切ない心のときめきがこんなに愛しい、これぞ映画を見る喜び、人を見つめる哀しさを十分浸してくれる。たまにはこんな美しい映画を見て吾輩の薄汚れた心を清らかにしてくれるのは映画の持つチカラだと思う。映画、初心を忘れべからず。星願あなたにもういちど(1999/香港)(ジングル・マ)80点
映画館で新作をランダムに見ています。小演劇も好きですよ。
プロフィール 性別 男性 自己紹介 休みは大体映画館かその近くを闊歩しています。自然と繁華街というところを歩くことになります。心は大自然にあこがれながら、結局便利さに負けているような気もします。
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劇団未来「梅子の梅根性」(作 南出謙吾・演出 しまよしみち)at 東大阪市文化創造館 80点
女性の生き方を明治の初期から考え通した津田梅子の生涯。いわゆる元祖女性活動家であります。今から150年ほど前。女性は10代で結婚生活に入り、男性の添え物だった時代に、自ら女性には教育そのものが必要だという認識で、2度もアメリカ渡航したダイナミックガールズです。前半がじっくり彼女の脳裏をめぐる人生を描き、後半はちょっと駆け足気味だが社会システムまでを見つめる展開を伴う。彼女は自分の人生を100%生きたのか、それとも社会の現実に翻弄されたのか、、。けれども津田塾を創設し、女性の存在を少なくとも水面下からグーンと上昇させたのは間違いないところ。そんな力強さが感じられる演劇でした。劇団未来「梅子の梅根性」(作南出謙吾・演出しまよしみち)at東大阪市文化創造館80点
南河内万歳一座「楽園」(作・演出 内藤裕敬) 80点 at一心寺シアター倶楽
劇団名ごとくいつも直球で人生の心理を追及しているおなじみ劇団です。追及って言っても、にぎやかでちょっとほろ哀しいところもある親しみやすい内容です。さて今回は、駅から少し離れた迷い込むような居酒屋に貸し切り状態の14、5名が集まった。そこで繰り広げられる人生の悲喜こもごも。いつものパターンだが、でもだから面白い。今回は若き新団員も入り、少し色が違って見える。これから楽しみだ。戦士には休息は必要。そしてそれが楽園ともなる。アフタートークでゲストにサリngROCKさんさんがいらっしゃって、ワクワクする。相変わらずおきれいです。内藤氏と真逆な作家なので、対談が面白かった。前作「罪と罰」は見事でした。途中、停電で中断もあったけれど、思い出になりました。南河内万歳一座「楽園」(作・演出内藤裕敬)80点at一心寺シアター倶楽
MEMORY メモリー (2022/米)(マーティン・キャンベル) 70点
たまにはニーソンの殺し屋映画もいいかなと鑑賞する。ガイ・ピアースとかお好みモニカ・ベルッチなんかも出てて、楽しみだ、と思ってた。メキシコの色調がちと暗く、子供売春をチクリと提言した展開。ニーソンは殺しの対象が子供だったので、契約解除を申請するが、、。まあ、話のテンポは速く、どんどん人も死ぬし、ここは映画の世界だとは言え、ちょっと不思議でございます。ニーソンはアルツハイマーなので記憶が危ないはずなのだが、映画ではそれほど悪くもない感じ。きっちりと展開を予想し、悪と戦っている。でも僕にしたら、何人もオカネのためにだけ人を殺していたニーソンが、なぜ急に子供をターゲットにした裏産業を暴こうとするの?なんか現実的でないし、嘘っぽいと思います。また、悪の権化のモニカも実の息子まで犠牲にしているのに、なぜ悪の世界で暗躍...MEMORYメモリー(2022/米)(マーティン・キャンベル)70点
東北岩手の星、いや日本の星である宮沢賢治の家族の物語である。そこではいわゆる伝記もののスタイルはとってはいない。そこには日本のごく当たり前のどこにでもある家族の思いが凝縮され、みなぎっている。賢治を才能豊かな芸術家風になぞらえていないところがこの作品の魅力である。ごく普通のでくの坊息子のようにさえ見えるところがほほえましい。そんな語り口がたまらん。妹トシのはかない終わりのシーンは雪が幻想的ではっと驚くほど美しい。映画で今までこんな美しい別れのシーンがあったろうか、、。心に残る。出演者全員の心のこもる演技、すべて知り尽くしたかのような成島の冴えた演出、日本映画の粋であろうと思う。銀河鉄道の父(2023/日)(成島出)80点
劇団グラスホップ『バッドエンドを抱きしめて』(作・演出 カイチヨウ) at布施PEベース 75点
若さ溢れる劇団です。やはり見ていて気持ちいい。この出し物も何やらよく分からんが現代人の生き方のもがきが漂っているようだ。108番居住区へと5人が走る。その5人の内面は、セリフで吐露される。でも設定が、よくわかりませんでした。でもその5人の焦燥感はかなり伝わってきました。黒い雨が降る108番居住区。ここは人類が最後にたどり着く番地なんだろうか、、。諦観とかすかな明るさがこの劇を救う。劇団グラスホップ『バッドエンドを抱きしめて』(作・演出カイチヨウ)at布施PEベース75点
パリタクシー (2022/仏)(クリスチャン・カリオン) 75点
もう寿命が分かっている人。死ぬ前にタクシーでこの映画のように思い出の場所を訪ね廻るっていうのも素敵ですネ。場所がパリであり、タクシー客が人生の辛酸をなめた人であり、そしてタクシードライバーがまさに今壁に突き当たっている人である、そんなシチュエイションは、ほろ苦く、しかし小さな灯のともる童話をパリから送ってくれたようである。G/Wアニメばかりの映画の中にふっと湧いてきたような小品です。まさにフランスの香りがするし、つい最近までフランスでも女性の地位が低かったことも驚かされるし、何より映画のセリフ、「笑ったら若返るけど、怒ったら老けてしまう」、これはいいですね。私が老けているのはこれのせいかな?また、マドレーヌがシャルルに行先を変える時「長い人生の10分なんて、たいしたことないわ」なんていうのもつくづくいいね...パリタクシー(2022/仏)(クリスチャン・カリオン)75点
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切ない心のときめきがこんなに愛しい、これぞ映画を見る喜び、人を見つめる哀しさを十分浸してくれる。たまにはこんな美しい映画を見て吾輩の薄汚れた心を清らかにしてくれるのは映画の持つチカラだと思う。映画、初心を忘れべからず。星願あなたにもういちど(1999/香港)(ジングル・マ)80点
学生演劇では既成の脚本を演じる演劇がほとんどだが、今回は立派にちゃんと脚本を書いた劇である。その本もなかなかユニーク。趣向も凝らして見栄えがする舞台である。雨蝶天さんはなかなか才能がありますね。70分、十分緊張感も切れず、いい舞台でした。セリフ回しは少しぎこちない役者さんもいるけれど、でも聞き苦しくはない。何しろみんな大いに若い。その若さがあ全般的にこの劇のかさ上げをしている。パワーがあるのだ。素晴らしいことであります。小さな布施の劇場ですが、またいつもの学校内とは違った雰囲気をよく出していた。もう9月の舞台を期待している。覇王樹座「六月学外公演『死神』」(作・演出:雨蝶天)at布施PEベース80点
じっくり見られる最近にはない拾い物の大人の映画です。モロッコの映画なんですね。人間の表情でぐいぐい引っ張ってゆくその描写力、そしてありのままに生きることの意味を問う渾身のテーマはイスラム圏を超え、全人類的であります。映像による小説的解釈も西洋的でまさに純粋ヨーロッパ映画です。でもだからこそ、ラストの震えるような遠吠えの声が心を揺らす。青いカフタンの仕立て屋(2022/仏=モロッコ=ベルギー=デンマーク(マリヤム・トゥザニ)90点
ロバが愚かで悪しきしかし、しかし哀れで悲しい人間世界を神が俯瞰しているように見つめるまなざし、、。まさにブレッソンの「バルタザールどこへゆく」と全く同じです。でもやはりどこか違うなあ、、。作家で違うのは当たり前だけど、見ている吾輩の年齢が大いに違いすぎるのも恥ずかしながら原因でもある。映画はこのように見るこちらからの環境によって大いに左右される。こちらのバルタザールは恥ずかしながらロバの表情を見ていても何かやはり人間のやらせを感じ取ってしまう。これも吾輩の人間的汚染度がたまりたまっているからだろうか、、。ブレッソンに比べると感銘度は下がる。EOイーオー(2022/ポーランド=伊)(イェジー・スコリモフスキ)80点
カウリスマキ以外でフィンランド映画を見るのは久しぶり。夜行列車のシーンが多く、最初は鬱屈した雰囲気が続き、見るのも嫌気がさすほどだが、そのうちだんだんと人間の温かさと陰影が出てきて素晴らしい。フィンランドとロシアとの歴史的背景はあまり分か映画を通してそれなりに関係は理解できそうでもある。いい人間だと思った途中客からカメラを盗まれて、それが愛する女性との別離の兆候だと我々は気づくのだが、彼女の心境の変化は二人の素朴な演技で明瞭になる。ロードムービーとしても前半と後半が対照的な取り方をしており好感が持てる。秀作といえるほどではないが、ほのぼのとした寒い国から来たいい風を全面にもたらしている。コンパートメントNo.6(2021/フィンランド=露=独=エストニア)(ユホ・クオスマネン)80点
柳田国男の遠野物語を基本イメージに置いた山本ファンタジーというべきか、僕はジブリの映画を見ているような錯覚さえ覚えた。洗練されてる大道具、小道具を多用した視覚的美術、そして何より鍛えられたピッコロ劇団の面々、物静かで悲しいが確かな命のあしおと、それは人間への祝福のエールとなり脈々と続いてゆく、、。もうこの100分は至福の時間でした。なんだかんだ言っても、この舞台の彩りが若く、透き通り、エレガントで、観客も超若い人たちが大勢いたが、彼らにもきっと受け入られているだろう反応さえしかと感じた。関西の実力劇団がこのように現地点だけでなく、さらに向こうの遠い何かを見据えているのはとても気持ちいい。演劇の将来性を十分感じられる舞台でした。兵庫県立ピッコロ劇団「あしあとのおと、ものがたり」(作・山本正典演出・原竹志)atピッコロシアター80点
以前他劇団で上演したらしい演目です。内藤氏らしいいつものパターンだが、冒頭の水辺での事故もそれほど尾を引かないし、肝心の借金マニアのダメ先生もなんだかなあ、ピンとこないです。それぞれの役者さんたちの演技はそりゃあよくできてます。でも今回は吾輩に迫ってくるものがちとおとなしかった感がします。テーマ性がいつものように前面に出していないように感じられるのは吾輩だけでしょうか、、?この劇団は事務所を変わるので、もう今年の劇はないようです。楽しみにしていたのにそれだけが残念。また皆さんとお会いしたいものです。南河内万歳一座「新・あらし」(作・演出内藤裕敬)at一心寺シアター70点
障害児と社会とのありかたを描いたものだが、キリスト教の理念にはかなり入り込めてはいるが、肝心の事件の真相に触れていないので、どうにも煮え切れない気持ちが残滓として残る。主人公デミョンの演技は出色ものだ。連鎖(2020/韓国)(キム・ジョンシク)70点
これは面白いです。設定が本格ミステリーファンならではのわくわく感。ありえない話といっても最近はやりのSF的手法ではなく、往年からのミステリーファンでも十分楽しめる著書となっている。よくこれだけ考えられたなあと感心する内容なので、これぞ本格ミステリーといいたい。シリーズ化されるのを期待したい。アミュレット・ホテル(方丈貴恵著)(光文社2023)80点
突撃金魚は好きで、東京にまで遠征したこともあった。そのうちサリngROCKさんが出演しなくなり、山田蟲男さんは大きく変身する。作品も軽妙で少女っぽい軽やかさを持った作品から重く暗いものが多くなっている。でもずっと見ているのだが、、。今回はなんと出演がかなり遠のいていたサリngROCKさんの久々の出演で、もう見る前から少々精神高揚気味。そしてそれは叶った。それだけで私的には十分なのだが、この作品、なんとあの小さな舞台に多数の俳優陣出演、しかも全員練習十分、演劇的には古代歴史絵巻大開帳、エンタメ性も十分で面白い。ものすごいパワーを舞台にまき散らしておりました。そらそうだろう、30人ぐらいの俳優たち、みんな所属の劇団に戻れば主役級の人たちばかりだ。演劇ファンにはたまらない舞台となりました。今年前半の出色の出来。突劇金魚「GFT版贋作・桜の森の満開の下」(脚本山田蟲男、サリngROCK・演出山田蟲男)at芸術創造館85点
話題作である。即、見に行く。なるほどそういう映画か。でもちょいとあざとい感じが匂うかな、、。映像は全面パンフォーカスしていて細密画あるいはワイエスのような画像で美しい。うっとりする。これも恐らく塀の向こう側で行われていることを無視することのできる人間への限りない嫌味あるいは警鐘のつもりなのではあるまいか、そんな気もする。冒頭から何度も出てくる画面の黒塗り。かすかに聞こえる収容所での物音。ああ、あざといなあ。こんなやり方でしかこういう人類の真っ暗な深部を描けないと思っているグレイザー氏、幼稚過ぎません?これに音響賞を与えるアカデミー会員も同じく。さて、かなりいつもと違いけなしている吾輩ですが、作品的には全編ワイエス風の映像がやはり美しく、静謐な美術画をずっと見ている気がいたしました。あの夜中にリンゴを置くあ...関心領域(2023/米=英=ポーランド)(ジョナサン・グレイザー)80点
予告編で絶対見なきゃと思ってみた作品。同僚から疎外される教師の日常を描いている作品かなと思ってたら、意外とオーソドックスなホントありふれたどこにでもある教室を描いたものでした。主人公の女教師や校長先生、ほかにそれほどやる気のないフツーの先生たちがまるで自己回顧の気持ちを持たない人たちなので、見ていていやな思いをするのだけれども、でもそれなりに面白い作品ではある。これだけ騒ぎを起こしておいて、生徒に責任を取らせる学校もそれは日常的な行為であり、ありふれたいつもの学校風景なのである。ラストの、生徒を強制連行する神輿を担いだかのようなシーンはある意味爽快にさえ映るのはこの映画の皮肉ぶったところなのでしょう。ドイツ映画はいま世界でもかなり目立って秀逸な作品を生み出している。何かな?ありふれた教室(2023/独)(イルケル・チャタク)80点
いろんな話をいつも様々に展開してくれる1mg。今回はぐっとハートウォーミングの、笑いあり、涙ありの演劇の原点に戻ったかのようないい劇でした。劇場に入ると、古ぼけたアパートの設定なんだが、大道具が斬新で美しい。住民の俳優陣の演技もてきぱきしていてそれがまた美しい。そういえばみんな若く、また美男美女ばかりで、見ているだけで気持ちがさわやかになる。いい話なのである。そこに、時代を20年時間軸を動かして重層的な仕上げに徹していて、脚本のうまさが光っているナア。この劇団は何でもできる劇団なんですね。そういえばこの多様性は、客層も若い人たちから老人たちまで層が厚いと感じる。またまた次作が楽しみになってきました。いい休日でした。劇団1mg「ユメミソウ~夢見荘~」(台所編)(作・演出伊達百式改)於indpennded2nd80点
これは読みやすく、しかも設定がめちゃ面白い。どんどんページを繰る。あっという間にラストまで一気だ。離島で起こる連続殺人事件。通常は通信機関がオミットされる。しかしこの小説ではそんなことはせず、登場人物たちが身の危険を感じ、警察に連絡できない状態にいる。この設定はユニークだ。そして犯人がいるのを確認しながら行う「こっくりさん」。面白い。才能まで感じるほどだ。しかし、ラストの叙述トリックは何だ。あんなことは違反ではあるまいか。読者をだましているのと同じではないか。ちょっと許せない気もする、、。そうすると他にも何だかなあ、という突っ込みもいろいろ沸いて来る。この点が一番の問題点。ミステリーは面白いのと斬新なだけでは褒めることのできないなにものかが存在する、と思うのだが、、。十戒(夕木春央(著)(2023講談社)80点
期待してみた映画だったが、、。原作読んでいないので、なんとも言えないが、ある老人の死が四方八方に波紋を立てるように、すべてフォーカスされていないので、何が何だかもやもや感が残る設定になっている。そしてそのど真ん中に、事件と関係のない福士と松本とのドロドロ愛欲関係を据えている。余計、観客は訳が分からなくなる。731を急にこの話に無関係に持ってきたりして、さらに私は戸惑う。大森は何を考えとる。雰囲気は確かにあるなあ、、。でも結局それだけの映画かな。彼は最初の作品「ゲルマニウムの夜」が強烈で秀作であっただけに、「日日是好日」を頂点として、それ以降の作品はちょっとどうだかなあ、と思う。演技としては福士はなかなかいい。財前はさすが。松本はなんだかまばゆい。近藤、平田、根岸はもったいない使い方。大森はどこへ行く。湖の女たち(2024/日)(大森立嗣)65点
劇映画なんだけど、ドキュメンタリータッチというか、ドキュメンタリーを目指してる。そのせいか、映画的高揚が持続せず、すぐ途切れてしまう感覚があるのは、時間軸効用でカットを多用しているからかもしれない。こういう映画作りもあるのだなあとは思うけれど、現実政治へのプロパガンダへの貢献は理解でき、また映画的にも優れていることは否定しないが、あまり好みではないかな、、。結局、彼は何をしたのか、最後まで不明瞭だったような気もするし、何より家族関係では、結婚しているのだから、母親より本来妻の方がしゃしゃり出るべきであろうと思うのだが、この国ではどうもそうではないらしい。なんだか日本人にはわからない点もある。あっ、俺だけ?ミセス・クルナスvsジョージ・W・ブッシュ(アンドレアス・ドレーゼン)(2022/独=仏)70点
骨太作品「新聞記者」の監督の藤井がこんな100%純愛映画を撮ろうとは思わんだ、、。嘘だろうが、から、だんだん見るモードが純愛本気モードにフォーカスされていき、そしてどんどんはまって行き、、やがて最後はいつも通り、号泣させられる羽目になる。藤井に負けた。まさかと思った。そう言えば、彼と清原とは「デイアンドナイト」「宇宙でいちばんあかるい星」でタッグを組んでた。好みなんだろうな。いい女優だ。黒木お二人の女優の使い方もなかなか秀逸。ましてや、松重の使い方のぜいたくなこと。藤井のチカラなんだろうな。でも何といっても、恥ずかしいほど昔からの純愛映画路線に沿ったストーリー展開の紡ぎ方は100%ストレートですがすがしいほど。それがいい。でも清原は化粧なしの方が断然いいと思う。NHKドラマ「透明なゆりかご」のころはひょっ...青春18×2君へと続く道(2024/日)(藤井道人)80点
若い方々の結婚観がわかりづらいのは年のせいか、それとも脳の中身が全く異物であることに気づかないだけなのか、なんてふと思う。でも、この映画、何か颯爽とした清涼感が吹きあふれ、僕は気に入った。これだから映画は見ないとわからない。途中で長澤がいなくなるので、主役がそんなに不在でいいのか、なんて思う時もあったけど、それはそれでその不在がこの映画の底流を流れるテーマだからと思いつくまで、その時間感覚が後で惜しくなるほど愛しい。全体に及ぶこの現実感との違和感は何か?おそらくこの原作がどうもあやしいのではないか。小説的過ぎて、実際的な生活感に乏しい、とまで言わないけれど、でも逆に考えるとこの映画の魅力のほとんどがこの現実感の不在にあることに気づく。人工的な話だけれど、若い人たちの脳裏にある愛の実現とはこういう形で行われ...四月になれば彼女は(2024/日)(山田智和)80点
中編2本。「FROM~」は一人芝居。福島の被災者から日本に送るメッセージの集大成だと思う。もう13年か。されど日本人はもう忘れかけているのではないか。そんな思いを小さな熱源にして被災者からというより、もう一人間として響くように心から叫び続ける女性。その姿は圧倒的だ。確かに、2年ほど前福島に一泊したが、町は完全復興を遂げ、この大きな災害には見ただけではあったかどうかさえ忘れるほどだった。しかし、一人一人の胸の内には秘するものがあるのだろう、そんな感想を得た。「ねずみ狩り」は二人芝居。ごみ溜めの街。中年の男と女。彼らも贅肉と年齢を重ね、実際はごみ溜めの現代に息づいている。二人は自分を語ろうとしないので、持ち物からしまいには衣服まで脱ぎ取る羽目になる。そして真裸の透き通った人間に戻ったとき、自分が狩られる鼠だと...アートひかり「From2011.」「ねずみ狩り」(作・小池美重ペーター・トゥリーニ)(演出・仲田恭子)at難波サザンシアター80点
北村想原作、演出が流山児祥、俳優陣はロートル(失礼!)女性陣と聞いて、即東京にまで馳せ詣でしてみたいか、そうでもないか、、、。私はあの小さな早稲田駅前の劇場でどんなバカ騒ぎが垣間見れるか気になってしまいとうとう東上してしまう。相変わらず現物の流山児祥は荘厳で元気。懐かしさを超え、時間間隔がなくなってしまう。話は面白おかしい「怒れる12人の男たち」のすれすれパロディをといえようか、グロテスクを超え、清貧な気持ちにさせてくれました。ものすごいパワーでございます。皆様、たまにセリフのとチリはご愛敬。いつまでもお元気で。楽しませてくれました。シアターRAKU『Operettaめんどなさいばん』(作・北村想演出・流山児祥)於space早稲田80点
古き良き時代への哀悼を持ちつ、それでも人間同士のはぐくみを夢見た映画人のオマージュが読み取れる。出演者はごった煮のように溢れ、話も尾ひれを持ちながらそれぞれいい具合で完結する。あまりに、あっけらかんなので二ヤ笑いする。ダウントン・アビー新たなる時代へ(2022/英=米)70点
現代の若者の現実を描いている。流れるままに、から自分の目線で現実を切り開いて行ける、までの成長期映画。でもこの映画の偉いところは「カネ」の本質をきちんと描いているところ。女の子が彼と同棲し始めるのを躊躇するのもカネだし、生活するために本を書くのもカネのため。その意味でもまさに現代性を表している。即物的なのだ。『行く先/後世』(ルーダ・ベン・サラ=カザナス)65点
静かな自分探しの映画です。台湾の緑島という島がいい。海、波間、岩。そこに育った兄、妹。離れ離れになってもいつかはたどり着ける。あまりの境遇の哀しみに続く思いがけないラスト。静かな涙が流れる。恋人のボクサーは少々付け足し。あなたを、想う。(2015/台湾=香港)(シルヴィア・チャン)70点
2作目から見たが、この処女作は2作目の原型か。カメラの舐め方、詩情、展開などにそれを感じる。けれど、見る方も我慢を強いられるのも事実。そんな大陸的な大きさがビー・ガンの持ち味だ。中国南西部にの道路には中央分離帯がない、、。凱里ブルース(2015/中国)(ビー・ガン)75点
ビー・ガン初見。噂通りの舌を巻く快作。全編漆黒の画面にゆらり動くカメラ。酔いそうになるほど。ストーリーはそのうち夢と現実と混濁しどうでもよくなる。何と言っても映像ですな。全編ポエムです。豪雨。水。林檎。緑色の本。ザボン。卓球。ラケット。松明の炎。古びた時計。回転家屋。線香花火。うーん、もう一度見たい。ロングデイズ・ジャーニーこの夜の涯てへ(2018/中国=仏)(ビー・ガン)85点
韓国映画で、最近都会的なスタイリッシュな映画を見ることが多く、たまにこんな生活感豊かな庶民性の溢れた映画もいいものだ。途中出て来るのど自慢の歌が日本のド演歌にそっくりなのもほほえましい。いい映画です。大切な人を想うとき(2018/韓国)(コ・フ)75点
高校教師と生徒との禁断の恋。ある不幸を抱えたまま、20年の歳月を経て、、。というめちゃロマンチックな映画です。もうこの歳ではこんな映画見れんだろうと何度も思ったが、なんと最後まで見てしまう。ラストの意外性は美しく、また主題歌もよかった。まだ俺も捨てたものじゃない。クレヴァニ、愛のトンネル(2014/日)(今関あきよし)70点
ジョージア舞踏団に配属するダンサーたちの人生を描いた珍しいジョージア映画です。生活が貧しく、生きるのに精いっぱいの市井の人々。主人公のメラブは愛を知り、そしてそれを乗り越えた先にオリジナルのジョージア舞踏を創り出す。異文化ムードぷんぷん。ダンサーそして私たちは踊った(2019/スウェーデン=ジョージア=仏)(レバン・アキン)75点
スペインの北ヒオンに戻って来た女の子。家は破産寸前で電気も止められる。そんな母娘のSNSを駆使した現代の波間に浮かぶ危ない生活。でも彼女たちは立派に現代を生きている。生きる哀しみも感ずるが、元気さえもらえる明るい映画です。エルプラネタ(2021/米=スペイン)(アマリア・ウルマン)80点
車が道路でエンコして、それから様々な人たちの孤独感を伝えていくが、それは生きていく上でどうしようもないことなのだった、、。そしてまたラストで同じ車が道路上でエンコする。人生はリフレインする。全体にもっと凝縮できなかったかなあ。台北暮色(2017/台湾)
鬼才アニエス・ヴァルダの処女作。パリ郊外の市井の人々が営む一日を、倦怠期が訪れた夫婦がずっと話しながら歩き続ける光景を通して描く。二人のアムールがなければ1950年代、日本、イタリアのネオレアリズと全く変わらない写真だ。人々の生きる喜び、苦悩をさらりと撮ってしまうヴァルダの才能が垣間見える。ラ・ポワント・クールト(1955/仏)(アニエス・ヴァルダ)75点
昔同性愛が犯罪だったころの哀しい話です。現代にでもその感覚が残ってはいるような気もするが、考えさせられます。映像、演出は秀逸。ターナーの絵画のごとく、イギリスの海の風景が登場人物たちの心象を写し取っている。僕の巡査(2022/英=米)(マイケル・グランデージ)75点
人生の最後を迎え、昔ながらの友人たちが一人の友の遺灰を巻く旅に出る、、キャストがものすごく豪華で俄然自分の青春を振り返ることになる。話が感動的なのになぜか盛り上がらないのはこれぞ演出のなせる業か。情に流れとるよ。ラストオーダー(2001/英)(フレッド・スケピシ)70点
ロシア映画では珍しい老人ものコメディ。一人で周りに迷惑をかけちゃだめだと自分のお葬式を設える空っとしたほのぼの映画だ。でも、どこかで冷め切った人生への覚醒感も垣間見えるし、エスプリも効いている。全シーン余裕もあるし拾い物の秀作映画です。彼女が起こすてんやわんやに人生のおかしさ、哀しみさえ見える。私のちいさなお葬式(2017/露)(ヴラジーミル・コット)85点
気になっていた展覧会に行く。この中之島美術館は開館1年を経るが、初めて見たい絵画展が来たのだ。佐伯は子供時分からかなり好きな画家で、ユトリロとブラマンクに佐伯はかなり影響されていたらしいが、僕はこの二人が昔から好きで、何度も絵画展に行ったものだ。佐伯祐三の絵画はこの中之島美術館の前身に、確か心斎橋の東急ハンズの横側にひっそりと佐伯美術館があったのだ。ことあるごとく、僕は通う。だから今回の美術展はそのリフレインだろうと思っていた。ところが、その心斎橋の佐伯美術館と、今まで見てきた佐伯の画集とも少し違う違和感を今回は持ってしまった。それは何かというと、今まで絵から感じ取った哀しみといった感覚がほとんど感じないのだ。あのあっけらかんとしたユトリロでも感じた哀しみは今日の絵画展ではあまり感じられなかった。まるで違...佐伯祐三展を見て
私とは何か?という普遍的な命題を持った映画です。何なんでしょうね。私はこの歳になってもまだ分かりません。それが分からないまま、人は誰かと共生することを考える。だって一人は寂しいですから。この「私」は私には長年寄り添った老妻のように思えました。わたしの叔父さん(2019/デンマーク)(フラレ・ピーダセン)80点
いい映画だ。少なくとも障碍者の心の襞をここまでじっくり描いた作品もまれだと思う。そして映画は彼女(音のない日常)を通して、実は我々(会長)を映しているのだ。その双璧となす圧倒感は絶品。ケイコ目を澄ませて(2022/日)(三宅唱)80点
ミステリーとして見ていくとどうももたもた感が気になる。けれど後半彼らは現生を超え、二人だけの涅槃ともいえる世界にまで駆け巡る。これほど強い愛の世界は妄執ともいえる。「嵐が丘」のあの二人を連想す。別れる決心(2022/韓国)(パク・チャヌク)80点
連城がなくなって早20年。その間の未稿等を集めて出版された短編集です。男女の機微をミステリーの主題にすべての作品が力作です。あまりのドンデンがえしにまさかと思われる作品もあるが、ミステリーというより純文学の感触もあり、読みごたえがある。連城の女性への追及または恋慕は想像を超え、まさに孤高の作品と言えます。素晴らしい。黒真珠(連城三紀彦著)(2022中公文庫)80点
若き集団。設定はミステリーで面白いが、、。まだまだけいこ不足の感も見られ、さらなる精進が必要でしょうか、、。脚本的には、やはりあの時間移動はどうなのかな、ミステリーなんだから、きちんと解答すべきだと思うが。演劇好きなのはわかるが、まだまだ若い。次回期待。劇団えっぐ「鳥山探偵事務所〜朝起きたら事務所に死体があった件について〜」(作・演出大谷隆一)at音太小屋65点