匠千暁と仲間たちが様々な事件を解決していくシリーズの短編集。全四作品ともに本格もので、人の心の闇をほじくり出したような重たい内容です。登場人物たちの軽妙な会話の応酬が事件の暗い真相をより際立たせます。
キャラクターたちが、シリーズを通してどのように成長していくか楽しみです。結末のキーワードは、ある年代が懐かしさを覚えるはず。続きが気になる上々の古典部シリーズ導入部です。
日本ハードボイルド黎明期の作品です。その歴史を紐解く上でも、一読の価値はあるでしょう。キレキレのタッチは古さを全くは感じさせませんが、主役の、ズケズケとして悪びれない俺様キャラがどうも好きになれません。
圧巻のイマジネーションでつづられた異世界ダークファンタジーです。翻訳文庫版上下巻1,000頁ボリュームに、読む前から慄いてしまいます。前半の盛り上がりに比べ後半は期待外れ。つづく、ということですね・・・
人が、ものに魅入られ、執着し、徐々に壊れていく様を描いた作品です。よくあるテーマであって、文学作品としてお目にかかります。本作品の場合は、タイトルの通り「銃」です。
ドイツ語圏のミステリですが、英米翻訳ミステリと言われても違和感がありません。読みやすい反面、”らしさ”を求めるなら物足りなさを感じるかも。ミステリとしても再生の物語としても楽しむことができます。
『玉嶺よふたたび』とともに日本推理作家協会賞を受賞したミステリです。双方とも、過去を紐解くうちに意外な真実を見つけてしまうタイプの作品。スパイ小説の味付けをしているのも共通しています。ただ、本作品は、恋愛小説の要素もあって、主役二人の男女の機微を楽しめるのが特徴です。
スキャンダルを追う新聞記者たちの活躍を描いた作品です。記者たちが取材を通して真実に迫っていくのですが、少し先の想像がついてしまうので驚きの展開とはなりません。今ではちょっと考えられない取材方法ではあるし、よく考えるといろいろ都合の良すぎるところも散見されます。
卒業を間近に控えた高校生が主役で、青春小説の趣ですが、近親相姦というタブーを扱っているゆえに暗いトーンの作品です。いくつかの謎は未解決のまま、ラストを迎えます。メフィスト賞おそるべし。
スカルノ時代のインドネシアを舞台にした謀略小説です。巻き込まれ型のサスペンスが展開されます。活写という言葉が相応しいのですが、著者はこの地に足を踏み入れたことがなかったとのこと。作家の想像力の逞しさが堪能できます。
シリーズ・キャラクター デイヴィッド・ロイド警部とジュディ・ヒル部長刑事の初登場作品です。二人の危うい関係がシリーズの特色ですが、女性目線の恋愛至上主義には辟易してしまいます。
中田永一『くちびるに歌を』は、五島列島の中学校で、合唱に専心するお子たちを描いた青春小説です。 アンジェラ・アキの楽曲「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」をモチーフにしており、思春期真っ只中の、少年少女の瑞々しさが眩しい作品で […]
台湾新幹線プロジェクトに携わった人々と、その周辺を描く群像劇です。物語は、現地台湾で、日本の威信をかけたプロジェクトを完遂せんと奮闘する人々を中心に展開します。プロジェクトの進捗と、それに伴う人々の悲喜こもごも、そして成長の姿が描かれます。
寂れた町に突然現れた3人の凶悪な脱獄囚。陸の孤島ともいうべき閉塞感が漂う中、蹂躙される人々の思惑が交差します。西部劇的でありながら、痛快さに肩すかしを食らわせるような展開がトレヴェニアンでしょうか。
読み始めから、命の大切さ、生きることの意味みたいなものを謳いあげるタイプの作品かと想像しました。しかし、これは、全くハズレてしまいます。中学生ぐらいがターゲットの作品でしょうから、生きることの意味について、きっちりと書いて欲しいところです。
刑務所から出所した主人公を待っていたのは、隠した宝石を我がものにせんと付け狙う奴ら。裏切りにつぐ裏切りの果てに、あっと驚く究極の裏切りがっ!
収められた8編は、独立した作品として読み進めていると、各短編がつながっていることが分かってきます。ただ、最終話『骨笛』を読み終えても、全体としての絵が浮かび上がってこず、ぼんやりと霧の中を彷徨っているような読後感を味わいます。
小泉八雲の『怪談』のオマージュで、舞台を現代に置き換えたミステリ仕立ての短編集です。夢オチか?・・・そして・・・など、謎解きよりも奇妙な味の方が近いでしょうか。この手の作品は、往々にして、スラスラ読めて、スカッと忘れしまうのです。
九十九十九(つくもじゅうく)と言えば、知る人ぞ知る清涼院流水『コズミック』から始まるJDCシリーズの、異能の探偵です。あまりに美しすぎるゆえに、その瞳をみたものは皆、失神してしまうというキャラクター設定です。(クリックい …
プロットは実にサスペンスフルなのですが、死屍累々にも関わらず、ユルいトーンで、深刻さとは無縁です。スーパーナチュラルの土俵際で、本格ミステリの味わいを残しています。何という力技でしょう。細かい事は気にいないのが吉ですね。
西独の動きを封じようと、CIA長官とKGB議長が手を組みます。内憂外患の二人に活路は見出せるのか。エスピオナージが好物ならば、楽しめる一冊です。
【本の感想】岡本まーこ、にしかわたく『常岡さん、人質になる』
アフガニスタンで何者かに誘拐されたジャーナリスト 常岡浩介さんの157日間に及ぶ拉致監禁生活体験記です。ゆるい笑い話の中に垣間見える死の恐怖に、いたたまれなくなってしまいます。
小説家を目指す女子が書いた結末のない物語です。時を経て、人から人へ手渡されます。手渡された人たちそれぞれが、自分の悩み、そして決断と重ね合わせるというステキな連作短編集。読書のすばらしさを感じさせる作品です。
現存する大阪の遊郭、飛田新地のレポートです。街そのものが特殊な業態の集まりであるがゆえ、撮影厳禁、取材拒お断りとなるようです。12年をかけた渾身の一冊ではありますが、どうにもいただけません。
【本の感想】高野秀行『極楽タイ暮らし―「微笑みの国」のとんでもないヒミツ』
タイを愛してやまない著者が、タイ人気質を考えるというものです。気楽に読めるエッセイですが、タイ人の国民性を鏡像として日本人を見つめ直すきっかけになるでしょう。
【本の感想】本間龍『名もなき受刑者たちへ 「黒羽刑務所 16工場」体験記』
関東圏最大の初犯刑務所に収監された著者が約1年の服役期間中に体験したことをまとめたものです。 刑務所ライフが面白可笑しくつづられていますが、医療と再犯問題についてのメッセージもきっちりと発信されています。
旅行作家がアジア各国を巡るビンボー旅行コラムです。如何に金を使わず旅をするかというビンボー旅行至上主義ではなく、様々な旅の楽しみ方のうちの一つとして、節約しながらの旅を紹介してくれます。
図書部員の女子高生の日々をつづった作品。何が起こるのか期待してしいると淡々を終わりを迎えます。普通の高校生に波乱万丈は無縁ですからとってもリアル。ただそれだけを求めて作品を読む必要はないような気もします。
熟年に差し掛かった3人の女性の苦悩が描かれています。同級生の殺害事件を契機に、彼女たちの今と過去が明白になっていくのですが、どこでも見られる人生でぶちあたる壁だけに、より心を抉るようなリアルを突きつけてきます。
日本では知名度が低いマイケル・スワンウィック(Michael Swanwick)。長編『大塩の道』(ファンタジーっぽい)と、ウィリアム・ギブスンとの共著『ドッグファイト』(サーバー・パンクの大傑作!)、そして雑誌にいくつ …
人間は空間(自己と他者、自己と環境)をどのように利用しているか。著者はこのことについての観察と理論をプロクセミックス名づけ解説します。納得し難いところもありながらものの見方としては勉強になります。
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