第八夜【犬の散歩】－1

最初から読む方は目次へ あれはそう、私が小学三年生のころ。季節は初夏。むせ返るような、暑い日だった……。 時計はもう、夕方の六時を回っていただろうか。私は…

第七夜【オート・キャンプ】－12《完》

最初から読む方は目次へ 「自分たちと同じようなカップルを見付けて、嬉しくて出てきたのかもしれないですね。悪さをする質の悪い霊じゃないので、大丈夫ですよ」管理人…

第七夜【オート・キャンプ】－11

最初から読む方は目次へ コンコン。遠くで、ノック音がする。コンコン。私は、その音に導かれるように、意識を取り戻した。辺りを包む眩しい光に目を細めながら、ゆっく…

第七夜【オート・キャンプ】－10

最初から読む方は目次へ 微かに開いた重い瞼の隙間から見えたのは、一面の赤い色彩。全てが、赤いセロファンを通して見たように、真っ赤だ。血――？たぶん、額かどこか…

第七夜【オート・キャンプ】－9

最初から読む方は目次へ 冷たい。薄闇の中。最初に感じたのは、右の頬を叩く冷たい水の粒の感触だった。自分が、左側を下にして、横向きに倒れて居るのは分かったけど、…

第七夜【オート・キャンプ】－8

最初から読む方は目次へ うす茶色のスボン。ベスト。登山帽。そして、チェックのシャツ――。背負ったリュックの色だけが違う。間違いない。ここに来る途中、見かけたあ…

第七夜【オート・キャンプ】－7

最初から読む方は目次へ ――何？ 足音？ジャリ。ジャリ。ジャリッ。ジャリッ。ジャリッ。――二人だ。二人居る。二人の人間が、キャンピングカーの脇を、歩いて――。…

第七夜【オート・キャンプ】－6

最初から読む方は目次へ 「武ちゃん？」いったい何が、武士にこんな表情をさせているのか。「……何でもない」何でもないって顔じゃないんですけど、旦那様。何を見てい…

第七夜【オート・キャンプ】－5

最初から読む方は目次へ 「な、なんだ、どうしたんだ！？」「え！？」驚いたような男性の声が聞き覚えがあることに気付いて、ギュっと瞑っていた目を怖々と開ける。振り…

第七夜【オート・キャンプ】－4

最初から読む方は目次へ 「ふう……」遠出は楽しいけど、問題はトイレなのよね。我慢に我慢を重ねたあとの得も言われぬ開放感に浸りながら、そんなことを考えていると、…