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米米米 こどもべやのうさぎ 米米米 https://blog.goo.ne.jp/usagiusagiusagiusagi/

ストーカーに苦しみながらも明るく前向きな女の子のお話です。一緒に考え悩み笑っていただければ幸いです。

褒めると気を好くして図に乗るタイプなので お叱りのレスはご遠慮願います。 社交辞令・お世辞・甘言は大好物です。 甘やかして太らせてからお召し上がり下さい。

いちたすには
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2009/04/15

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  • ■彼は誰れ時に魔と再逢045■

    「私は悪徳除霊師ではありませんから、弱みに付け込み謝礼を釣り上げる様な卑しい真似はいたしません。最初に約束した10万円。其れだけ頂けば結構です」姉妹は顏を見合わせ頷いた。「では。契約成立。お望み通り。悪霊を除霊して進ぜましょ」男は嫌味な程に深々と頭(こうべ)を垂(た)れる。「聴け悪しき霊どもよ。最後の通告を無視した報いを受けよ。愚かな者等に道はひとつ」動いたり止まったりする調理器具。不可解に閉じたり開いたりを繰り返す戸棚。誰も触れていないのに動き回る椅子やテーブル。お辞儀をしたままの男は微動だにしない。霊を除くに必要な熟成時間なのか、能力が拮抗して水入り待ちなのか、はたまた除霊師は悪霊に気圧され失神寸前なのか。騒乱と静寂が居並ぶ中で、次々と割れていく食器と動き回る家具家電。「獣霊(けだものれい)には制裁を!」呼...■彼は誰れ時に魔と再逢045■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢045■

    「私は悪徳除霊師ではありませんから、弱みに付け込み謝礼を釣り上げる様な卑しい真似はいたしません。最初に約束した10万円。其れだけ頂けば結構です」姉妹は顏を見合わせ頷いた。「では。契約成立。お望み通り。悪霊を除霊して進ぜましょ」男は嫌味な程に深々と頭(こうべ)を垂(た)れる。「聴け悪しき霊どもよ。最後の通告を無視した報いを受けよ。愚かな者等に道はひとつ」動いたり止まったりする調理器具。不可解に閉じたり開いたりを繰り返す戸棚。誰も触れていないのに動き回る椅子やテーブル。お辞儀をしたままの男は微動だにしない。霊を除くに必要な熟成時間なのか、能力が拮抗して水入り待ちなのか、はたまた除霊師は悪霊に気圧され失神寸前なのか。騒乱と静寂が居並ぶ中で、次々と割れていく食器と動き回る家具家電。「獣霊(けだものれい)には制裁を!」呼...■彼は誰れ時に魔と再逢045■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢044■

    「苦しめ苦しめ―。己の悪戯(いたずら)がどれ程此の屋(このや)の住人(すみびと)を苦しめてきたか。同じ苦しみを躰(からだ)で知―るーがーよーいー」家電のコードから、電気ショートが発生したのか火花が散り炎が上がる。プラグやスイッチからも、トラッキング現象の様な噴き出す火柱。キッチンのあちこちで火災が起き、盛(さか)る炎に煙が巻き上がった。「まだ抗うか往生際の悪い。今詫びれば見逃してやると言っているのに、固執して此処で果てるか獣霊(けだものれー)め。しかし其れも又一興(いっきょー)」爆発により家の柱が軋み、梁に積もった砂埃(すなぼこり)が降る。「本物だよ七海。本物の埃が落ちてきてる。あの征伐士(せいばつし)は、録画も録音も出来なかったけど、此の除霊師は本物のゴミ落としてるから本物だよ」床に積もった土塊(つちくれ)を...■彼は誰れ時に魔と再逢044■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢043■

    実際に30万円を払うのは無量塔(むらた)で、負担するのはテレビ局だが。「待ちますよ待てますよ待てるんです何故なら私は本物だから。偽物は鍍金が剥がれる前に金だけ持って逃げたいので待てません。私は本物だから勿論待てますが、待つだけではなく除霊の行程も全て隠さず撮影を許可しましょう私の仕事が10万円の対価として相応しいか見極めていただく為にも」Aラインの黒いスプリングコートを脱いで椅子に掛ける。「私が本物であることを証明するのに必要なのは、誰の目にも明らかな具体的な成果。成果とは、家族が安穏と暮らしていけると言う今後此の家での一切の霊的現象の途絶。途絶を確認いただくにはまず悪霊の目視です」ブイサインを自分に向け左右の目を指す。其の爪はマニキュアが塗られ光沢の無いブラック。肌蹴た黒いカジュアルワイシャツのポケットから黒...■彼は誰れ時に魔と再逢043■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢042■

    登場こそセンセーショナルで自己紹介もエモーショナルだが、何処か、金だけ受け取り何も解決せずに思わせ振りに退散した狩厄(かるやく)を想起させる胡散臭い除霊師荒神(こうじん)。「さて。下世話な話は早く済ませましょう。こういう処で揉めるのは悪霊に付け入られる隙を与えるだけですからね。悪霊は、もうロックオンしました。此の家の悪霊は、特に此の家や此の家に住む者に恨みを持つ人格霊(じんかくれい)ではなく、怖がる様を面白がって悪さしている獣霊(けだものれい)です。なので、害獣の駆除消毒レベルで解決します。金額にして、そう、10万程も頂ければ結構です」大きく吸う息に合わせて煙草の先がチリチリと燃え短くなっていく。「ほうらビンゴ。やっぱり請求してきた然も金額ジャスト10万」「流行ってるのか?10万請求するってのが。だとしたら社会...■彼は誰れ時に魔と再逢042■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢041■

    「私が来たからにはもう年貢は納め時だぞ悪霊め。御前は既に我が手中。私の能力を見切れなかったが己の悲劇。既に除霊は成ったも同然」男は、キッチンの棚全てを閉めて周る。男は動かしたテーブルを戻し椅子を仕舞い、食洗器やレンジやオーブンなど全ての扉を閉じて回った。「申し遅れました。私、除霊師をしております幻中(まもなか)荒神(こうじん)と申す者です」何も無い掌を電灯に翳し振り下ろすと其の指には角が丸く虹色に輝く怪しい名刺が挟まれていた。「除霊師とは、霊媒師の中でも特に『人に害を成す霊を取り除く力』を持った者を指します。霊と交信する能力を持ち、霊を召喚し我が身に憑依させる力を備え、天から霊を除する御役目を賜わった者、其れが我等除霊師なのです」人差し指で円を描くと指の先に火が灯った。「除霊其れは悪霊との対決。字面(じづら)か...■彼は誰れ時に魔と再逢041■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢040■

    「皆さん不思議に思うでしょー。何故(なにゆえ)、玄関ではなく忽然と客間から現れたのか。あ、靴はちゃんと玄関で脱いで来ましたよー。如何(どう)して、此の再募集を知ったのか。あ、事前仕込みの業界人ではありませんからー」誰の許可も取らずにずかずかと無量塔(むらた)と並んでフレームインする細身の男。「此れが、私の能力なのです。人知れず現れる。秘(ひ)さるる情報を知り得る。そして」左の掌を右の人差し指で指す。「此の手です。此の手が悪霊を除霊する。此の家の悪霊、私が除霊して差し上げる」胸ポケットから出した紙飛行機が吹き掛けられた息に乗って軽ふわりと浮かび、無量塔の鼻先を掠めてキッチンへ飛んでいった。「撮ってますかー?いいですかー?今から悪霊をお見せしますよー?テレビ番組市場初カメラで撮れる悪霊でーす」男は紙飛行機を追ってキ...■彼は誰れ時に魔と再逢040■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢039■

    「そのご家庭は、我々が介在した所為で尚激しい不可思議現象に苛まれることになりました。母親は原因不明で治療方法が判らない病魔に侵され、療養を兼ねて越した先で父親が失踪。姉妹が暮らす此の家では、夜な夜な何者かが徘徊。鋭利な調理器具が飛んで来たり、髪を引き回されたり、原因を解明しなければ平穏な生活は送れない処にまで来てしまいました。此れは本当に心霊現象なのかもしれない。其処で今回は第二弾として、此のご家庭の今の現象を見た上で、私なら解決できる、と言う方を、テレビを通して公募しました」歩き回る無量塔(むらた)を複数のカメラが追う。「これはドキュメントです」一番近いカメラを指差してポーズを決める無量塔。「そして、リベンジです」脚色を加えず事実に基づくことを宣言した無量塔スポットが当たる。「アーシの出番はぁ?」出番を削る処...■彼は誰れ時に魔と再逢039■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢038■

    「なんか普通に居付いてる子が居るんですけど」七海は、懐中電灯をライトサーベルに見立てて降り回す子供の首根っこを捕まえた。「あれ?此の子、鹿児島達と帰ったんじゃなかったの?」未来は、首を決められても未だチャンバラに興じようと暴れる子供の唇を上に引っ張った。「いや。ゴミみたいな機材は忘れてったんだか棄ててったんだか知らんが、幾つか置いてったけど、此の子はバスに乗る処まで確認したぞ。おいちょっと確認しろ」無量塔(むらた)の指示で、有限会社カゴシマン消霊の敗走シーンが再生される。地味で不潔な白衣の社員に紛れ、小さい女の子が自分の腰程の高さのバスのタラップを攀じ登っているのが写っている。走り去るバスの窓から結衣(ゆい)に手を振る衣斐女(えひめ)の姿も記録されている。間違いなく、衣斐女はカゴシマン一党と村を去った。なのに何...■彼は誰れ時に魔と再逢038■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢037■

    「何か見えた奴」無量塔(むらた)の問う声に、皆、下を向いた。結論、何も映っていなかった。何もない廊下を指差し怯え、何も通らない道を皆して開けたのだ。「じゃあ」再度、問う無量塔。「何かしらの気配を感じた奴」挙手を促す無量塔の袖を雨宮が掴む。皆が続き、全員の手が挙がった。「人は感じる、カメラでは撮れない、何か。か」無量塔は無い顎鬚(あごひげ)を撫でながら呟いた。「何(なん)だったんですかぁ?今のアレ」擦り寄り囁く女子アナ。「其れを此れから解明するんだよ」縋る女子アナを抱き寄せる。皆は2人が付き合っている事を再確認。そして気付かない振り見ない振り。「とりあえず」此処まで黙っていた未来(みき)が一歩前へ。「皆(みんな)見たんですよね。アタシたち家族だけじゃない、此処に居る全員が」未来の後ろには裾を掴む七海(ななみ)が。...■彼は誰れ時に魔と再逢037■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢036■

    黒い雲丹(うに)から生えた針が中程から折り曲げ其の先端が床を捉えた。無数の針に支えられ、蟹(かに)の様に移動を開始する。黒い靄(もや)の様なものを軌跡に残しながら、ゆらりゆらりと廊下をリビングに向けて歩いてくる。キッチンを見ると沢山の同じ何かが後に続いていた。其れに気が付いたのは、女子アナだけだった。「ムラさぁん…気持ち悪いぃ。何(なん)かがいっぱい居るぅ。いっぱいが、ザワザワ言いながら」女子アナが其れを理解するのには知識が足りず、説明するにも情報が少な過ぎた。節足動物(せっそくどうぶつ)にも見えるが、全種の8割を占める種には当て嵌まらない造詣。動きはミミズ・ゴカイ・イソメなどの環形動物(かんけいどうぶつ)にも似てはいるが微妙に異なる。シルエットだけで言えばザトウムシやウミグモなどの夾角類(きょうかくるい)が適...■彼は誰れ時に魔と再逢036■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢035■

    「面白可笑しくだなんて其れは誤解です。飽くまでも、不可思議現象の解消までを記録するドキュメントです。其の過程で、インチキ霊媒師の正体を暴くこともあるでしょうし、ご家族の杞憂だったって場合も、あると言う、だけ、で」目が泳ぐとは正に此の事。狼狽(うろた)え捲る無量塔(むjらた)に肩の力が抜けた七海は大きく長い溜息を吐(つ)いた。「いいよもう。ウチらの勘違いでも被害妄想でも虚言癖でも、約束したお金さえ貰えるなら。信じてないなってのは、結構最初のうちから思ってたし。兎に角ウチにはお金が無い。パパ居ないから収入無いしママ入院してて治療費掛かるんだから。嘘吐き家族って後ろ指刺されても、米買う金は必要だからね」皆、互いの目を見ず、重苦しい空気に場が沈む。七海の溜息がスタッフの間を連鎖していく。腰に手を当て天井を仰ぐ者、目を閉...■彼は誰れ時に魔と再逢035■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢034■

    平日の昼飯時に帯で放送される主婦層をターゲットとしたドラマさながら、存分に渦巻く無量塔と女子アナの愛憎劇。日は疾うに暮れ、晩御飯を支給されていない外注スタッフが恨みがましくプロデューサーを睨む。「未だ、御名刺お渡ししてなかったぁですね。アーシこぉゆう者でぇす宜しくお願いいたしますぅ」名も無き地方局アナが肩書を示して名乗りを挙げた。七海が突き付けられたのは、四隅が丸く整形され虹色に輝くピンクの越前和紙の上に文字が盛り上がっている、地方局の予算ではとても作成できない六本木のキャバ嬢レベルの名刺だった。分光性塗料に因る様々な色の変化を褒めて欲しい女子アナは、受け取ろうとする七海の手を逃れヒラヒラと角度を変えて見せる。「ふーん。アンタ雨宮成実(あまみやなるみ)って言うんだ?まあよくある名前かな」剣の達人が飛ぶ蠅の行く先...■彼は誰れ時に魔と再逢034■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢033■

    目からビームを発射しそうな剣幕の七海。「結局は面白可笑しい絵が撮れればウチらの事なんかどうなろうが知ったこっちゃないんだよ。お化けが出ますって顏まで晒しちゃったウチらはどうなるのよ。お化けは気の所為でした。アタシたちは、自意識過剰で被害妄想で悲劇のヒロイン気取ったミュンヒハウゼン症候群姉妹だって噂されるのよ」肩を掴む七海の指が勢い余って無量塔を吊り上げる。「いやいやそんな事はないですよ。ただね、企画ってのは生物なんです。流れで当初の思惑とは異なる結末を迎える事も儘あるんです演出通りには行かない事の方が多いんです。状況に因っては引っ繰り返ったりご破算になったりもするんです。でも。どっちに転んでも視聴率は取らなくてはならない取れる様に誘導しなくてはならない。それがテレビと言うものなんです」爪先立って緩和するも既にカ...■彼は誰れ時に魔と再逢033■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢032■

    「あのぉ。私(アーシ)、ちょっとついてけてないんですが。何がチャラでぇ、何が仕切り直し?なんでしょか」腰を中心にねっとり傾きながら地方局アナがキー局プロデューサーに絡み付く。2人がデキているのは一目瞭然。「黙って聴いてろ。まだ現状を把握し直してる状態だ。どうするかは其れから考える」八つ当たりの矛先が向かうのは、何時の世でも其の場で一番弱い者。目を吊り上げる現場最高責任者の苛立ちに怯え、コロコロ転がる赤ペンを見詰めて硬直する。「前回は、不可思議現象に怯える家々全てを解決し切ったとして高視聴率をマークした。勿論、調べてみたら欠陥建築による軋む音だったり、近隣住人の嫌がらせだったり、インチキ霊能者の自演詐欺だった、なんてのまであった。が兎に角、原因は様々でも不可思議現象は収まった。其れは全ての家で。だが番組放送後、不...■彼は誰れ時に魔と再逢032■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢031■

    居間のソファの周りには狩厄(かるやく)知諌誇戸(ちいさこべ)栖(すぐる)がファンデーションを拭って丸めたティッシュが無造作に転がっていた。その一つ一つをバーベキュー用のトングで拾い集めながら無量塔(むらた)は文句を垂れ続けた。「5年前は、キレる妹さんを宥めるお姉さんって絵だったのに。今はまるで真逆だ。妹キレキレのキレ捲りだし、お姉さんヨレヨレの遣られっぱ」ぶつくさ言いながら落ちてるティッシュを追って玄関に向かうプロデューサー。「抑々(そもそも)未来(みき)さんの事は、5年前も『ちゃん』付けで呼んでたんだし、今回も打ち合わせの時から『ちゃん』付けだったんだし、なんで今更本人以外から文句言われなきゃならんのさ」愚痴は留まることを知らない。と、正門に、タクシーが停まった。オープニングを仕切るアナウンサーの到着予定時間...■彼は誰れ時に魔と再逢031■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢030■

    高(たっか)いお塩を買っちゃいました。役立たずのゴーストバスターズから10万円の手付金を返して貰うのも忘れました何(なーん)の成果も挙げてないのに。そんで今度は似非(えせ)征伐士(せいばつし)の催眠術にも掛かっちゃって敵わないって逃げってたのに泥棒に追い銭で10万円払っちゃいましたおバカさんでございますわよ。すいませんね便秘を仕事の所為だと八つ当たりして退職はするわ、そのヒス引き摺って朝のゴミ捨てに協力してくれないってだけで同棲相手を追い出すわ。全部(ぜーんぶ)自分の我儘なのに一人じゃ家賃払いきれなくなって実家に出戻り一部屋(ひとへや)占拠しては姉妹に狭い思いをさせてる、最高に頼りにならなくて最低に迷惑掛けている長女でございますよ。悪うございましたねあーあっと」言葉は三杯食わされたのを認めて謝罪しているが、目は...■彼は誰れ時に魔と再逢030■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢029■

    「じゃあ本物だね。だって火事も嵐も本当だと思ったんでしょ?少なくとも、本物の催眠術師ではあったんだね」胡坐(あぐら)でチョコフレークを口に運ぶ、牢名主の様な七海(ななみ)。「嫌味は止めて。火事も嵐も見せたのは知諌誇戸(ちいさこべ)じゃなくて霊。本物だから、知諌誇戸を恐れた霊が騙術(まやかし)で追い払おうとしたんじゃない」未来は七海が抱えるチョコフレークの箱を奪い、逆さにして口に流し込んだ。「へー?騙術で追い返そうとされたから本物に違いないと?しっかりしてよお姉ちゃん。騙術で追い返されてんでしょ?だったら本物でも霊より弱いってことじゃん」獲られた箱を奪い返すが空だったので姉目掛けて投げ棄てる七海。「知諌誇戸でも倒せない程の大物の厄(やく)だったから、知諌誇戸は辞退したのよ。征伐士(せいばつし)だからって無敵じゃあ...■彼は誰れ時に魔と再逢029■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢028■

    「お姉ちゃん。どうしたの?」未来(みき)を追った七海(ななみ)が、裏庭で姉を発見。スライディングで駆け寄り、全身を弄り痕跡を捜す。「お姉ちゃんしっかりして。何かされたの?」呆けて答えられない未来を七海は揺さぶり続けた。加えられる力に抗うことなく右に左に傾く姉。「お姉ちゃん。こっちを見て!」七海の声に弾かれて未来はやっと我を取り戻し、弾かれた様に立ち上がって叫んだ。「大変。火事よ!」裸足で連れ出された未来は、裸足で家に駆け戻る。「七海119番に電話して。誰か。キッチンが火事です。消火器を」勝手口から髪振り乱して台所に雪崩れ込む。未来の叫び声にスタッフが消火器を引っ掴み集合。ホースを外しレバーを握り安全栓に指を掛ける。しかしノズルは火元を求めて彷徨った。誰も火の手を確認できなかったからだ。発火からまだ僅かな時間しか...■彼は誰れ時に魔と再逢028■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢027■

    「ふっざけんなし。アンタが其の石出してからじゃん何かがこっちに向かって来出したんわ」吹き上げる風に乗り泥水となった雨が未来を襲う。泥だらけで白目しか見えない顔の未来は知諌誇戸(ちいさこべ)の胸倉を掴み壁に押し付けた。「アンタが軽尺酷零(ちんちくりん)な恰好で家ん中歩き回ったから、幽霊が寄って来たんじゃないの?アンタが変的厘(へんてこりん)な呪文唱えたから幽霊がイラついたんじゃないの?アンタが妙竹林(みょうちくりん)な石翳すから幽霊がそんなの効かねえよって暴れてるんじゃないの?アンタ征伐師(せいばつし)なんでしょ?征伐(せいばつ)してよ」叫ぶ未来の口の中は吹き込む泥土で鉄漿宛らに真っ黒だった。「清祓司(せいばつし)も商売ですから端金(はしたがね)では命までは賭けられませんし、狩厄(かるやく)と言えど無敵ではなく万...■彼は誰れ時に魔と再逢027■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢026■

    何かが雑木を踏みしめ近付いてくる。知諌誇戸(ちいさこべ)は未来(みき)の手を取り裏庭へと走った。庭木に隠れ身を潜めて何かを待つ。何かの姿は見えないが足元には其の大きさを示す影があった。振り返ると陽が当たらず苔生した庭の隅が呼吸をするように隆起している。2人は木陰から飛び出し南側の庭に戻った。「私は、ひとつ嘘を吐きました」肩で息をしながら知諌誇戸は辺りを警戒した。「特殊な能力を2つ持っていると言いましたが、あれは嘘です。拍指で厄の所在を知る力は本当ですが」未来を背に庇いながら黒い石を四方に翳す。「退治する力が在るのは私ではなく此の石なんです」寄ってくる何かの気配は石に反応して一時だが遠退いた。「指を鳴らした反射音で対象物の材質や距離を測れる私は、人が見ると変哲のない物でも本質を聴き抜けられることが、あるんです」石...■彼は誰れ時に魔と再逢026■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢025■

    床を踏み鳴らす音が再び迫ってくる。知諌誇戸は懐から握り飯程の黒い石を取り出し、震える手で音のする方角に突き出した。が、踏み鳴らす音は更に激しくなり、体に痺れを感じる程の膨張波が未来を突き抜けた。「きゃあ」未来が吹き飛ばされて廊下を滑ってゆく。「あ、やばい。此れは本物だ。厄とか言ってる場合じゃないぞ。此れは本物の異生物だ」四つん這いで後退しながらも石だけは翳し続ける。しかし振動は治まらない。「なに?なんなのよ?其の、異星物って。宇宙人?最悪の者ってなによ。全部分かんないんですけど」室内に稲光が走り落雷の大音響が衝撃波となって未来を襲った。「異生物ってのは今暴れ回ってる幽霊のことです。国が命名したもので、私は無認可なので勝手に災厄(さいやく)の獣(もの)と呼んでるんですが」壁を這う放電からきな臭い煙が立ち昇る。床か...■彼は誰れ時に魔と再逢025■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢024■

    「私が弱視故(ゆえ)に手にした特殊な能力は2つ。1つは、今見せた反射音で獣(もの)存在を知る能力で此れは訓練の賜物です。が、もう1つの特殊能力は」拍指(かしわし)を打ちながら、ゆっくりキッチンへ向かう。「判りますか?この音の違いが。傾注(けいちゅう)!」反応したかの様に、キッチンの床に何かが落ちた。「何処に居るのか所在さえ掴めれば、厄(やく)を<rb清祓>(せいばつ)できる能力です」声を潜め、七海(ななみ)に囁く。「は?は?役ってなに?征伐?はぁ?」パニックの七海(ななみ)は「は」を連発。その間も知諌誇戸(ちいさこべ)はあらゆる方向に指(ゆび)を打ち、反射から厄を探索する。「傾注!間違いない。台所です。台所に向けた時だけほら音が籠る」知諌誇戸の見えない目がキッチンを睨む。「ビックリした。大声出すなし。何が居(お...■彼は誰れ時に魔と再逢024■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢023■

    「なんか嫌(や)だ。なんか解んないけど物凄く。俺も大概チャラい奴相手ににしてきたけど、なんなんだろ此の湧いてくる不快感?後になにも残る気がしない不毛感?キャラで煙(けむ)に巻いて、都合の良い解釈で誤魔化そうとしてるっぽさ?なんか知らんが兎に角嫌い」駄々子(だだこ)の様に喚き散らす無量塔(むらた)だが、見てる皆も思う事は一緒だった。子供の様な老婆に市販の塩を高値で買わされた後だけに、余計胡散臭く見えたのだろう。アウェイな空気が色濃く漂う。「お気遣いなくお構いなく。何時ものことで慣れてますから」先程まで恭(うやうや)しく翳していた扇で汗を飛ばし、懐からミッフィーの刺繍の入った今治フェイスタオルを出して額を拭った。「気にしてませんって言ったらウソになりますけど。はぁっはぁっはぁっ。あ此れ、笑い声ですさっき言いましたっ...■彼は誰れ時に魔と再逢023■

  • ■彼は誰れ時に魔と再逢022■

    「参ろうぞ。感(いざ)物の怪(もののけ)溜りし巣窟(そうくつ)へ」人差し指と親指を鳴らし拍子を取りながら。局の人間を押し退け機材を押し遣りずんずん進む。「居(お)ろう居(ろ)ろう、災い起こす厄共(やくども)が吹き溜まりて感候(いざそうろう)」リビングを抜け縁側を廻り食堂から台所に辿り着いた処でぴたりと止まった。「程(ほど)な穢(けが)れの厄を数見付けし。ひい、ふう、みい」キッチンの水回りを扇で叩きながら何かを数えていく。「よぉ、いつ、むぅ。あい判り申した。はぁっはぁっはぁっ。あ此れ、笑い声です」大きな振りで扇を閉じ、此れまでの芝居掛かった摺り足と打って変わった親父臭い足取りでどたどたと居間に戻る。「いやいやいや胡散臭いと思ったでしょ。良いんですよそう思ってる顏してる。顏は正直だ。こんな恰好であんな奇声あげてりゃ...■彼は誰れ時に魔と再逢022■

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