年振りにカランコエの地域誌regional monograph が出版された。アフリカ南部のカランコエを扱った書籍である。元々この本の出版を偶然知ったのは2018年だったが、発行時期が何度も延びてヤキモキさせられた。無事出版されて何よりである。 書名:Kalanchoe (Crassulaceae) in Southern Africa: Classification, Biology, and Cultivation著者:Gideon F. Smith、Estrela Figueiredo、Abraham E. van Wyk発行年月:2019/10/19発行者:Academic PressISBN:978-0-12-814007-9 この本はナミビ..

  • 2020年の街角スナップ

    相変わらずテレビでは必死に危機感を煽っているコロナ禍のおかげで、2020年はあまり街をブラつくこともなく、結果的に街角でカランコエを見かけることも少なかった。その僅かな例の中で印象に残った所というと、以前も紹介した某スピリチュアル・タウンで見たブリオフィルム達である。前回と若干メンバーが変わっているので、記録として残しておきたい。 この街を10月末に訪れたとき、捜したわけでもないのに6種類(6種ではなく)のブリオフィルムを目撃した。この街の人たちが特にブリオフィルムをそれと認識して好んでいるわけではないだろうが、目撃した種類のうち3種は普段ほとんど目にしない種だったので、興味を覚えた。塀の上に飾られた寄せ植えには珍しくもガストニス・ボニエリの基変種とセイタカベンケイが入っていた。ガストニス・・の基変種はかなり稀少だし、セイタカベンケイも沖縄で帰化しているとはいえ、購入しようとすると殆..

  • ロゼットの呪縛(2)

    多肉界にも蔓延するロゼット信仰は最近の栽培花卉が軒並み八重咲を作出し、それが歓迎される風潮と同源である。花弁が多い花を美しいとしたのは、花弁数の多さに価値基準を置いた思想の影響だ。カランコエもエラチオール・ベゴニアも、ペチュニアやインパチェンスも八重咲はこう言われる「バラみたいできれい」と。(カランコエの八重咲はクイーン・ローズとカランディーバ、西洋美学的なバラと女神である)バラのようだから美しいという価値基準がここで露見する。 以前あるTV番組で有名な園芸家の先生がこれら八重咲の花を紹介していて、我々の(日本人のという意味か?)「バラへの憧れ」が花弁の多い八重咲品種を産んだという発言をしていた。つなぎあわせると美しいバラへの憧れが様々な園芸植物の八重咲を生み出している、ということだ。個人的な美感ではシクラメンやクリスマスローズ、ウェンディなど下垂型の花の八重咲は微妙な感じがするし、通常..

  • 2020年の追悼

    今回はロゼット信仰の後半を書く予定だったが、個人的に書いておくべきことが起きたので急遽予定変更としたい。 カランコエに興味を持ってweb上で色々検索していると、多くのカランコエの種が写真で見られるサイトは限られたものであると分かってくる。例えばICN(国際ベンケイソウ科ネットワーク)のHP、ダムシュテット工科大学のSven Bernhard氏のサイト、そしてFotkiのYale S. Sedman氏のアルバムである。 しかしこの9月、Yale S. Sedman氏はお亡くなりになり、彼のアルバムは閉鎖された。氏は1929年の生まれで享年91歳だった。アルバムが見られなくなったことは当然残念なのだが、それよりも氏の突然の訃報がショックであった。御高齢とはいえ、今年のお互いの誕生日にはFBでメッセージを送りあっていただけに急な話に内心相当な驚きであった。 Sedman氏と知り合ったの..

  • ロゼットの呪縛(1)

    このブログを始めた頃すでにカランコエは栽培していたが、あくまで気軽な趣味以下のものでしかなかった。その頃は花ものが中心だったし、植物のことも(今以上に)よく分かっていなかった。当然カランコエの知識も乏しいものであった。それ故ブログ開始間もない頃の記事でこんなことを書いている。************************************************************************************ これらの植物が木立状になると仕立て直してロゼットを維持するわけだが、それは植物本来の姿ではない。あくまで園芸上の美意識に基づいた処置である。それが良いとか悪いとかいうわけではなく、愛でる植物の姿はひとつに限らないという事である。野山にある植物は非常に美しいが、人の手を加えた庭や盆栽もまた違った美しさがある。個人の好みの問題であるから、正解はない。だか..

  • グランディディエリの葉形

    相変わらずTVでは専門家と称してウイルス学者でない人が根拠を示さずにウイルスを語り、あるウイルスが特殊で格別に恐ろしいものであるという情報操作が続いている。ある特集番組では、今流行りのウイルスがORF3bという抗IFN因子を持っていてインターフェロンの発動抑制を行うということが、さもこのウイルス特有の特別な能力であるかのように印象付けていた。しかし実際は他のCoVにもORF3bはあるし、方法は違えど多くのヒトに病原性があるウイルスがインターフェロンの情報伝達系を抑制していることは知られている。ちょっとwebを漁れば分かる事なのに、本当に(上級でない)一般国民をバカにしてくれるものだ。 人が分からないと思って適当なことを言うのは好きではない。本ブログでは適当な俗説に対して批判的なことを書いているが、今は世の中全体に似非情報が蔓延しているのでついつい愚痴りたくなる。カランコエについて適当な情..

  • カイガラムシ撃退作戦

    もういつもの社会的な嫌味・揶揄を含んだ駄文は止めようと思ったが、思わぬところでCoV騒動の影響に直面してしまった。世にいう3密というのが三密加持で免疫力を高めるという意味だったら支持したいが、CoV感染に対して効果的な予防策のひとつは手洗で、もう一つは消毒である。 その為消毒用で使用する人が急増し、薬局から無水エタノールが消えてしまい、極めて入手困難な状態なのだ。エタノールをスプレー容器に入れてカイガラムシ退治に使用していることは前に書いたことがあるが、どの薬剤より効果的だ。特に肉眼では見つけにくい幼虫も、間をおいて数回散布すると駆除できる。 幸いなことに今年はカイガラムシがほとんどいなくて、手元に残っていたエタノールで大体処理可能である。今年のカイガラムシは冬期に室内に取り込んだ植物に発生する程度で、ベランダのフレームに入れておいた植物には付いていなかった。というのも今年の冬は、ち..

  • もっと光を

    カランコエを栽培するに当たって、寒さに次いで切実な問題は「光」である。このことは今までも何度か書いてきたが、光が不足すると単に徒長するだけに留まらず、種に寄りけりではあるが葉が下垂したり、花の色が抜けてしまったりする。特に我が国の冬期は(カランコエにとっては)長いため、仕方なく寒さに敏感な種を室内に取り込んで4.5ヶ月に渡る長期隔離をすることになる。休みの日が晴れて気温が10℃を越えればベランダで日光浴させたりするのだが、何しろ長期間なので4月半ばに表に出す頃には光不足で悲惨な状態になっている。毎年、犠牲者も少なからず出る。室内取り込みで保護しているつもりなのに、本末転倒である。 そこでさすがに今年は一計を案じて、対策を試してみた。大そうな言い方をしたが、要するに誰でも思いつくようなことで、植物育成用と称するLEDを設置してみたのだ。大昔のこと、水槽で魚を飼っていた時に植物育成用の蛍光灯..

  • アンツカイ植物園のカランコエ

    昨日、ここ埼玉上空は時ならぬ爆音に見舞われた。何やら医療関係者にエールを送るとかで、自衛隊のブルーインパルスが東京上空に出撃する前に何度もこの一帯を旋回していたのだ。戦闘機を飛ばすくらいならその費用を別の支援に回せばよいものを、なんてことを書くと非国民扱いされるかもしれないが、「命が一番大切」とか言っている御時勢にその命を救う医療従事者へ殺戮兵器でエールを送るという発想そのものがものすごく皮肉だし、その感覚が麻痺してしまっているとしたら、そちらの方が怖いと思う。 それはともかく依然として不自由な生活が続く現在、せめて心だけでも彼の地に思いを馳せて今日はこんな話題である。早く(政治的な解決を急いで)自由を取り戻したいものである。もう遅いかも知れないが。 さて、過日の記事でクローンコエが世に出るきっかけとなった栽培地として、アンツカイ植物園L'Arboretum d'Antsokayのこ..

  • 冬の終焉

    この冬は暖冬だった。しかし最低気温が5℃を下回る11/23に植物たちのフレームにビニールシートをかけて、通常なら4月初めにシートを外すところが、4月に入って週に1回は5℃を下回る日があってなかなか外せず、やっと本日4/26になって外すことができた。なんと5ヶ月も(カランコエの)冬が明けなかったのだ。暖かく、長い冬、これもまた憂うべき災いだ。 一方、個人的には相変わらず軟禁生活(=在宅勤務)が続いており、私の冬はいつ終わるのだ...とつぶやきたくなる。ワクチンがないと医療従事者は感染が防げず、かつ14日間(以上)復帰できないと現場が機能不全に陥ることを考えるとSARS-CoV-2で一部が騒ぐのは理解できた。 ところでコロナウイルスはRNAウイルスでDNAがないため、RNAからcDNA(補完DNA)を合成して、それにPCRをかける。故にPCRと区別してRT-PCR(逆転写PCR)という。..

  • 二つの世界

    巷はSARS-CoV-2で大騒ぎとなっている。インフルエンザに比べて「蔓延している」とは言い難いこのウィルスがどうしてここまで取りざたされるのか、未だよく理解出来ていない。インフルのように迅速キットの抗原検査もなく、ワクチンも特効薬もないから状況は全く違うのだ、という力説もそれらが揃っているインフルがコロナをしのぐ大量の感染者と死者を出していることを考えると説得力は微妙だ。 この納得できない騒動のお陰で最近は家に籠って仕事しているのだが、公私のオンオフができないし、運動不足になるし、ウィークデイは仕事が終わると自分のPCの電源も入れる気が起きないほど疲れてしまう。そんな時は、この一件が治まったらこうしようとか、どうしたいとか妄想を巡らせることになる。ということで今回は徒然と駄文を連ねたい。 さて遠い昔の話だが、子供をある教育の場に入れた(と言っても宗教団体ではない)。そこで他の子の母..

  • カランコエの斑入り品種

    俗に枝変わりという現象がある。生長点が突然変異を起こす芽条変異のことで、動物で言えば昆虫で良く知られるモザイクのようなものだ。植物の世界では一般的な現象なのではあろうが、動物のモザイクと違って既にある程度成長している植物体に突然現れるところが驚異的に思える。 ネット上では、斑入りや八重咲きが枝変わりの例として挙げられている。八重咲きといえば、今や花ものカランコエでは一般的なものである。最初に知られた八重咲きはカランディーバで、フィデス社の栽培株の中に現れた突然変異との事である。その形質を様々な品種に展開して多くの「商品」が生まれていることは言うまでもない。 花ものカランコエがKalanchoe blossfeldiana Hybridだとして、他種でいうとやはり人為交配種であるウェンディ‘Wendy’(ミニアータKalanchoe miniata×ポルフィロカリクスKalanchoe p..

  • カランコエの節間雑種

    カランコエをカランコエ節Kalanchoe、ブリオフィルム節Bryophyllum、キチンギア節Kitchingiaの3節に分けるか、キチンギア節をブリオフィルム節に含めて2節に分けるかで捉え方が異なるが、園芸品種を初め、自然交雑による交配種を含めても異なる節Section同士の交雑例は多くない。 一般的に良く知られるのはテッサ‘Tessa’でブリオフィルム節の紅提灯Kalanchoe manginiiとキチンギア節のグラキリペスKalanchoe gracilipesの交配によりオランダで作出された。以前の記事で書いた様にこれはすぐれた品種で、花色が薄いとか暑さに弱いといった(あくまで園芸上の)欠点をなくしたロングセラーである。しかしキチンギア節をブリオフィルム節に含めるとした場合、これは異節間雑種intersectional hybridではなくなってしまう。 ‘Tessa’ギリシ..

  • 街角のカランコエ;旅先のスナップ編

    この時期はカランコエにとって不毛な事この上ない。自然とテンションも下がる季節である。と言い訳しつつ、今回は街角で見たカランコエの写真を貼りつけるだけでお茶を濁したい。 仁川国際空港の植栽:花もの交配種 高雄市の街角にてクローンコエK. laetivirens セイタカベンケイK. suarezensis 懇丁の民宿の庭にてクローンコエK. laetivirens ガランビトウロウソウK. garambiensis・・・植栽としては台湾でも珍しい光景 Tana市のガソリンスタンドにて紅唐印K. luciae・・・こんな所でこんなものに出会うとは、何か皮肉だ

  • 木本性カランコエ写真集

    以前木本性カランコエのグループLanigeraeについては記事を書いたが、余り写真を載せなかったので、ここで一気に紹介したい。と言ってもそれなりに集めた写真なのでとても幼い株も多く、参考程度である。ヒルデブランティとブラクテアータについては、Rauh(1997)が多くの変種を記載しているが、怪しげなものもあり、ここでは各々glabraのみを載せる(というかそれしか写真がない)。 また木本性種と言いつつも本当の木本性ではないかもしれないことは以前述べたとおりだが、見た目も木のようになるとは限らず、以前紹介したようにリニアリフォリアなどはある程度育つと自立するのも難しくなる。 オルギアリスKalanchoe orgyalis ブラクテアータKalanchoe bracteata ブラクテアータKalanchoe bracteata var. glabra ヒルデブランティKalanc..

  • ベランダ温暖化の罠

    今年の夏は酷暑だった昨年に比して楽に感じた。しかし35℃を超える日が10日近く続いたときがあっため、我が家のカランコエはそれなりにダメージを受けた。それでも昨年のように貴重な種を完全に失わずには済んだ。 そういうわけで冬もそれなりかと思いきや、11月から最低温度が1℃・最高9℃という1月並みの寒い日があり、12月上旬もそんな日が散発的にあったため、12月1週目から早々とベランダのフレームにビニールシートを3重に被せた。ところが12月上旬はまだ日差しが強く気温も12℃以上に上がる日があるので、重ねたビニールシートの間に不織布を挟んで日よけとした。 このように策は講じていたものの今季の冬は9℃位の寒さから翌日一気に15℃に上がる、またはその逆といった激しさがあった。気温が上がったときはビニールのチャックを開けておいたりしてケアしていたのだが、たまたま家を空けていた12/14~15に気温が..

  • 着生種と匍匐性種

    昨今インテリアプランツは大流行していると言っても良く、インテリア雑貨の店にまで植物が溢れている。最近のトレンドは吊り鉢である。リプサリスやディスキディアなど、様々な垂れ下がる植物がオシャレと見なされているようだ。これらの植物をよく見ると、大別してつる性、着生、匍匐性の植物が使われている。 さて、カランコエのうち吊り鉢で飾られるのは主として着生植物か、匍匐性との交配種である。具体的に言うと種としてはウニフローラKalanchoe unifloraとグラキリペスKalanchoe gracilipes、交配種はテッサやシャンデリアである。 カランコエ属にはつる性種、着生種、匍匐性種ともに知られるが、つる性種は茎が間延びしているように見えるためか、吊り鉢で楽しまれることはない。もっとも黒錦蝶Kalanchoe beauverdii以外の種が一般的でないことも大きな要因かも知れない。私の知る..

  • カランコエとブリオフィルム⑥ 平成最後の新展開

    2019年も残り少なくなった。元号が変わり消費税も上がったが、庶民にとって新時代の幕開けとはならないのはいつものこと。植物でも愛でて安上がりに楽しむことにしたい。 今回タイトルに⑥と付けたが、では⑤を載せたのはいつなのだと突っ込まれる前に調べたら5年以上前だった(https://kalanchoideae.blog.ss-blog.jp/2014-08-03)さて、昨年カランコエ属の下位分類に関する論文が英国のサボテン・多肉植物協会の会誌Bradleyaに掲載された。この手の話題は久々で期待して読んだのだが、分類学そのものではなく命名規約に因んだ状況整理的な内容であった。著者:Gideon F. Smith and Estrela Figueiredo掲載誌:Bradleya 36, 2018:162 - 172論文名:The infrageneric classification an..

  • 聖地巡礼;珊瑚石灰岩の匙葉と枝角葉

    このブログではよくあることだが、初回に細かいことを書かなかったので少し補足したい。かねてより台湾のカランコエ自生地を見たいという願望があったが、思っているだけではいつまでも叶わないので実現に向けて一歩踏み出すことにした。そこで台湾南部へ行けばよさそうだということで、高雄行の航空券探しから始めた。しかし良い時間帯がなくて、金曜夜遅くに高雄に着き、土・日に南部へ向かい探索して、月曜朝一の便で帰国という忙しい旅になった。 ということでガランビトウロウソウ探索の翌日は、リュウキュウベンケイソウK. spathulataを求めて低山へ登った。ここも山肌に石灰岩が見られ、林道脇や森の中に何ヶ所かのリュウキュウベンケイソウの群落を見つけた。沖縄のものとはだいぶ異なる形態で、かといって大陸で一般的に見られるものとも違う。葉が大型で披針形のタイプである。多くの群落でまわりの他の植物に比べカタツムリによる..

  • 聖地巡礼;麗しき島に根付くもの

    昨年より始めた聖地巡礼、自生地も外すわけにはいかない。この度機会があって、台湾にK. spathulata種群の自生地を訪れたので報告したい。と言ったが、台湾の野生植物も我が国同様に開発や心無い人々による興味本位の採取等々で絶滅の危機にあるため、地名は明かさず台湾南部とだけ記しておきたい。また今となっては残念に思うが、結局採集はせずにwatchingのみで帰国してしまった。 自分の好きなカランコエの1群に、アジア-アフリカに分布する欠刻葉のグループがある。特にK. spathulata種群とそれに近縁であろうK. laciniataには興味がある。さて、いつぞやの記事で書いた様に台湾“本土”にはK. spathulata種群の野生カランコエが3種自生していて、先ずは台湾南部沿岸地方に見られるガランビトウロウソウK. garambiensis (K. spathulata var. g..

  • アルボレスケンスの立て直し

    最も好きなカランコエのひとつであるアルボレスケンスKalanchoe arborescens。カランコエのグループとしてはBryophyllum節の子宝草類が最も好きだが、次点でアルボレスケンスを含むLanigeraeグループだろうか。このアルボレスケンスはお玉杓子のような形のやや肉厚な葉に魅力を感じて、今までに何度か購入している。何年か育てて高さ50~60㎝になった頃、姿は乱れ(まくり)、葉は落ちまくって悲惨な姿となって駄目にしてしまうことが度々あるのだが、もっと小さいときからも危機は訪れる。 何度か経験したのは葉が薄っぺらくなってきて、やがて筋も目立つくらいに枯れた感じになり、気が付くと根元が朽ちていて根も枯れている状態になっているというものだ。 これは初夏の気温が上がる頃見られる症状で、急な温度上昇や水やりの失敗(やり過ぎ・断ち過ぎ)が原因かと思われる。本種はマダガスカル南部が..

  • ベハレンシス追補(後編)

    今回は前々回の続きで、ベハレンシスの原種についての再整理を試みた。 ❒原種 以前にベハレンシス原種をまとめたときは、葉の色と特徴に着目して、茶色・灰色・無毛と葉縁の切れ込みの有無を組み合わせて分けてみた。今再びこれを顧みて、少し修正を加えたいと思う。葉の切れ込みと波打ちは育ち方によってバラつき、ある局面では波打ちがなくともそれから少し育つと波打ちが現れるので、そういう形質は無視してもよく、切れ込みの有無だけで分ければ良いと判断した。 ベハレンシスの品種というか型というか、あるタイプが原種であるか否かの判断は葉が盾状葉であること、葉柄が落ちた後の茎には棘上の跡が残ることと言われている。根上不定芽の形成も特徴の一つだろう。それらの特徴を有するものを分けてみると、・葉色:茶、白、グリーン(無毛)・葉縁:切れ込みあり/なし・葉形:標準的/長葉という区別ができる。 これと以前紹介した3つの変..

  • さらば夏の日

    今回はベハレンシスの後編を書くつもりだったが、夏の話題はこの機を逃すと無意味な話題となってしまうため少し寄り道したい。 さて、毎年このくらいの時期になると暑さによる犠牲者発生の危険性がなくなり、しみじみとした安堵感を覚える。しかし更に1ヶ月もすると、今度は冬支度の心配をしなければならなくなる。カランコ趣味に良い季節は僅かなものだ。それはともかく今年の夏は、6月下旬から1ヶ月以上に及ぶ日照不足が深刻であった。朝には日が射すこともあったが、家のベランダは昼頃にならないと陽が当たらない向きのため植物たちは本当にずっと日光にありつけなかったのだ。 更に7月末になると日光は得られたが、急な気温上昇と共に35℃以上の日が2週間以上続いた。猛暑日が2、3日続いて1日涼しい日が挟まるというパターンだと暑さに弱い着生カランコエも生き延びるのだが、ベタで暑さが続くと耐えられないので室内に取り込むしかない..

  • ベハレンシス追補(前編)

    木本性カランコエで一般的な種であるベハレンシスKalanchoe beharensisについては以前まとめたことがあるが、その後に撮った写真もあるのでここらでもう一度総括したいと思う。大きく分けて原種と人為交配種、それに由来不明のものがある。 ❒人為交配種 大雑把にローズリーフ、オークリーフ、ファング、ナナ(ブラウン・ドワーフ)の4タイプがある。これを親植物毎に分けてみると以下のようになる。① Kalanchoe beharensis × K. tomentosa・ファング'Fang'、ブラックファング・ローズリーフ'Roseleaf'、ベハレンシス錦'Rose Leaf Variegated'※※ベハレンシス錦という名前だがローズリーフの斑入りである。② Kalanchoe beharensis × K. millotii・オークリーフ'Oakleaf'③ Kalanchoe beh..

  • 子宝草/クローンコエの真実を求めて(後編)

    誰も期待してないとは思うが、前回の続きでクローンコエKalanchoe laetivirensのルーツを探ってみたい。原記載論文にある地名Isalo(原産地)、Toliara(栽培地)、Saint Augustine(タイプ採集地)の3ヶ所にクローンコエは本当に存在しているのだろうか。個人的に調べた結果を述べてみたい。 1. Saint Augustine 原記載にはこの地にあるLa Mangroveの庭から逃げ出したクローンコエを道端で見つけたという記述があるが、正直なところ現在もこのロッジがあるのか分からなかった。しかしこの村のはずれにあるEden Loge(ヌシベ島のEden Lodgeの間違いではない)というレストラン+宿泊施設では現在もクローンコエを栽培していることが分かった。この場所は確かにマングローブに覆われた半島の付け根にあり、1997年当時からこの辺りでクローンコエが..

  • 子宝草/クローンコエの真実を求めて(前編)

    またクローンコエの話しか、と呆れられそうだが私的なブログなので御了承頂きたい。なお、「真実」truthというのは意識を持つものが認識した数だけあるので事実factとは違うのだが、ここで求めた真実は事実の積み重ねに基づいた私なりの結論である。 さて以前当ブログでは巷のクローンコエ神話を崩壊させたのだが、今回は更に歩を進めてクローンコエのルーツに迫ってみた。(参照:クローンコエ ~神話の崩壊~ https://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14)若干補正しました。 過去の記事の繰り返しになるがクローンコエ(子宝草)はマダガスカルで発見された植物で、1997年にDescoingsがKalanchoe laetivirensの名で新種記載した。これがシコロベンケイKalanchoe daigremontiana とラクシフローラKalanchoe..

  • テッサとグラキリペス

    世界の多肉植物愛好家にとって国際ベンケイソウ科協会(ICN)のHPは同科の目録としてセミ・オフィシャルなものと認識されているようだ(と言ってもカランコエ愛好家にしか確認していないが)。このHPの良い所は(少なくともカランコエ属では)若干の疑義はあるものの(植物学的な)種と交配種、それに栽培品種を分けて表記しているところである。ここで栽培品種Cultivarとしてテッサ‘Tessa’が載っている。 これは1980年代にオランダでJ.J.Karperが作出した交配種である。以前の記事でも紹介したが、花数の多いグラキリペスKalanchoe gracilipes(Kitchingia節)と花色の良いマンギニー(紅提灯)K. manginii(Bryophyllum節)のいいとこ取りした品種で、2~3月頃、花屋で時折見かけることがある。オレンジ色の下垂型の花が嫌がらせのように、これでもかと数多く..

  • 人名由来のKalanchoe

    カランコエ属には人名に因んだ名前が多い。属全体で150種程度の種が知られているとして、そのうち約60種が人名由来なので40%を占めている。こういう導入を書くと、読んだ人は素直にこのことをインプリンティングされてしまうかもしれない。 でもちょっと待って欲しい。実は種数は正しいとして、果たしてこの割合が他の植物の属に比べて多いのか少ないのか、または平均的なのか、まったく調べずに上の文章を書いている。私の扱ってきた多くの動物群に比べると感覚的には高い比率に感じるが、植物でも高いのかは分からないのだ。またある動物の属では1属2種しか知られていなくて、そのうち1種が人名由来で比率50%という例もある。となると40%で60種というのと、50%で1種ということを単純に比率で比べても無意味である。数字は嘘をつかなくても、数字の使い方に騙されるというようなことは世に満ち溢れている。くれぐれも気をつけたいも..

  • 聖地巡礼;燈籠魔殿

    この趣味を始めてから「ここは聖地だ」と感じた場所はまだ少ない。昨年よりそう感じる場所をいくつか巡って、私なりの巡礼をしてみたいと思い立った。すべての自生地は聖地だし、既に紹介したバイオリウムのような施設も聖地である。そしてまた、先日拝見したコレクションの場も聖地と呼ぶにふさわしかった。 この度、T市に住む愛好家のH氏を訪ねた。氏とはネット上で知り合い、何度かやり取りをするうちにかなりのコレクターと見て、実際にお会いすることになった。氏の希望もあり多くは語れないが、もうひとりの愛好家S氏と共に膨大な多肉コレクションを保持している。私は他の多肉の事は分からないが、氏のカランコレクションは世界でもトップレベルのマニアックなものであった。 彼らは海外から通販で種を取り寄せて実生苗を育成し、多くの種を得ると共に枝変わりsportも育てていた。 屋上に屋根をつけて何とも羨ましい広さの栽培場を..

  • アジアのカランコエ

      前回はカランコエ・スパチュラータKalanchoe spathulata(リュウキュウベンケイソウ)とその変種について述べたが、アジア産(といってもインド以東程度の大雑把な意味)のカランコエは他にも知られている。カランコエ・スパチュラータ種群も含めて、スパチュラータ以外の種を列挙してみよう。 【K. spathulata種群】種 名     分 布K. ceratophylla    インド・ヒマラヤから南はインドネシア、フィリピン、東は台湾までK. rosea     インド(アッサム) 【その他の仲間】種 名     分 布K. bhidei    インドK. cherukondensis    インド(アンドラ・プラデシュ)K. chevalieri    ベトナムK. craibii    タイK. grandiflo..

  • カランコエ・スパチュラータと8つの変種

    日本国内に自生する(していた?)唯一のカランコエ属の植物がリュウキュウベンケイソウで、その学名がKalanchoe spathulataである。以前はこれをKalanchoe integraとしていたが、黄花のリュウキュウベンケイソウに対してこちらは赤花が咲く別種であると分かり、更にそれがKalanchoe deficiensのシノニムであるとされた(Ohba, 2003)。このことは以前の記事でも書いているが、改めて述べておきたい。 そのK. spathulataはインド・ネパールから沖縄にかけて広範囲に分布しており、当然変異は多い。沖縄のものに限っても学名の通り匙状葉のものとやや巾広の葉のものがある。国外では下の写真のようなものが一般的で、更に3裂の欠刻葉になるものも少なからず見られるようだ。台湾だけでも以前台湾のカランコエ記事で書いた様に3タイプが見られる。 一般的に見られるカラ..

  • 徒然なるままに

    長い冬が緩んできて陽射しが少しずつ力を取り戻してくると、天気の良い日には家族や友人と街へ出かけてカフェやレストランで楽しいひとときを過ごし小さな幸福感に身を委ねる、こんな経験を持つ人は多いと思う。これは野生動物だったころのヒトの行動パターンの名残ではないかと最近考えるようになった。食と性は人間の文化の中心であり、他の動物においても行動の基準である。寒いときや雨の日は棲み家に潜み、晴れて気温が上がると食物や配偶者を求めて一斉に動き出す。ヒトもトカゲもアリも同じだ。身体の内なる欲求に従って行動するという意味でヒトと他の動物は差がない。 近頃の日本人は結婚するのが困難になりつつあるが、個体群密度の薄い小さな昆虫や爬虫類などが絶望的な世界の広さという障害を乗り越えて、配偶者と巡り合うのはどの位の確立なのだろうか。種をつないでいく小動物たちに驚嘆と哀愁を感じると言ったら、それは地上に80億近い個体..

  • 予期せぬコレクターズ・アイテム

    生物をコレクションするという行為は気乗りするものではなかったが、いつの間にやら子宝草が集まってきてしまったので開き直ってコレクターとか公言することにした。そういうつもりはないのだが。。。とか言い訳っぽいし、何より最近は確かに集めてたりもしたので仕方ない。 そんなコレクションの中で特別なものもある。タイプ・クローンである。 他のマニアや愛好家はこれをなんと呼んでいるのか知らないのではあるが、これはタイプ標本株から殖やした株の事を言っている。子宝草の仲間のタイプ・クローンが幾つか入手できたので特別扱いしている。 ではタイプ標本とは何か、ごく簡単に説明すると動植物を新種記載した際に後の研究者の(同定の)拠り所とするために、その新種の標本を保存しておくシステムになっている。極端な話をすると新種の名前はその標本の生物に付けられたと言っても良い。それをタイプ標本の中でもホロタイプholotype..

  • 暖冬のラクシフローラ

    犠牲者を多く出した昨年の寒過ぎる冬と暑過ぎる夏を乗り越え、今年はここ埼玉でも比較的暖冬であった。この6年間、毎年冬になるとベランダに水を入れたバケツを置いて氷が張るか見るようにしているのだが、1、2月に氷が張らなかったのは2016年の冬に続き3年ぶり2度目である。今年は普段なら気が緩んでくる2/9~2/15にかけて厳寒の戻りのようなものがあって、陽当たりなしの低温続きで参ったのではある。加えて休みの度に寒かったり、天気が悪かったりで室内に取り込んだカランコエ達を外に出して日光に当ててやる機会が少なく、光不足のダメージが深刻になっている。 とはいうものの暖冬の恩恵は大きいようで、近所を廻ったときに冬を生き抜いたラクシフローラたちに出会えた。今回はそのスナップである。どういうわけか私はこのラクシフローラが好きで、とても魅せられてしまうのだ(似たようなフェッシェンコイはそこまでではないが)。 ..

  • 復活!? バイオリウム

    以前も紹介した東京農大というか進化生物研というか、とにかくそこにある温室、バイオリウムへ再び行ってきた。前のブログ記事では訪問してがっかりしたようなことを書いたが、実はその後も某氏の情報に釣られて訪れている。今回もまたカランコエが充実していたとの同氏の情報による再訪である。(Yさん、いつも感謝しております。なんか結局1年おきに行っている気がする。) 施設の細かな情報は省くとして、食と農の博物館側からの入り口から入ってすぐ左手がカランコエコーナー(実際はマダガスカルエリア)である。前回報告した時に比べ月兎耳と不死鳥以外の種は状態がかなり良くなっていて、種数も若干増えていた(前回8種→今回14種ほど)。 中でも目を引いたのはガストニス・ボニエリとセイタカベンケイの大型開花株である。特に大きな葉は長さ40cmを超えるのではなかろうか。しかもガストニス・ボニエリは基変種とvar. ankai..

  • カランコエと紅葉

    多肉植物の楽しみの一つに紅葉があるという。紅葉というと秋に我が国の野山を彩るあれである。ネット上で調べてみると、これは植物の葉が老化して落葉前に変色する老化現象だという。一部の常緑樹や草本にも見られるというから、一般的な多肉の場合はこの辺りに相当するのであろう。 葉の変色後の色でアントシアニンによる「紅葉」、カロテノイドによる「黄葉」、タンニン性物質の蓄積による「褐葉」に分けられるそうだ。広葉樹の葉が黄色く染まり、美しい落ち葉が溜まっている光景はイチョウ並木などでお馴染みだが、ふと夏の暑さにやられてイチョウよろしく葉が黄色くなり、バタバタと落葉してしまった着生カランコエのことを思い出した。以前のブログ記事でこれを揶揄して「紅葉」と書いたことがあったが、メカニズムとしては本当に紅葉と言ってよいのだと思う。但し、その後植物がダメージから回復せずに枯れてしまったりするので、とても楽しむ気にはな..

  • Shaw(2008)の陥穽④

    今回でShaw(2008)の論文の紹介も最後になる。今回はroseiについての記述を見てみる。 □Kalanchoe rosei この論文で紹介されているのはroseiといっても実際はKalanchoe “Rauhii”の話である。ちなみに当ブログでは昨年あたりからICNの品種名を公式なものと見做して、公式品種名の学名表記は‘ ’で括り、俗な品種名を“ ”で括っている。多少はこだわっているのだ。 さてShaw(2008)によると、===============================================================================欧米に出回る‘Kalanchoe rauhii’(原文の表記)は植物学的には記載されておらず、その名はWerner Rauhに因んでいるとしている。またKarper et Doorenbs(1983)..

  • Shaw(2008)の陥穽③

    今回は前回のクローンコエに先んじて載っている不死鳥類Kalanchoe ×houghtoniiについて見ていきたい。これはキンチョウKalanchoe delagoensis×シコロベンケイKalanchoe daigremontianaの交配種である。 □Kalanchoe ×houghtonii この不死鳥の仲間の記述については以前この論文を拠り所としていたとき、読み込むほどに大混乱に陥ってしまった。 ここでの拾い物はそれまで俗称しかなかった(Bryophyllum tubimontanumとかHoughton’s Hybrid、Hybridaなど)この交配種がフロリダに帰化している個体を元に2006年に新種記載されたと知った事である(Ward, 2006)。 もうひとつ有意義だったのはキンチョウ×シコロベンケイの交配種には2系統あるという情報だ。子宝草目録3-③で述べたように稔性..

  • Shaw(2008)の陥穽②

    今回は前回に続いてキンチョウとクローンコエについてShaw(2008)の論文を見ていきたい。 □Kalanchoe delagoensis キンチョウ(錦蝶)についてもシコロベンケイと同様に昔からの種株と最近導入の2品種を紹介している。これもまたShawが命名している。① Spirit of 28:一般的に知られるのは、(少なくとも米国内では)1928年にSwingle sとHumbertが持ち帰ったこのタイプとしている。② Ihosy Purple:2005年にISIが頒布したもので、マダガスカル中部のイフシIhosyで採集されたもの。 2種の違いは・カーキ色の葉に小さな紫褐色の斑があり、中央脈midribは緑色(Spirit of 28)。・Spirit of 28より細い葉で一様に紫がかり、中央脈は淡黄色(Ihosy Purple)としている。 そして花については花筒の一部に黄色..

  • Shaw(2008)の陥穽①

    Bryo-maniaな人達が一度は目にするであろうShaw(2008)の論文?は葉縁に不定芽(bulbilタイプ)を形成するKalanchoeについてまとめたもので、迷宮に落ちたマニア達に光明をもたらしたに違いない。しかしながら残念な部分も多く、誤った認識を広めるのにも一役買ってしまっている。今までこの論文を拠り所としてきた迷える者の一人として、今回からこの文に切り込んでみたい。 最初に論文についてさっと紹介しておく。論題:An investigation of the cultivated Kalanchoe daigremontiana group, with a checklist of Kalanchoe cultivars掲載誌:HANBURYANA 3: 17–79, 2008 前半は葉縁に不定芽を形成するカランコエ、即ちBryophyllum節を種別に解説し、後半は栽培..

  • 温室のカランコエ;強羅公園・ブーゲンビレア館

    ここ1年間に訪れた温室は殆どなく、ブログにも1件しか書かなかった。それも寂しい気がするので、敢えて書くまでもないと思っていたが、強羅公園の温室でもカランコエを見たので一応記録として残しておこうと思い直した。 強羅公園は箱根の登山鉄道とケーブルカーの駅がある強羅からほど近く、公園(有料)内に4棟の温室がある。それぞれ熱帯植物館・熱帯ハーブ館・ブーゲンビレア館・イベント館となっているが、訪問時は前の3館しか入ることは出来ず、その内ブーゲンビレア館でのみカランコエが見られた。 勿体ぶってここまで引っ張ってしまったが、見られたカランコエは実際のところウェンディとセイロンベンケイソウの2種のみであった。 ブーゲンビレア館では、通路わきの植え込みに混じってウェンディが2ヶ所にあった。地植えのウェンディは初めて見たが、枝ぶりや葉の状態など販売されているものと変わらぬ品質であった。導入後まもなく地植..

  • アラビアン・カランコエ

    カランコエというと花も多肉もマダガスカルのイメージが大変強く、それにチラホラとアフリカ大陸産の多肉が加わる程度で、アジア・アラビア産は種も少ないし一般的でもないので栽培されることが少ない。 アラビア産カランコエでいうと唯一例外なのは、ファリナケアである。これは花卉とも多肉とも言える小型種でソコトラ島産である。一般的なカランコエと異なり短日植物ではない。自生地の写真を見ると岩の隙間で乾燥と陽射しに耐え忍んで生きながらえているように見える。ということで家では以前は他種よりも乾燥気味にしていたが、花咲き具合など乾燥してもしなくてもあまり変化はないかもしれない。 さてMiller et Cope(2009)の“Flora of the Arabian peninsula and Socotra vol.1”によるとアラビア半島およびソコトラ島(イエメン)には以下の13種のKalanchoe属..

  • Kalanmaniaを名乗る日

      カランコエマニアを目指して当ブログを始め早5年、その間色々と知見や栽培種が増えた。まだまだ分からないことだらけだが、最近ふと、そろそろマニアを自称しても良いのではないかと思った。  以前、動物の趣味のときはマニア視されるのが嫌でホビィストを名乗っていた。それはその頃世間一般にマニア=コレクターと見る風潮があって、「動物はコレクションするものではない」という信条からマニア呼ばわりされるのを良しとしなかったのだ。しかしいつの頃からだろうか、私の分野にもマニアと称する人々が現れ始めて不正確な情報を世に流すようになった。 そこで私はマニアならここまで知っていて当然だろうというレベルの情報発信を始め、(身内の中で)マニア宣言をした。同時にマニアとしての要件を設けた。それは勿論自分に対しての基準であって、他人を縛るものではない。そのときの要件は以下のようなものである。 1.対象群に関する知識;分..

  • 木本性カランコエの室内越冬

    個人の好みの話でいうと子宝草の次に前回紹介したLanigeraeグループに属している木本性カランコエが好きである。このグループの小型種(月兎耳・福兎耳・ロンボピロサ)は一般的には人気が高そうだが、個人的には木本の方に興味がある。大体月兎耳は色々なタイプがもてはやされているが、文献的な根拠がなく不透明過ぎるので身が入らないのだ。 話を戻して木本性カランコエだが、成長が遅い上に鉢植えとはいえ背はそこそこ伸びる。現在ベランダでフレームの棚に並べてカランコエ栽培しているのだが、背の高いものは冬にフレームにビニールをかけるとき、どうしても入りきれなくなってしまう。仕方なく他の背丈がある種と共に室内に持ち込むことになる。 すると家族の冷視線という障害はともかくとして、絶対的な光量不足で(特に木本性は)ひどい状態になる。過去に何度か書いた様にカランコエは光が不足すると葉が丸まったり、更には葉柄部分から..

  • 木本性カランコエの世界

    カランコエ属には草本性の種が多いが、幹が肥大生長する木本性の種も存在する。良く知られるのはベハレンシスKalanchoe beharensisである。草本性・木本性を問わず高さ1~2mに達するカランコエはマダガスカル・アフリカ大陸共に多く知られるが、3mを超す大型種はマダガスカル産でBoiteau et Allorge-Boiteau(1995)のグループ分けでいうと全てLanigeraeに属する。 因みにアフリカ大陸産のKalanchoe mitejeaやKalanchoe hypseloleuce、マダガスカルのプロリフェラKalanchoe proliferaは草本性だが稀に3mに達することがあるという。 さて、Lanigeraeというのは多肉のカランコエでも人気の高い月兎耳や仙女の舞が属する。取りあえず所属する種を列挙してみる。今回は亜種や変種は省き、種レベルのみ記す。 Kal..

  • ガランビトウロウソウの実生記録

    マニアを目指すと言いつつ、長らくカランコエを繁殖させたことがなかった。勿論、挿し穂や不定芽により増やしてはいた。しかし全て同一クローンを増殖していたに過ぎず、有性生殖株を増やしたことがなかったのだ。正確に言うと、ロトゥンデフォリアやシンセパラがこぼれ種で増えたことはあった。ただこれらは殖えたのであって、殖やしたわけではない。 そこで某氏からの御教示により種が豊富に結実するガランビトウロウソウKalanchoe spathulata var. garambiensisで実生してみた。以下の写真はその簡単な記録である。 2017.6.23 種蒔き 2017.8.9 発芽:非常に微細な双葉で、1枚の長さは1mm以下 2017.10.14 大きな株は双葉の1辺が10mm 2017.12.23  本葉も育ち始めているが室内に入れたため、丸まりつつある 2018.8.4 すっかり成熟した株  ..

  • 追悼の狂った夏

    ここ数年、毎年のように「○十年に一度の」と称する異常気象をTV等で騒ぎ立てているが、今年は本当に中国・四国地方を中心とした豪雨や、全国的な「災害級の」暑さに見舞われている。当然のことながら(41.1℃を記録した)わが県ももれなく暑い夏を過ごしている。 何しろこの暑さは6月末頃から続いており、7月は我が家のベランダを3週間以上に渡って35℃以上の猛暑が居座り犠牲者が続出してしまった。昨年の夏は着生種を上手く夏越しさせたことを「おもいでの夏」と称して記事を書いたが、今年もまた最悪な思い出の夏となった。 カランコエが熱帯の植物だから暑さに強いと思ったら大間違いで、砂漠の植物ではないし、日本の夏は夜も暑いので特に森林性の種(着生植物やその交配種)はダメージが大きい。今夏もまたグラキリペスは全滅、他の種も葉がかなり落ちてしまった。一定期間熱に当たるとその後涼しいところに移しても、葉は黄色くなり落ち..

  • 子宝草目録5-無所属者の振り分け

    葉縁に不定芽を生じるBryophyllumで今までの紹介から抜けているものが、まだ少しある。殆どは比較的近年になって記載されたものだ。 先ずはマダガスカル東南部のTsivoryで発見され、2005年に記載されたKalanchoe peltigeraである。名前も盾状葉であることもKitchingia節のKalanchoe peltataとよく似る。葉の形自体はK. peltataのようだが、色彩や模様はシコロベンケイっぽい。記載論文には記述がないが、この種はセイロンベンケイソウのように切り取った葉を土の上に置いておくと不定芽を生じる。まだ一般的には知られていない性質のようだ。 実はこの種はロゼイkalanchoe rosei、またはその変種に近縁であることが最近分かった。なのでBryophyllum節のグループとしてはSuffrutescentesということになると思う。開花後に枯れるこ..

  • 街角のカランコエ;スピリチュアルタウンの誘い

    以前にもブリオフィルムをスナップした杉並区の某所に、今年も訪れている。先月も行ったが、1月には健在であった巨大クローンコエの姿がなかった。1月後半の寒波でやられてしまったのであろう。(参照:https://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2017-08-11)前回写真は載せなかったが、某ギャラリー入り口にあったクローンコエも枯れてなくなっていた。また服飾・雑貨店のマジックベル(セイロンベンケイソウ)も見られなかった。 カランコエが寒さに弱いと知らずにオーナメントとして飾っている店では仕方ない結末なのかもしれないが、残念である。そんな中、この1月にも6月にも見られたのは耐寒性のあるプミラである。この種は我が家のベランダでも薄いビニール1枚で難なく冬越ししてくれた。粉ものカランコエは不得手であったが、最近は愛着が湧くようになった。 一冬が過ぎて栄枯盛衰はあるも..

  • 子宝草目録4-⑤ Proliferae/グループ内のアウトサイダー

    Proliferaeのうちガストニス・ボニエリとセイロンベンケイソウの仲間を紹介してきたが、このグループには他にも古くから知られる1種と2000年代に新種記載された2種の計3種が知られる。 このうち1928年に記載されたKalanchoe macrochlamysは見られる機会の少なさにおいて、最も珍しいブリオフィルム節のひとつだろう。私も標本写真しか見たことがない。いつものBoiteau et Allorge-Boiteau(1995)には蕾(萼筒のみ発達)のカラー写真が載っているが、これは他種の間違いであろう。というのもこの種の萼筒は黄色がかった地に暗色の縦じまが走る特徴的なもので、次に紹介するKalanchoe maromokotrensisに酷似している。カランコエにしては珍しく塊根性(地下茎ではなさそうなので、とりあえずこう呼んでおく)であるが、この性質もKalanchoe m..

  • 温室のカランコエ;神代植物公園

    10年近く行ってなかったが、諸事情(家族の希望)からGWに深大寺に行くことになった。となれば神代植物公園に寄らない訳にはいかない。2011年に訪れた時の記録では温室入り口の近くにキンチョウ、セイロンベンケイソウ、クローンコエ、月兎耳の4種があったのみであるが、近年温室内は改装されたとも聞いていたので、多少の期待感はあった。 期待高まる彼方の大温室 ここが乾燥地植物の部屋  売店を物色し、シャクナゲとさくら草を見て、バラ園で早咲きのバラを楽しんだ後、やっと温室に辿り着いた。温室の内部は熱帯植物、ラン・ベゴニア、熱帯スイレン、小笠原の植物、乾燥地の植物と分かれていて、最後の部屋に至るまでカランコエは見つけられなかった。そして最後の乾燥地の部屋に入るとベハレンシス(仙女の舞)K. beharensisの姿が目に飛び込んできた。そこで期待感は一気に高まったが、その後その隣に「唐印」が植わっ..

  • 子宝草目録4-④ Proliferae/羽状葉のブリオ達

    小さな葉が連なってひとつの大きな葉を構成するようなタイプの葉を羽状複葉といい、マメ科植物やサンショウに代表される。前回紹介したセイロンベンケイソウKalanchoe pinnataも学名からして羽状葉の種であるが、常に羽状複葉を形成するわけではない。しかし、カランコエのこのグループにはベンケイソウ科には稀な羽状複葉の種が他にも3種揃っている。 よく見かけるのは高さ3mと大型になるプロリフェラKalanchoe proliferaである。マダガスカル中部原産だが大陸アフリカでも帰化して手こずっているようである。反面、我が国では大型の鉢に植えたものがインテリア系の店でも扱われている。最近この種をセイロンベンケイソウと間違って(「偽って」ではないだろう)表示した鉢植えをよく見かける。 まだ小さな苗のときは複葉ではないが、少し育つとすぐに複葉になる。ある程度育つと葉に皺が入ってきて委縮したよ..

  • 子宝草目録4-③ Proliferae/有史以前の世界進出

    最も有名なカランコエはセイロンベンケイソウKalanchoe pinnataかも知れない。世界中とは言わないまでも、多数の温暖な国々に進出している。沖縄や小笠原など国内でも帰化している。マダガスカル原産だが、和名はセイロンベンケイソウである。帰化植物をスリランカ産だと思って名付けたのだろう。名前自体は悪くない。 諸々の情報を当たるとブリオフィルムの原産地を「マダガスカル、熱帯アフリカ」としている。この「熱帯アフリカ」というのは有史以前(といっても西洋基準なのでたかだか2,000年より前)にマダガスカルから大陸にもたらされたセイロンベンケイソウのことを指していると思われる。元ネタは特定できないが、最初に権威者が書いたものを盲目的に何十年も孫引きしてきたのだろう。この問題には今はこれ以上触れないが、昨年書いたクローンコエ同様の例である。  といいつつもこの種が大陸移動する前(1億年から7千万..

  • 街角のカランコエ;春の東京と埼玉

    4月からベランダのフレームにかけたビニールも外せて、カランコエのシーズンが始まる。同時に冬の間は出不精になっていて休眠していた家族サービスも再始動し、急に忙しくなる。 そんなわけで青山へ出向いて界隈を歩くと(1月の極寒の日々を乗り越えて)生き延びたカランコエ達を見ることができた。ベハレンシス、唐印、街角の花    また埼玉県の川越や近隣地へ行った時も、冬越ししたわけではないだろうが幾つか印象に残るカランコエを見たのでスナップしてみた。 街角で見た花もの   老舗うなぎ屋には八重咲きのウェンディ(サニーディ“Sunny balloon”)が 近郊の街の電器屋にはミラベラとキンチョウがあった  今回は何の意味もない内容だが、シーズン到来、ということでお茶を濁してみた。

  • 子宝草maniaへの道

    無理してマニアになろうとして、2年前から子宝草のコレクションというマニアの王道的な行動に走った。この仲間は栽培が容易な丈夫な種が多く、スペアの個体も不定芽で容易に増やせると思ったからだ。 ちょっと脱線して以前も書いたことを繰り返すが、月兎耳やその他ある種のカランコエのように千切れた葉の葉柄部から出芽したものも不定芽である。ただここでいう子宝草は葉縁に不定芽を複数生じるものを言っている。 話を戻して子宝草の類はいくらでも増えるから良いと考えていたが、思わぬ難しさがあることに気づいた。私はベランダ―なので、置き場所を有効活用するために3~4段のフレームの棚に鉢を置いている。すると自然と不定芽が下の鉢(や隣の鉢にも)落ちて芽吹くことがある。これがキンチョウやクローンコエのような特徴的な種であれば特に問題はない。しかし黒錦蝶や不死鳥の類だとどれも似たようで場合によっては成長しきっても判別が難しか..

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