2010年6月
天国旅行/三浦しをん新潮社,2010ISBN:978-4104541065「心中」をテーマにした7つの短編小説が入っています。この本はそれぞれ別の作家が書いたアンソロジーですと言われても納得してしまうほど、7つの短編はひとつひとつ文体も作品の雰囲気も全く違います。特に一番良かったのは、最後の「SINK」という短編。主人公の青年は5歳のときに起きた一家心中の生き残りで、両親と弟をそのときに亡くしてる。幼すぎてその時の記憶はあいまいだが、自分だけが生き残ってしまったことに罪悪感を抱いている。そしてそれが原因なのか、彼は誰とも深く人間関係を築くことができない。暗く重い過去があり、生きていくことはあまりにも辛い。どこに自分の重心を見出せばいいのかわからない。でも彼は最後に希望のようなものをちゃんと見つける。人間はなんて...天国旅行―三浦しをん
ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦角川書店,2010ISBN:978-4048740630小学校4年生の「ぼく」は、たいへん頭がよく、毎日発見したことをノートに記録することでぐんぐん頭角をあらわしている。だから将来はきっとえらい人間になるだろう。そんな「ぼく」の住む住宅街にある日、突如ペンギンの群れが出現する。「ぼく」が憧れている歯科医院のお姉さんに、ペンギンの謎を解いてごらんと言われたことから、「ぼく」はペンギンとお姉さんについて研究を始める。久しぶりのモリミさんです空想と現実が交錯したり、しなかったりする森見さんの作風が好きで今までもよく読んでいたのですが、今回はそんなモリミさんの個性が強く出ているような気がします。そして驚いたことに、モリミさんの個性が強く出ると、ムラカミハルキ的になることを発見しました私、...ペンギン・ハイウェイ―森見登美彦
マイ・ブルー・ヘブン/小路幸也集英社,2009ISBN:978-4087712902終戦後間もないある日、子爵の娘・五条辻咲智子は、父親から、日本の未来を左右する重要文書の入った「箱」を託される。なんとしても無事に静岡の親戚のところまで届けなくてはならないと申しつけられ、事情も分からないまま家を出た咲智子は、やがてその箱が原因で自分がGHQに追われていることを知る。そして米軍人に連れ去られそうになったところを助けてくれた勘一やそのなかまと共に、GHQに軟禁されてしまった両親の行方と「箱」の謎を追うことになる・・・と書くと、なんだか人がばたばた毒殺されちゃうような本格ミステリって感じですが、そんなシリーズじゃないはずなんですこの作品は東京下町の古書店・東京バンドワゴンを舞台にしたシリーズの番外編です。本編の東京バ...マイ・ブルー・ヘブン―小路幸也
万遊記/万城目学集英社,2010ISBN:978-4087805628マキメさんのエッセイ第2弾!前回の「ザ・万歩計」がとんでもなくおもしろかったので、今回も迷うことなくヨムヨム全国各地へ「湯治と(スポーツ)観戦」に赴き、それについてのエッセイを書くという仕事を引き受けた矢先に、アキレス腱をすっぱり切ってしまい、本当に「湯治」が必要な体になってしまったマキメさん。マキメさには悪いけど、もう、しょっぱなから面白いほかにも、桜庭一樹さんや森見登美彦さん、津村記久子さんのことがそれぞれちょこっと出てくるのだけど、どの人も好きな作家なので、「おー、このひとってこんな感じの人なのかー」とコーフンしたり、関西と関東ではテレビチャンネルの割り振りが違うことを知って驚愕したり、「小公女」へのマキメさんの熱い想いにじーんとしたり...ザ・万遊記―万城目学
ピアノ・ソナタ/S.J.ローザン東京創元社,1998ISBN:978-4488153038晩秋のニューヨーク。私立探偵ビルのもとに訃報が入る。かつてビルに探偵としての手ほどきをしてくれたボビー・モラーンの甥で、ビル自身の友人でもあったマイクが撲殺されたのだ。ブロンクスにある老人養護施設ブロンクス・ホームで夜間警備についている間での出来事だった。撲殺の手口から地元マフィアの仕業だとする警察に納得のいかないモラーンは、ビルにマイク殺害の真犯人を捜すよう依頼する。正体を隠してブロンクス・ホームに潜入するビル。捜査が進むにつれ第二・第三の殺人事件が起こり、地元マフィア、非営利団体の実態などが明らかになっていく。そしてビルは当初の事件以上の秘密に巻き込まれることに・・・リディアとビルのシリーズ第二弾です前作は中国系のリデ...ピアノ・ソナタ―S.J.ローザン
チャイナ・タウン―S.J.ローザン東京創元社,1997年11月ISBN:978-4488153021舞台はニューヨークのチャイナ・タウン。中国系アメリカ人であるリディア・チンはパートタイマーの相棒・ビルとともに探偵業を営んでいる。ある日リディアのもとに、美術館から盗品捜索の依頼が舞い込む。寄贈された中国磁器コレクションの中から、2箱が盗まれてしまったのだ。チャイナ・タウンを牛耳る中国ギャングの存在や美術品業界の実情が絡み合い、捜査は難航。おまけにリディアのチャイナ・タウンでの人間関係も絡んできて事態はますます複雑に・・・知り合いと好きな出版社はどこか?という話をしていて、「東京創元社ですかねぇー。特に創元推理文庫はいいですよね。」と答えると、「なら、このシリーズは読んだ?」と勧めてもらったのが、この本。この4月...チャイナ・タウン―S.J.ローザン
2010年6月
「ブログリーダー」を活用して、さといもさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。