どこでこの病室を監視していたのかわからないが、飯坂さんは病院の職員さんが昼食のトレーを回収した直後に、フラリと病室に現れた。「朝からずっとここでイチャイチャしてたの?」「違いますよ!イチャイチャなんかしてません!」「お前のGPS、朝から全く動いていないじゃないか」飯坂さんはお疲れのようだ。ちょっとアンニュイ空気を漂わせながらソファーに座った。最近はいつもスーツだけど、今日はフード付きの長袖パーカ...
今、僕にクリスマスの神さまが降りてきた。猛烈な勢いで資料を集めた。パソコンで水族館とかアクアリウムレストランとかバーとか検索しまくった。とにかくテーマカラーは「青」に変更だ。 翌日『タチバナ』の担当者は、僕の企画書を見て椅子から転がり落ちそうになった。新喜劇じゃあるまいし、大袈裟だよ。「大丈夫?」「は、はい。大丈夫です。ところで花岡店長。こ、これ本気ですか?」「当たり前でしょ?よろしくお願いしま...
★クリスマスは「まあちゃんで!」とHさまから元気の良いリクエストを頂きましたので!前編はクリスマスの前となります♪では、どうぞ!!【ブルー・ブルー・クリスマス】 世間は「もうすぐクリスマス」と騒いでいるけれど、僕は頭を抱えている。今年はクリスマスにはご遠慮願って、さっさとお正月に突入して欲しい気分だ。でもクリスマスは避けては通れないのだ。だって、僕は店長さんなのだから! 《インカローズ》が『S-five...
「飯坂さんたちが到着して、槌屋補佐と牧野さんが一瞬で3人片付けた。河野の人が犯人の車に俺と警備員さんを乗せて、ここに運んでくれたんだ」「そうだったの」「それで・・・」「犯人はどうなったの?」すでに"始末"されてしまったのかな?そう考えると一瞬寒気がした。飯坂さんはいつも飄々としていてスウェットの上下とかジーンズとかを着ていると、本当に"一般人"だ。顔立ちも優しげでとてもヤクザには見えない。だけど、彼も...
お屋敷を出る前に、洋子さんにだけは「もし今日、瀬尾さんが来ても中には入れないでください」とお願いした。「わかったわ」洋子さんはニコッとした。「昨日の今日ですもの、出入りしている業者さんにもしばらくはご遠慮願おうと思っていたの。食材は買いに行けば済む事ですからね。文ちゃんが車を使わないから、伊戸さんと一緒にお買い物に行って来るわ」「すみません」「いいのよ。奥さまにも国府田さんにも、当分の間は誰も中...
男の名前は山元。勝川の女から受け取った封筒を取り上げ、免許証で身元を確認した。「へえ~!なかなか立派な会社を経営しておられる。不動産会社にイベント会社、マンションが6棟か」「・・・」こめかみに押し付けられた銃口にビビった山元は返事に困っていた。それがわかってるはずなのに、牧野は日頃のストレス発散とばかりに背中で一纏めにしている山元の腕を捩じりあげる。「・・・ヒッ」「返事はどうした?」うわ・・・っ...
★目線は飯坂です。ちょっと面白いかな~と思って書き始めたんですが・・・まあ、自分で自分の首を絞めてるだけだったというwww。 滝山家に押し入り美術品を強奪したグループは、盗品オークションに盗んだ品を卸していた。「卸していた」とは文字通りで、オークション主催者はいくつかのグループと取引して盗品を集めていた。『オークション』とは言え、落札希望者が何人もいるわけではない。客からの"受注"である事の方が多いらし...
飯坂さんに電話をすると、1コールで出てくれた。『はい』「武村です!ありがとうございました!おかげで全員無事でした!警察には旦那さまが何もなかったとおっしゃったので、もう帰りましたよ。セキュリティ会社も警報器は誤作動だと連絡がありました。運転手さんと庭師さんにも誤作動と伝えています」『そうか』飯坂さんの声が沈んでいた。いつもの飯坂さんならもっと明るく、「感謝しろよ」くらいは言うと思ったんだけど。「...
真っ暗な室内。4人の心臓の音だけが耳に響く。心の中でどうか強盗が屋敷の中に入ってきませんように、と祈るだけだ。 電気が消えると同時に警報音も消えた。という事は、お屋敷全体のセキュリティシステムがダウンしているという事。しばらくの間は警官の巡回を多くすると聞いたが、その合間を狙って襲撃されたという事なのだろう。飯坂さんの様子からして、彼らがここに向かっているのは間違いない。外から聞こえる音は、飯坂...
そろそろ恭悟のバイトが終わる頃。僕はすでにベッドに入り、スマホを握って「バイト、終わったよ」という電話を待っている。 だが、今夜は電話よりも瀬尾さんの事が気に掛かっていた。瀬尾さんはどうして今日、お屋敷に来たのだろう。ベッドに横になっても考えるのはその事ばかりだった。瀬尾さんはお屋敷に入りたかったから、誰かが戻ってくるのを待っていたのだ。でも、どうして彼はお屋敷の中に入りたかったのだろう?「どう...
刑事さんが2回目に話しを聞きに来た時の事を思い出した。あの時は確か、「裏門で脚立を使ったか?」と「裏門の外灯の電球を取り替えたか?」と聞かれた。僕は「裏門の辺りでは脚立を使った記憶がない」、と答えた。国府田さんのノートも確認したが、最近僕が一人で脚立を使って作業をした、という記録はない。脚立を使うような作業は、必ず2人でやっている。国府田さんが脚立に上って、僕は下で支えたり落ちてきた枝を集めたり...
「国府田さーん!」「文ちゃん、ここだよ!」国府田さんは太鼓橋の向こうから大きく手を振った。僕が庭に下りると花子もちょこちょこと後から付いてくる。庭で迷子になると探すのが大変なので、太鼓橋を渡る直前で花子を抱き上げて国府田さんのいる所まで行った。「おっ、元気になったね。あの時はもうダメかと思ったよ」事件を思い出したのか、国府田さんは感慨深げに言った。「心配掛けてすみませんでした。おかげさまで良くなり...
瀬尾さんは白い猫の表紙の本を借りに来たのではない。お屋敷に入りたかっただけなのだ。僕は、そう確信した。 結局、瀬尾さんの言う本はなかった。「置いてある場所がわかる」というのは噓で、僕の本棚にそんな本はなかったのだ。「やっぱりない」瀬尾さんが帰った後、僕は部屋中の本の表紙を全てチェックした。貸していた本が今日返ってきたから、瀬尾さんに貸している本はない。全ての本を確認したが、白い猫が表紙になってい...
「どうしたの、急に」花子が暴れて瀬尾さんの腕から逃げ出した。花子はこちらを振り返りながら、リビングの方へと移動していく。「何でもない。ごめん」「でも・・・せ、和くんはクビにはならないと思うよ?さっきも言ったじゃないか。義道会長がここにお戻りになるから」「義道会長の家と文ちゃんの家庭教師、関係ある?」あっ、と思った瞬間に、瀬尾さんが僕の目の前まで来ていた。ヤカンからシュンシュンと湯気が出ている。「わ...
「本、ですか?タイトルはわかりますか?」「うーん?よく覚えてないんだけど、確か表紙に白い猫が描いてあったような」瀬尾さんは首を傾げた。記憶をめぐらすが、白い猫の表紙の本に心当たりがない。猫の表紙なら覚えていると思うんだけど。「表紙に白い猫・・・?ミステリーですよね?」「多分」そんな本があったかな?とびきり記憶力が良いわけではないが、悪いわけでもない。自分で買った本だ。タイトルを言ってもらえばすぐに...
弁当は好評だった。から揚げも玉子焼きももっとたくさん作れば良かった、と思うくらいたくさん食べてくれた。「隣の席の人の300円の定食が気になる」と言ったら、恭悟は「今度ね」と言ってくれて嬉しかった。 現場で『オギウラ建設』の管理人が作った弁当を食べていた恭悟と、今日の恭悟は全く別人のようだ。一品食べる度に「美味しいよ」と僕に笑顔を向ける。管理人の弁当を黙々と食べていた恭悟は全てが面倒臭そうで、何も...
快気祝いの食事会は賑やかに終わった。普段なら、昼間からアルコールを飲む事はない国府田さんに、「一本だけなら良いでしょう?」と洋子さんがビールの栓を開けて勧めた。奥さまと国府田さんは2人でビールを一本飲み、ご機嫌だった。余った料理は国府田さんの奥さんが持ち帰り、運転手さんのお宅にもおすそ分けだ。洋子さんと国府田さんの奥さんが後片付けをしている間に、僕は「座っていなさい」と言われて花子と遊んでいる。...
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