四季の肖像の作者が夢を追った青春の軌跡を小説にして記録していきます。シナリオ「この空の青さは」掲載。
「去年の冬休みのバイトがそもそもの始まりだあ。俺が見付けたアルバイトだぜ、言うならば俺は愛のキュ-ピットだな」「ぷっ。なんだか可愛くないキュ-ピットだなあ」「そんなこと言っていいのか。生涯の恩人になるかもしれん御人に対して」「ど-ゆ-ことだ?」 「そ-ゆ-ことだ・・・」 冬休みのアルバイトにと、そのとき康夫が見付けてきたのは、年末の御歳暮の出荷で忙しくなる大手デパートの配送センターの仕事であっ...
「鬼の首を獲る」そんなワードから始まったといえる私達のこの夢の旅路だが、一方それは初めから「鬼退治」の様相も暗示していた。怖いもの知らずの私達は、それを楽しみにさえしてその冒険に胸を弾ませ挑んだのである。 そして、その鬼の正体は、やはり「曖昧」であった。それは学生時代にブームで読んだ日本比較文化論からの集約ワードで、いわゆる「日本病」といわれるこの国の隅々に蔓延る病のその病原に違いない。 鬼の首...
相棒と私のプロデビューの時間差は、ちょうど半年であった。 私が先にスタートを切ったのだが、その間には実績としの差は殆んど何もない。それよりも寧ろ、私の上空には早くも暗雲が立ち込めていた。 もちろん、その上にはちゃんと青い空が広がっていて、それが一時的なものだと信じることが出来ていた。私の場合、それは想定内のものだったのであるが、やはり現実に直面するとなると、それはカルチャーショックというものに他...
「そうか、またあそこへ行くんだな」 留年友達の康男が、そう言って、正門前で、並んで歩く真壱の足取りを止めた。「ああっ」と屈託のない笑顔を見せて立ち止まる真壱。「今日は水曜日だからな。それにしてもそろそろ進展あるんだろうな」 「まあ自然の成り行きさ。自然さまさま、神様さまさまだ」 明るく微笑んだままそう言い放つ真壱に、つられたように微笑んでしまう康男だったが、しかし、すぐに苦笑いになった。...
信州の春は比較的おそい。少し標高のあるここ戸隠は五月に入ってやっと春らしくなる。木々の緑はどれもがまだ若く、芽を閉じたままのものさえ少なくない。遅咲きの花があるように、遅咲きの緑があるようだ。しかし、どの梢も穏やかな春の陽を浴びて、希望に満ちた新しい季節の到来iに歓びを隠しきれないことにその違いはない。 それにしても今日のこの春の空の青さはどうだ。「青春」という言葉は、人生において確かにこんな日...
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