■■ はじめに・・・ ■■ *当ブログは2人組で運営しております。*内容は男性同士の恋愛等をメインに取り扱った一次創作です。 BLなどのご理解を頂けていない方、嫌悪感を抱かれる方は回れ右でお願い致します。 ま
オリジナルBL小説です。主に高校生の恋愛(R-18)。管理人は2人で文と絵、基本ハピエン。毎日更新
CP傾向はドS×ネガティブ天然・後輩×先輩・弟×兄中心に展開です。 どんな形であれ受け溺愛。 S/鬼畜/わんこ/ツンデレ/ネガティブ/天然/不憫/小悪魔/クール/男前/など
息を切らせながらアルスが近づいてきた。「ファイン、ここ、にいた、んだ」「……あ、ああ。風呂、入る前にちょっと散歩しようかなって」 風呂へ入ってくると告げて部屋を出ていたため、アルスが今ここへ来たということはいっ
ファインの気持ちに答えるまでいかなくとも、少なくともアルスは受け止めてくれた。それがとても嬉しかったが、やはり無理させていたのだろう。 気持ちを切り替えるためもあり、ファインは宿を出てその辺を歩きながら、結局先ほどのアルスについて考えてい
じゃあ、とアルスは今さらながらに気づいた。 ファインが言ってた「欲望押しつける」って、そういう? いや、欲望って言ってんだしそういうことだろうと漠然とどこかで多分思っていたかもだけど、えっと……子作り的なこと、
フォルアが一通り演奏し終えるのを待って、食堂で今後のことを話しながら食事した。 あいにくフォルアの歌を聞いて何か情報提供してくる者は残念ながらいなかったが、歌や演奏はかなりお気に召した者が多かったようだ。カースの用意した袋には客から得たチ
ファインの口から明確に「一生薄れない」と聞いたとたん、アルスの中で表現しがたいほどふわふわとした弾けるような何かが広がった。「何だろ。何かふわふわする」「ふわふわ?」「うん。何だろな。気持ちが上がる、っぽい感じっていうか」「&hellip
動揺が全然隠せていなかったのだろう。少しだけ黙ってアルスを見ていたファインが苦笑してきた。「いいって。言ったろ。お前はお前のままでいいと」「聞いたっ、けど、すごく優しいこと、言ってくれてる、けど! でもそれじゃあ」「いい。いいんだ。アルス
カースに言われて少しポカンとしていたアルスだが、ファインが「問題ねえ。大丈夫だから食堂先行ってて。すぐ行く」と口にしたことでハッとなった。 珍しい……か。確かにそういえば俺とファインって多少言い合うことはあって
どういう意味だと聞かれ、アルスは正直戸惑った。押さえつけられなくとも話すし逃げないと言った。それにもちろん逃げるつもりはないが、話そうにも言葉がうまく浮かばない。「意味、って……た、単に嫌じゃなかった、って、だ
食堂に集まることになっているから、いくら何でもこんな状況で気づけばアルスを押し倒しているなんてことはない。 それがまさかのフラグだなんて誰が思おうか。少なくともファインは思わない、というか思いたくない。 だが今、間違いなくファインはアルス
思えばカースが加わってからよりもずっと前のフォルアが加わって以来、ファインとアルスは昔のように二人きりでくっついて眠ったりしてこなかったように思う。 いや、セルゲイの城では二人で同じ部屋だったが、なるべく狭い部屋を希望したもののそれでも二
アルスが一応いつものように元気になると、カースが「君がいてくれてよかった」とアルスに笑いかけていた。「フォルアやファインはまた別だけど、俺みたいに基本魔法で戦うタイプには相当戦いにくい相手だったよ」「そうなんだ」「アルスも気づいてたようだ
打破したいが、普段の戦闘でもギルドの仕事でも、大抵カースやフォルアがいればあっという間にどうとでもなる。 そりゃもちろん、フォルアやカースの力はとてつもなくありがたいし、二人がいなかったら俺とファインはとっくにディロックにやられてたかもだ
「ディロックゥ……ッ」 おもわず出たファインの言い方が気に食わなかったようで、ルビアはますますこちらが凍りつきそうな表情で「私の弟を舐めた風に呼ぶとは」と睨んでいる。「いや、舐めてねえ、けど…&he
アルスの声に反応したファインは転がるようにとはいえ、よくとっさに避けられたなとアルスは思った。一瞬の内に体勢を変えるのは案外難しい。 やっぱファインって魔法系なのに運動能力も結構あるよなあ。 しみじみ思ってから、そんなことを考えている暇は
「そういや今も勇者たちって水晶のままってことなのか? モーティナも眠りについたままなのか?」 ふと思ってファインが聞くと、カースは「多分」と頷いてきた。「多分?」「俺はフォルアに聞いた話しか知らないから。フォルアさえ知らない内にもしかしたら
翌日、知り合いとなった人たちに改めて別れを告げてからファインたちはルナール王国を後にした。 王国から少し南に下ったところにあるセルデスという町から、島であるローヴァン王国へ向かう船が出ている。ギルドでそれを確認し、そこへ向かおうとファイン
勇者たちの願いを受け入れるにはかなりの勇気が必要だっただろう。だがモーティナも勇者の一人だ。迷うことなく決意した。 モーティナはまず自らの魂を二つに分けた。そして片割れを他の勇者たちとともに水晶へ封印する。そして片割れである魂の半身は永遠
セルゲイは言っていた。「あれはそれこそ真実について表現しています。モーティナの神話では神の子を放棄した少女は禁忌を犯して逃げ、そして世界が犠牲になったとありますが、本当はそれは関係なく、ただし勇者たちが自らを犠牲にして世界を守ってくれてい
「記憶、っていうのは?」 アルスが聞くとカースはにっこり微笑んできた。「歌かな」「歌?」「そう。英雄の真実」「ああ……」 ファインが頷いている。アルスにとっては話の断片を聞いているようで、全体図が見えてこない。と
これはやはり、罰なのかな。 少女は途方もない時間が経過しても、死を迎え転生されることも許されず、ひたすら眠り続けている。フォルアはそれをずっと目の当たりにしたまま、同じく死んで転生するどころか少女のように眠りにつくことさえできない。 どち
四度目の出会いも街中だった。「君は神の子だというのに、護衛もつけず一人で歩いていいの?」 勇気を出してフォルアが声をかけると、少女は少しだけいたずらっ子のような笑みを浮かべた。「ご褒美なの」「ご褒美?」「ええ」 頷くと少女はフォルアを共犯
モーティルは神殿のある町だったからか、神殿のある島そのものだったからか、どの国よりも信仰にあつかった。そしてその恩恵か偶然か、住民は強い魔力を持つ者が多かった。 そこで生まれたフォルアも、親に連れられて祈りに行くことはたびたびあった。だが
アルスとしては、あまりややこしい話だと頭に入ってこないため、いつもなら大抵ファインに任せていた。申し訳ないとは多少思うものの、難しい案件に対してだと頭がうまく働かないアルスが下手に対応するより絶対いいに決まっているため、そこは遠慮したこと
今回は食糧庫を空にする勢いまではいかなかったものの、皆存分に食べて飲んだ。ファイン的にはそこまで大した仕事をしたわけでもないのに過分な報酬だと思う。 思うだけで遠慮はしねえけどな。 今までルートの元で働いたり旅を続けてきたりと社会経験を積
「アキシンナイトって石がどんな石かわからなかったけど、その後何とか調べたよ。……美しい褐色の石だった」「あなたの耳につけている石、やっぱりアキシンナイトだったんだな」 給仕としてナージフに接した時にファインが思っ
「私がそんなこと、言ったりしたりすると思うかい?」 ファインが何か言いかけるとナージフは苦笑しながらそっと頭を振っている。「まあ……確かにあなたはいい人だし頭もよさそうだし……」「はは
ナージフはその笑顔を「なるほど?」と怪訝に思っていたアルスにも向けてくる。「誘ってくれてありがとう、アルス。嬉しいけど遠慮しておくよ」「そ、そっか」 断られてホッとしている自分がいる。ファインはああ言ってくれたが、やはり自分は性格悪いので
数日滞在し、その間フォルアは一日何度か例の曲を弾き歌っていた。それが人づてで広まったのか、店はわりと盛況している。「あなた方は私の神様だ」 オーナーは心底嬉しそうにしていたし、宿泊や飲食がただどころか、報酬も上乗せしてくれていた。そろそろ
今のファインとしては、どう考えても自分の都合いいように考えてしまう気もする。 だってそうだろ。家族みたいであって、オレとアルスは実際本物の家族じゃねぇし……もしかしたらオレだってアルスとカースが急にやたら親密に
アルスと反対側で眠っているカースを気にしながら、ファインは背を向けていたアルスへそっと向き直った。くっつかれていたので寝返りを打ちにくいかと思ったが、ファインが動くとアルスは素直に腕を緩めてくる。 ……目は覚め
ファインがカースと言い合っていたら「もういいよ。とりあえず寝よう」とアルスがため息つきながら遮ってきた。「お、おぅ」 呆れられたのだろう。そういえばカースにアルスへの気持ちがばれてから、というかとっくにばれていたことを知ってから、ファイン
「演奏したがってた、ってよりはさ。ほら、フォルアって真実とやらを伝えるために吟遊詩人をしてるみたいなこと、セルゲイさんも言ってただろ」 ファインの言葉でアルスも思い出した。しばらく滞在させてもらっていた辺境伯セルゲイがモーティル教の話と共に
捕まった者たちをアルスもこっそり見せてもらったが、二人はファインやカースが言っていたようにその辺に溶け込みそうな目立たないおとなしそうな外見をしていた。こんな外見の人が人身売買のため誘拐を目論見、実行しているなど、実際捕まっていても信じら
「ぶは」 ファインの説明を聞いてカースはおかしげに笑っている。「そりゃアルスが疑うのも無理ないね」「いや、何でだよ。オレにその気ねぇっつーの」「でも、何でファインってそういう人から興味もたれやすんだろ」 ファインにその気がないというのなら何
いい話が聞けたのもあり、ナージフが帰る時も店の入口までファインは見送った。「オレはもう多分あなたにつくことはないと思うけど、会えてよかったよ」 見送る時には声も戻っていたのもあり、ファインは敬語も取り払ってナージフに笑いかける。「&hel
「変な客? 最近よく来ていたごろつきのことですかね」 客の言葉にファインは首を傾げ聞いた。「最近来ていたとかは初めて来店しただけにわからないけど……姿は見えてないんだ。ほら、半個室のようなものだろう、ここって」「
本当なら裏方の仕事はファインがしていた。そして仕事しつつ聞き込みなどをするつもりだった。 だが実際は接客する羽目になり、裏方はアルスとフォルアだ。そちらからの情報は申し訳ないがあまり期待しないほうがいいだろうとファインは早々に諦めた。 ど
実際店の手伝いをすることになり、アルスはファインが何故不満そうだったのか理解した。「ファインって俺からしたらそれなりに綺麗でかわいい顔してると思ったんだけどな」 カースがおかしそうに笑っている。「……うるせぇ。
「……かえってご迷惑をおかけして申し訳ない……。全額支払うのは難しそうだけど、払える限りは……」 困り果てたようなオーナーに、よそ行き用の顔になったファイン
叫び声などが聞こえた途端、今までのどかに飲み食いしていたアルスたちは剣を手にしていた。これはもう、習性と言うものかもしれない。 だが普通に考えてこういった店内に魔物が出るわけもなく、おそらくは酔っぱらった客が暴れたか何かだろうと次の瞬間に
ギルドでいくつか仕事も請け、四人は派手な照明が目に優しくない店の一つに来ていた。その店を選んだことに理由は特にない。この辺にあるどの店も似たような雰囲気だったので、正直どれも同じだとファインは思ったくらいだ。 カースに「俺がおごってやるか
ルナール王国には二日後に到着した。砂だらけの砂漠の中にある王国都市は城壁に囲まれ、緑に溢れている。そしてとても活気があった。「ねえねえファイン、見た? さっきのお姉さん。あんな恰好しちゃってさ。布面積少なすぎだよね最高。顔もスタイルもよか
ところでさ、とカースがファインに笑顔を向けてきた。 船でこちら側に着いてからルナール王国へ向けて歩いているところだった。ただその日のうちに到着というわけにいかず、今日はテントを張って休むことにしていた。 海の近くはまだ緑があったものの、内
トリンカから海岸沿いまで出るのに要した時間は一日くらいだったが、海に出てからはむしろフォルアやカースの魔法の力によっておそらくかなり早く向こう岸に着いた。距離だけだとはっきりわからないが、トリンカから海岸沿いへ来るまでよりあったかもしれな
「そのほうがいいんじゃない? もしフォルアがかかっちゃったら俺も悲しいし」「おいおい。オレらはかかっても悲しくねえってか?」 ファインが微妙な顔をカースへ向けている。「大丈夫だ、ファイン。ちゃんと悲しいから。でもフォルアはまた別」 相変わら
その後小さな町、トリンカというところに四人はしばらく滞在した。フィール王国もそうだったが、この辺りは地の精霊の土地だからか、もちろんトザットやアクアード、ヒュアード王国などの土地と比べものにはならないが、そこそこ寒い。ただ雷の土地に比べる
そもそもファインとアルスだけだったなら容易く倒せなかっただろう。頭は悪そうにしか見えないが、ディロッはかなり強かった。ファインすらよくわからないような魔法を使ってきて対応しにくかったのもあるが、魔力も相当強かったはずだった。初めて遭遇した
カースが共に旅をすることに、ファインもアルスも特に反対する理由はなかった。特にファインとしては普段突っ込み役というか、天然ボケとほんのりボケに囲まれ対応せざるを得ない状況が少々変わるかもしれないと期待さえした。カースの性格などはまだあまり
経験と言われてファインはまた少し怪訝な気持ちになった。もちろん一人旅をしている間にたくさんの魔物などと戦ってきたのかもしれない。だがファインたちとそう変わらない年齢のフォルアだけに、十歳そこそこから二人で旅に出るしかなかったファインたちと
カースは一旦フォルアに「知り合った頃のこととかお前のこと、話していい?」と聞いている。フォルアは迷うことなくコクリと頷いた。セルゲイの時も制限してくることもなく「セルゲイに聞いてくれ」と言っていたことを思い、今さらながらに自分たちのことを
フォルアとのことを話そうとしたが客がやって来たのもあり、結局また改めて落ち合うことにして、アルスたちは一旦カースの店から離れた。ファインの「とりあえず宿とりに行くか」との言葉に頷き、三人はそのままいくつかある宿の中の一つに部屋をとる。そし
少し大きめの橋を渡り、右方向へ行けばコンティという町があるようだったが、ここはとりあえず左方向を目指した。森を抜ければフィール王国がある。 アルスたちがずっと過ごしてきたヴァレアグート郡のトーレンス王国領に比べると少し肌寒い時はある。とは
あれほど暑くてたまらなかった、加護のない土地は気づけばもうそろそろ春になろうとしていた。まだ冬の跡があちらこちらに残ってはいるが、ところどころで春の気配がする。季節そのままが気候にも出るからか、咲く花なども春に似合いそうなものが多い気がし
アルスとキスしてしまった。ファインの頭の中は今それでいっぱいだった。出発が明日でよかったと思う。とりあえず一人になって落ち着きたいと思ったファインはあの後適当なことをもにょもにょと口にして人のいなさそうな場所にまで来ていた。関係ないが戦時
アルスとキスしてしまった。 ファインの頭の中は今それでいっぱいだった。出発が明日でよかったと思う。とりあえず一人になって落ち着きたいと思ったファインはあの後適当なことをもにょもにょと口にして人のいなさそうな場所にまで来ていた。 関係ないが
*R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。
◆金木犀の夢◆ 金木犀の香りはいつも何かが頭を過る。 それは大切な誰かのこと。 そして怖いという感情で…… 鳴海 秋李(なるみ しゅり)と星羽 悠犀(せわ ゆうせい
気づけば秋李も悠犀も十八歳になっただけでなく、高校を卒業し大学生になる。秋李はふと「あの事件の時の桃史にいと同じ歳どころか、追い抜いちゃってるんだな」と思い、複雑な気持ちになった。 相変わらず捕まった男はあの事件に関してしらばっくれている
かけがえのない人だった。 ずっとそばにいて、小さな頃から一緒に笑ったり怒ったりするのが当たり前だった。それこそ兄弟のように近しい人だった。だがいつしか友愛だけでなく恋愛として、航太は桃史をかけがえのない大切な人と見るようになっていた。それ
秋李を襲おうとしていた男は捕まった。近所に親と住む無職の男だ。昔から住んでいる家なので秋李だけでなく悠犀も顔見知りではある。その上男は桃史や航太と同級生だった。小さかった頃はそれなりに姿を見ていたが、気づけば見かけることはなくなっていた。
航太が病室から出て少し。悠犀は一人で待っていたが、やはり秋李のことが気になっていた。我ながら過保護だとは思う。秋李は別にか弱い子どもや女性ではない。一般男子だ。過去のことがあっても、記憶障害があっても、基本的に明るくて健康的な男子とも言え
記憶回復してから悠犀に連れていってもらい、秋李は桃史の見舞いへはすでに一度訪れている。だが今だけとはいえ地元へ戻ってきているのもあり、改めて桃史の見舞いへ行くということで見舞い品をきちんと用意したかった。 悠犀には「何買っても桃史兄、食べ
本当はあんなこと、するつもりなかった。それだけは嘘じゃない。 当時、近所に住む同級生のことが好きで仕方なかった。だがその人は優しくて明るくて人気者で、その人の周りにいる人間誰もがその人を好きなのではないかと嫉妬しない日はなかった。 思い切
あっという間に気づけば二人は高校を卒業していたし、大学もお互い無事合格していて、春休みが終わると大学生だ。 せっかく高校で一緒の学校へ通えたというのに、大学はまた別の学校になる。それは悠犀にとって結構残念だが仕方ない。それに今は別の学校で
*R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。
すごく大切で大事な人だというのは昔から変わっていない。残念ながら記憶障害があって忘れてはいたが、回復した今は昔と変わらず秋李は悠犀が大好きだ。 でも……今はそれにプラス、恋人としても大好きだ。 まさか自分が男を
ぽかんとしている秋李に怪訝な顔を向けると「お前が怪訝そうに見るな」と言われた。「でも」「びっくりくらい、するだろ。何でいきなり自分のほっぺ殴んだよ」「これは……理性が崩壊しそうだったから」「え?」「秋李があんま
秋李の前で泣いて以来、悠犀はようやく多少なりともふっきれてきたかもしれない。面と向かってあの時の罪悪感などと共に秋李に謝れたからだろうか。 悠犀も今までずっと自分が悪いのではないと理性ではわかっていながらも、感情で納得できなかった。後悔と
「ご、ごめん。変なこと聞いた」「……いや。まあ何でそんなことって思ったけど……。あの、俺は秋李が好きです」「あ、は、はい」 好きですと言われ、思わず秋李もかしこまったような反応になった
記憶が回復すれば自分はどうなるのだろうかと、秋李は昔から何度ともなく考えたことはある。誰しもが幼い頃のことを完璧に覚えているわけでなく、自分の場合はその覚えていない部分が人よりくっきりしているだけだと秋李は記憶障害のことをそう思ってみたり
記憶が回復した秋李は、しばらくの間フラッシュバックに悩まされていたらしい。本人からではなく、秋李の母親から悠犀は教えてもらった。 あの頃のことを思い出したと知った秋李の両親や悠犀の両親は大喜びしたし、大人だということも忘れて大いに泣いてい
一緒に入る、という秋李の言葉に、悠犀が動揺したように秋李を見てきた。「な、に言って……秋李も、冗談……」「冗談じゃないし。悠犀は一緒に入んの、い」「嫌じゃない」 嫌なのか、と言おうと
桃史のことを聞いて、秋李は罪悪感とショックと恐怖に苛まれつつ、ほんの少しだけ安堵もあった。 生きてた……。 記憶を取り戻してまず浮かんだのが、あの瞬間だった。 桃史から落ちながら、目の前で橙と緑が赤へと染まって
桃史のことを話しても大丈夫だろうかと心配はあった。だが秋李は真剣な表情で「教えてくれ」と頼んできた。頷くと、悠犀は主に桃史について、秋李が記憶を失った後のことを話した。秋李は時折苦しげな表情になったりしたが、黙って最後まで聞いていた。「こ
何かが頬を伝った。悠犀の意識がそれへ行く。 眠って、た……のか? 目を開けると誰かの太ももを枕にしている自分に気づく。 ……は? え? え、いや、ちょ……
無意識に悠犀をしみじみ眺めていた秋李はハッとなりテレビへ目を向ける。映画はエンディングどころかすべて終わっていてチャプター表示されていた。 はぁ……。映画も終わっちゃったし……この状
料理は見た目だけでなく味もおいしかった。そして懐かしい味がした。母親の作った料理だから懐かしいもへったくれもないのだが、航太の料理も同じく懐かしさを感じる。以前にも食べたことあるような気がする味だ。 俺好みの料理だからそう思うのかな。 思
何となく気になり、秋李は立ち上がってその写真を見に行く。いくつかの写真は無造作に壁に飾られている。 飾り方も何かおしゃれだよなあ……。あ、これ……星羽くんの小さな時の写真かな。……うん? 何だ、今デジャヴっぽい感覚したような……? 怪訝に
「おい、スミー。またあのピーターパンが俺を狙ってるらしい。クソ。もう今年も終わりだというのにせわしねえ。だがヤツがどこにいるか昨日からまだ見つからねえんだ」 忌々しげに言う海賊の船長ジェームズ・フック・バーソロミューに、スミーと呼ばれた彼の
剣の柄に結ぶ紐は思っていた以上にうまくできた。我ながら器用だし才能あるのでは、とファインは自分の作ったアクセサリーを見ながらにやつく。 紐はすでに昨日出来上がっていたのだが、魔力は今改めて込めていた。一応紐を編む際にも込めながら編んではい
聖モナの日はセルゲイの城でも朝からミルク粥が出た。昔アイトールやトーレンス王国で食べたミルク粥をアルスは懐かしく思い出す。旅に出てからは食べる機会がなかったため、余計だろうか。 当時は安価で手に入る、セルヴォワーズにも使われる大麦を煮てい
セルゲイの城に滞在している間、ファインたちは何度か町へ出かけた。この地域へ着いた当初は気づかなかったが、そろそろ「聖モナの日」が近づいていたようだ。町の至るところで飾りつけがちらほら始まっていた。 聖モナの日は、神モーティナを祝って過ごす
クリスマス企画☆水晶の涙☆(12/24〜12/28)---------------------------------------------------セルゲイの城に滞在している間に『聖モナの日』が近づいていることをファインたちは知った。
「そういえばもうすぐクリスマスだよね」 三年生の十二月は期末試験が終わるとほとんど授業もない。一応自由登校という形なので学校で過ごしてもいいが、登校しなくても問題ない。自分で受験勉強する者もいれば、登校して自習する者もいる。ただ自由なので出
そんな悠犀が何故、とますます混乱しそうだ。それに対し秋李は自分を甘く評価しても見た目はまあまあと言えなくもないかな、くらいだろうか。勉強はそれなりにしてきているし、できるほうだと思うが到底悠犀には適わない。そもそもきちんと将来のことも考え
悠犀を部屋で待っていると、下の階で話し声がぼんやり聞こえてきた。最初はトイレの場所でも聞いているのかなと何となく思いつつ気にしていると、ぼそぼそ聞こえてくる微音はなくならない。どうにも気になって、秋李は一階へ下りていった。するとリビングで
気づけば十一月も半ばに入ったある日、秋李が突然「家へ遊びに来ないか?」と誘ってきた。とはいえ、ずいぶん親しくなったし友人同士ならお互いの家へ遊びに行くことも普通にあるだろう。それに「あと十日後に家へ遊びに来ないかって誘うから」と事前宣言す
学校から航太のマンションまでの帰り道にある公園に、悠犀は通りかかるたび足を止めてしまう。日中はそうでもないのだが、下校時はどうしてもイメージが被ってしまう。 別に似てないんだけど、な。 公園は全然似ていないが、あの事件の時もこの香りと、そ
高校三年の夏休みもあっという間に終わってしまった。 そういえば星羽くん、結構俺とかに付き合ってくれてたけど、受験勉強大丈夫なのかな。 秋李が心配することではないし、むしろ自分の進学心配だけしろと断言できるくらい、悠犀は頭がいい。それに基本
夏休みに悠犀は何度か秋李と遊んだ。こうしてまた一緒に遊べると思ってもみなかった。 何して遊ぼうかとメッセージで聞かれた時は「そうだ、ディラに会わせてみようか」と浮かんだが、と同時に「直接会わせてもし秋李に悪影響あったら」と過る。少し考えよ
悠犀に「夏休み、遊びに行こう」と誘われ、秋李は正直嬉しいと思った。三年生になって転校してきた悠犀と、最初は知り合ってからもあまり仲よくなる気配はなかった。だが今では結構仲よくなったと思っているだけに嬉しいのだろうと思う。理由は相変わらずよ
もうすぐ転校してきて初めての、そして高校最後の夏休みになる。悠犀はぼんやり、どうしようかと考えていた。 秋李と同じ学校に通うだけでいいなどと言っていたくせに、結局避けることなど到底無理で気づけば仲よくなっていた。昔のような「兄弟みたいなレ
たまに挨拶する顔見知りといった関係である悠犀のことが、秋李は何となく気になっていた。 コンビニエンスストアで知り合ったものの、同級生のわりにその後、顔を合わせることはあまりなかった。一応たまに顔を合わせると挨拶は交わす。毎回何となくその際
ただ、この気持ちに含まれているものは悠犀の個人的な苛立ちと八つ当たりが大半なのだろう。この秋李の友人にしても、何も知らないだけだ。知らなければ何してもいいとは言わないが、知らなければ心の配りようもない。 そんなことを考えていた悠犀は、つい
気づけば中間試験も終わり、蝉の声が聞こえる時期になっていた。悠犀は朝から必死に鳴いている蝉がいるであろう木々を見上げる。 蝉はこんなに必死になって鳴いて自分の存在主張してんのに、俺は何してんだろな。 秋李との関係はさほど変わっていない。学
秋李は今日、コンビニエンスストアで会った人が気になっていた。 何だろうな。何が気になんだろ。 学生服が秋李と同じだったので、多分同じ学校の生徒だろう。別に変なやつというわけではない。むしろ結構男前だったように思う。 モテそう。そういえば名
「お帰り。俺のが早かったな」 悠犀が帰宅するとリビングのほうから航太の声が聞こえてきた。だが悠犀の反応がないからか、少しの間の後、航太は玄関までやって来た。そしてとりあえず靴は脱いだものの俯いたままの悠犀に気づき「どした?」と静かに聞いてく
大げさ、なのか? かばった際に言われたことを悠犀は反芻する。大げさ、なのだろうか。 もしかしなくても、トラウマの一種なのかもしれない。幼い頃体験したあの絶望感にも似た不安を悠犀は何とか噛み殺す。 自分の知っている誰かが、それが例えただの顔
一年生、二年生と悠犀はかなりがんばった。目指している大学より上のランクの大学も余裕で候補に入れたらいいと教師に言われるくらいにはがんばった。 そして高校最後の学年。悠犀は無事、秋李と同じ高校へ通う。 実家から離れているとはいえ、高校生を一
秋、だな。 夕暮れの空を歩きながら眺め、秋李はぼんやり思った。 高校生になって初めての秋だ。通っている学校からの帰り道にはところどころで金木犀が咲いていて、オレンジ色の花から甘い香りを漂わせている。草木に強くはない秋李でも「金木犀だ」とす
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人間の浅見鈴として寿也と宅飲みをしたその夜、すずはまた泊まることになった。とはいえ泊まる泊まらないといった明白なやり取りしたわけではなく、明日は休みだしと気軽に飲んでいて、気づいたらお互い眠っていたという状態だ。 ただ、すずは酔っていない
◆金の鈴◆ 異形となった黒猫は、かつての主人の魂を求めて彷徨い歩く── 今井 寿也(いまい としや)は、大学へ行く途中、カラスに襲われていた黒猫を助ける。 黒猫は鈴のついたボロボロの首輪をしていた。
アルバイト先で寿也が鈴と仕事しながら話していると、奏流が客として入ってきた。「よ。がんばってる?」 ニコニコ楽しそうな様子で、チョコレート味の棒アイスをレジへ持ってくる。「温めますか」「はい。……って、いやいや
まさかそんなに嬉しそうな顔をされるとはと軽く驚きつつ、寿也は自分も顔を綻ばせた。「そっか、よかった。浅見くんさえよければまた誘うよ。あとうちの子も見て欲しいし」「そう、ですね」 買って来たつまみだけでは足りないかもと、簡単なものを作って鈴
今朝は目を覚ました時からすずを見ていない。せっかくの休日の朝にゆっくりすずと遊べなかったのを、寿也は残念に思いながら掃除したり洗濯したりしていた。 猫は気まぐれらしいから、ベランダからするりと出てどこかへ散歩しに行っているのかもしれない。
「すず。ごはん」 寿也が穏やかな笑みを浮かべながら、すず専用のエサ入れへドライフードを入れてきた。すずとしてはカリカリは喉が渇きやすいため正直缶詰のほうが好みだが、寿也が与えてくれるものなら結局何でもいいとも思う。 ゴロゴロ喉を鳴らしながら
リン、と音がした。 その日、今井 寿也(いまい としや)は一匹の猫を拾った。「で、その猫ちゃん、息はあったのか」 大学の食堂で昼ご飯を話ながら食べている時、一緒にいた友人の松山 奏流(まつやま かなる)が心配そうに聞き返してきた。寿也は頷
「オレは……人間が羨ましかった」 ずっと羨ましいと思っていた。この人の周りにいる人間たちが。同じ目線、同じ姿、同じ生き方のできる人間たちが。 あまり動かせない頭をぐらりと向けると「俺はむしろ君たちのほうが、羨ましい、かも……とても自由だろ…
そろそろ昼下がりになるだろうか。切なくなるほど紺碧の、真っ青な空だった。何もかもが浄化されそうな明朗な青。吸い込まれそうなほどの青。 泣きたくなるような青の中、先ほどから胸が高鳴って止まない。鼓動の音が耳に届きそうな気がする。悠久の時を経
◆水晶の涙◆ ── とある王国 神の子が禁忌を犯し、居なくなってから長い年月が過ぎ去った……。 辺境の村で少年2人は、いつも通り平穏に暮らしていたはずだった。 *赤&ra
翌日、アルスが動けないためファインはとても献身的に何でもしてくれた。それもあるし、そもそも確かに誘ったのが自分のため、アルスは文句の一つも言えず献身的なファインに甘えさせてもらうしかなかった。 ようやく出発すると、二人はとりあえずフィール
*R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。
フォルアが初めてモナと出会った時のことを思えば、そして気が遠くなるような永久の時を経てもあれほどモナを求めていたフォルアを思えば、何ら不思議ではないと思えた。 アルスはといえば、そう聞いてから隣にいたフォルアをぎゅっと抱きしめている。さす
世話になった家には、たくさんの獲物や木の実などを置いてきた。ファインたちの生まれ育ったアイトールでもそうだったが、現金はさほど役に立たないというか、王国などへ出向くなら必要かもしれないが、普段の生活ではあまり必要なかった。それよりも食料や
子どもたちや家で話してくれた女性の話を聞くと、ファインでも間違いなく老婆がモナだろうと思えた。 森に魔物や獣が出なくなったのも、モナの影響だろう。転生したモナにまだ神の子としての力があるのかどうか定かではなかったが、きっとモナの力だと思え
少女の母親が言うには、気づけば魔物どころか危険そうな獣も見当たらなくなった森に、食べ物は必要なため木の実などを取りに恐る恐る入ったら、その老婆を見つけたらしい。 素朴な村だ。今すぐ餓死するといった風ではないが、決して裕福な暮らしもしていな
翌日、四人はプラデェ王国を出た。その足で今度は反対側にあるクーニグという村を目指す。途中、ちらほら小さな集落があったので、そこでもモナについての情報を集めようとした。ただ残念ながら王国で得た情報以上の話は入ってこなかった。 クーニグに入っ
ファインとそういった行為ができた翌日、アルスはさすがに自分の体の限界を知った。「普段から鍛えてるのに残念」「いや、さすがに……」「俺としては余すところなく鍛えてたつもりだったんだけど、まだまだだったんだなってち
*R-18指定あり注意今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。
息を切らせながらアルスが近づいてきた。「ファイン、ここ、にいた、んだ」「……あ、ああ。風呂、入る前にちょっと散歩しようかなって」 風呂へ入ってくると告げて部屋を出ていたため、アルスが今ここへ来たということはいっ
ファインの気持ちに答えるまでいかなくとも、少なくともアルスは受け止めてくれた。それがとても嬉しかったが、やはり無理させていたのだろう。 気持ちを切り替えるためもあり、ファインは宿を出てその辺を歩きながら、結局先ほどのアルスについて考えてい
じゃあ、とアルスは今さらながらに気づいた。 ファインが言ってた「欲望押しつける」って、そういう? いや、欲望って言ってんだしそういうことだろうと漠然とどこかで多分思っていたかもだけど、えっと……子作り的なこと、
フォルアが一通り演奏し終えるのを待って、食堂で今後のことを話しながら食事した。 あいにくフォルアの歌を聞いて何か情報提供してくる者は残念ながらいなかったが、歌や演奏はかなりお気に召した者が多かったようだ。カースの用意した袋には客から得たチ
ファインの口から明確に「一生薄れない」と聞いたとたん、アルスの中で表現しがたいほどふわふわとした弾けるような何かが広がった。「何だろ。何かふわふわする」「ふわふわ?」「うん。何だろな。気持ちが上がる、っぽい感じっていうか」「&hellip
動揺が全然隠せていなかったのだろう。少しだけ黙ってアルスを見ていたファインが苦笑してきた。「いいって。言ったろ。お前はお前のままでいいと」「聞いたっ、けど、すごく優しいこと、言ってくれてる、けど! でもそれじゃあ」「いい。いいんだ。アルス
カースに言われて少しポカンとしていたアルスだが、ファインが「問題ねえ。大丈夫だから食堂先行ってて。すぐ行く」と口にしたことでハッとなった。 珍しい……か。確かにそういえば俺とファインって多少言い合うことはあって
どういう意味だと聞かれ、アルスは正直戸惑った。押さえつけられなくとも話すし逃げないと言った。それにもちろん逃げるつもりはないが、話そうにも言葉がうまく浮かばない。「意味、って……た、単に嫌じゃなかった、って、だ
食堂に集まることになっているから、いくら何でもこんな状況で気づけばアルスを押し倒しているなんてことはない。 それがまさかのフラグだなんて誰が思おうか。少なくともファインは思わない、というか思いたくない。 だが今、間違いなくファインはアルス
思えばカースが加わってからよりもずっと前のフォルアが加わって以来、ファインとアルスは昔のように二人きりでくっついて眠ったりしてこなかったように思う。 いや、セルゲイの城では二人で同じ部屋だったが、なるべく狭い部屋を希望したもののそれでも二
アルスが一応いつものように元気になると、カースが「君がいてくれてよかった」とアルスに笑いかけていた。「フォルアやファインはまた別だけど、俺みたいに基本魔法で戦うタイプには相当戦いにくい相手だったよ」「そうなんだ」「アルスも気づいてたようだ
打破したいが、普段の戦闘でもギルドの仕事でも、大抵カースやフォルアがいればあっという間にどうとでもなる。 そりゃもちろん、フォルアやカースの力はとてつもなくありがたいし、二人がいなかったら俺とファインはとっくにディロックにやられてたかもだ
「ディロックゥ……ッ」 おもわず出たファインの言い方が気に食わなかったようで、ルビアはますますこちらが凍りつきそうな表情で「私の弟を舐めた風に呼ぶとは」と睨んでいる。「いや、舐めてねえ、けど…&he
アルスの声に反応したファインは転がるようにとはいえ、よくとっさに避けられたなとアルスは思った。一瞬の内に体勢を変えるのは案外難しい。 やっぱファインって魔法系なのに運動能力も結構あるよなあ。 しみじみ思ってから、そんなことを考えている暇は
「そういや今も勇者たちって水晶のままってことなのか? モーティナも眠りについたままなのか?」 ふと思ってファインが聞くと、カースは「多分」と頷いてきた。「多分?」「俺はフォルアに聞いた話しか知らないから。フォルアさえ知らない内にもしかしたら
翌日、知り合いとなった人たちに改めて別れを告げてからファインたちはルナール王国を後にした。 王国から少し南に下ったところにあるセルデスという町から、島であるローヴァン王国へ向かう船が出ている。ギルドでそれを確認し、そこへ向かおうとファイン
勇者たちの願いを受け入れるにはかなりの勇気が必要だっただろう。だがモーティナも勇者の一人だ。迷うことなく決意した。 モーティナはまず自らの魂を二つに分けた。そして片割れを他の勇者たちとともに水晶へ封印する。そして片割れである魂の半身は永遠
セルゲイは言っていた。「あれはそれこそ真実について表現しています。モーティナの神話では神の子を放棄した少女は禁忌を犯して逃げ、そして世界が犠牲になったとありますが、本当はそれは関係なく、ただし勇者たちが自らを犠牲にして世界を守ってくれてい
「記憶、っていうのは?」 アルスが聞くとカースはにっこり微笑んできた。「歌かな」「歌?」「そう。英雄の真実」「ああ……」 ファインが頷いている。アルスにとっては話の断片を聞いているようで、全体図が見えてこない。と
これはやはり、罰なのかな。 少女は途方もない時間が経過しても、死を迎え転生されることも許されず、ひたすら眠り続けている。フォルアはそれをずっと目の当たりにしたまま、同じく死んで転生するどころか少女のように眠りにつくことさえできない。 どち