心理学、神経科学(脳科学)などに関する面白い研究情報を掲載するブログです。
「癌になりにくい統合失調症、ダウン症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、ハンチントン舞踏病」や「誕生日に死亡するリスクは通常より高い」など面白い研究に関する記事ばかりですよ。
COVID-19パンデミック下でのリモートワークに際する雑音イライラ
仕事場での騒音は、作業活動やパフォーマンスに影響を与えるとされています。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの2020年3月〜5月の第一波でウイルスの感染拡大を防ぐため、イタリアでは多くの労働者がリモートワークを開始し始めました。 リモートワークといえば、家庭の騒音が気になるところです。なので、リモートワーク下での騒音によるいらいら知覚に関する理解を深めることが必要となります。 そこ…
今日の科学研究はどんどん学際的になってきていて、様々な分野の研究者が一緒に研究課題に取り組むことが多くなってきています。それに伴い多くの大学が新しい建物や研究所を通して、協力的な研究活動をサポートしようとしています。 そこで、今回紹介する論文では、2005年〜2015年のおよそ10年間におけるマサチューセッツ工科大学での研究協力に与える空間的近接性の影響を検証した研究を報告しています。 Miranda, A. S.…
脳卒中を発症してから2~3か月の間がリハビリで上肢の運動機能の回復が最も見込める期間となる
脳損傷を負ったヒトの脳機能を回復させることは、翻訳神経科学者にとっての研究課題の1つです。 げっ歯類での脳卒中回復研究では、脳卒中後の集中的運動訓練を実施するのに最適な感受期が見出されています。つまり、この感受期の間に課題特異的な運動訓練を実施すれば、ほぼ完全な回復が生じやすくなるのです。 そこで、今回取り上げる論文では、このげっ歯類での知見が脳卒中を起こしたヒト成人にも当てはまるかどうかを…
中二病経験者はイマジナリーフレンドやボーイ/ガールフレンドがいたことのある人が多い
中二病。それは、日本で使われる思春期独特の一過的な精神状態のことです。ですが、中二病の特徴や正確な定義はこれまで標準化されていません。 中二病に対する認識が深まれば、中二病の人にとって居心地が良い環境ができるに違いありません。そこで、中二病の特徴や関連する問題を調査することを目的とした研究が実施され、その結果が下記の論文にまとめられました。 Shimoda, M., Morimoto, K., Tanaka, Y., Yoshimori, …
自己制御(セルフコントロール)は一時の思考や情動、衝動を乗り越えて、長期的な目標を追求する際に威力を発揮します。 自己制御が上手い人は糖分が多い飲食物を我慢できるなど健康状態が良く、成功もしやすく、主観的幸福感(ウェルビーイング)も高い傾向にあり、自己制御が苦手な人は逆に健康状態が悪くなり、勉強よりもゲームを優先して学績が低くなるなど成功につながりにくく、主観的幸福感が高い人生を歩めるとはいえませ…
頭を使って精神的疲労が高まると、サッカー、バスケットボール、卓球が下手になる
要求水準が高い認知課題を長時間行うと、精神的疲労が生じます。精神的疲労が身体的パフォーマンスに与える効果はけっこう研究が進展している領域です。ですが、精神的疲労がスポーツでの、スキルの必要なパフォーマンスに与える効果についてはよく分かっていません。 そこで、今回紹介する論文では、精神的疲労がアスリートのスキルがかったパフォーマンスに与えるキャリーオーバー効果を検討するため、包括的な系統的レビュ…
クラスレベルのいじめ被害が低い方が被害児の抑うつ症状が悪化しやすいというパラドックス
クラス内でのいじめの低下は、いじめられ続けられている子供の社交不安、抑うつを悪化させるという先行研究(Garandeau et al., 2018)があります。今回紹介する論文は、クラス内でいじめ被害が低い方がいじめを受けている子供の抑うつが悪化しやすく、そのメカニズムに2つの可能性があることを指摘した内容となっています。 Pan, B., Li, T., Ji, L., Malamut, …
職場でのうつ病は個人的幸福感(ウェルビーイング)や生産性を下げる重要な要因となっています。それでうつ病の人が働いている企業の経済的成功にネガティブな影響をもたらします。 また、経済システム的には、うつ病が医療制度に与える重大な負荷に対処しなければなりません。 そこで、今回紹介する論文では、集団で働くか個人で働くかといった労働形式の違いがうつ病の人やうつ病の人を含む集団のウェルビーイング、生産性…
幸運の女神のように運を擬人化すると、経済的決定がリスキーになる
今回取り上げる論文に関わった研究チームは、運を客体化するよりも擬人化する方が、経済的な意思決定の際にリスキーになると考えました。また、この現象は運を人間のように扱うと「幸運の女神(lady luck)」の下でリスクを共有しているという知覚が得られるからだと考えました。 それで、運を擬人化する程度によってリスク下の意思決定がどう変わるかを検討した研究を実施し、下記の論文に報告しています。 Kulow, K. Krame…
突然の音信不通で人間関係を終わらせたことのある人はマキャヴェリズムやサイコパシーが高い
ダークトライアド特性、つまりサイコパシー、マキャヴェリズム、ナルシシズムが高い人の恋愛関係、性的関係の初期の頃や中間段階の研究についてはわりと調査がされています。ですが、関係の終了段階に関する研究はほとんどありません。 そこで、下記の論文では関係終了方略の1つ、"Ghosting"についてダークトライアド特性の役割を調査した研究を報告しています。なお、Ghostingとは、それまではいい感じだったのに、何の説明…
多くの学術分野では、毎年出版される論文数がどんどんと増加してきています。 科学者の人数、研究助成金、科学産物(公刊論文数)を増やすことを目的とした政策措置もとられています。これらの定量的測度は、研究者のキャリア軌跡や大学の学科、研究所さらにいえば国・地域の評価を決定します。 しかし、科学者の人数や論文数が増えたとして、それが知識の進展につながるのかに関しては不明です。 今回紹介する論文では、…
ヒトの乳児期における発声は、音声学習(発声学習)や言語獲得の重要な基礎となっていると考えられています。 全ての類人猿は甲高い声や鳴き声といった救難を求める音声や笑い声を発する点で共通しています。これらの発声の他に発話様音声という声のタイプもあります。こちらは、ヒトの乳児で認められ、他の類人猿ではないことはないけれども、稀です。 救難発声、笑い声、発話様音声という3種類の声は、類人猿の種間の比較…
権威主義は強いリーダーへの服従など、ネガティブに思われる側面があるにもかかわらず、なぜこの世からなくならないのか? 実は権威主義的価値観には生きがいが高まるというポジティブな側面もあるというのが、今回紹介する論文の内容です。 Womick, J., Eckelkamp, J., Luzzo, S., Ward, S. J., Baker, S. G., Salamun, A., & King, L. A. (2021). Exposure to authoritarian values leads to lower positive affect, hig…
他者との関係崩壊後は、その他者とのオンライン上のつながりやその履歴についてどうするのか決定する必要がでてきます。他者とのオンライン上のつながりや履歴は公になっている場合もあり、けっこう複雑な判断になることもありそうです。 そこで、今回取り上げる論文では、関係崩壊後の相手の動向のモニタリングや交流、投稿や写真の削除、かつてのパートナーの削除、相手の家族や友人の削除、ソーシャルメディアの使用停止、…
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に現在かかっている人や過去に罹患したことのある人に対する視線の向け方は、一度も罹患したことのない健康な人への視線の向け方と比較するとどうなのでしょうか? この疑問に挑むため、今回紹介するアイトラッキング研究が実施され、その結果が下記の論文に報告されました。 Federico, G., Ferrante, D., Marcatto, F., & Brandimonte, M. A. (2021). How the fear of COVID-19 change…
痛いとイライラして衝動的になったことはありませんか?イライラが媒介するかどうかはともかくとして、今回は身体的痛みでも心理的痛みでも、痛覚経験で遅れて手に入る大きな報酬(遅延大報酬)よりも今すぐ手に入る小さな報酬(即時小報酬)を選択するようになる、つまり衝動的になりやすいという実験結果を示した研究をとりあげます。 Chen, J., He, Z., Sun, Y., Xia, W., Liao, Z., & Yuan, J. (2021). Does pain make people…
クリエイティビティ(創造性)は生存や繁殖の上で有益だとされます。 これは、生存に関してはクリエイティブな行動で、これまでにない適切な方法で問題を解決することが可能になり、それによって少しでも長生きできるようになるためです。また、繁殖に関しては、クリエイティブな行動で絆の形成が促進され、創造性が自らの適応度のシグナルを構成し、配偶相手候補を惹きつけるのに役立つためです。 しかし、クリエイティビテ…
心の理論の訓練は心的状態の理解の向上だけでなく、孤独感の緩和にもつながる。だが…
会話に基づく訓練プログラムは心の理論を増強させるのに有効な方法として知られています。 しかし、心の理論を高めるとされる、そのような会話を用いた訓練プログラムが、他の心理学上の構成概念に与える効果について調査した研究は少ないのが現状です。 そこで、今回取り上げる論文では、心の理論の他に孤独感への影響も調べた研究を実施し、その結果を報告しています。 Caputi, M., Cugnata, F., & Brombin, C. (2021…
パレイドリアとは、青空に広がる雲などに顔や動物等のパターンを見取ってしまう視知覚現象のことです。この顔等のパターンを錯視のように知覚する現象は、もしかしたらクリエイティビティ(創造性)を評価する研究パラダイムとして使えるかもしれません。 そこで、今回紹介する論文では、パレイドリア産生、拡散的思考(発散的思考)、連合思考との間の関係を調べることを目的とした研究を実施しています。 Diana, L., Frei, M…
「中間の人」が左右どちらからも外集団成員だと認識されやすいメカニズム
社会的カテゴライズで、ヒトは「我々(内集団)」と「彼ら(外集団)」に二分する傾向があります。たとえば、政治的イデオロギーや皮膚の色といった連続的な属性で共和党派だとか民主党派だとかに分かれます。 この分極には共同体意識が生まれるなどのポジティブな側面だけでなく、集団間の対立の発生などのネガティブな側面もあります。 さらに、政治的イデオロギーの連続体スペクトラムの中間にいる人は、社会的カテゴライズ…
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック禍において、労働者の安全を守りながら、現場での活動を徐々に再開させていくために、多くの組織が従業員に日々の職場を柔軟に決定できる権限を与えています。ある時は自宅からリモートで、またある時はオフィスでといった具合にです。 しかし、どのような要因が、新型コロナのパンデミック中に日々の仕事場を自宅にするのかオフィスにするのかの決定に関わるのかについては、…
ソーシャルサポート授受のバランスが良いと全死因死亡リスクが低い
ソーシャルサポートを受けることや与えることの利点についての研究は数多くあります。しかし、他者に与えるサポートと他者から受けるサポートの間のバランスが身体的健康とどのような関係にあるかについての研究はほとんどありません。 そこで、今回紹介する論文の出番というわけです。 Chen, E., Lam, P. H., Finegood, E. D., Turiano, N. A., Mroczek, D. K., & Miller, G. E. (2021). The balance of giving versus re…
ワトソンら(Watson & Rayner, 1920)はいわゆる「アルバート坊や」の実験を行いました。アルバートという名前だとされている生後11ヶ月の乳児に白ネズミと大きな音を対呈示する手続きを繰り返すと、最初は怖がっていなかった白ネズミに対しても恐怖反応を示すようになったという心理学では有名な実験です。さらには、白ネズミだけでなく、ウサギや毛皮のコートなど、白ネズミと似た特徴を持つ動物や物に対しても恐怖反応を示すよ…
進化心理学。それは心理学の中でも特に議論が紛糾しやすい分野の1つとなっています。特に、ヒトの配偶者選好の性差に関する生物学的基盤についてのお話に関しては、論争の嵐です。 では、いったいどんな人が進化心理学(の理論)を支持するのでしょうか? この問いに答えるため、今回取り上げる論文の研究チームは動機づけされた推論の理論を使って、理論のある種の側面で最も特権を受けやすい人が、当該の理論を最も支持す…
皆さんは、他者の注意状態の影響を受けた経験はないでしょうか?集中力が高い人がそばにいたら集中できたといった経験や注意散漫の状態の人がそばにいたら、集中できなかったり。 今回紹介する研究は「注意の伝染」という新たな現象を報告するものです。注意の伝染とは、集団メンバーの間で注意深い状態または不注意の状態が拡散するというものです。 Forrin, N. D., Huynh, A. C., Smith, A. C., Cyr, E. N., McLean, D. …
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大のために、2020年から対面での会議は避け、ビデオ会議が要請されるようになりました。特に自宅待機要請/命令の発出にともない、外出を避け、テレワークが推奨され、自宅から議題を話し合うビデオ会議が従来よりも普及しました。 しかし、ビデオ会議が与える精神的影響やそのメカニズムについての研究は不足しているのが現状です。心理学的な研究をするには、まずなによりも尺度が…
新ブログ『心理学・脳科学・動物行動学アブストラクト』開設のお知らせ
このたび、拙ブログの管理人、マーキュリー2世は『心理学・脳科学・動物行動学アブストラクト』という新たなブログを立ち上げました。これは、私のTwitterアカウント(@uranus_2)が過去に凍結処分されたことがあったことに起因するものです(現在は異議申し立てが認められたため、凍結解除となりました)。
ロボット工学における技術の進歩により、ヒトとは見分けがつかないロボットがすでに製造できています。これによって、不気味の谷現象が克服されつつあります。 不気味の谷現象とは、見た目がある程度実際のヒトに似ているヒューマノイドロボットを見ると、嫌悪感等の不快感情が生じる現象のことです。 ただ、冒頭に述べたように同じ容姿のヒューマノイドロボットを製造する技術が進展して、大量生産されるようになり、あり…
赤ちゃんには幽霊が見えているという研究があります(嘘です)。次からが真面目な話です。 視知覚は純粋なフィードフォワード経路によるのではなく、視覚皮質における再帰ループが重要な役割を担っているとされます。しかし、再帰ループの発達についての研究は進展していません。 ところで、視覚では逆行マスキング現象が生じることが知られています。逆行マスキングとは、後続するマスク刺激によって視覚刺激が見えなくなる…
映像共有型ソーシャルネットワーキングにおける2種類の「可愛い」
ビデオ映像共有ソーシャルネットワーキング(Video Sharing-Social Networking,VS-SN)サービスは新しいコミュニケーション・ツールで、特に若者の間で人気です。 今回紹介する研究の目的は、そんなVS-SNサービスでシェアされている映像での「可愛い」文化的脚色および視聴者ユーザの、内容をシェアする社会的接近動機づけへの効果を調査することにありました。 Urakami, J., Qie, N., Kang, X., & Rau, P-L. P. (2021). Cul…
サイコパスは相手へ頭部を向けたままで、頭を動かすことが少ない
臨床家は、司法面接中にサイコパシー特性が高い人が、目で見てわかる独特の対人的スタイルを示すことにずいぶん前から気づいていました。 で、本当にそんな高サイコパシー特性者(サイコパス)が独特の対人スタイルを示すのか?という疑問に挑んだ研究があります。 Gullapalli, A. R., Anderson, N. E., Yerramsetty, R., Harenski, C. L., & Kiehl, K. A. (2021). Quantifying the psychopathic stare: Automated assessmen…
朝型は早い時間帯に社会的機会が多い故に向社会的行動と共感が高い
社会的行動は1日を通じてサーカディアンリズム(概日リズム)に則ったようなパターンを示すとされます。ですが、その研究上のエビデンスは混在しています。 そこで、日常行動への概日効果の影響を参加者内で検証した研究が実施され、下記の論文に報告されました。 Francis, Z., Depow, G., & Inzlicht, M. (2021). Do early birds share their worms? How prosocial behaviour and empathy vary across the day. Journal …
陰茎骨がホモ・サピエンスで消失した進化史を説明する新たな仮説
ほとんどの霊長類や他の全ての大型類人猿とは違って、現生人類のホモ・サピエンスには「陰茎骨」がありません。 今回紹介する論文では、ヒトに陰茎骨がない事実を説明するためにこれまでに提案されてきた仮説の欠点を議論しています。論文著者によれば、これまでの仮説ではヒトに陰茎骨がないことを完全に説明することはできないそうです。つまり、ホモ・サピエンスで陰茎骨が消失した進化史は謎に包まれているのです。 そ…
宗教の信仰や信仰関連行動(礼拝に参加など)とペットの飼育との関係を調べた研究があります。 Perry, S. L., & Burge, R. P. (2020). How Religion Predicts Pet Ownership in the United States. Journal for the Scientific Study of Religion, 59(1), 190-201. doi: 10.1111/jssr.12637 アメリカのオクラホマ大学社会学科、イースタンイリノイ大学政治学科の研究者2名による共著論文です。 アメリカ人…
子供の幸運概念の発達経過を調べた研究があります。英語の原著論文では"luck"で、もしかしたら運と訳した方が適切かもしれませんが、この記事では幸運とすることにします。 Woolley, J. D., & Kelley, K. A. (2020). “When something like a ladybug lands on you”: Origins and development of the concept of luck. Developmental Psychology, 56(10), 1866–1878. doi: 10.1037/dev0001104 アメリカの…
州知事が女性だと新型コロナウイルス感染症による死亡リスクが低い
東京都の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関する陣頭指揮者は小池百合子都知事です。ただ、本記事掲載時点では、小池都知事は過度の疲労で静養中だとか。話が逸れてしまいましたが、では、知事の性別は自治体の新型コロナの被害に影響するのでしょうか?というのが今回の論文の主題です。 Sergent, K., & Stajkovic, A. D. (2020). Women’s leadership is associated with fewer deaths during the COVID-19 crisis…
痛覚を経験すると、以前に行った悪事に対する罪悪感が減るという先行研究があります。今回は、他者の痛みを見ても罪悪感が低下するかどうかを調べた研究をとりあげます。 Bocian, K., & Baryla, W. (2020). Pain(less) cleansing: Watching other people in pain reduces guilt and sadness but not shame. PLoS ONE, 15(12): e0244429. doi: journal.pone.0244429 ポーランドのSWPS大学(社会科学人文学大…
アカデミックの世界では様々な分野で女性研究者よりも男性研究者の方が出版する論文数が多くなることが知られています。なぜこんなことになるのか正確なところは分かっていませんが、1つの説明として子供ができること(親になること)、親であることの学術キャリアへの影響に性差がある可能性が指摘されています。 ところが、適切なデータがないため、養育負担の男女差仮説を検証することが難しいのが現状です。この問題に取り…
いやはやこのブログの更新頻度が低迷している間に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが猛威をふるう世の中になってしまいましたね。大げさにいえば、ワクチンがなければ人類が絶滅してしまうくらいに。日本では緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令、延長、発令地域の拡大、出口戦略、さらには東京オリンピック・パラリンピックの開催の可否などが世相をにぎわせています。英国型の変異株だとかインド型の変…
Psychological Science掲載論文は理論に基づいた研究になっていない
心理学界では知らない人はいない(はずの)"Psychological Science"はトップジャーナルの内の1つです。しかし、この心理学ジャーナルが掲載している論文の多くは理論に基づいた研究を報告したものにはなっていないのではないかという問題を提起した文献があります。 McPhetres, J., Albayrak-Aydemir, N., Barbosa Mendes, A., Chow, E .C., Gonzalez-Marquez, P., Loukras, E., Maus, A., O’Mahony, A., Pomareda, C., Primbs…
男性のあそこがもっこりしていると、主体感を低く感じ、彼を雇いたくなくなるという研究があります。男子就活生は、面接で大事なところの状態に気を付ける必要がありそうです(緊張でそんなことになることは稀だと思いますが。。。)。 Górska, P., Budziszewska, M., Marchlewska, M., Stefaniak, A., Malinowska, K., & Kuzawińska, O. (2020). An Experiencer, An Animal or An Object? Erection Salience Decreases Men…
ダンバー数とは、ヒトは認知的限界のために、だいたい150人ぐらいが安定的な社会的関係を送る上での上限であるという数字のことです。社会的関係に新皮質が重要な役割を果たしているとされ、そのサイズが霊長類の脳によって維持できる安定的な社会的関係の上限数を決めるとされます。 ダンバー数の150という数字は、霊長類の集団サイズと新皮質の相対サイズとの間の関係をヒトにも当てはめて得られた値です。これまでの追試研…
ヒトのDMNに相同な自発的低周波数振動が植物も含めた様々な生物にある
ヒドラとは淡水に生息する刺胞動物のことですが、細胞生物学、発生生物学のモデル動物として活用されています。ヒドラは微生物学の父、アントニ・ファン・レーウェンフックが1702年に発見したとされています。ただ、レーウェンフックは様々な生物を研究対象としており、その中にヒドラがあるだけでした。ヒドラの研究を精力的に行ったのは、アブラハム・トランブレーというスイスの博物学者です。トランブレーはヒドラの再生実験…
研究への参加自体に遺伝の影響があり、そのSNP遺伝率は母親で20–27%、子供で18–32%という研究があります。 Taylor, A. E., Jones, H. J., Sallis, H., Euesden, J., Stergiakouli, E., Davies, N. M., Zammit, S., Lawlor, D. A., Munafò, M. R., Smith, G. D., & Tilling, K. (2018). Exploring the association of genetic factors with participation in the Avon Longitudinal Study of Parents and Children. Int…
統合失調症の遺伝的リスクが高い人(ここでは特に子供)からのデータ収集は難しいという研究があります。 Martin, J., Tilling, K., Hubbard, L., Stergiakouli, E., Thapar, A., Smith, G. D., O'Donovan, M. C., & Zammit, S. (2016). Association of genetic risk for schizophrenia with nonparticipation over time in a population-based cohort study. American Journal of Epidemiology, 183(12), 1149…
初デートで「あーん」をしたカップルは、2回目のデートをしたいと思うことが多いという研究があります。 Hendrie, C., & Shirley, I. (2019). Courtship-feeding in the ‘First Dates’ restaurant is highly predictive of a second date. Appetite, 141, 104329, doi:10.1016/j.appet.2019.104329. イギリスのリーズ大学心理学科の研究者2名による共著論文です。 海外テレビのリアリティー番組に、"…
今回は、バスの無料乗車券の導入は高齢者の認知機能の向上につながるかもしれないという論文を取り上げます。 Reinhard, E., Carrino, L., Courtin, E., van Lenthe, F. J., & Avendano, M. (2019). Public Transportation Use and Cognitive Function in Older Age: A Quasiexperimental Evaluation of the Free Bus Pass Policy in the United Kingdom. American Journal of Epidemiology, 188(10), 1774-1…
授業の前に頭の体操を行うと、試験の成績が上がるという研究があります。 White, H. A., & Highfill, L. E. (2019). Cognitive Exercise Boosts Exam Performance in an Introductory Psychology Course. Teaching of Psychology, 46(2), 135-139. doi:10.1177/0098628319834196. アメリカのミシガン大学心理学部、フロリダ州のエッカード大学心理学部比較心理学ラボの研究者2名による共著論文です。 …
1年もあとわずかとなる10月〜12月の間に出版された論文は引用されにくいという研究があります。著者は、この現象を「引用の落とし穴(citation trap)」と表現しました。検索エンジンの「不具合」が引用の落とし穴の原因だと著者は指摘しています。ただ、今回の解析は経済学の論文を対象としたもので、他の分野でも同様の傾向があるかどうか、さらなる研究が必要です。 *現在はプレプリントが普及しているので、場合によって…
片思いは強い感覚刺激を生む選択肢に対する選好を高める、という研究があります。 Huang, X. I., Dong, P., & Zhang, M. (2019). Crush on you: Romantic crushes increase consumers’ preferences for strong sensory stimuli. Journal of Consumer Research, 46(1), 53-68. doi:10.1093/jcr/ucy053. シンガポールの南洋理工大学南洋ビジネススクールマーケティング部門、アメリカのノースウェスタン大学…
金曜日に通知表を交付すると、土曜日に子供への身体的虐待が多いという研究があります。 Bright, M. A., Lynne, S. D., Masyn, K. E., Waldman, M. R., Graber, J., & Alexander, R. (2019). Association of Friday school report card release with Saturday incidence rates of agency-verified physical child abuse. JAMA Pediatrics, 173(2), 176-182. doi:10.1001/jamapediatrics.2018.4346. アメリ…
今回は、「カッコウナマズ」という魚の驚異の托卵戦略に関するお話です。何がどのように驚異かは読んでのお楽しみです。 Polačik, M., Reichard, M., Smith, C., & Blažek, R. (2019). Parasitic cuckoo catfish exploit parental responses to stray offspring. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, 374(1769):20180412. doi:10.1098/rstb.2018.0412. チェコ共和…
セイヨウミツバチは急な旋回時に速度を落とし、遠心力を体重のおよそ30%に維持している、との研究があります。急な方向転換をする時にスピードを落とさないと「横滑り」しやすくなるので、それを防止するために遠心力を調整していると考えられます。 Mahadeeswara, M. Y., & Srinivasan, M. V. (2018). Coordinated Turning Behaviour of Loitering Honeybees. Scientific Reports, 8:16942. doi:10.1038/s41…
メスの魚には好きでもないオスと付き合うと、悲観的になる種がいるという研究があります。 Laubu, C., Louâpre, P., & Dechaume-Moncharmont, F. X. (2019). Pair-bonding influences affective state in a monogamous fish species. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 286(1904):20190760. doi:10.1098/rspb.2019.0760. フランスのブルゴーニュ=フランシュ=コンテ大学とフラ…
今回は相利共生関係の進化がどのように生じるのか実験的に検証した研究です。 Harcombe, W. R., Chacón, J. M., Adamowicz, E. M., Chubiz, L. M., & Marx, C. J. (2018). Evolution of bidirectional costly mutualism from byproduct consumption. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 115(47), 12000-12004. doi:10.1073/pnas.1810949115. ミネソタ…
我々はあらゆる人と平等に交流しているわけではありません。ある特定の相手との交流が多かったり少なかったりします。今回は、そのような交流バイアスが協力を高め、記憶違いによる協力率の低下も緩和するという研究です。 Stevens, J. R., Woike, J. K., Schooler, L. J., Lindner, S., & Pachur, T. (2018). Social contact patterns can buffer costs of forgetting in the evolution of cooperation. Proceedings o…
協力と認知は共進化できるという研究があります。つまり、協力と認知(機能)はともに高めあう関係になり得るのです。 dos Santos, M., & West, S. A. (2018). The coevolution of cooperation and cognition in humans. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 285:20180723. DOI: 10.1098/rspb.2018.0723. イギリスのオックスフォード大学動物学研究科の研究者2名による論文…
1人だけよりも、互いに社会的絆を共有していない2者による共同意思決定の方が倫理性が低い、という研究があります。論文によれば、2者での共同的な倫理違反が、相手と社会的絆を形成する手段になっているとのこと。「赤信号みんなで渡れば怖くない」といわれますが、そもそもなぜみんなで赤信号を渡る必要があるのか?その背景には、みんなとの社会的絆を形成、強化したいという願いがあるのかもしれません。 Nikolova, H.,…
睡眠問題が重い人はお金より睡眠に関する質問に答えることを優先する
睡眠問題が重い人は金銭獲得よりも睡眠に関する質問に答えることを優先する、という研究があります。 Takano, K., & Raes, F. (2018). Subjective sleep disturbances are associated with intrinsic motivation toward sleep-related thinking. Behaviour Research & Therapy, 100, 30-36. doi:10.1016/j.brat.2017.11.002. ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン校心理学臨床…
地域住民がネット検索を行う際のコンピュータキーボードのタイピング速度が自動車事故死亡率を予測する、という研究があります。また、少なくともカリフォルニア州の5大都では、普通なら寝ているはずの時間帯でタイピングが遅くなりやすく、交通事故も多い傾向にあるとのことです。 Althoff, T., Horvitz, E., & White, R. W. (2018). Psychomotor function measured via online activity predicts motor vehicle fatality ri…
音楽の幸福、悲しみは1人の方が強く感じやすい、という研究があります。 Zhang, J., Yang, T., Bao, Y., Li, H., Pöppel, E., & Silveira, S. (2018). Sadness and happiness are amplified in solitary listening to music. Cognitive Processing, 19(1), 133-139. doi:10.1007/s10339-017-0832-7. 中華人民共和国の北京大学心理学認知科学部北京行動精神衛生重点実験室、ドイツのルートヴィ…
女性の初産年齢は母親からだけでなく、父親からも遺伝するという研究があります。母親による遺伝効果だけだと、初めて赤ちゃんを産む年齢の遺伝率は13%と推定されますが、父親からの間接的遺伝効果を考慮すると、総遺伝率は25%に上昇します。なお、夫=父親とは限りませんが、本論文では初産の父親を夫としています。 Evans, S. R., Waldvogel, D., Vasiljevic, N., & Postma, E.(2018). Heritable spouse effects increase ev…
バスの無料乗車券で高齢者の抑うつ、孤独感が低下、ボランティア等が増加
バスの無料乗車券の受給資格に該当する高齢者は、公共交通機関の利用を通して、抑うつ、孤独感が低くなり、ボランティアや子供・友達との定期的コンタクトが多くなるという研究があります。 Reinhard, E., Courtin, E., van Lenthe, F. J., & Avendano, M. (2018). Public transport policy, social engagement and mental health in older age: a quasi-experimental evaluation of free bus passes in England. Journ…
青い病院パジャマは大うつ病エピソード患者の重篤度を重く感じさせる
青い病院パジャマ(患者衣)を大うつ病エピソード患者が着用していると、精神科医は患者をより重篤だと評定する、という研究があります(患者衣着用は患者自身の抑うつ評定に影響しませんでした)。このことを論文著者は、患者衣症候群/青いパジャマ症候群(blue pyjama syndrome)と名付けました。医者の白衣を見ると血圧が上がる白衣症候群(白衣高血圧)をもじっているのかもしれません。 以下、パジャマと表記しますが、これは…
顔が大学の成績を予測する、という研究があります。もっと細かいことを書くと、顔の横幅と高さの比率が高いほど経済学商学部の学生で数学が少ない科目の成績が高いという結果が得られました。数学を使う科目では顔で成績の予測ができませんでした。 Kausel, E. E., Ventura, S.,“Pacha”Vargas, M., Díaz, D., & Vicencio, F.(2018). Does facial structure predict academic performance? Personality & Individual …
情動制御には認知的制御が必要な方法があります。しかし、認知的制御は前頭前野からのトップダウン制御が必要で、ストレス状況では困難になるとされます。つまり、情動制御が必要なストレス状況でこそ、認知的制御が難しくなるというパラドックスがあるのです。この限界を克服する方法として、「情動による情動制御」が提案されています。 情動による情動制御方略は中国哲学(中哲)や中国医学(東洋医学・中国伝統医学)に基づく…
伝統的な主観的ウェルビーイング研究によれば、経験する情動が快なほど幸せだとされます。一方、アリストテレスによると、経験したい情動が強いほど幸せだとされます。いったいどっちが正しいのでしょうか?それとも(文脈によっては)両方とも正しいといえるのでしょうか?今回はこの問題に取り組んだ研究をご紹介します。 Tamir, M., Schwartz, S. H., Oishi, S., & Kim, M. Y. (2017). The secret to happiness: Feeling g…
DV男性が被害者役をVRで体験すると、女性の恐怖顔の認知力が上昇
配偶者暴力・夫婦間暴力・恋人間暴力(Domestic Violence,DV)をする男性は女性の恐怖表情の認知が苦手で、彼らがバーチャルリアリティー(Virtual Reality,VR)で被害者の女性になって言語的暴力や身体的暴力を経験すると、女性の恐怖表情の認知力が向上する、という研究があります。また、DVをする男性は、女性/男性の恐怖表情を幸福(笑顔)だと判断するバイアスが高く、このバイアスもVR体験後に低下するそうです。 Seinfeld,…
予想通りの表情だと好感度や信頼性が高まる、という研究があります。 Chanes, L., Wormwood, J. B., Betz, N., & Barrett, L. F. (2018). Facial expression predictions as drivers of social perception. Journal of Personality & Social Psychology, 114(3), 380-396. doi: 10.1037/pspa0000108. アメリカのノースイースタン大学心理学研究室の研究者による論文です。 神経科学の知見に…
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