ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!...
ジャズ喫茶『松和』は仮想喫茶店。大好きなジャズや70年代ロックの話題など、音楽三昧な日々をどうぞ。
グローバル・レベルで見ると、ジャズ・ギタリストについては、新しい世代の「跡を継ぐもの」として、それぞれの時代でメジャー・デビューする新進気鋭のギタリストが現れ出てくる。が、我が国では、それぞれの時代でメジャー・デビューしてくる新進気鋭のジャズ・ギタリストの数は少ない。日本のジャズ・ギタリストは、と問われたら、まず頭に浮かぶのが、渡辺香津美、増尾好秋、川崎燎、井上銘、小沼ようすけ、くらい。圧倒的に...
マイルスの全く仕事が入らなくなった麻薬禍真っ只中の1952年、実は、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、麻薬禍のマイルスに、本格的なリーダー作を録音する機会を提供し、彼の生活を助け、彼を支援した。そして、ライオンがマイルスに提供した録音機会は、全部で1952年3月9日、1953年4月20日、1954年3月6日、の3セッション。1952年は麻薬禍真っ只中、1953年は麻薬禍...
「哀しみのベラヴィア」や「サンチェスの子供たち」、そして「フィルソー・グッド」など、フュージョン・ジャズにおけるヒット曲を持つチャック・マンジョーネ。1970年代後半から1980年代前半、フュージョン・ジャズのブームをリアルタイムで体験したフュージョン者の方々であれば知らない人はいないはず。トランペット&フリューゲルホーンの両刀使いではあるが、印象的なのはフリューゲルホーンの方だろう。柔らかだが...
「マイルスの『Blue Haze』再考」で、1951年あたりから重度の麻薬中毒に陥り、1952年には仕事が全く入らなくなった。マイルスはセントルイスの父親の家に戻り、そこで麻薬依存症の治療に専念した、と書いたが、マイルスの全く仕事が入らなくなった麻薬禍真っ只中の1952年、実は、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが録音の機会を作っている。その録音機会は、1952年3月9日、...
ジャズの帝王、マイルス・デイヴィスも麻薬禍で苦しんだ時期がある。1951年あたりから重度の麻薬中毒に陥り、1952年には仕事が全く入らなくなった。マイルスはセントルイスの父親の家に戻り、そこで麻薬依存症の治療に専念した。そして、麻薬中毒を克服し、1954年に完全カムバックを果たす。麻薬禍を克服し完全カムバックを果たすまで、麻薬中毒者として敬遠されていたマイルスに十分な録音環境を提供し、カムバック...
サックス奏者のチャールズ・ロイド(Charles Lloyd)は、機を見て敏なる、というか、意外と変わり身の早いテナーマンである。1960年代後半の「判り易いコルトレーン」、ECM時代の「欧州ジャズへの接近」、そして、現在の「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」と、それぞれの時代の「流行」をよく読んで、音の志向を変えている。まあ、それぞれの音の志向が、水準以上のパフォーマンスを持って表現される...
ビッグバンドには、そのバンド毎に「志向」がある。とにかく、アーティステックにストイックにビッグバンドの「芸術性を追求するバンド」。エリントンやベイシーなどのレジェンドなビッグバンドの音を「研究〜現代で再現しようとするバンド」。元々はダンス・ミュージックなのだからと、多人数のアンサンブルやユニゾン&ハーモニーを楽しみ、ソロ演奏を楽しむ「エンタテイメント性を追求するバンド」などなど。ビッグバンドの音...
「踊れるジャズ」として、従来のピアノ・トリオの特徴であった「三者三様の自由度のあるインタープレイ」は排除。クラシック的な印象的なピアノにアグレッシブなベースとドラム。演奏の中に感じ取れる「音的要素」は、クラシック、エレクトロニカ、ロック、ジャズと幅広。マイルスの開拓した「エレ・ジャズ」に、エレクトロニカを融合し、ファンクネスを引いた様な音。疾走感、爽快感は抜群。聴いていて「スカッ」とする。英国...
ジャズの世界では1940年代から、女性の活躍がある。ボーカリストから始まって、ピアニスト、ベーシスト、ドラマー、そして、サックス奏者、トランペット奏者、などなど、知る限りでは、ジャズの楽器のほぼ全てにおいて、女性ミュージシャンが存在している。これは素晴らしいことで、才能さえ伴えば性別は関係ない、は、ジャズにおいては、もはや「常識」である。Terri Lyne Carrington(テリ・リン・キ...
マカヤ・マクレイヴン(Makaya McCraven)は、1983年10月19日、仏パリ生まれのジャズドラマー(マルチ奏者)&プロデューサー。今年で40歳になる中堅に差し掛かる年齢。このマクレイヴン、現代ジャズ屈指のビート・サイエンティストと評価の高いドラマー。現代ジャズの最先端の音の一つを聴かせてくれる、現代ジャズの重要人物の一人になる。Makaya McCraven『In These Tim...
Pharoah Sanders(ファラオ・サンダース)。ファラオはコルトレーンの晩年に行動を共にし、コルトレーンの死後、後継者として一番名乗りを挙げたサックス奏者。力強いブロウ、スピリチュアルな演奏、長いフレーズと極端に短いフレーズを組み合わせたグニャグニャ・ラインが特徴。このグニャグニャ・ラインが「はまると癖になる」。サンダースは「スピリチュアル ジャズ」初期の代表的存在。サンダースはコルトレ...
最近、活躍している若手、もしくは中堅ジャズマンについて、聴いたことの無いジャズマンのリーダー作については、PCにストックしている。どこかでまとめて聴こう、と思っているのだが、これがまた、なかなかその機会が無い。ストックはどんどん溜まるばかりで、この秋から、計画的に聴き進めることを決意した。クリス・ポッター(Chris Potter)。米国シカゴ出身、1971年1月1日生まれ。今年で52歳になる、...
ジャズのビッグバンドについては、コロナ禍にも関わらず、有名ビッグバンドについては、その組織を堅調に維持し、録音も順調にこなし、内容充実の好盤をリリースし続けている。これは素晴らしいことで、コロナ禍ゆえ、バンドのメンバー全員が集まってリハーサルをこなすことなど、なかなか出来なかったと思うのだが、その高度なテクニックとアンサンブルを維持する努力は並々ならぬものがあったのだろう。本当に頭の下がる思いであ...
マイルスの聴き直しをちょっと離れて、最近のジャズの新盤のストックが溜まったので、順に聴き進めている。ここ1年、グロ=バルなジャズにおいても、和ジャズにおいても、内容の優れたアルバムが多いので、世界的にジャズのレベルはさらに上がったなあ、と感じるし、聴いていてとても楽しい。現代ジャズ・ギターの名手の一人、カート・ローゼンウィンケルのギター・ソロ盤を聴いていて、我が国の現代ジャズ・ギターというのは、...
このアルバムも、マイルスの『Birth of the Cool(クールの誕生)』に端を発した「クールというコンセプトのもと、ジャズにおけるアレンジの力を追求する」という明確なマイルスの音志向を踏まえないと、評価がガラッと変わるアルバムである。『Miles Davis And Horns』(写真左)。1951年1月と1953年2月の録音。ちなみにパーソネルは、1951年1月の録音は、Miles D...
マイルス・ミュージックの始まりを理解するには、『Birth of the Cool(クールの誕生)』と『Dig』をしっかりと押さえておく必要がある。『Birth of the Cool(クールの誕生)』は、ビ・バップの熱いアドリブ合戦に対比した「クール」というコンセプトのもと、ジャズにおける「アレンジの力」を示したリーダー作だった。また、『Dig』は、ビ・バップの自由さとリズム&ブルースが持つ大...
Miles Davis『Birth of the Cool』。邦題『クールの誕生』。1949年〜1950年録音。ギル・エヴァンスやジェリー・マリガンら、有能なアレンジャーの「アレンジ」の下、バリトン・サックスやフレンチ・ホルン、チューバを含む9重奏団の演奏を録音した。ビ・バップの熱いアドリブ合戦に対比して、「クール」と称された本作。このアルバムの根底に流れているコンセプトが「クール」。ジャズにおけ...
マイルスのアルバムの記事を整理している。当ブログにおけるマイルスの記事は、かなり昔、このブログを始めて数年の頃、つまり、今を去ること、10年以上前に書かれたものが多い。読み返してみると、聴きが甘いなあ、と思うところがあるし、今とは評価の切り口が全く古いところもある。ということで、改訂を含めて、録音時期順にマイルスに関する記事をリメイクすることにした。さて、マイルスのリーダー作は『クールの誕生』 ...
2023年4月16日、アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が天に召された。まだ半年しか経っていない。もともと長生きで92歳での逝去だった。ジャマルについては、『At the Pershing: But Not for Me』を聴いて、ジャマルを知ってから45年。ずっとジャマルのリーダー作をリアルタイムで聴いてきたから、いまだに逝去したのが実感できない。『Ahmad Jamal Play...
ここ2〜3年ほどだろうか、イタリアン・ジャズの至宝ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(以降、エンリコと略)のリーダー作を数多く目にする。新盤もあるし、以前のお蔵入り音源のリリースもあるし、以前リリースされたアルバムのリイシューもある。とにかく、エンリコの人気は尋常ではない。欧州ジャズにおけるピアニストの第一人者であることは事実だし、とても欧州のモダン・ジャズらしい響きは、確かにジャズ者万人向けの...
1970年代は「クロスオーバーからフュージョン」の時代。この「クロスオーバーからフュージョン」に台頭を現したジャズマンも多くいた。そして、21世紀に入って、そんな1970年代に台頭を現し、21世紀に入っても第一線で活躍を続けている「猛者」もいる。もう若くても70歳代だとは思うのだが、最近のジャズマンは息が長い。例えば、ハーブ・アルパートと言えば、ポップス系ジャズのトランペッター&コンポーザー。ま...
ジャズという音楽は「即興演奏」を旨とする音楽なので、じっくり腰を据えて制作されるスタジオ録音も良いが、やはり、ライヴ録音が聴きたくなる。ジャズの場合、ライヴハウスやコンサート、ジャズ・フェスなどに足を運べば良いのだろうが、お気に入りの、推しのジャズメンについては、そうそう都合良く我が国に来日してくれる訳もなく、やはり、ライヴ盤のリリースに期待することになる。Kurt Rosenwinkel『U...
Kurt Rosenwinkel(カート・ローゼンウィンケル)。1970年、米国フィラデルフィア生まれのジャズ・ギタリスト。今年で53歳になる中堅。初リーダー・アルバム『East Coast Love Affair』(1996年)から、ほぼ1枚/年のペースで、堅実にリーダー作をリリースしている。2016年には、独立した音楽レーベル Heartcore Records を設立し、この独自レーベルを...
Enrico Pieranunzi(エンリコ・ピエラヌンツィ、以降「エンリコ」と略)。1949年生まれのイタリアのジャズ・ピアニスト。今年74歳。イタリアン・ジャズの至宝。現在の欧州ジャズ・シーンにおける、モダンでコンテンポラリーなエバンス派の代表格。耽美的にテクニカルに良く鳴る右手と、絶妙な間を持って右手の旋律を支える左手のブロックコードが繰り出すが個性。1975年の初リーダー作以来、クラシッ...
チック・コリアにおいて、1971年、ECMレーベルへの移籍は、それまでの彼の個性と音楽性のまとめと、今後の音楽性の志向を定める良い機会になったと感じている。特に「Piano Improvisations」ソロ・ピアノ盤の2枚には、それまでの彼の個性と音楽性のまとめを捉えていて、僕にとっては、チックの個性を確認する時、必ず立ち戻る「重要盤」となっている。Chick Corea『Piano Impr...
チック・コリアの逝去の伴い、2022年5月、今一度、チック・コリアのリーダー作を「今の耳」で聴き直す作業に入った訳だが、今年に入って、いろいろ、私生活で面倒なことが相次ぎ、8ヶ月間、開店休業状態だった。が、やっと整理できて、今日、再開である。チック・コリアはデビュー当時、新主流派の一歩先を行く、ばりばりのメンストリーム系の純ジャズの担い手で、モードからフリーまで、硬派な純ジャズをガンガンやってい...
Ahmad Jamal(アーマッド・ジャマル)。1950年代のジャマルは「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴。この特徴を最大限活かした「1950年代ジャマル」の傑作が、1958年1月16日のライヴ録音『But Not For Me』。Ahmad Jamal『The Piano Scene of Ahmad Jamal』(写...
伴奏上手のレッド・ガーランドのピアノ。フロント管の担い手が代わったら代わったで、サポートのやり方を微妙に変えて、その時そのロキのフロント管に合ったバッキングをする。しかも、ガーランドの個性を損なわず、にである。いかにガーランドがプロフェッショナルで、優れたテクニックを持っているかが良く判る。Coleman Hawkins & The Red Garland Trio『Swingville...
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ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!...
ジャズを本格的に聴き始めた頃から「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」はお気に入り。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのアルバムを聴き通すだけで、ジャズの演奏トレンド、演奏志向の歴史が判る。ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズのそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立...
ホレス・シルヴァーと袂を分かって、ブレイキー単独となったメッセンジャーズ。ブルーノートに移籍してブレイクする前のアルバム群。以前のジャズ盤評論としては「ブレイク前のメッセンジャーズの暗黒時代」とされる時代のアルバム達。しかし、そうだろうか。僕はこのアルバムを実際に自分の耳で聴いて、この盤は決して「暗黒時代」の音では無い、と判断している。Art Blakey & The Jazz Mess...
レコード・コレクターズ 2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きしている。今回のアルバムは、実は初めて聴く「初聴き」盤である。Barre Phillips『Three Day Moon』(写真左)。1978年3月の録音。ECM 1123...
今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴いている。以前聴いたことがあって、今回聴き直しのアルバムもあれば、初めて聴くアルバムもある。どちらも「今の耳」で聴くので、意外と新鮮に感じるから面白い。Enrico Rava『...
今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集に「ECMレコーズ」があった。これは「創設者マンフレート・アイヒャーのコンセプトと55年の歴史の概説」と「今聴きたいECMアルバム45選」の2本立ての特集。特に、後半の「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入った。ということで、この45枚のアルバムについて、ブログ記事としてアップしようと思い立った。Wolfgang D...
今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや3年。やっと第1巻の終わりである。ジャズを本格的に聴き始めたのが1978年の春。フュージョン・ジャズの名盤の何枚かと、純ジャズのアルバム、MJQ『Pylamid』、 Herbie Hancock『Mai...
小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで32枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは2枚。今回はキース・ジャレットの登場。 Keith Jarrett『The Köln Concert』(写真左)。1975年1月24日、当時の西ドイツ、ケル...
この歳になると、なかなか「超名盤」について聴き直す機会が無いだけに、楽しみながらの聴き直しになっている。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで31枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは3枚。Chick Corea『Return to F...
まだまだ夏日が顔を出す、暖かいというか、蒸し暑い日が続く10月だが、真夏日以上という「酷暑」は去ったので、様々な類のジャズを聴く時間が増えた。特に、この10月は、何故だか判らないが、和フュージョンと合わせて、和ジャズの名盤・好盤を探索したり、聴き直したり。特に、学生時代から、若き社会人時代に聴きまくった盤を聴くことが多い。古澤良治郎『キジムナ』(写真左)。1979年10月16~20日、東京、日本...
フュージョン・ジャズ時代、そのアルバムの成り立ちが変わっている例として、高中正義『オン・ギター』をご紹介した(2024年10月10日 のブログ記事・左をクリック)。この『オン・ギター』は、ギター教則本の付属レコードとして発表されたものだった。ゼロ戦『アスファルト』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、大谷和夫 (key), 長岡道夫 (b), 鈴木正夫 (ds), 佐野光利 (g)...
フュージョン・ジャズの時代、インスト中心のアルバム作りが主流で、ボーカルがメインのアルバムは少なかった。ボーカル入りのアルバムはあったが、どちらかと言えば、ファンクネスな要素の彩りが欲しい時の「ソウル、R&B志向のボーカル」で、フュージョン・ジャズとして、「ボーカリストの歌を聴かせる」盤は希少だった。阿川泰子『Lady September』(写真左)。1985年6~7月、東京での録音。ちなみにパ...
我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。意外と超ストイックなバンドで、結成時(1976年)から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの第1期の活動の中で、10年以上、常にカシオペアはグループとしての活動を優先、ソロ活動は一切御法度という厳しい規律の上でバンド運営されていた。1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を容...
ジャズの演奏で大切なものは色々あるが、リーダーのフロント楽器の特性に応じた「アレンジ」は特に重要な要素。そして、その「アレンジ」に適したリズム・セクションの手配。この「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合ったセッションは優れた結果になる。J.J. Johnson and Kai Winding『Jay & Kai + 6: The Jay and Kai Trombone...
ここヴァーチャル音楽喫茶「松和」では、「夏だ、海だ、高中だ」ではなく、「秋だ、爽快だ、高中だ」というキャッチが蔓延している(笑)。とにかく、この2〜3日前から、ググッと涼しくなった関東地方。涼しくなって、空気が爽快になって、高中正義のアルバムの聞き直しの続きである。高中正義『Brasilian Skies』(写真左)。1978年のリリース。リオデジャネイロの「PolyGram Studios」と...
この2〜3日、関東地方では気温がグッと下がって、昨日などは、11月中旬の陽気になって、ちょっと寒いくらい。慌てて、合物の服を出して、夏物のほとんどを衣替えである。これだけ涼しくなると、音楽を聴くのにも良い環境になって、夏には聴くのを憚られたハードなジャズやロックなども聴くことが出来る。高中正義『オン・ギター』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), 石川清澄 (ke...
「Jay&Kai」のアルバムを聴いていて、改めて「トロンボーンの音色ってええなあ」と思った。もちろん、トロンボーンを吹く上でのテクニックが優れていることが前提なんだが...。テクニックに優れたトロンボーンの音色って、ブリリアントで、エモーショナルで、ニュアンス豊かで、柔らかで優しい。そんなトロンボーンの音色が好きで、今でも時々、ジャズ・トロンボーンの好盤を引っ張り出してきては聴き直している。K...
「A&Mレコード」が牽引役を担ったのが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。そのカラクリは「聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合」と考えると、A&Mの諸作は実に興味深く聴くことが出来る。J. J. Johnson & Kai Winding『J&K: Stonebone』(写真左...
1960年代半ば以降、ビートルズをはじめとするロック・ミュージックの台頭によって、ジャズのシェアは下降線を辿り始めた。一般聴衆は、聴き易く分かり易く適度な刺激のある「ロック&ポップス」を好んで聴くようになる。ジャズは「古い時代の音楽」として、その人気は徐々に衰え始めていた。一方、ジャズは多様化の中で、ハードバップから派生した大衆志向なファンキー&ソウル・ジャズ、そして、ハードバップの反動から派生...
ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』と『Brown and Roach Incorporated』の直後、同一日、同一メンバーでのジャム・セッションの『Clifford Brown All Stars』と『Best Coast Jazz』は、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)にとって、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演...
ドナルド・バードは「機を見て敏なる」トランペッターだった。トランペッターとして、テクニックは優秀、端正でブリリアントで理知的な吹奏。破綻無く、激情に駆られて吹きまくることなく、理知的な自己コントロールの下、常に水準以上のバップなトランペットを吹き上げる。そんなドナルド・バード、ハードバップ初期の頭角を表し、ハードバップの優れた内容のリーダー作を幾枚もリリース、その後、ファンキー・ジャズに手を染め...
ジョン・アバークロンビー(以降「ジョンアバ」と略)のギターの音世界が好きで、1970年代から、ずっとジョンアバのアルバムを追いかけている。欧州ジャズらしい、彼しか出せない叙情的なサスティーン・サウンドが、とにかく気持ち良い。特に、ECMレーベルでの、ECM独特の深いエコーに乗ったジョンアバのギターシンセには、聴くたびに惚れ惚れである。John Abercrombie『Current Event...
僕は「チック者」である。チックを初めて聴いたのが、1970年代半ばだったから、2021年2月9日に逝去するまで、かれこれ既に半世紀、チックをずっとリアルタイムで聴き続けてきたことになる。よって、チックのリーダー作については、当ブログで全てについて記事にしようと思っている。現時点で、あと十数枚、記事にしていないアルバムがある。今日は、その中の「異色作」について語ろうと思う。Chick Corea...
チック・コリアのリーダー作の「落穂拾い」。当ブログに、まだ記事化していないチックのリーダー作を順に聴き直している。意外とソロ・ピアノ集が多く、記事化されていない。あまり興味が湧かなかったかとも思ったのだが、聴き直してみると、どのアルバムもチックの個性が散りばめられていて、聴き応えのあるものばかりである。Chick Corea『Children's Songs』(写真左)。1983年7月の録音。E...
チック・コリアのピアノとゲイリー・バートンのヴァイブは凄く相性が良い。ジャズ特有のファンキー色を限りなく押さえ、ブルージーでマイナーな展開を限りなく押さえ、硬質でクラシカルな響きを前面に押し出し、現代音楽の様なアブストラクトな面を覗かせながら、メロディアスで流麗なフレーズを展開する。楽器は違えど、音の性質は同類の二人。Chick Corea & Gary Burton『Lyric Sui...
向井滋春は、和ジャズを代表するトロンボーン奏者の一人。1976年に初リーダー作『For My Little Bird』でデビュー。当初は、コンテンポラリーな純ジャズがメイン。しかし、1979年、約1年間、NYに在住した折にフュージョン・ジャズに触発される。そして、いきなり、フュージョン・ジャズに転身する。向井滋春『Spacing Out』(写真左)。1977年9月28日、日本コロムビア第1スタジ...
月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」を眺めていて、向井滋春のアルバムが目に入った。懐かしい。和フュージョン全盛時、もともと、トロンボーンの音色が好きなこともあって、向井滋春のフュージョン盤はよく聴いた。意外とトロンボーンって、フュージョン・ジャズに向いているんですよね。向井滋春『Hip Cruiser』(写真左)。1978年10月2~6日...
月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」に挙がったアルバムを聴き直している。当時、ヘビロテで聴いたアルバムも多くある。当ブログに記事としてアップしていないアルバムも結構ある。当時の耳で聴いた感覚と今の耳で聴いた感覚、意外と変わらないのが面白い。松岡 直也 &ウィシング 『The Wind Whispers』(写真)。1979年の作品。...
1973年の再結成後、順調に内容のあるアルバムを2枚、リリースしてきた、マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。そろそろ「マントラの音志向」を確立するタイミングでもあった。The Manhattan Transfer『Pastiche』(写真左)。1976年12月から1977年9月の録音。1978年のリリース。ちなみにパーソネルは、Ti...
1973年、一旦解散したマンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。その後、まもなく、リーダーのティム・ハウザーは、ローレル・マッセ、ジャニス・シーゲルと出会う。そして、アラン・ポールを紹介され、新生マントラを立ち上げることを決意、『The Manhattan Transfer (Atlantic, 1975) 』(左をクリック)で再デビュー...
マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)は、1969年にティム・ハウザー(Tim Hauser)が中心となり結成したジャズ・コーラス・グループ。マントラと言えば、1973年にティム・ハウザーをリーダーとして、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル(1979年からシェリル・ベンティーン)、ローレル・マッセーの4人組という印象だが、これは再結成後...
シビアで硬派で「即興が命」の純ジャズを聴き続けた合間、耳休めにウエストコースト・ジャズを聴くことが多い。ウエストコースト・ジャズは、1950年代後半から1960年代全般にかけて、米国西海岸、ロスアンゼルス、サンフランシスコを中心に流行ったジャズの演奏トレンド。ハイテクニックを駆使して流麗で聴き心地の良いパフォーマンス、聴き手に訴求するキャッチーなアレンジ。「聴かせる」ジャズを旨とした、ジャズの演...
リッチー・バイラークはNY生まれ。当初、クラシック音楽とジャズの両方を学び始め、バークリー音楽大学に入学。1年後、バークリーを離れ、マンハッタン音楽学校に移り、彼はマンハッタン音楽学校を音楽理論と作曲の修士号を取得して卒業した才人。確かに、バイラークのアレンジは、学者然とした「理詰め」の雰囲気が強い。ピアノの個性は、リリカルで耽美的、そして「多弁」。ハイテクニックを駆使して、多弁なフレーズを弾き...
ジャズ・インストを聴き続けた合間、耳休めに女性ジャズ・ボーカルを聴くことが多い。もともとジャズ・ボーカルは得意では無い。流石に、レジェンド級の、低めの声で唸るような、こぶし豊かな、日本で言う「演歌系」のような本格派の女性ボーカルは得意では無い。聴くには聴くが、申し訳ないが、ジャズ・ボーカルの勉強の為に聴くことがほとんどで、ジャズ・インストの合間の「耳休め」に聴くことは無い。合間の「耳休め...
現代のジャズ・シーンにおいては、ギタリスト人材が豊富に感じる。そんな中でも、突出した存在の一人が、ジュリアン・ラージ。数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリストである。音の志向は、現代のコンテンポラリーなジャズ・ギターで、パット・メセニーの様な「ネイチャーな響き」もあり、ジョンスコに「くすんで捻れる」ところもあり、過去のレジェンド級のコンテンポラリー...
ボブ・ジェームスは、クロスオーバー〜フュージョン〜スムース・ジャズにおける、僕の一番のお気に入りアーティスト。10歳代半ばから、ずっとリアルタイムで、ボブ・ジェームスを聴き続けている。彼自身のキャリアは、60年を越える。フォープレイが解散状態に陥ってからは、自身のピアノ・トリオでの活動が目立っていた感がある。Bob James『Jazz Hands』(写真左)。2023年10月のリリース。ボブ・...
今までなら中堅どころだった、40〜50歳代の「ニューフェース」。ヴィジェイ・アイヤー(Vijay Iyer)もそんな「ニューフェース」の一人。ヴィジェイ・アイヤーは、1971年10月生まれ。初リーダー作が1995年。アイヤーが24歳の頃。以降、アイヤーのリーダー作は、20枚以上を超える。が、我が国では、なかなか人気が出ない。僕は全く知らなかった。アイヤーの名前を知るようになったのは、2014年か...
コロナ禍をやり過ごし、現代のジャズについては、順調にニューリリースを継続している。安堵である。この5年ほどの傾向として、今までなら中堅どころだった、40〜50歳代の「ニューフェース」の好盤リリースが目につく。そんな「遅れてきた」ニューフェースなジャズマン達は、20歳代後半から30歳台にも、コンスタントにリーダー作をリリースしたりと、ジャズの第一線で活動していた。が、その情報が何故か埋もれていたみ...
ジャズの楽器の中での「絶滅危惧種」の一つ、ヴァイブ(ヴィブラフォン)。スイング時代には、ライオネル・ハンプトン。ハードバップ期には、ミルト・ジャクソンがモダン・ジャズ・ヴァイブを確立した。エディ・コスタ、デイブ・パイク、ヴィクター・フェルドマン、レッド・ノーヴォらが後に続く。そして、ハードバップ後期には、レム・ウィンチェスター、ゲイリー・バートン、ボビー・ハッチャーソンが継ぎ、ジャズの多様化の時...
ドナルド・バードは、ジャズ・トランペットのレジェンド。バードのトランペットは、端正で流麗でブリリアント、ピッチやフレーズにブレは無く、アドリブ・フレーズのイマージネーション豊か、ジャズ・トランペットの教科書の様なパフォーマンスが個性。この端正で流麗で「教科書の様なパフォーマンス」が良くないらしく、我が国では、ドナルド・バードの人気はイマイチ。綺麗すぎる、うますぎる、破綻がなくて面白くない、と、何...