バアン!河合「でだ!お前、説明しろよっ!?」放課後になり、私の机の上に勢いよく両手をついて、霊感少女こと、河合千晴が私をにらみつけました。私「ぱーどん?」私は分厚いレンズをかませた銀縁眼鏡に、長い髪の毛をみつあみにして、両肩に垂らした状態で首をかしげます。河合「ぱーどんじゃねぇ。昨日の6時限目の始まりのヤツ!」私「あぁ…。」村森「なんだなんだ?またオカルト話か?(笑)まぜろっ!?」小柄で扇形のつやや...
その日は穏やかに一日が過ぎていきました。そして、放課後。いつもの『しんじゅを守り隊』のメンバーが集結しております。小島さん「それで首尾はどうでしたの?虫鹿君の方は?」虫鹿君「あぁ、休み時間に土屋に聞きにいったらさ。」岡田「ちょ、待ち。なんや虫鹿のいう、つちやってのは?しんじゅ?」私「あぁ、昨日、虫鹿君に紹介されたんだよ、土屋君を。」岡田「はぁ。なんでまた?」神岡君「ん?土屋君?3組の?」加藤君「な...
学校の門をくぐると、クラスメイトの虫鹿君がいました。虫鹿君「よ!おはよ!」私「おはよう、虫鹿君。わざわざどうしたの?」集団登校をしている私たちは、家が小学校をはさんで間反対に位置していたため、通常なら使う門がちがいます。それなのに私が使う正門に虫鹿君が待ち構えているということは、私にすぐに話したい内容があるという事です。二人して肩を並べて歩き出したので、同じ通学団の子供たちは、さっとバラけて昇降口...
体格のよい小島ちーちゃんが話を切り出しました。小島さん「そういえば、虫鹿君、しんじゅちゃんにお話があったのでは?」虫鹿君「あぁ、うん。ちょっとさ、俺についてきて欲しいんだ。」私「ん?場所を変えるって事?」神岡君「ここではダメなの?」虫鹿君「おぉ、ちょっとな。わりいけど、今日はこれで解散な。」伊藤さん「分かったわ?」岡田「おぉん、後で話聞かせてくれよ、しんじゅ。」私「ん、了解。」小島さん「ふふ。それ...
その日の放課後、「しんじゅを守り隊」のメンバーが集まっていました。虫鹿君「よぉ、お前、けっこうビシっと言ってたな?」神岡君「うん、すごい。」私「あぁ…。多分、昨日みんなが話を聞いてくれていたから、こっちも多少は頭の中が整理されていたんだと思うよ。ありがとう。」伊藤さん「でも全然響いていなかったわね。」小島さん「そうですわねぇ。あれはいったいどうすればよろしかったのかしら?」岡田「あんなん、どーしよ...
その日は珍しく雨でした。クラス内で、次の授業までのつかの間の休憩を楽しんでいたら、四季子ちゃんが通りかかりました。四「あぁあぁ~、またしけた顔をみなきゃならない、アタシってかわいそぉ~!!」わざとらしく私に声をかけてきます。クラス内の空気にピリリ、と緊張が走ります。四「どうしてこんな美少女のアタシがいるクラスに、こんな不細工がいるのかしら?神様って不公平よねぇ。いえ、でも公平かもしれないわ?こんな...
次の日も学校に向かいます。教室に入ると、いつものメンバーが微笑みかけてくれました。それに、なんとも言えない安心感を感じて、着席します。いつも通りの授業を受けて、その日も放課後になりました。四季子ちゃんは、さっさと帰宅したようで、加藤君も喜んで私のそばに来ます。私「調子よさそうだね?」加藤君「うん。あの子がいないと空気がすがすがしいよ。」私「そうか…。」虫鹿君「よ!そんでお前に話を…って、なんだかまた...
私は黒電話の受話器を置いて、そのまま床にぺたんと座り込みました。12月の寒い日のことです。腰をぶつけて、痛むので無意識に手でさすっていました。四「誰もいないじゃないか!(笑)お前、みじめだな!無人の店で働いて!」涙があとから、あとからこぼれてきました。私はしばらくひざを抱えて泣いていました。悲しくて、悔しくて、情けなくて、もう、本当にどうしようもなく涙がこぼれてきたのです。どんなに困っても、誰も助け...
私はあまりのショックに、しばらくぼうぜんとしていました。直撃はまぬがれたものの、重たいレジを腰にぶつけてかなりの痛みでしたし。レジが壊されるのではないかという恐怖に、身がすくんでいたため、しばらく身動きが取れなかったのです。そして、我に返ると、かすかにどこからともなく、何かの物音が聞こえてきました。最初は気のせいかと思ったのですが、それは黒電話の受話器からなのでした。警察に電話がつながったままだっ...
私「きゃぁああぁぁ~!!」私は黒電話の受話器をほおりだし、絶叫しました。ゴツンゴツンと黒電話がどこかにぶつかっている音が聞こえましたが、それどころではありません。私は一目散にレジに向かって飛び出していきました。私の焦る様子をみて、四季子ちゃんはにやりと笑っておりましたが。私はそれどころではありません。レジからは、小銭がジャリンジャリンと床に落ちていきましたが、私が心配しているのは、レジを持ち上げて...
♪ピンポーン、ピンポーン♪お店の入り口に設置してある、赤外線センサーが作動してチャイムを鳴らしていました。普段ならその音を聞いてお店にでるのですが、この日はちがっていました。寒さを覚えた私は、マグカップに温かい玄米茶を注いで手に持ち、そのままレジそばに向かうと。入り口のドアが開いていて、その地べたに腹ばいで寝そべっている人物を見下ろしていたのでした。私「お前、何やってんだよ。」四季子「………。」マグカ...
少し体格のよい女子、小島ちーちゃんがあごに手をあててつぶやきました。小島さん「しかし…。さきほどはお姉さまの話が衝撃的すぎて、そっちに気持ちが持ってかれてしまいましたが。先月の売上金が1万3千円とは…。お店の経営は大丈夫なんですの?」虫鹿君「いや、ムリだろ。今すぐ店をたためって話だろ。」神岡君「そんな子供のお年玉と変わらない金額しか稼げないんじゃね…。」岡田「何ぃ!委員ちょ、お年玉1万円超えとるんか...
その日の放課後。いつものメンバーで固まって、私の話を一通り聞いてもらっておりました。朝一でざっと説明を聞いていた虫鹿君は腕組みをしながら、うんうんとうなずいていましたが。他の児童たちはあっけにとられた風情で、私の話を聞いていたのでした。ちなみに四季子ちゃんはこの日、さっさと帰宅したので、みなリラックスして放課後のおしゃべりをしていたのでした。小島さん「…なんてことですの…?それではしんじゅちゃんのお...
本家へのお使いと、養女の打診の話は土曜日の夜の出来事でした。週末をはさんで、月曜日に学校に行きます。いつも通りに正門をくぐって、校内に入ったとたん、同級生の虫鹿君が声をかけてきました。私「あ、おはよう。」虫鹿君「おはよう。」私「私に用があるんだね?」虫鹿君「おぅ、話が早えな。」私「そりゃ、裏門を使っている虫鹿君がここにいれば分かるよ。」そうして二人してゆっくりと歩調を落としながら昇降口へと向かいま...
私は思ってもいないことを言われて、驚いたのでした。私「あの…。その話はお父さんが断ったと思ってたんですけど…。」叔父「あぁ、そう、一度は断られたね。あの時は正三も妻を亡くしたばかりで、かなり意気消沈していたし、男手一つで子供四人を育てるのは手に余るだろうと思って、私も背中を押させてもらっていた。しかし正三は後で、『なんとかする』と言ったので、いったんは引っ込めたのだが…。」私「はい…。」叔父「私も正直...
♪ジリリリーン、ジリリリーン♪黒電話が鳴りました。出てみると、本家からの注文でした。私は頼まれた商品を袋につめて、西麻町にある本家へと自転車を走らせました。それは午後7時ぐらいの出来事でした。すでにお店はしまっていましたが、せっかくの注文なので私は張り切って配達に向かったのでした。私「ごめんください。」本家の玄関ドアを開けて、声をかけると、奥から本家のお嫁さんが来てくれました。お嫁さん「あらしんじゅ...
中華料理屋の店長に深々と頭を下げて、逃げるように親子して車に飛び乗ったのでした。父親の運転する軽トラで自宅に到着すると、そのままプイっと自宅に戻ります。父親は離れにある、オーディオルームでくつろぐのが日課でしたので、それぞれ違う家屋へと向かう格好になりました。そして、自分の部屋に戻ると、珍しく高校生の姉がいました。母親が亡き後、何かと家事を押し付けてくる父親に嫌気がさしていた姉は、いつも帰宅時間が...
父と二人して席をたち、入り口そばのレジへと向かいました。店内のお客さんに、かるく会釈をして、通りすぎます。『チエ…がんばれよ…。』『ふみかって子の顔が見たかったな…。』『親父、めちゃくちゃ顔がいいなっ!?アレだったら、結婚詐欺できるだろっ!?』『不憫な…まだ小学生だってのに、これから苦労するんだな…』『月収1万3千円でお会計もらっていいものか…?』すると、父親はペラペラの財布の中身を、私に見せつけてきま...
頭を下げたまま、親子でヒソヒソ話をします。父「ほら!またお前のせいで、怒られたやないかっ!」私「くっ!自分のせいだとは思わないのか?」父「そんなん、お前がいう事を聞かんからだろうが?」父親は頭を上げて、再びタバコに火をつけました。カタカタ…さすさす…。さきほどの父の『50、60気色わるぅ!』発言の際には、店内にいたお客のほとんどが、ハシや食べ物を取り落としていたのでした。みな、新しいハシをとったり、...
私はかなり頭に血が登っていました。私「無理だろ…。私が高校を卒業するのに、あと6年かかる。500万円入ったところで家族5人で何年持つと思っているの?2年ももたない。」父「そぉかぁ?がんばればいけるんちゃうかぁ?まぁ、それならお前んたちは、賢治のところに預ければえぇな。」父はスパーっと、タバコをくゆらしています。私「それで芙美ちゃんの結納金で、新しい妻と二人きりで暮らすっていうのか…?」父「えぇ?別に...
私は軽いめまいを覚えました。どこかで聞いたセリフだと、ふと自分の内面に意識が向かいます。四『そう、アタシは神に選ばれた聖なる少女。聖少女なのよ!』白髪頭を振り乱し、自分を国民的美少女と豪語する同級生、上田四季子ちゃんを思い浮かべました。私はつい、カウンター席にうつむきかげんになりました。両ひじをカウンターに置いて、絞り出すようにつぶやきます。私「………私の周り、バカばっかり!」『チエ…戦意喪失したたか...
私「分かったか!再婚はあきらめろ!そして、二度とバカな事を言うな!不愉快だ!」私はそう告げると、少し水を飲みました。そして、補充用のボトルをつかんで水を継ぎ足します。父「ひどい…。そんなん、ちゃうもん!父ちゃんは愛されてるもん…!?」私「ちっ!往生際が悪いな!だいたい、妻を亡くして喪中の男に、結婚をちらつかせる女がまともなワケないだろうがっ!常識で考えろっ!?」父「そんなんやないもん!結婚はワシが勝...
父「お前もいつまで立っとる。いつまでも聞き分けのない子どもみたいな真似しとらんと、おとなしく座っとれ。」タバコの煙を吐き出しながら、けだるそうに父は言いました。私「……。」私は無言で着席し、むかつきでいっぱいな気持ちになりました。『チエだ…。リアルチエだ…。』『本当にいるんだな、こういう親子…。』『スゲー親父だな…。半年で再婚か…。』『ふみかって子の顔、見てみたい…。』さきほどから視線を浴び続けているとは...
私「………。」店内ではただ、テレビの音だけが響いていました。ことん。私が茫然としていると、自分達の背後のテーブル席のお客さんが、私の落としたレンゲをそっと、私のすぐそばのカウンターの上に置きなおしてくれました。ことん。今度は逆にカウンターの奥の店長が、何も言わずに私のすぐそばに新しいレンゲを置いてくれました。私「………気持ち悪い…。」父「なぁ?どうもそのジン、学校帰りの芙美花を見かけたそうでな?麻町では...
私「…………。」シーン…。店内にはテレビが天井近くに設置されていて、威勢のよい話声が聞こえてきていました。私は父親の言っている言葉の意味が、よくつかめず、思わず黙ってしまいました。父「そんでええやろ。これで新しい妻も安心して暮らせるわ。」私「あのさ、えっと…。そのお姉ちゃんが結婚っていうのは冗談にしても、私たちはどうなるの?」父「あぁ、お前んたらぁはまだ小学生やからな。家に置いとったってもえぇし、子供の...
カチャカチャ。ずずっ…。少し会話につかれた私は、父親の残したラーメンの汁をレンゲですくって飲んでいた。正直、あれだけの量では食べたりない。半透明の茶色の液体の中で、細切りされたネギがくるくると舞っている。私は少しでもそれを食べようと格闘していたのでした。父「なぁ…。ワシが幸せになるの、アカンのか?」私「え?その話、まだ続くの?」ずずっ。私はラーメンの汁を飲みながら答えた。父「ワシにとっては、一大事な...
親子で身を寄せ合って、ヒソヒソ声で会話を続けます。父「お前のせいで怒られたやないかっ!?」私「だから子供のせいにするなって話だよっ!?」なんとなく、視線を感じて背後を振り返ると、テーブル席のお客さんたちがこちらを見守っていました。私「お騒がせしてすみませんでした。」父「ごめんなすって…。どうぞ食事を続けてつかぁさい。」と、二人して頭に片手をあてながら軽く会釈をして、またカウンターに向き直りました。...
父親はかすかにふるえていたようでした。カウンターに置かれた水を飲み。そして、おもむろに胸ポケットのあたりをまさぐり、くしゃくしゃにつぶれかけた『マイルドセブン』の箱から、一本たばこを取り出して火をつけました。カチ。スー…。はぁ…。父親は私の隣の席に座り、正面を向いていました。照明の加減で少し逆光気味に見えています。父「…なぁ、しんじゅ…。お前、いくつになった?」私は父親の残したラーメンどんぶりの中から...
父親と連れだって、小さなラーメン屋に入って行った。Yの字型の通路沿いに建っている、ごく小さな面積のお店だった。時々父親に連れられてきたことがあったので、勝手がわかっている。二人してカウンター席に座ると、注文をした。私「大将、しょうゆ大盛にライス大。」父「ライスは中にしろ!」私「じゃ、ライス中で!」店長「あいよっ!」父親は振り返りざまに私を見ると、目をむいた。そして正面を向いて言葉を続ける。父「…大将...
この日も放課後にいつものメンバーで雑談をしていました。虫鹿君「お前もやればできるじゃねぇか。」真っ黒に日焼けした小柄なスポーツ少年の虫鹿君が声をかけてきました。加藤君「うん、立派だったよ。」虫鹿君とは対照的に、スラリと背が高く、色白な少年の加藤君が言葉を続けました。神岡君「相手にはまったく響いていなかったけれどね…。」クラスの学級委員長を務める、神岡君が腕組みをしながら答えています。岡田「アイツは...
その日もクラス内では朝の挨拶が交わされていました。ガラッ。四「おはようございまぁ~す。」「……。」上田四季子ちゃんが、黄色の帽子を外しながら教室内に入ると、みな、一瞬固まる。誰もが彼女と視線を交わさないように気を付けている。しかし、礼儀を大切にする四季子ちゃんは、通りがかりの人に普通にあいさつをする。声をかけられた人は、それなりに返事をする、という感じだった。気に入られても、気にくわないと思われても...
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バアン!河合「でだ!お前、説明しろよっ!?」放課後になり、私の机の上に勢いよく両手をついて、霊感少女こと、河合千晴が私をにらみつけました。私「ぱーどん?」私は分厚いレンズをかませた銀縁眼鏡に、長い髪の毛をみつあみにして、両肩に垂らした状態で首をかしげます。河合「ぱーどんじゃねぇ。昨日の6時限目の始まりのヤツ!」私「あぁ…。」村森「なんだなんだ?またオカルト話か?(笑)まぜろっ!?」小柄で扇形のつやや...
河合「うわっ!なんだ、これ!?金色っ!?」雪のように真っ白な肌に真っ赤なくちびるの眼鏡の少女が叫び声をあげ、廊下に後ずさりをしました。教室内の視線が彼女に注がれます。私「おや?当番で遅れてきた様子ですわね。」村森「えぇ。無事授業前に到着したようで、なによりです。」みずほ「あらあら、ずいぶんと焦っている様子ですわね?」河合「ちょ!何!コレ、いったい…!なんでこんなに神霊や精霊がごちゃ混ぜにいるんだっ...
私たちはいつもの教室で、冬服のセーラー服姿で日向ぼっこをしながら窓の外を見下ろしていました。そこは愛知県立の商業高校の一角にある電算棟の2階。学校の敷地内の校舎の中で一番南側に位置しており、敷地の外には公営のテニス場があったのでした。そこでは太陽の日差しを浴びながら、大人たちがラケットを振り回し、明るい黄色のボールが飛び交っていたのでした。村森「まぁ…本日はとてもうららかな陽気で、よろしいですわね...
私は私の口から飛び出した言葉に、少し驚きつつも、これが私の本当の望みなんだろうと感じていました。目がチカチカするような、感動を味わっていたのでした。四季子ちゃんは私の言葉を受けて、深くうなづいていました。四季子「なるほど、立派だわ。」私「四季子ちゃん…分かってくれるの?」四季子「えぇ、名演説だったわ。これが世間で言う、負け犬の遠吠え、という奴ね?」私「え?」四季子「だって、あまりにも辛気臭いんです...
四季子ちゃんはきょとんとした顔をしていました。四季子「何よ。」私「…私ね、ここ数年、ものすごく変化が多かった。いろいろあって…本当にいろいろあって…。正気が保てないんじゃないかって事もたくさんあったんだ。」四季子「へぇ。」私「私ね、うんと考えた。それで思ったんだ。私個人がうんと頭をひねって考えたところで、世の中は動き続けていく。仮に私が死んだとしても、毎日、毎朝朝日が昇って、日常が続いていく。私がこ...
私「…今日、四季子ちゃんとお話できてよかったよ…。あまりにとりとめのない話だったから、誰にも話したことなかったんだ。」四季子「ふぅん?別に夢の話ぐらいしてもいいんじゃない?」私「ん?あぁ、そうか、四季子ちゃんは私が、夢物語を語っていると思っているんだね…。なんとなくだけど、あれは実際にあった出来事。私は生まれ変わって、今、日本に住んでいるって感じているんだ。」四季子「ふぅん?まぁ、前世が王子様だかな...
四季子「テキトーねぇ。そういえば、さっき言ってた『ぐどうしゃ』って何?」私「え?あぁ、求道者っていうのは、道を求める者っていう言葉でね。」四季子「意味が分かんないんだけど?」私「あぁ、つまりお坊さんになって、悟りを開きたいって、そういう人の事を言うんだよ。」四季子「あぁ、なるほど。煩悩をとるとか、そーゆーの?」私「あぁ、そう、そーゆーの。」四季子ちゃんはちょっと腕をあげて、自分の頭の後ろで組みまし...
四季子「何?今の。」私「え?今、なんて言った?」四季子「それはこっちのセリフよ。」私「あぁ、そうだね。アタシが言ったんだった。なんでディーバダッタなんて言ったんだろう?」四季子「それをアタシに言われても?」私「あ、そうだね。意味不明だね。まるでいつもと逆転したみたいな会話だね。」四季子「そうね。意味不明ね。で、なんなの、そのだいだらぼっちって。」私「え?アタシ、だいだらぼっちなんて言ったっけ?」四...
四季子ちゃんは少し首をかしげて、私を見つめました。四季子「うっかり信じそうになっちゃったわ。」私「え?どういう事?」四季子「だから、今までのお話も、作り話なんでしょ?」私「作り話だなんて、私、一言も言ってないわよ?」四季子「だって、さっき、聞き流してくれてもいいって言ったじゃない。」私「それは四季子ちゃんの未来の話でしょ?もう話題がちがっているから、今のも聞き流せなんて言ってないんだけど。」四季子...
四季子「なに、その親戚の坊主に、人生相談でもしてもらったの?」私「いや、そういうんじゃなくて…。正直に言うと、突っかかって行ったんだ。自分が望んでも手に入れられない身分を、あっさり捨ててしまった男性に対する嫉妬かな…。まだ未熟だった私はそういう葛藤を彼にぶつけてしまった。」四季子「なによ、しょせん次男坊なんだから、さっさとあきらめればいいのに。八つ当たりされた坊主もいい迷惑よね?」私「いや、長男がど...
私は過去の記憶を思い出しながらお話を続けていました。私「そこは王族しか立ち入ることができない部屋だった。瑠璃の間と呼ばれていてね。そこに親戚の元王子が立ち寄ったんだ。」四季子「ん?元王子?」私「そう、その男性はだいぶ年上のいとこだったんだけど、その国の王位継承権一位の王子だったんだ。」四季子「第一王子がなにしてんのよ?あ、元か。」私「自分はその男性に複雑な気持ちを抱いていたんだ。自分はどれだけ勉学...
四季子「ふぅ~ん、身近にコーチがいるのか…。まぁ、塾に通わせるお金がかからないなら、いいわね。」私「そうだね…。」四季子「でも、やっぱり芸能人がいい!アタシはスポットライトを浴びて、活躍したいの!」私「そう…なれるといいね。」四季子ちゃんは立ち上がって、片足で立って、両手を広げてくるりと回転しました。彼女はすごく背筋が伸びていて、姿勢のよい子でした。四季子「アタシ、麻中に入ったら、新体操部に入るの。...
四季子「えぇ~?子供は二人なの?男、女、どっち?(笑)」私「最初は男の子、次に女の子だね。」四季子「あら?いいわね(笑)」私「そうだね。」四季子「それじゃ、将来アタシたちに子供が生まれたら、一緒に遊ばせましょうよ?子供たちも友達同士になるの。」私「…いいね。(四季子ちゃんが子供を産む分、私は子供を持てなくなるけれど…)素敵だね。(笑)」四季子「そうね、しんじゅちゃんも子供、二人ぐらいいるといいわね?女の子...
私も甘いコーヒー牛乳を飲んで、落ち着いた気分になったのでした。私「ねぇ、四季子ちゃん。アタシね、夏休みにひろみちゃんの家に行ったんだ。」四季子「へぇ。」私「そこでひろみちゃんに色々話を聞いてもらって…。それで、その時ショックで途中で意識を失ってしまったんだけれど。そこで四季子ちゃんの未来を視たんだ。」四季子「え?どんな風なの?」私「姫虎の先生と一緒だよ。爆破テロを起こす四季子ちゃんと、そうでない場...
四季子ちゃんは屈託なく笑っていました。今の私の説明ではこれが精いっぱいだと感じて、私は地面に座り込んでいた彼女を立たせました。私「大丈夫?ケガはしていない?」四季子「え?大丈夫だよ?なんで?」私「いや、砂利の中にガラスの破片とか入ってたから、念のためね。」四季子「あぁ、そうだっけ?気づかなかった。」私は四季子ちゃんのズボンをパンパンと手で払って、砂利をはたき落としました。四季子「ふぅ。ちょっとだい...
私「四季子ちゃんは容姿を悪く言われて、相手に嫌がらせをしている未来が視える。」四季子「そんなの、当たり前じゃない。アタシを悪く言うんだから。」私「そういうところだよ。そういう歯止めがきかないところが、一番恐ろしいんだよ。」四季子「だって…。」私「いいか?今後、どんなに容姿を悪く言われても、絶対にやり返さない。それを誓って欲しい。」四季子「う~ん、でも…。できるかなぁ?」私「できるかなぁじゃなくて、や...
私は四季子ちゃんを見続けていました。(やはり犯罪に関してはあまり罪悪感は無いようだな…。もうすぐ13歳になるというのに、精神年齢はまだ6才ぐらいか…。アンバランスだな…。知識や経験は13年あって、口も達者だから、一見何も問題が無いように見えるけれど。これからも行く先々でトラブルを起こし続けていくのだろうな…。)私はもう一つの四季子ちゃんの人生を視ていました。スーパーの面接を受けに行って、断られたことに...
(しかし、油断してはダメだ…。この子には良心というものが無い…。今の言葉が真意かどうか確かめなければ…。)私「四季子ちゃん、今の言葉は本当?正直に話して。」四季子「うん。」私「自分の為ではなくて、美輝お姉さんの為に、お母さんが必要だと言うのね?」四季子「うん…。」私「もうこれからは美輝お姉さんをいじめない?」四季子「それは…できる限りそうする…。」四季子ちゃんは言葉をつまらせながら、そう言いました。私「...
私「………。」地面に座り込んで、深々と頭を下げる四季子ちゃんを、そばで見下ろしていました。奇しくも、私が夏休みに町内会の会長さんへの誤解を解くために、手伝ってほしいと私がお願いした時に、四季子ちゃんが私に土下座をしろと言っていた場所でした。そこは砂と小さなガラスの破片が散らばった場所で、そこに素肌をさらして座れと、指示するという事は、私の足の皮膚にガラス片がつきささって、ケガをさせるというのと同義な...
私は四季子ちゃんを見つめていました。彼女の体をとりまくオーラは漆黒。それがまだらに揺らいで見えました。そして、彼女の未来の姿に意識をフォーカスします。(…まだだ。まだ殺人鬼の未来へのルートが消えていない。ここまで言っても、自分のやったことの重みが分かっていない。やはり警察に突き出さなければならないのか…。しかし、そうすると四季子ちゃんは将来、大量殺人鬼になってしまう…。どうすれば、彼女は反省するんだ…...
私「おはよう!」岡田「おはようさん(笑)」小島さん「おはようございます(笑)」クラスメイトたちとあいさつを交わしながら教室に入りました。自分の席について、ランドセルから教科書を取り出し、机にしまいます。それから背面に向かって進み、ランドセルの棚に自分の物を置きます。みんなざわざわした雰囲気の中、始業時間を待っていたのでした。この日は久しぶりに現れた、担任の先生がいて。少し挨拶をした後、いつも通りに出席...
弟は喜んで家を出ていきました。私は親友のひろみちゃんと遊びたくなって、彼女の家に電話をかけましたが、つながりません。家族ででかけているのかもしれません。私はなんとなく時間を持て余して、彼女の家に自転車で行ってみましたが、誰もいませんでした。しょんぼりして自宅に戻り、お父さんの部屋でテレビを見てみました。日曜日のお昼過ぎに放映されている番組は、子供心をくすぐるものが無くて、退屈でした。洋画の再放送を...
兄はため息をつくと、片手におまんじゅう、もう片手にマグカップを持ちました。兄「悪い、相談は後で聞く。俺も気分を害した。自室でお菓子をいただく。」私「あぁ、うん。いいよ、もう急な用事じゃなくなったんで。」兄「そうか、スマンな…。しかし、姉ちゃんも勝手だな。たった一日で店番のローテーションを破ってしまった。父ちゃんは元々あぁいう性格だから想定内だけど、まったく…。俺は逆にあの身勝手さがうらやましいよ。」...
私はご飯の上に、残った目玉焼きをのっけて、かっこみました。それからポッドの前に行き、お茶の準備をします。私「ふぅん?あ、お茶飲む?」兄「あぁ、いただく。」弟「僕ももらう。」父「ワシはいい。」私が急須にお茶っぱを入れて、お湯を注いでいると、兄が言葉を続けます。兄「それで?何があったんだ、法事で。」父「なんでも、しんじゅや玲治が、一色に電話を何度もかけていると聞かされてな?それでなんで家に父親がおらん...
その日の夜に姉に蹴っ飛ばされて、押し入れから出てきました。布団を敷くのに、邪魔だと怒られたのです。寝ぼけ眼で、私は押し入れから布団を引きずり出して、畳の上に敷いて眠りました。翌朝。良く晴れた日でした。かなり朝寝坊をしていたみたいで、1階に降りると、誰もいません。とりあえず台所に向かって、一人で朝ご飯を食べていると、弟が通りかかりました。弟「あ、お姉ちゃん、おはよう。って、おそようか(笑)」私「あぁ、...
私は今までの人生で、一番のショックを受けた気がしました。フラフラとめまいを抱えたまま、なんとか自宅へともどります。自転車を倉庫にとめて、お店を通り抜けて居住スペースへと向かいました。私がお店に戻ったのを感じて、弟が近づいてきましたが、私には何も余裕がありませんでした。弟「お姉ちゃん、お帰り。」私「…ただいま…。」弟の方を見ることもなく、そのまま廊下へと上がります。そして階段を上りかけて、そこで意識が...
私は驚きのあまり、声をだしてしまいました。四季子母「どうかした?」四季子「なんか、よくわかんないわね?」親子して顔を見合わせています。私「ど、どういう事?」私はガタガタとふるえてきました。頭が追い付いていません。四季子母「あ、そや。四季子、しんじゅちゃんに、お茶でも出してやりぃ?」四季子「あ、そうね。飲み物ぐらい用意しなきゃだわね?」四季子ちゃんは、すっくと立ちあがり、工場のある方の廊下へと出て台...
私は四季子ちゃんを見つめていいました。私「先週、ウチにきて、レジからお金を持ち出して、『御用だ!御用だ!』って言いながら、お金をぶつけてきたわよね?あれはどう説明するつもりなの?」四季子「は?なにソレ?(笑)なんの冗談?時代劇の見過ぎなの?しんじゅちゃん(笑)」四季子母「はは!こんな場面でそんな冗談が言えるとは!しんじゅちゃんもおもろい子やな(笑)」四季子(やぁだぁ~、なんか変な事言ってるぅ~?(笑))四...
私は心の動揺を隠しきれずに、目を見開いてしまっていたようでした。私「!」四季子母(…ひさしぶりに来たのに、ぎょうぎょうしいなぁ、この子は。最近、全然顔出さへんから、元気にしとったのか、気になったのに。まぁ、大丈夫そうやな?)四季子(なんか、妙な事しちゃって。オモシロ!)四季子母「どないした?しんじゅちゃん。鳩が豆鉄砲でも喰らったか?(笑)」四季子「やぁだぁ~、おかぁ、オモシロ!(笑)」四季子母(えらい...
ガチャ。自転車を四季子ちゃんの家の倉庫に駐輪します。ワンワンワンワン!上田家の飼い犬のコロが私を見つけて、大はしゃぎしております。コロは私が自分に優しく構ってくれる人物だと認識しているようです。私はそっとコロの頭をなでて、静かにするようにと口元に人差し指をさしました。最初はそれでもはしゃいでいたコロでしたが、私のジェスチャーを見て、おとなしくした方が私が喜ぶと考えたようで。地べたに寝転がって、こち...
その日は土曜日でした。姉も兄もいない朝食を食べて、弟と一緒に学校へと向かいます。クラスに入ると、子供たちがそれぞれ話をしていて、いつもの朝の風景です。授業開始時間になると、教頭先生が現れて、今日も担任の先生はお休みだと告げられます。赤木先生は自宅で仕事はしているようで、宿題のチェックや、テストの採点はしていたようで、先生の赤ペン入りの用紙が返されてきます。4時限の授業を終えて、少しだけクラスメイト...
四季子ちゃんは、特に文句は言いませんでした。その後、飯時になり、私が準備をして。結局、誰ももどってこなかったので、お店を閉じて弟と二人で夕飯にしたのでした。それから洗濯、掃除、お風呂と家事をこなしていくと、眠気がおそってきて。結局、部屋は別々ですが、弟と同じように夜9時には眠ってしまったのでした。部屋で眠っていたところ、かすかに、兄が部屋の戸を少しあけて、「遅くなってすまない…。」と謝っておりまし...
同級生たちとそんなやり取りをして帰宅すると、予想に反して、弟が店番をしていました。私「あれ?ただいま…。なんで薫が店番をしているの?」弟「あ、お姉ちゃん、おかえり…。お兄ちゃんは、いったん帰って来たけど、また用事があるからって、中学校に戻って行ったよ。どうしてもやらなきゃならない用事なんだって…。」私「そうか…。弱ったな、お兄ちゃんに相談したかったんだけど…。そうだ、お姉ちゃんは?」弟「お兄ちゃんから...
一日自習やら、教頭先生の授業を受けて、この日も一日が終わりました。放課後になると、またいつものメンバーが集まってきます。当然、四季子ちゃんは、さっさとランドセルを背負って、教室を出て行ったあとで、です。岡田「なぁ、おまはん、アイツに家に誘われとったやろ?行くんか?」私「あぁ…。今まで、伸ばし伸ばしにしていたけれど、やっぱりきちんと決着をつけないといけないと思ったんだ。」小島さん「心配ですわ~?どな...
ガラッ。私「おはようございま~す。」教室内に入ると、私の姿を確認して、クラス内がホッと安堵した空気に包まれる。誰が入ってくるのかが重要なのだ。白い扉の向こう側から入ってくる人物がもし危険人物なら…。毎朝、緊張感をもって、同級生を迎え入れる。それがここ半年のこのクラスの通例だった。四「おはようございます!」誰に言うとでもなく、四季子ちゃんは大きな声であいさつをする。そして誰もが彼女と視線を合わせない...
それから台所の片付けと、交代でお風呂に入りました。弟はまだ宿題が終わっていないとかで、自分の部屋で勉強をして。それからすぐにお風呂に入り。私と姉で部屋の片付けやなんやらしつつ、交代でお風呂に入り。一緒に電気を消して布団の中で休みました。真っ暗な室内で、目を閉じていると、そのうちウトウトしてきました。(…よかった…これできっと、よくなる気がする…。)そんな風に思っていると。そっと誰かが頭をなでてくれる...
私は目がチカチカしてきました。姉と兄のやりとりを聞いて、話についていくのがやっとなのでしたが。彼らの断固たる決意を感じて、私はとても驚きを感じたのでした。兄「とりあえず、しんじゅ一人に店番をさせるのは控えた方がよさそうだな…。」姉「そうね。アタシと玲治で交互に店番をしましょうか?」兄「あぁ。後手後手だが、致し方ない。一番は父ちゃんを捕まえて、大人に訴えかけさせるのが一番なんだが…。」弟「お父さん、ボ...
私「お姉ちゃん…。」私は姉の剣幕に驚いてしまいました。姉「しっかし、しんじゅもしんじゅよ!どうして、そんな大事なことを、アタシたちに教えなかったのよ!」兄「ちょっと、姉ちゃん、少し落ち着け…。」姉はお玉を持ったまま、振り返りました。姉「これが落ち着いていられるかっ!?玲治こそ、もっと怒ってもいい話でしょ!?」兄「まぁな。それに異論はない。しかし、それとこれとは事情が異なる。俺も内実、興奮したが、目の...
家族みんなで食卓を囲んだ。母が亡くなってから、あまりない光景でした。姉は料理上手でどれもとてもおいしかった。特に肉じゃがはほくほくで兄も弟も感激しながら食べていました。弟「おいしい~、大きいお姉ちゃんの料理はすごくおいしい…。」私「ほんとだよ、とってもおいしい。」兄「これは脱帽だよ。マジでうまい。」姉「ふ…それほどでも…(笑)」姉弟みんなでガツガツと食事をいただいておりました。姉は調味料の入れ方や、タ...
姉「そう?よくわかんないけど…。」私「うん、ものすっごくヒットしたと思う。」姉「そう?」私「ところで薫は?」姉「ちょっと友達の家に行ってくるって言ってたわ?何か確認したいことがあるとか、なんとか。」私「そう…。アタシもひろみちゃんの家に行きたいけどいいかな?」姉「いいわよ?夕飯までに戻ってきてね。」私「了解です!(笑)」私は自分の部屋にランドセルと制服を戻して、宿題を持ってひろみちゃんの家に遊びに行き...