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毎日がふぁんたじー https://blog.goo.ne.jp/rizekai/

ファンタジーものです。少女と青年が不可思議な現象を解決していく話です。剣、魔法、仕事、在住、戦闘ちょっと

まど
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水戸市
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2011/10/04

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  • 「タイトルなし」 第一話:鳴らない鐘の声 15

    怒っているのだろうか。ふとそんな思いが首をもたげる。一歩前を歩くリゼの華奢な後ろ姿は、何かを沈思しているようであり、不機嫌に黙り込んでいるようでもあった。ヒューゲル修理屋を早々に退勤ということになり、事務所を出てからずっとそんな状態である。三時を過ぎ、太陽は夕刻に向かって少しずつ傾き始めていた。今日で三度目になる九時通りにでは、主婦たちの午後のお茶会はぼちぼちお開きになっているようで、通りの両側を埋めるカフェテラスから客の姿が消え始めていた。カイは中央区を目指すリゼの一歩後ろを保ちつつやはり黙って歩いていた。リゼが怒るのも無理はないので何も言えないのである。騙していたわけではないが、充分な情報を与えずいいように掌で転がしていたのだ。プライドが高い者ほど我慢ならないだろう。もし自分がそんなことをされたら――と考え...「タイトルなし」第一話:鳴らない鐘の声15

  • 「タイトルなし」 第一話:鳴らない鐘の声 14

    「おかえりなさい」例によって何の装飾も労いの言葉もない、極めて事務的な調子のベルッカに迎えられ、リゼとカイは事務所に戻ってきた。ベルッカは麗しい黒髪を耳に掛け、社長用の机で何かの書類に目を通していた。そんな何気ないポーズも美女は絵になるなあとしみじみ眺めていると、机に見覚えのある封筒が数通置いてあることに気付いた。ありきたりな特徴のない茶色の封筒は、リゼとベルッカとを引き合わせた憎き封筒だった。ベルッカが道の角で老人とぶつかり、地面にばらまいた数通の封筒が両者とも似たような封筒だったのでよく覚えている。軽い親切心から拾うのを手伝ったばかりに、こうして今リゼは己の生活圏内を飛び出す破目になっているのだった。「グレンアースの鐘はどう?直りそうかしら」書類から目を離さずにベルッカがどちらにともなく訊ねた。お高くとまっ...「タイトルなし」第一話:鳴らない鐘の声14

  • 「タイトルなし」 第一話:鳴らない鐘の声 13

    「なんでコーヒー飲まなかった?」明日も来ることを約束して院長に別れを告げ、修道院の門まで芝生の庭を歩いている途中、カイが唐突に質問をぶつけてきた。「…えっ」完全に違う場所へ意識を持ってかれていたリゼは聞き逃して間の抜けた声を上げる。そんな様子のリゼをちらりと見てから、カイが小さくため息を漏らす。「だから、コーヒー。飲まなかっただろ」「ああ、うん…」何と言ったらいいか。要点をまとめて答えようとするが、その間もちらちらと別の場所が気になってどうも意識が分散されてしまう。カイはリゼの気にしている先は見ようとせず、ただ前だけ向いて言った。「あれは気にするな」「え…でも…話とか、聞いた方がいいんじゃ」「あんな殺気立ってる奴からまともな話が聞けると思うか?」「……」正論である。リゼは彷徨いそうな目線を足元に固定し、押し黙っ...「タイトルなし」第一話:鳴らない鐘の声13

  • 「タイトルなし」 第一話:鳴らない鐘の声 12

    修道院の食堂は中庭に隣接する位置にあった。食堂のガラス戸をあけると、そこはもう芝生の広がる中庭で、逆に中庭から直接食堂に入ることも可能だった。こじんまりとした空間のほとんどを占めるのは、一度に二十人は座れるのではないかと推測できる圧巻の長テーブルがひとつだけだ。そのテーブルの端に三人だけで座るのは何とも物寂しい絵面である。「本当は、うちで預かっている子どもが十二人と若い修道士が三人いるんですがね」リゼの感想を読み取ったように院長が苦笑した。「ちょうど二日前から、みんなで年に一度の合宿旅行に行っているところでしてね。狭苦しい都会を離れ、今頃は自然豊かな山林でのびのびと遊んでいる事でしょう。私は歳のせいもあって、こちらでお留守番というわけです」「えっ。それじゃあ――」リゼの脳裏に中庭から見上げる少年の姿がぱっと浮か...「タイトルなし」第一話:鳴らない鐘の声12

  • あらすじ

    *「タイトルなし」とある力を持ちながらも自覚はなく、魔法センスがからっきしな半人前魔法使いの少女リゼと、賞金稼ぎの青年カイ。「ヒューゲル修理屋」に勤める二人は美女社長ベルッカの指示を受け、意思を宿した”物”たちの一癖も二癖もある不思議な故障を直していく話です。*第一話:鳴らない鐘の声グレンアース修道院の鐘がある日突然鳴らなくなった。鐘職人、楽器職人、果ては警備隊まで、様々な職種の人間が修理に訪れたが原因は全く分からない。この怪事件を受け、リゼとカイはヒューゲル修理屋の初仕事として修道院にむかう。そこには優しい修道院長の老人と、鐘を修理に来る人間を敵視する鐘撞き少年メルエルがいた。メルエルはどうやら鐘が鳴らなくなった原因を知っているようだが――あらすじ

  • はじめに

    実は公募に挑戦しようかと画策して、もう何年も応募作品が完成せずにいろいろな物語を途中で放棄してきました。私と同じような人は結構いるのではないでしょうか…?今まで一人でこっそり書いていた私がこうしてブログ小説を始めようと思ったのは、一人だと簡単に諦めてしまいますがブログなら続くのではと思いついたからなのです。この物語を応募作品として完成させたいです!はじめに

  • 「タイトルなし」の登場人物

    話が進むたびに増えていくと思います(゜∀゜)《ヒューゲル修理屋のメンバー》*リゼ・クライバーン19歳女魔法使い浪人生魔法使いに憧れ、王立養成魔法学校への入学を目指して浪人生活を送る。しかし、魔法の才能・実力ともに皆無に等しく、魔法の練習をして暴走させることもしばしば。謎の美女社長ベルッカに嵌められヒューゲル修理屋で働くことになったリゼは、とある力を開花させる。よく言えば前向き、悪く言えば単純な性格。日々の運動不足に頭を悩ませている。注意力散漫でしょっちゅうカイに叱られたり助けられたりしている。*カイ・ジェラルド21歳男剣士賞金稼ぎ賞金稼ぎの世界では第一線を活躍する剣士。曰く「リゼが修理を投げ出してとんずらしないように見張る監視役」として共に行動する。冷静で動じない常識人だが、その持ち前の運動神経から常人では思い...「タイトルなし」の登場人物

  • 「タイトルなし」 第一話:鳴らない鐘の声 11(改)

    「――待った」ようやく不可思議な鐘の沈黙を解決する糸口をつかめたと、意気揚々と階段を降りようとしたリゼは、ふいにカイに呼びとめられて足を止めた。「なに?」カイは小窓の一つから見える景色に何か引っかかるものがあったらしく、顔だけ横に向るようにして外に視線を送っていた。リゼもその窓に近寄って顔をのぞかせる。「わあ」リゼは思わず感嘆の声を出した。そこからはペストリアチカの街並みが一望できたのだ。街は中央区からちょうど×印のように伸びる四本の大通りによって区切られていた。北区、東区、南区、西区、そして中央区である。四本の大通りは四大通りとも呼ばれ、それぞれ時計の針に見立てて二時通り、五時通り、七時通り、九時通りなんて名前が付いている。街で最も高いこの塔の最上階から見るとより実感するのだが、このように整然とした美しい街並...「タイトルなし」第一話:鳴らない鐘の声11(改)

  • 「タイトルなし」 第一話:鳴らない鐘の声 9・10(改)

    「ヒューゲルさんのお弟子さんが来たからにはもう安心、か…」院長がいなくなり、鐘も鳴り止んで静寂を取り戻した鐘楼の最上階でリゼはぽつんと呟いた。ヒューゲルを師匠に仰いだ覚えはないが、「ヒューゲル修理屋」と名乗った以上はそう思われても仕方ない立ち位置である。念を押して言っておくが、決して自らこの位置に立ったのではない。あの悪魔のような社長にまんまとはめられて立たされたのだ。とはいえ、どんな経緯だろうとヒューゲル・ハロルドの名と信頼の重責を背負ったリゼに、匙を投げるという選択肢はなくなったわけである。「こりゃ面白いことになってきたな」困り果てるリゼを見て楽しむように、カイがニヤついた笑みを向けた。その顔色には出がけに見た不健康な白さはなく、いくらか二日酔いから立ち直ったようである。鐘楼の塔は完全に密閉空間にあるのでは...「タイトルなし」第一話:鳴らない鐘の声9・10(改)

  • 「タイトルなし」 第一話:鳴らない鐘の声 8

    鐘楼の中は一本の円柱が垂直に建っているような、至って簡単な構造をしていた。壁沿いにぐるぐると螺旋階段が続き、最上階にだけ床がつくられそこで鐘を鳴らすのだそうだ。とはいえ、何しろ街で最も高い建造物なだけに最上階までは結構な長さがある。螺旋階段の中盤あたりでリゼはすでに足が重たくなるのを感じた。「…少し休みますか?」リゼの疲労の気配を感じたのだろう、先頭を歩く院長が気遣わしげに立ち止まった。振り向かれた顔には老体のわりに疲労の色も見せず、リゼよりよほど元気そうである。「大丈夫です」こういう時は下手に休むと余計疲れやすい。何より老人に気遣われる十九歳というのはなんとも情けない構図で、リゼは即座に首を振った。「しっかりしろよ、若者」後ろでカイが茶化してくる。リゼの足取りが重くなるのは、一概に日々の運動不足が原因とはいえ...「タイトルなし」第一話:鳴らない鐘の声8

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