不条理ミステリーという触れ込みは全然ちんぷんかんぷんだったけど、7人の俳優たちの若い世代の想いは十分伝わったと思う。2時間全編のシュプレイコール絶叫、ダンシング、途中で水飲みタイム、さらに台本ありの朗読があったりなど、面白い展開だったが、最後には収束させた終わりで、なかなかのもの。彼ら、かなり体力を消耗したのではなかったか。一日2本はきつそう。演劇集団エスキス「遠くの霧に紛れて」(作・演出嵩見凌)at表現者工房80点
映画館で新作をランダムに見ています。小演劇も好きですよ。
プロフィール 性別 男性 自己紹介 休みは大体映画館かその近くを闊歩しています。自然と繁華街というところを歩くことになります。心は大自然にあこがれながら、結局便利さに負けているような気もします。
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依然として何の前知識もないまま見た映画だったが、途中で山下の映画ではなかろうか、と思って見ていた。最後のエンドロールまで分からなかったが、見事的中し、ご満悦。山下の初期の映画群を感じ取れて、心躍る。あのふんわり柔らかモードがとてもいい。人生、こんな風でもいいよな。カラオケ行こ!(2023/日)(山下敦弘)80点
最近めずらしい僕らが思っている沸々の想いをセリフに託している何気ないシーンの連続感がいい。このいわば本音感はただ事ではない。、、と思います。けれどもストーリーにならない掛け合いセリフ集合では、映画として成り立たないとでも告げたプロデューサーがいたのかどうか知らないが(映画の冒頭の方のシーンに関連付けしています)、父親が出没してからやたら、劇映画風になってしまいます。それはそれで見せ所だし、泣きどころなのだけれども、普通の映画に成り下がってしまっているきらいもあります。まあ、ワイドと四角のスクリーンの対比はとても分かりやすかったし、面白かったが、やはり全編的に弱者の心情$本音がストレートに溢れていて、一瞬女優松岡茉優を人間松岡茉優と見間違うぐらい、僕はとても共感してしまう。大好きな映画です。愛にイナズマ(2023/日)(石井裕也)85点
MICHInoX『黄金黎明伝 TSUNEKIYO X The Golden Dawn』(作・演出 本田椋) 於 in→dependent theatre 2nd 80点
まさに平安後期武士の始まりといった時代。しかも所は東北平泉。藤原氏の前時代、いわゆる歴史でいうところの「前九年の役」あたりを題材にしているので、歴史的にはわかりづらい。でもそれほど真面目に鑑賞しなくてもいいように面白く娯楽的に作っているので、十分楽しめる代物だ。なんといっても全員が、体を張ったかのような熱演。体から汗の息吹が見えんばかりの立ち回り。もう圧倒されますね。ただテーマからはいまの東北、仙台でもいいが、彼らの遠吠えが、ちと聞こえづらかったような気もしました。おそらく現代に通じる東北の声を彼らは伝えたかったはずだと認識しましたから。MICHInoX『黄金黎明伝TSUNEKIYOXTheGoldenDawn』(作・演出本田椋)於in→dependenttheatre2nd80点
THE ROB CARLTON「THE STUBBORNS」(作・演出 村角太洋) 於ABCホール 80点
緻密な計算の元に作成されたかのようなコメディであります。セリフが軽快でしかも考え尽かされているので、正直一つ一つしっかりと聞いていないとこの面白さはわからない。聞き逃すと次についていけないかのような何かがあります。それでいて、十分爆笑ものなのだから、この脚本づくりは僕らの恐らく想像できない苦労があるのだと思います。日本ではこういう劇団はありそうであまりないかなあ、、。アメリカではこういうのは多いような気がするけど、、。それだけ上質なんだろうなあ、実力劇団です。あっという間の80分、そのうちどれがどれなのか、最後の方では観客たち全員混乱していたのではなかろうか、、。作者の意図に嵌ったかのようでもある。秀作コメディです。THEROBCARLTON「THESTUBBORNS」(作・演出村角太洋)於ABCホール80点
人間の境界 (2023/ポーランド=仏=チェコ=ベルギー)(アニェシュカ・ホランド) 80点
人間として、人間であるならば、人間としての心があるならば、そして我々が人間でありたいと思うのであるならば、見なければならない映画である。いつもニュースに甘んじて深く考えなかった自分自身をとても恥ずかしく思う。映画としてももちろん優れているが、この作品を制作したホランドに強い人間性を感ず。人間の境界(2023/ポーランド=仏=チェコ=ベルギー)(アニェシュカ・ホランド)80点
雷龍楼の殺人(新名 智 著)(KADOKAWA 2024) 80点
かなりの物議を起こしたミステリーですが、でもこういうのは初めてで、このトリックはやはり鮮やかというしかないのではと思います。なぜかというと、しっかり僕が作者に嵌められたわけですから、、。文章も読みやすく、設定も(気づいていなければ)斬新。まあ、読後感からすると、それはないわなあ、という気も少しだけするが、あっと驚かせてくれたのだから、ミステリーとして僕は買います。出版されたものでこういうものは初めてではないでしょうか、、?えっそうでもない、、?ミステリーで初めてのトリックであれば、秀作と取り上げたい作品です。雷龍楼の殺人(新名智著)(KADOKAWA2024)80点
木ノ下歌舞伎「三人吉三廓初買」(作・河竹黙阿弥、監修・木ノ下裕一 演出・杉原邦生)at県立芸術センター中ホール 90点
キノカブキ、5時間。大きなホールで、また若き役者たちの熱演でまさに疾風怒濤の熱き力がずぶずぶ体に入り込む体験をする。歌舞伎が苦手な僕でも十分面白かった。歌舞伎だから5時間は仕方がない。でも当初大丈夫かなあと疑問符がいっぱい。演劇では5時間は僕の最高記録だ。それが、途中休憩が2回あるからこれがいかにも歌舞伎風で、内容も娯楽いっぱいで難しくなく、それなりにストーリーも通俗的と言われればそうだが、なかなか人間考察的に深いものがある。いやあ、これはすごい演劇でした。観客の5時間もそうだが、役者たちのセリフの難しい言い回しも全然自然で、よく練習されてたなあと感心。終わってからの5,6回続く拍手喝采、なんと全席割れんばかりのスタンディングオベイション、すごい迫力でした。木ノ下歌舞伎「三人吉三廓初買」(作・河竹黙阿弥、監修・木ノ下裕一演出・杉原邦生)at県立芸術センター中ホール90点
劇団 ユニットWOW!! 「意後見人狂騒曲 ガーディアン・ラプソディ」(作・高橋恵 演出・上田一軒) 於independed2nd 85点
高橋恵作、上田一軒演出と、関西一流の演劇です。あとは、俳優たちがどこまでできるか、、。といった不安はすぐ解消する。とにかく、娯楽的で、テレビドラマを見ているように面白く、登場人物も多彩であり、皆小さな悩みを抱えており、だからこそ欲望も強くなる。そんな彼らの行動を裏側から見ているような面白さ。たまらないです。山崎豊子の「女系家族」を思い浮かべるような面白い展開で、観客は2時間の時の流れを忘れ、一気にラストに向かう。これこそ演劇の醍醐味であろう。高橋恵の幅広の才能を再確認した秀作。劇団ユニットWOW!!「意後見人狂騒曲ガーディアン・ラプソディ」(作・高橋恵演出・上田一軒)於independed2nd85点
熊は、いない (2022/イラン)(ジャファール・パナヒ) 90点
これは面白い。冒頭の、カフェのウェイトレスに至るまでのあのセンスの良いつなぎのカットにうならせられる。と、そこからは現実と虚構がせめぎあい、ここからはもうパナヒの思うツボになる展開が待っていた。自分がイラン本国にいて、リモートでトルコにいる男女を撮影しているという設定にまず緊張感があります。まさにパナヒ本人そのものの心象状況がそこにあります。そしてもう一方イラン内での古い因習による悲劇がパナヒを追い詰める。彼は最後、その村を出ようとするが、急ブレーキをかけとどまる。そして暗転のラスト。なんとドラマチックなことよ。彼の心の叫び・決意が観客に鳴り響くシーンだ。映画というツールのすべてを認識しながら、今あるものだけで制作されたこの映画、閉塞感は当然だが、逆に私には映画の可能性を強く感じさせるものになっている。映...熊は、いない(2022/イラン)(ジャファール・パナヒ)90点
劇団黒猫「世界を盗む方法」(作・劇団黒猫 演出・佐藤トシオ) 於A&ホール 80点
特に目新しい題材ではないが、特色だったのは俳優たちが全編90分、とにかく走る。走り続ける。ランニングをするということは人生走り続けるということなのだろう。そんなことを感じながら劇を見る。話は他愛ないまるでお伽話のようなゲームっぽい学生演劇でどこか見たことのあるようなもので、若い集団だということがわかる。ハートスターを追いかけて、みんなが走り、集まってゆく、、。私のごひいきは川田氏であるが、客演にもかかわらず完全主役をなしている。役得がする設定で、いわゆる儲け役であります。でも全身全霊で役をこなすのが彼の性格。あれだけランニングしていても息は乱れておりませんでした。秋の快晴、若い集団から新たなエールをもらった感がしました。実に清々しい!劇団黒猫「世界を盗む方法」(作・劇団黒猫演出・佐藤トシオ)於A&ホール80点
スタンダード版画面、フィルム映画風粒子。時間は90分。映画のちょっと前の基本を地で行く秀作現る、とこんな印象の映画です。野球があまり得意でなく外野を守るタクヤ。だか彼の顔は喜びに満ちている。空から降る雪をこよなく愛し、顔に当てている。こんなポエムのようなシーンを多様化し、この映画は極端にセリフも少なく、全編詩情にあふれ、淡い印象派絵画のようでもある作り込みです。人生がそんなに流麗に流れることはしかしあり得ず、登場人物はみんな青春の傷を、痛みを負い、それでも生きてゆく。映画全体を一つの詩集のように組み立て、流れゆく人の想いを流麗に紡ぎだした永遠の青春映画、といった感がします。敢えて苦言すると、時代がだいぶ前だったかもしれないが、それでもコーチの禁断の愛がなぜ社会的に鞭打たれなければならなかったのかをこの映画...ぼくのお日さま(2023/日)(奥山大史)85点
憐れみの3章 (2024/英=米)(ヨルゴス・ランティモス) 80点
鬼才ランティモス作品。「哀れなるものたち」が凄かったので、見る前から肩肘立てて見てしまったが、今回は意外やお気楽風で、またオムニバスということもあり、楽しく鑑賞する。第1章。これがなかなか面白い。3章の中では際立って秀逸だ。カメラワークも整然としていてスタイリッシュ。人間の外側からだけではわからない内面の空虚さを描く。これは気に入った。第2章。事故であきらめかけていた愛する妻が帰還する。しかし、どうも妻ではないようだ、、。グロテスクなシーンが2か所あり、眼を瞑るが内臓をえぐったエマ・ストーンのまなざしから彼女が正真正銘の妻であったことを伺わせる。夫の狂気。第3章。何やら新興宗教が入ってきて我々も落ち着かない。ドタバタ感がお好きなんでしょうか、、。元夫・娘のまともさが狂気を感じてしまう逆裏現象。現代という時...憐れみの3章(2024/英=米)(ヨルゴス・ランティモス)80点
ぼくが生きてる、ふたつの世界 (2024/日)(呉美保) 80点
題名の意味はラスト近くで分かるようになっている。見ている間は題名の意味も考えず、思わずただ一人の青年の成長をつくねんと見つめている。ただただ両親、祖父母の熱い愛情で育てられた普通の少年。それが変わってしまうのが、、同級生の素朴な一言だった。そこから彼の二つの世界が始まるのだ。反抗期という難しい時期とも重なり彼は母親と遠ざかる。そこから結構(原作者には失礼だが)面白くなる。通常のベタな真面目人生にならないところがいい。塾に通うけれど、高校に落ちるは、それから何の目的もなく東京に出るは、パチンコ屋でバイト暮らし。そしてなぜか零細ルポ出版会社に職を得て、社会の末端に生きる人を取り上げる。そしてある時、偉大な母親の愛に育まれていたことを知る青年。電車の中で他の人間がいるのに全く気にせず、自然に自由に手話をする母親...ぼくが生きてる、ふたつの世界(2024/日)(呉美保)80点
喜劇結社バキュン!ズ「無職の皆さん、ついに反撃を開始する」(作・演出 スプーン曲げ子) 於 in→dependent theatre 2nd 85点
90分、コント風ギャグ連続の、風変りさが持ち味の面白さ強烈な劇団です。総勢、客演も含めて24名。その客演も一流どころ。客席はやはり満杯で、くすくす笑い爆笑が全編にたなびき渡る。初めて見る劇団なので、誰がこの劇団の人かもわからないまま見ていったが、まあ知ってる人もいたし、かなり均等に俳優陣を使ってる。大熊氏はちょっと自己中毒気味のお披露目だったが、でもお得意のマイムを入れ、楽しんでいるのがわかる。このギャグ風演劇で90分はきついはず。ダレることもなく最後まで通したのはこの劇団の実力の証明か。最後はしっかり無職にたどり着いていたもんね。演劇料金が安くさえ感じられる拾い物の演劇集団でした。ファンになって行く気持ちがわかる。この手も劇団は希少価値がある。喜劇結社バキュン!ズ「無職の皆さん、ついに反撃を開始する」(作・演出スプーン曲げ子)於in→dependenttheatre2nd85点
清流劇場「へカベ、海を渡る」(原作・エウリピデス、上演台本・田中孝弥、原作翻訳・丹下和彦 演出・田中孝弥) at一心寺シアター 80点
いつも通り前知識ないまま演劇を見る。数あるギリシャ悲劇群のうち、「トロイヤの女たち」は映画、演劇で見てきた。話としては題名通りヘカベを中心にした人間ドラマである。時代は2500年前の出来事、現代に生きる我々はそこから何を得ることができるか、という普遍的なテーマである。戦争に負ければ王妃といえども、奴隷または愛人に落とされる。それは戦争というもののまさに正体であろう。ギリシャ悲劇を見るという大げさな構えはこの劇には全く不要であろう。ミュージカル風で、ラストはあっと驚く復讐劇まで用意されていた。かなり娯楽風にしつらえている。これを観客の目線に合わせたとは言わないが、ギリシャ悲劇を分かりやすく表現したという意味では成功であろうと思う。なかなか面白い芝居だった。ところが、終演後の対談で台本と原作翻訳者との意見の相...清流劇場「へカベ、海を渡る」(原作・エウリピデス、上演台本・田中孝弥、原作翻訳・丹下和彦演出・田中孝弥)at一心寺シアター80点
黒沢清、本来の現代における不気味で意味不明な狂気というものに久々に挑戦した感があり納得です。快作です。印刷工場から転売屋へと主業を変える吉井。なるほどアブナイけれど現代的職業ではある。そんな菅田が意図しない狂気の暴力にさらされてゆくその過程、いやあ、面白かった。黒沢監督、初期、中期作品のざわざわする狂気を復活させたかのようだ。なぜそうなるのか、原因が全く不明のまま、観客が辿る恐怖の過程は、現代という時代を象徴させるに十分だ。何気なく取った態度、言葉を選んで言ったはずの会話が相手には180度違って解釈される現代社会。これはよく経験することでもある。そうだよなと僕も日常的によく感じる。そしてネットから派生するクラウド。決して想像上のことではないように思える。このラスト近くに延々と続くアクションはまあ目新しいと...Cloudクラウド(2024黒沢清)85点
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不条理ミステリーという触れ込みは全然ちんぷんかんぷんだったけど、7人の俳優たちの若い世代の想いは十分伝わったと思う。2時間全編のシュプレイコール絶叫、ダンシング、途中で水飲みタイム、さらに台本ありの朗読があったりなど、面白い展開だったが、最後には収束させた終わりで、なかなかのもの。彼ら、かなり体力を消耗したのではなかったか。一日2本はきつそう。演劇集団エスキス「遠くの霧に紛れて」(作・演出嵩見凌)at表現者工房80点
う~ん、感心する。老醜もこれほど生々しいと清々しいと思えます。2時間弱、ずっと映像に目入ってしまう。人生、夢、幻、生と死のはざまにたゆとう我なる時間の怒涛。早くも今年のベストかなと思う。長塚はまさに全部吐き出し人生を刻み込む。吉田は「桐島、~」以来の傑作至れり。敵(2025/日)(吉田大八)90点
なぜか「敵」と同じく珍しくミニシアター館をにぎわせている作品。気になり見ることにする。若い方が多い、これも珍しい。そしてホラー。あまり見ない種類の映画だ。本編が経って、ホラーなれどあまり怖くなし。これがよかったかなあ。これ見よがしの怖さを売るホラーでないところが心地よし。この内容で最後まで引きつける演出、展開は褒められてよし。俳優陣も地味目が多く、新鮮であります。ラストもなかなか凝っていて、加点。新しいホラーと思う。ミッシング・チャイルド・ビデオテープ(2025近藤亮太)75点
読みやすく一気読みでした。スタイルは冒頭に出てくるように映画「グランド・ホテル」形式。だからか、一つ一つの話に人生の芳香が感じられる。最後まで読み切った感想としては、ミステリーではないということとと、実によくできた小説だが、ちょっと良すぎ。いい人たちが出過ぎ。でもこの世知辛い世の中、たまにはこんな現代の桃源郷もいいよね。いい時間をくれました。ヴィクトリアン・ホテル(2021実業之日本社)80点
深沢氏痛快な若者に対してのサジェッション。とにかく、明瞭簡単、ただぼ~~と生きてりゃいいのさ、というお強い言葉に救われる。そもそも動物なんて悩まずただただ生きているのに、人間だけが何で悩む必要があるのか、、、。そこなんだよな。「自分とは何か」から始まる哲学志向もこの深沢につかまると、いかに人類は無駄なことに時間を費やしてきたことか、となる。この深沢の人間滅病教、大好きです。人間滅亡的人生案内(深沢七郎(著))(2013河出書房新社)90点
ホ・ジノ監督の最新作。最近は力不足の映画が多いと思っていたが、取り戻した感あり。内容的に、誰もが自分に降りかかったら、どうしますか?というテーマを緊密に掘り下げていて、ラストまで一気でした。夫婦2組の俳優演技がうまく、とても印象に残る。でも最後の思いがけないシーンは成瀬巳喜男の「女の中にいる他人」で既に使っている。でもこうなるしかないよな、、。面白い作品でした。満ち足りた家族(2024/韓国)(ホ・ジノ)80点
今年は映画、96本だから、まあ良く見たと言える年でした。相変わらず自分の心に触れる映画しか評価しない僕は通常の映画評からはずいぶんブレていると思う。洋画1位哀れなるものたち(ヨルゴス・ランティモス)2位ヴェルクマイスター・ハーモニー(タル・ベーラ)3位熊は、いない(ジャファール・パナヒ)4位青いカフタンの仕立て屋(マリヤム・トゥザニ)5位憐れみの3章(ヨルゴス・ランティモス)日本映画1位悪は存在しない(濱口竜介)2位生きちゃった(石井裕也)3位ぼくのお日さま(奥山大史)4位市子(戸田彬弘)5位コットンテール(パトリック・ディキンソン)2024年映画ベストテン
好きな作家だが、でもここまでワクワクしながらページを繰る作品も最近では珍しい。ミステリーだが、本格ものではないし、犯人探しでもないのだが、文字の間から五十嵐の躍動感があふれているのがわかる。ミステリーで一気感が強いのはそれほど秀作だとお言うことだろう。最初はシリーズが続くと思った妹刑事があっけなく亡くなってしまうのがちょっとした驚きだったが、でもその後登場人物の設定も面白く、五十嵐の才能を十分知ることのできる快作でした。年の終わりがこの作品だったことは2024年が良き年だったということだ。サイレントクライシス(五十嵐貴久(著))(2023PHP研究所)85点
私のような随分と無駄に歳月を過ごして来た人間には、主人公から見据えたまなざし、音、声、人の心の襞はずしんと容易にそのまま自分に入ってくる。見出して15分ほどで私はリリー・フランキーと同化してしまった、、。夫婦愛、家族愛をテーマにした映画なんだろうけど、恐らくその底辺に流れているのは人間のささやかな営み。人は生まれては死ぬ。そのリフレインの中に、それぞれの人の想いを巡らせ、喜び、悲しみ、驚き、諦観を知る。形式はさすらうロードムービーなのだが、この作品はバックグラウンドにシューベルトのまさに「冬の旅」のような詩情をたたえている。セリフ自体は極端に少ないが、だからこそ主人公、すなわち我々にうごめく心の営みが照射される。いい映画だったのでしばらくその余韻に浸っている私だ。コットンテール(2024/日=英)(パトリック・ディキンソン)85点
確かにこういうタイムスリップものはそもそも面白い。映像も展開もよく考えられている。途中だれてくるところで、あれを使うんですね。分かる気もするが、、でも、あれは勝新太郎が使用して倫理的にもご法度ではなかったのかなあ、、。アメリカでも銃使用事件があったし、映画界で、これを題材にするとはちょっと恐々。でもだからこそ最後の文字通り真剣勝負が燃えてくるんだろうが、ね。映画の原点の面白さを現代において追求した作品といえると思います。観客を心を真芯でとらえた映画です。侍タイムスリッパー(2024/日)(安田淳一)70点
何気ない普通の男女の愛とその別れ。さりげないその瞬間を描いていてさりげなく素敵だ。こんな映画感覚はやはり日本では無理かな。西洋映画風でもある。拾い物の映画です。もしかしたら私たちは別れたかもしれない(2023/韓国)
映画の流れとしては水準を行っていると思う。ある疑問から、謎が深まり、追求してゆく人間も警察の内部(警官ではない)というミステリーではすれすれのダメダメ環境だが、でもなかなか面白い。だが、途中で、真犯人があぶり出され、え、しかしなあと思いつつ、やはりそうか、でもこれはちょっとやり過ぎ、といった感想が伴う。面白い作品にしようとすれば、もはやこういった展開しかないのか、というところにミステリーの限界があるのかなあ、、。とは言え、ミステリー好きには十分楽しめました作品でした。朽ちないサクラ(2024/日)(原廣利)80点
6年ぶり、大阪公演。東京にいたときは毎年この演劇を見て年を越すといったいわば年越しそばのような演劇でした。そしてこの演劇ももう36年経過しているという。僕は見始めてまだ15年ほど。でも結構館内は若人から実年まで様々な年齢構成。高泉淳子さんのキュートな年齢不明がそうさせているのだろう。さて、今回もロニーが客演。前半がロニーとのレストランでの会話が主体。公判が二人のライブショーとなっている。大阪を意識したのか、ずいぶんと演劇加減が薄まり、ライブショーが重点となっている。僕は、彼女の何か人生への黄昏を意識したいわばもののあわれが好きなんだけど、それは来年まで持ち越すようでもあるのか、、。でも本当に楽しいいい舞台でした。今年最後の演劇です。遊機械オフィス「ア・ラ・カルト公認レストラン「僕のフレンチ」」(作・演出高泉淳子)at近鉄アート館80点
さすが年季の入った演劇集団。多数の出演者。十分言いなれたセリフの言い回し。何より、奈良時代、天武系一族の女帝時代の歴史絵巻が楽しく面白い。あの怪しげな鶴の張本人、与兵衛が道鏡になっていくのはとてもユニークで面白かった。きらめきの奈良時代絵巻を堪能できたのは、脚本がかなり一を占めている。古代史を知っている人はなお楽しく、歴史がまったくの人はそれなりに楽しい秀逸演劇ドラマであります。八嶋智人はある意味完全主役でないところが均衡を保っていた。山崎樹範は意外と声が高く演劇向き。ドラマより骨太。カムカムミニキーナ「鶴人」(作・演出松村武)at近鉄アート館80点
今話題の三宅唱の処女作。モノクロ、北国の白い雪。札幌なのに、田舎感が色濃く出てる。青年期の3人の「18歳の今」をやさしく切り取っている。こんなに実際の人生が優しいとは思えないけど、でもいいのだ。何かを信じたい映画である。やくたたず(2010/日)(三宅唱)70点
まあとても面白い。とにかく設定がユニークで、魅入られてしまう。あっという間に読破だ。だいたいページ数も少ないし、しかもミステリー好きならではの展開で、そのまま一気です。でも、何か物足りないというか、緻密ではないですね。この感じだったら、何でも書けそう。通常のミステリー作家がトリック等で日夜研究・努力されている部分がいかにも皆無、といった感じ。でもこんなミステリーもたまにいいか、、?ラストは爽快。奇岩館の殺人(宝島社文庫)(2024高野結史)75点
コトリ会議、久々の新作。若旦那家康さんの配慮で、かなりの時間前に劇場に到着するも、ロビーにはコーヒーが用意されていたり、過去の演劇がモニターに上映されていたりと、とてもアットホームなくつろぎの空間が用意されていて、いい気分のまま演劇に入る。そして劇は、これがなんと100年後の地球の姿で、大戦に明け暮れる人類はもう8次大戦のさなかである。人間はつばめと混血し、人間部分の意識は30%に成り果てる。そしてさらに、将来魚類のサバと混血するとさらに30%になるので、9%部分の人間意識になり、これを繰り返してゆくと、人間は消滅するであろう、そんなある家族の葛藤の時間が繰り広げられてゆく。何とも、切ない哀しい、やり切れない家族劇だが、それでもそこには子孫を残す、残せない、生きてきた証の記憶をどうするのか、といった本源的...コトリ会議「おかえりなさせませんなさい」(作・演出山本正典)於アイホール85点
学生演劇で3時間もの長丁場。しかも自ら書き上げたという労作。これがまた面白い。若いっていいなあと、舞台を見ていて思う。みんな溌溂。ダンスあり、アクション有り。精一杯飛んでいる。他の演劇とは一線を画すように、セリフのしゃべりも明確。トチリもなし。すごい練習量だと思う。みんなよくやった。前半後半と分かれるが、長くは官にないまま、余裕を残してジエンド。最後もどんでん返し風で面白かった。28期生は今回で退団。全部出し尽くしたのうだろうか、泣いていた俳優もいたなあ。青春時代はこうして流れてゆく、、。何かを彼らからもらった演劇でした。関西大学劇団万絵巻「精霊のAGEHA」(作・演出モンスターまさき)at芸術創造館80点
今日一日、しかも一回だけの演劇公演、というのはおそらく僕の長い演劇経験でも初めてのこと。人気俳優、南野陽子さん、大谷亨介さんが夫婦役で、最初と最後をきりりと締める。その他、関西在住の演技派どころ18名も参加して、いぶし銀で、ポエムのようないとおしい劇を奏でてくれる。1000年の時代をつなぐ神戸。そこに生きていた人たち、その営みをまるで人生の最後に垣間見る走馬灯のように映し出す。時間は80分。あっという間に劇は終わる。それは人生という時間の長さのようにも思われるほど。人々は歴史的には1000年もの長さを、けれどもそれぞれの名もない市井の人々が生きていた。彼らにも、にじむように生きる人生の灯はしかと輝いていた、、。素晴らしい人生のオムニバス。土田のポエムに酔う。至極の時間空間。永遠たれ、、。『神戸の湊、千年の交々』(作・演出土田英生)at兵庫県立芸術センター中ホール85点
600ページもの長さ、そしてまたこの著者ならではなのか、300ページまで読んでいるのに全く殺人が行われない。以前にも同じことがあり、またかとほくそ笑む。ところが、最初の殺人が始まると次々とやはり前と同じく連続殺人が続く、しかも突拍子もないトリックで行われるものだから、とても現実感がなく、それでもかなり面白いからページを繰る動作は続く。途中、丁寧に犯行の記述が紙面を割きこれは読者にはとても親切ではある。著者がかなりミステリー愛に満ちているのがわかる。驚くべき真犯人はやはりそうであると面白いと思っていたが、でもこの殺人操作設定にはかなり物理学的にも無理があるように思えてしまう。まあ、面白いけれども、ちょっと手放しで喜べるものではない。著者のミステリー愛に加点。黄土館の殺人(2024講談社文庫)(阿津川辰海著)75点
本好きの人のための、人が大好きな人のための、真実を探してやまない人のための、いつまでも自分探しの没頭している人のための、愛すべき映画だと思います。あまりにフラットに描き過ぎているので、映画的盛り上がりにはいまいちだが、敢えてそうすることによって誰をもこの映画に参加できるよう、この映画の本質をつかみ取れるようににしている気もします。たまにはこんな素朴な映画もあっていいですなあ、、。いい時間帯でした。丘の上の本屋さん(2021クラウディオクラウディオ・ロッシ・マッシミ)75点
もう冒頭から食い入るように見てしまった。それは見てはいけないものを見るようなどこか邪悪の漂う内容だが、立派に一つの骨太の女性映画といっていいほどの力量を持つ、あるいは古書から大哲学に導き出されるようなトンデモナイ秀作でした。まだ、余韻に浸っております。早いけれど今年のベスト1ではないか!哀れなるものたち(2023/英)(ヨルゴス・ランティモス)90点
設定がこの世でないあの世の世界、というのがとてもユニーク。登場人物は6人。そして誰が犯人なのか、試行錯誤してゆく、、。ミステリーって、もうSFを超えて、何でもありだね。これは読まさせられます。面白いです。でも、本格ものではないから、読者に伏線も与えられず、当然真犯人の手がかりもないまま、勝手に謎ときをさせられた感もありますね。こういうところはアンフェアなんだろうけど、まあ面白ければ何でもありの今の時代だから、これは許しましょう。でもよくこんなことまで考えましたですね。クローズドサスペンスヘブン(2023新潮文庫)(五条紀夫著)80点
検閲によって欠落したフィルムを追う映画人の日々に映画への熱いオマージュが感じられた。彼女は女であることから、そのフィルムの作者に自分を同一化する、、。こういう話って好きだなあ。少しミステリーっぽい手法も見せているし、何より人生って、ただ生活してゆくのが人生ではないはず。自分の何かをその人生に投影させるのが生きることなのではないか、とさえ思える。主人公の映画へのオマージュが、自分自身の生活、家族へと混濁してゆく中でも、それでもただ一つの「芯」を追いかけてゆくその心情はすがすがしく、立派だ。あまり派手さのない主人公役の女優だが、とてもうまい。いい俳優であります。オマージュ(2021/韓国)(シン・スウォン)80点
7つの短編集。とは言いながら、それぞれ殺人事件が起こるが、ちゃんと解決しないまま、もう忘れ去られたように次の章に向かう設定。高校生たちが繰り広げられる展開で、いかにも大人のヤングたちで、年齢だけは超大人の吾輩も驚く始末。みんな大人だね。いや、そんなことを言いたいわけではない。何かいつものミステリーとは違うなあと感じつつ、最後の7章へ。ここで、度肝を抜かれるというか、え、こんなのあり、みたいな終わりで、7章をゆっくりと再読する。うーん、これはすごいわ。題名、本の表紙イラストからは考えられない本格(でもないか?)ミステリーの秀作、ここに極まり。麻耶雄嵩氏はとことんミステリーを追いかけておられます。化石少女と七つの冒険(麻耶雄嵩著)(徳間書店2023)85点
460Pもの長丁場。孤島の連続殺人。そして二人きりになった後、、。250P迄読み進むと、食っていくページ数が気になり、あれ、あと200Pも残して、後どうするんだろうと思いきや、急に第一部が終わり、第二部へ。がらりと雰囲気が変わり、珍しきや、清掃人の生活が描かれる。これは面白かった。そしてまたもや、第一発見者が殺されるというこの小説の歌いどころに読者をいざなってゆく、、。結局460Pものページを繰ることになったが、この小説は本格ミステリーとは言えないのではないか、なんて思い始めてきたり、後半の兄、妹の設定が、いかにも作りすぎてる。においます。全然解決片は意外でもなんでもなく、ばったり終わる。まあ、前半はミステリー的に読ませたり、後半は、少し妹の心情が嬉しく、読み進めたが、終わったら、460Pも読ませたられた...ちぎれた鎖と光の切れ端(荒木あかね著)(講談社2023)75点
この題名のせいで、しばらく見る気がしなかった作品です。どう生きるかなんて、道徳的です。、、でも、見ている間は、普通に宮崎映画です。導入部なんてさすがだと思います。人物の風貌、色、動き、描写力、やはりジブリだと思います。安心感が漂います。相変わらずわくわくもします。7人の老女、不気味なイキモノの描写が体を這うようになると、ああ、、。悪くはないけど、みんなが言ってるような集大成映画ではないと思います。まだまだ粗く、むしろ習作っぽく感じました。そこそこ楽しませていただいたのは事実ですが。これなら、この前見た新海の「すずめの戸締り」の方がずっとスケールが大きい。ラストがあまりにあっけらかんとして、この話をすべて「夢の中」としてしまう観客もいるのではないか、、。とは言いながら、それなりに楽しんだのも事実ですが、、。...君たちはどう生きるか(2023/日)(宮崎駿)80点
珍しや近世になる直前、豊臣氏の滅亡後の大坂のエネルギッシュな人々を描いた痛快および人情芝居です。登場人物が多く、しかもそれぞれ性格付けがきっちりしているのでわかりやすい。ど~~ンと、舞台の目の前に堀があり、それが最後まで隠したキーワードになります。俳優陣は老いも若きもみんなセリフもトチリがなく、練習十分。狭い舞台だが、全員飛び跳ねている。観客へのサービス絶大の演劇集団と見た。素晴らしい!真紅「おしてるや~君を想ふ~」(作・阿部遼子演出・諏訪誠)atZAZA80点
明治時代にオーストラリアに移住し、写真家、企業家として成功したムラカミが、太平洋戦争勃発により敵国民として収容所入りし、亡くなる。劇はそのかれの空白を埋めるかのように、彼が取り続けた写真を集め、彼の思い、夢を蘇らせてゆく、、。3人劇ですが、実に落ち着いた淡々とした描写でした。劇的な高揚を敢えて避け彼の生涯を淡々と描いてゆくそれはドキュメンタリー手法といえる。通常の演劇とは少々味わいが違うが、この作品の良さを十分生かしている。戦争の残酷さと彼の生きる思いを残像に残し、劇は終わる。いい時間でした。「ヤスキチ・ムラカミ–遠いレンズを通して」(作・金森マユ演出・山口浩章)at仲野進化芸術センター75点
これはスゴイ、、。こんなの初めて読んだ。真相は言えないけれど、吾輩もミステリーは何十年読んでるけど、またこのような空想的なトリッキー殺人はかなり読まされておるけれど、幽霊の存在をここまで真相にくっきりとはめ込んだというのは、ス、すごいです。五十嵐は天才か?いや神か?普通の人間ならこういうトリックを考えることができようか、、。感想になってないですね。とにかく度肝を抜かれました。真夜中法律事務所(五十嵐律人著)(2023講談社)85点
冒頭の殺人光景が残虐で、この作家の精神までも疑ってしまったほど、強烈だった。そしてそれから不思議な迷宮殺人事件勃発となったのだが、、。うーん、そんな解決編だったのね。どこかで読んだ気もするが、でもやはり新鮮ではありまする。引っかかってしまったのは事実だし、この際きちんと騙されましたと白状しよう。でも、あのわけの分からない左右識別障害って、なんだ?ほとんど知られていないこの病気をこのミステリーのトリックに使うなんて、ちょっと性格悪くない?と思うのだが、、、。負け惜しみではございません。しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人(早坂吝著)(2023光文社)80点
広い舞台。そこらの小劇場よりは随分と立派な舞台。。演劇を勉強している学生にはとてもいい環境だなあと思う。ところで、劇の方。どこの方言かなあと思ったら、広島だろうなあと分かる。ある家族中心の話なのだが、登場人物はみなエキセントリックな感じ。見た目は普通でも話すこと感じていること、佇まいはどこか変わってる。家の家長が水死したのは昨年。その一周忌にやってくる人々。異様な雰囲気。近くを流れる川はまるで彼らの妄想の集合体のようでもある。この世とあの世をつないでいる、又は分断している川であるかのように、、。俳優陣はとても的確でまったくとちりのない完ぺきな演技。演出もあの土橋だからこれも完璧を目指しているかのよう。演劇的には欠点がないのです。でも、何か設定が人工的過ぎるような気がしないでもない。話はラストまでそれほど救...近大演劇創作演習公園「柔らかく揺れる」(作・福名理穂・演出・土橋淳志)at大学構内D館80点
末期がんにおかされた一人の男の残された人生。それはすなわち我々自身のこととして映画と共に向きあう熾烈な時間でもあった、、。ストレートに残された時間を見つめ、病室から見える窓にくっきり浮かぶ美しい雲と空。それは死後に自分を見つめる天上からとして見て取ることも可能だ。その同じ空を20年近く会っていない見捨てられたという息子も見ていた。誰もが訪れる死というものをじっくり描いていることに好感が持てた。存在するという意味を主人公が理解したという言葉に人間の重みを感じ取る。フランス映画らしい暖かく鋭い秀作です。愛する人に伝える言葉(2021/仏=ベルギー)(エマニュエル・ベルコ)80点
2023年。映画本数76本。何かあまり見ていない感じがする。本当はベストテンをする資格がない気もするがあえて、、。1位のロウ・イエはとにかく映像の大胆さ、シャープさに目を見張る。日本映画は本数少なく、三浦大輔が浮上。洋画①「シャドウプレイ(完全版)」(ロウ・イエ)②イニシェリン島の精霊(マーティン・マクドナー)③「PERFECTDAYS」(ヴィム・ヴェンダース)④「ポトフ美食家と料理人」(トラン・アン・ユン)⑤「枯葉」(アリ・カウリスマキ)⑥「火祭り」(アスガー・ファルハディ)⑦美しい都市(アスガー・ファルハディ)⑧「砂塵にさまよう}(アスガー・ファルハディ)⑨「かもめ」(マイケル・メイヤー)⑩異端の島(ヴァーツラフ・マルホウル)日本映画①「そして僕は途方に暮れる」(三浦大輔)②正欲(岸善幸)③「怪物」(...2023年映画ベストテン
何気なく見た映画だったが、出だしから映画愛に包まれ、とてもいい展開へ。こんな映画は好きだなあ。最後までじっくり見る。久々の小出がいい。彼もいろいろあったから、この役どころは自分自身100%発揮できたのではないか。映画に戻ってきてよかったなあと思う。さすが、いい演技をしてくれている。重要どころ、吹越もいいね。もちろん宇野も素晴らしい。亡くなった渡辺裕之も出てるなあ。彼もいい演技してる。その他、劇場の女性たちも光ってたなあ。まさに城定ファミリーだ。しばらく余韻が残る素晴らしい映画でした。映画好きにはたまらん。銀平町シネマブルース(2022/日)(城定秀夫)80点
原作は読んだ。かなりユニークな発想、展開で本格ミステリーをお好きな方にはとてもお勧めできる小説でした。映画は、やはりそれらをもとに詰め込んだ感じがしましたが、、。分かりやすい実際の殺人事件を紐解く展開に、ちょっと原作からは違うかなといった感じもしたが、それでもなかなか面白いミステリー映画にはでき得たと思います。実際は証拠申請であのSDカードが認められるかとは思えないけれど、ここがミソだからね、あの展開は仕方がない。随分と多彩な俳優陣が出演し、その割にはみんなそれほど印象はないけど、やはり3人の主演に焦点を置いたからでしょうね、で、その3人ですが、杉咲は怪演だけど少々やりすぎのきらいがしました。ほかのふたりも抑えたいい演技。でも、通常にミステリー映画にすれば上出来の映画だと思います。決してアイドル映画ではな...法廷遊戯(2023/日)(深川栄洋)75点
中国映画なんだけど、内容的に外国資本で制作された映画なのだろうなかなか切ないいい映画でした。中国の農村地域の相変わらずの因習めいたもの、家族関係もよく出ている。出会いからそれぞれ環境が変わってもぐちゃぐちゃの愛の火が消えないのは、これは男と女の話だと思えば、随分古く昔から語られた物語ではある。でもこの映画には雰囲気があるので、十分見られますね。いい映画でした。マネーボーイズ(2021/オーストリア=仏=台湾=ベルギー)(C.B./Yi)80点
年末にかけて3本の映画を見る。まずカウリスマキ。僕の大好きな映画作家だ。映画作りをやめたと聞いていたから、また活動し始めたと聞いてとても喜ぶ。「枯葉」。フィンランドの市井の人々。蓄えがあるわけでもなく、仕事も最下層といえる重労働の毎日。男も女も分け隔てない。狭い小さな部屋でラジオを聴く女。いつも聞こえるのはウクライナへのロシア侵攻。チャンネルを変えると音楽が言語は不明だが、日本の懐かしい曲が流れる。貧乏だが、なけなしの金で友人と行くカラオケバー。そこで女は男と出会う。二人がただ見つめるだけ、、。二人の最初のデートはゾンビ映画。楽しんだ後、二人は次回の出会いを約束する。だが男はそのメモ書きをなくす、、。もうなにも書く必要はない。カウリスマキの世界がそこにあふれている。レトロな音楽がずっと流れている。ささやか...鮮やかなる映画作家たち(カウリスマキ、ユン、ヴェンダース)
重松の作品は久しぶり。この作品はずっと気になっていたけど、何故か読まないでいた。そして今年もいろいろあった暮れにじっくりこの作品を読む。短編集で、それぞれがいずれもどこかでつながっている。底流に流れているのは人は死んでいくということだ。これは私たち人間から、いや動物、生きとし生けるものすべてから逃げることのできない設問である。あまり本を読んで泣かない私だが、この本はじんわり泣いた。人が死んでいくこと。そのことの答えは「考えることだ」と重松は言う。考えることが、その日に死ぬことと、あと、残されたものが生きてゆくことの答えになるという。若い時からずっと、生きることと死ぬことを考えつづけてきた私にとって、この本を読んだときに、今までの文学書だの、哲学書だの、ましてや最近読み続けている宇宙関係の物理学の本さえ、単...その日のまえに(文春文庫)(2008重松清)90点
出だしからいい音楽がかかる。そうだこの映画は音楽映画なんだ。でもいい人間ばかり出てくる。人間が殻を抜け出すのにどれだけ人の助けと愛が必要なのか、というテーマが全編に音楽とともに流れている。一人で見るには最適の映画。心が洗われる。ぼくの歌が聴こえたら(2021/韓国)(ヤン・ジョンウン)75点