翌日の午後、約束したとおり、茅葺五郎の経営するモデル事務所を訪れた和夫は、名刺に記されていたビルの7階にあるオフィスのドアをノックした。 わりと大きな事務所で…
短編ドラマ「切れない糸」その⑰(ショートストーリー1221)
いつもより早く目覚めた好次朗は、昨日、典子が誰かに尾行されていた話や脅迫めいた電話のことを思い出しながら、隣りで体を寄せて眠っている典子の寝顔を見つめた。 「…
短編ドラマ「切れない糸」その⑯(ショートストーリー1220)
2か月ほど経った夏の暑い日 典子は勤めていた装飾デザイン会社を辞め、9月上旬のスイス移住に向けて準備を始めた。 貴子のマンションで3人が会った時以来、好次朗は…
短編ドラマ「切れない糸」その⑮(ショートストーリー1219)
ホテルを出た車は、二人の棲み処ではなく、街のほうへ向かっていた。 「好次朗さん、こっちは家と逆方向よ。...道、間違えたの?」 典子が心配げな表情で、そう訊い…
短編ドラマ「切れない糸」その⑭(ショートストーリー1218)
貴子と好次朗に挟まれるように抱かれながら、典子は得も言われぬ悦びに包まれていた。 それは自分でも戸惑ってしまうほど思いがけない気づきであり、新たな自分を見つけ…
短編ドラマ「切れない糸」その⑬(ショートストーリー1217)
「典子!落ち着くんだ。...俺が悪かった!謝る!」 喉元に刃物を突きつけられた好次朗は、鬼気迫る形相の典子に言った。 「あなたは間違ってるわ!こんなの愛でも何…
短編ドラマ「切れない糸」その⑬(ショートストーリー1217)
「典子!落ち着くんだ。...俺が悪かった!謝る!」 喉元に刃物を突きつけられた好次朗は、鬼気迫る形相の典子に言った。 「あなたは間違ってるわ!こんなの愛でも何…
短編ドラマ「切れない糸」その⑫(ショートストーリー1216)
貴子は不敵な笑みを浮かべながら携帯の電源を切ると、ソファーでくつろぐ好次朗の膝に座り、甘えるような声で言った。 「典子も、じきに来るわよ。私たち3人、うまくや…
短編ドラマ「切れない糸」その⑪(ショートストーリー1215)
恵美が帰った後、好次朗と典子は、しばらくの間、無言になった。 典子と貴子が友情を越えた、ある種の愛によって繋がっていることを、好次朗は、まだ現実として消化しき…
短編ドラマ「切れない糸」その⑩(ショートストーリー1214)
典子は恵美に対し、貴子と好次朗と自分の関係について正直に包み隠さず話した。 この場で典子が、そんな話しをするとは思ってもみなかった好次朗は、恵美以上に驚きを隠…
短編ドラマ「切れない糸」その⑨(ショートストーリー1213)
ホテルでの昼食の後、貴子と別れて家路へと向かう典子の脳裏に、ふと好次朗の顔が浮かんだ。 「いったい、なんて言えば...」 幾度となく、心でそう呟く典子の足取り…
短編ドラマ「切れない糸」その⑧(ショートストーリー1212)
典子は貴子を見つめながら我に戻ると、口を開いた。 「私も貴子のことは大好きよ。でも、好次朗のことは、それ以上に大好きなの。貴子は親友であって、恋人にはなれない…
短編ドラマ「切れない糸」その⑦(ショートストーリー1211)
帝都ホテルのラウンジに約束の時刻丁度に訪れた典子は、赤いドレスを着た貴子をすぐ見つけると、平静を装い、近づいて挨拶をした。 「典子、わざわざ呼び出したりして、…
短編ドラマ「切れない糸」その⑥(ショートストーリー1210)
典子のもとに貴子から電話があったのは、それから3日後のことだった。 貴子の声は、意外にも陽気で明るかった。 もともと友人同士の二人ゆえに、典子も学生時代のよう…
短編ドラマ「切れない糸」その⑤(ショートストーリー1209)
玄関で、うなだれ泣いている典子を介助しながら、どうにか寝室まで連れて行くと、ベッドに座らせた典子に好次朗が訊いた。 「何があったのか教えてほしい。その頬のアザ…
短編ドラマ「切れない糸」その④(ショートストーリー1208)
好次朗の首筋を伝う貴子のしなやかな指を、好次朗は手で掴むと、言った。 「帰るよ。」 「どういうこと?」 好次朗の態度が急変したことに驚きを隠せず、貴子は不安気…
短編ドラマ「切れない糸」その③(ショートストーリー1207)
情事を終えると、好次朗は胸に頬をつけ目を閉じている貴子のおでこにキスをし、強く抱きしめた。 「明日の朝食、何にする?」 目を開けた貴子が虚ろな眼差しで好次朗を…
短編ドラマ「切れない糸」その②(ショートストーリー1206)
タワーマンションの最上階でエレベーターが止まると、好次朗の腕に抱かれた貴子は、顔を見上げ、意味深な笑みを見せた。 「なんだい?貴子」 「うふふ、べつに...。…
短編ドラマ「切れない糸」その①(ショートストーリー1205)
「典子、夕べは随分遅かったじゃないか?最近、帰宅時間が零時を過ぎる日が続いているが、そんな遅くまで、いったい何をしているんだ?...」 2年ほど前から同居し、…
瑠璃子は担当している講義を終えると、講堂を出て、大学キャンパスの中にある芝生の広場へと向かった。 そこにあるベンチに座り、お手製のランチを食べるのが習慣になっ…
紗英子は暫く沈黙した後、缶ビールを一口飲んで言った。 「もう喜美子とは別れて!知っているのよ私。...あなたが数年前から喜美子と“いい関係”だってこと。」 軽…
私は駅から15分ほど歩き、貴子がよく行くフィットネスジム2階にある喫茶室で彼女を待った。 奇遇にも私は貴子の住む街の近くまで来ていたこともあり、割りとすぐ会う…
貴子から着信があったのは10年ぶりのことであった。 電車から降り、改札を出たところで、私は、貴子に電話をかけた。久しぶりの相手だけに、私は少し緊張していた。 …
まだ秋だというのに、日暮れ間近に小雪が降り始めた港近くの街。 健二はコートに両手を突っ込んで、足早に歩いていると、路地裏に小さな中華料理屋を見つけた。 咥えて…
「韓流スターがそんなに好きなら、この家から出て行け!その韓流野郎と一緒になればいいだろう!」 幸次は、持っていた新聞紙を床に叩きつけると、ソファーから立ち上が…
「どうして、ついて来ちゃったんだろう?」 明日香は、オートバイのタンデムシートに座り、真治の腰に両手を回している自分が不思議に思えた。 「どう?怖くない?..…
「もう別れられない関係なのよ!私とあなたは。」 美雪は、そう言うとバッグの中から婚姻届けの用紙を取り出し、宅造の前に差し出した。 「なんだこれ?...婚姻届け…
「あなた、誰と会ってたの?随分、嬉しそうじゃない。」 ドアを開け帰宅すると、玄関で帰りを待っていたかのように立っている奈美子が突然そう言った。 「お前には関係…
雨降る真夜中の静寂を切り裂くように、電話のベルが部屋に鳴り響いた。 健二はベッドから飛び起きると、慌てて受話器をとった。 「もしもし!俺だ。...もう着いたの…
「いつになったら結婚してくれるの?私達、付き合って、もう7年になるのよ。」 乃里子はそう言うと、リモコンでテレビの電源をオフにした。 ソファーに寝そべって、プ…
青い空が眩しく見えた、あの夏...。 亜由美は、いつものように彼と手を繋いで、いつもの海岸通りを歩いていた。 8月にしては、少しばかり肌寒い潮風が、不安な亜由…
豆腐屋の角を曲がると、50mほど進んだ先に、街のオアシスとも言うべき森が広がっている。 ここは人為的に作られた公園などではなく、昔から自然に残っている森なので…
「もう、お別れだね。...なんか今日まで、あっという間に過ぎていった気がする。」 繁美はそう言うと、手提げバッグの中から借りていた本を取り出し、純平に差し出し…
定刻より10分遅れで現れた雄介に、亜希子は表情ひとつ変えずに目を向けると、歩き始めた。 「ごめん、車が途中でエンストしちゃってさ。」 隣りに来てそう言う雄介の…
車を路肩に寄せ、停まると、助手席の紀子が怒りを露わにした。 「ここで降ろして!もう、あなたとはお終いよ!」 紀子は、そう言い放つと、ドアを開けて出て行こうと…
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翌日の午後、約束したとおり、茅葺五郎の経営するモデル事務所を訪れた和夫は、名刺に記されていたビルの7階にあるオフィスのドアをノックした。 わりと大きな事務所で…
「私と縒りを戻したい?今さら何を言い出すの?」 カフェの2階席で小春日和の陽光を右頬に浴びた法子が、怪訝そうな目つきでそう言った。 「分かっている。俺の身勝…
由美は大学の講義を受け終えると、正門前でタクシーを拾い、赤坂のレストランに向かった。 まだ陽射しは高く、冬にしては風ひとつない穏やかな小春日和の木曜日だった。…
「ねぇ?本当に驚かない?」 助手席の乃梨子は、ストローでシェイクを一口飲んだ後、運転席の恋次郎を見つめ、そう言った。 「驚きませんから勿体ぶらないで、早く言っ…
「いつまでも若い男に、うつつを抜かしおって!こうしてくれるわい!」 饅次郎は声を荒げて言うと、妻、乃理子の着物の帯をほどき、思いっきり引っ張り始めた。 「おや…
紀子は大通りでタクシーを拾うと、運転手に空港へ向かうよう言った。 半年ぶりに帰国する恋人、俊也を迎えに行く為だ。 俊也は韓国で輸入雑貨のバイヤーをしており、現…
弥恵子は深夜2時頃、私が就寝中だと思い、気を遣って合鍵でドアを開け帰宅した。 私は彼女が帰るまで起きているつもりだったので、寝室で本を読みながら待っていた。 …
「今夜は少し遅くなるから、外食でもしてきてください。」 外出する間際に、妻の弥恵子が独り言のようにそう言い、玄関ドアを開けた。 「仕事か?それとも君らしくもな…
貴子はアクセルを緩めることなく、急な山道を猛スピードで暴走し続けた。 カーブでは、タイヤが滑ってスキール音を立てながら、辛うじて曲がってゆく。 助手席の好次朗…
翌日、好次朗は時間の合間を見て街へと車を走らせた。 典子にはテーブルクロスを買いに行くと言ってきたが、実際には貴子に会いに行く為であった。 昨晩の電話で、貴子…
チューリッヒ市内でタクシーに乗った好次朗と典子は、運転手に新居のある町まで行くよう伝えた。 その町は湖畔にある小さな農村で、日本からの移民は好次朗らが初めてで…
「あ~ら、奇遇ね。...まさか、こんな場所で会うなんて。」 その声、そしてその顔。そこにいたのは紛れもなく貴子であった。 「昨日から典子を尾行し、俺に脅迫めい…
搭乗手続きを済ませた二人は、足早に国際線の搭乗口へと向かい、あと20分後に迫った離陸の時を、今か今かと待ちわびていた。 「離陸さえしてしまえば、もう誰も邪魔…
いつもより早く目覚めた好次朗は、昨日、典子が誰かに尾行されていた話や脅迫めいた電話のことを思い出しながら、隣りで体を寄せて眠っている典子の寝顔を見つめた。 「…
2か月ほど経った夏の暑い日 典子は勤めていた装飾デザイン会社を辞め、9月上旬のスイス移住に向けて準備を始めた。 貴子のマンションで3人が会った時以来、好次朗は…
ホテルを出た車は、二人の棲み処ではなく、街のほうへ向かっていた。 「好次朗さん、こっちは家と逆方向よ。...道、間違えたの?」 典子が心配げな表情で、そう訊い…
貴子と好次朗に挟まれるように抱かれながら、典子は得も言われぬ悦びに包まれていた。 それは自分でも戸惑ってしまうほど思いがけない気づきであり、新たな自分を見つけ…
「典子!落ち着くんだ。...俺が悪かった!謝る!」 喉元に刃物を突きつけられた好次朗は、鬼気迫る形相の典子に言った。 「あなたは間違ってるわ!こんなの愛でも何…
「典子!落ち着くんだ。...俺が悪かった!謝る!」 喉元に刃物を突きつけられた好次朗は、鬼気迫る形相の典子に言った。 「あなたは間違ってるわ!こんなの愛でも何…
貴子は不敵な笑みを浮かべながら携帯の電源を切ると、ソファーでくつろぐ好次朗の膝に座り、甘えるような声で言った。 「典子も、じきに来るわよ。私たち3人、うまくや…
いつもより早く目覚めた好次朗は、昨日、典子が誰かに尾行されていた話や脅迫めいた電話のことを思い出しながら、隣りで体を寄せて眠っている典子の寝顔を見つめた。 「…
2か月ほど経った夏の暑い日 典子は勤めていた装飾デザイン会社を辞め、9月上旬のスイス移住に向けて準備を始めた。 貴子のマンションで3人が会った時以来、好次朗は…
ホテルを出た車は、二人の棲み処ではなく、街のほうへ向かっていた。 「好次朗さん、こっちは家と逆方向よ。...道、間違えたの?」 典子が心配げな表情で、そう訊い…
貴子と好次朗に挟まれるように抱かれながら、典子は得も言われぬ悦びに包まれていた。 それは自分でも戸惑ってしまうほど思いがけない気づきであり、新たな自分を見つけ…
「典子!落ち着くんだ。...俺が悪かった!謝る!」 喉元に刃物を突きつけられた好次朗は、鬼気迫る形相の典子に言った。 「あなたは間違ってるわ!こんなの愛でも何…
「典子!落ち着くんだ。...俺が悪かった!謝る!」 喉元に刃物を突きつけられた好次朗は、鬼気迫る形相の典子に言った。 「あなたは間違ってるわ!こんなの愛でも何…
貴子は不敵な笑みを浮かべながら携帯の電源を切ると、ソファーでくつろぐ好次朗の膝に座り、甘えるような声で言った。 「典子も、じきに来るわよ。私たち3人、うまくや…
恵美が帰った後、好次朗と典子は、しばらくの間、無言になった。 典子と貴子が友情を越えた、ある種の愛によって繋がっていることを、好次朗は、まだ現実として消化しき…
典子は恵美に対し、貴子と好次朗と自分の関係について正直に包み隠さず話した。 この場で典子が、そんな話しをするとは思ってもみなかった好次朗は、恵美以上に驚きを隠…
ホテルでの昼食の後、貴子と別れて家路へと向かう典子の脳裏に、ふと好次朗の顔が浮かんだ。 「いったい、なんて言えば...」 幾度となく、心でそう呟く典子の足取り…
典子は貴子を見つめながら我に戻ると、口を開いた。 「私も貴子のことは大好きよ。でも、好次朗のことは、それ以上に大好きなの。貴子は親友であって、恋人にはなれない…
帝都ホテルのラウンジに約束の時刻丁度に訪れた典子は、赤いドレスを着た貴子をすぐ見つけると、平静を装い、近づいて挨拶をした。 「典子、わざわざ呼び出したりして、…
典子のもとに貴子から電話があったのは、それから3日後のことだった。 貴子の声は、意外にも陽気で明るかった。 もともと友人同士の二人ゆえに、典子も学生時代のよう…
玄関で、うなだれ泣いている典子を介助しながら、どうにか寝室まで連れて行くと、ベッドに座らせた典子に好次朗が訊いた。 「何があったのか教えてほしい。その頬のアザ…
好次朗の首筋を伝う貴子のしなやかな指を、好次朗は手で掴むと、言った。 「帰るよ。」 「どういうこと?」 好次朗の態度が急変したことに驚きを隠せず、貴子は不安気…
情事を終えると、好次朗は胸に頬をつけ目を閉じている貴子のおでこにキスをし、強く抱きしめた。 「明日の朝食、何にする?」 目を開けた貴子が虚ろな眼差しで好次朗を…
タワーマンションの最上階でエレベーターが止まると、好次朗の腕に抱かれた貴子は、顔を見上げ、意味深な笑みを見せた。 「なんだい?貴子」 「うふふ、べつに...。…
「典子、夕べは随分遅かったじゃないか?最近、帰宅時間が零時を過ぎる日が続いているが、そんな遅くまで、いったい何をしているんだ?...」 2年ほど前から同居し、…
瑠璃子は担当している講義を終えると、講堂を出て、大学キャンパスの中にある芝生の広場へと向かった。 そこにあるベンチに座り、お手製のランチを食べるのが習慣になっ…
紗英子は暫く沈黙した後、缶ビールを一口飲んで言った。 「もう喜美子とは別れて!知っているのよ私。...あなたが数年前から喜美子と“いい関係”だってこと。」 軽…