ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 30

 夜のうちに雨が降ったのか、カーテンを開けると朝日を浴びる木々は茂る葉に玉の露を光らせていた。窓を開ければ少し湿り気を帯びた風がすうっと頬をなでる。洗い流され…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 29

 「父さんと、か・・・・・・あの人が？」 長年蓄積されたわだかまりはそう簡単には解けない。呼びたくても口には出せないのか思わず出そうになった言葉をわざとのみこ…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 28

 「自分で呼んでおいてその顔は何だ」 「いやー、その顔でその声ってやっぱ違和感だらけっていうか・・・」 深夜ミナムの部屋をノックしたテギョンは不審そうな顔でじ…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 27

 「あっ、すいません」 ちゃんと目を開けて歩いているのに近づいてくる人が見えていなかったのか、自分の進むスピードが速すぎてうまくよけられなかったのか。肩がぶつ…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 26

 家族を待つ人。恋人を待つ人。友人を待つ人。国際線の到着ロビーは再会を喜び合う人々でにぎやかだった。その人たちの間を出迎えを捜す様子もなく無表情で歩くギョンセ…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 25

 ゆっくり話をしようと下りてきたリビングで、テギョンは事故に遭ってから今までのことを話した。ソファーに腰かけた身体を前に倒し膝の上に肘を乗せる。組んだ指を見た…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 24

 深夜、ジェルミが慌てた様子でミナムの部屋にやってきた。 「ミナム、シヌヒョン部屋にいないよ」 「何！？」 ドアが少しだけ開いたままになっていることを不審に思…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 23

 「いいなー、私流れ星って見たことないんですよね」 何気なく観ていたテレビで流星群の話をしていた。今夜極大を迎えると。ミニョはただ流れ星が見られるだけでなく、…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 22

 勢いよく開いたドアから手が伸びると、廊下に追い出されたはずのジェルミの身体は吸いこまれるように部屋の中へと消えた。胸ぐらをつかんで離さないミナムの顔には、疑…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 21

 車の中は静かだった。イヤホンで音楽を聴いているシヌはいつものことだったが、一番後ろでマ室長の眠気覚ましのBGMのようにしゃべり続ける二人が、今日は珍しくひと…

ひとりの夜はうさぎを抱きしめて 20

 「はっ！・・・よっ！・・・くっ！・・・ふんっ！」 テジトッキからシヌへ、そして再びテジトッキの中へと戻ってきたテギョンは少し期待していた。常識では考えられな…