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2009/02/04

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  • 貴方と私の境界線09

    「さぁさぁ、いらっしゃい」 仕事を上がったあと、おかみさんに連れられて初めて社長宅にお邪魔した。 はなむらの社長は料亭だけじゃなく居酒屋なんかのチェーンも経営していて、かなりのやり手だと聞いていた。それはこのお屋敷を見て納得できる。とても高そうな外装に内装だった。 「和室なんだ...

  • 貴方と私の境界線08

    「…やっぱり。無理です」 ぽつり、とそんな言葉が飛び出した。 無理。無理だ。何回考えても無理すぎる。 「何が?」 「河野様とお付き合いするのは無理です。辛いです」 両手で顔を覆ってその言葉だけ搾り出すように言った。 河野様の顔は見れなかった。見たくなかった。 本当は彼のことが好き...

  • 貴方と私の境界線07

    その紙の存在を思い出したのは、その夜の仕事の終わりだった。 着替えの時に帯をほどきながらふとそういえば、昨晩の接待の終わりに吉原様から何か手渡されそれを帯の間に挟んだことを思い出したのだ。 「どなたか昨日小さな紙切れみませんでした?」 着替えの時に落としたのかと思ったのだが、更衣...

  • 貴方と私の境界線06

    翌朝、10時すぎに聞き慣れないアラームに起こされ、目を覚ますと河野様の部屋に居た。 二回ほど抱かれて、疲労困憊のそのまま泊まってしまったらしい。 朝出かける時に起こして欲しいと頼んだ覚えがあるのだけど、忘れられていたのかわざと無視したのか。 小さく金属がこすれる音がして、ふと...

  • 貴方と私の境界線05

    ソファに座って河野様はお水、私はカルーアミルクというコーヒーベースのアルコールを牛乳で割った飲み物を出してもらった。 最初にこの家に同じように仕事帰りに招待されたときコーヒーか紅茶を勧められて、夜はカフェイン系は飲まないようにしているというとこれを出された。甘くて美味しいし、ほろ...

  • 貴方と私の境界線04

    最初はそんな感じで始まった。 河野様は相変わらず2週間に一度くらいの頻度ではなむらを利用して下さったけれど、以前と違って私の仕事帰りの道でも何度かお会いした。 最初の日に携帯電話の番号を交換したとき以来、夜道は危ないからと可能な日は送って下さるのだ。 料亭の周りは店の人の目もある...

  • 貴方と私の境界線03

    最初はチップをくれる懐の暖かい顧客だと思って接していた。 「楠木さん、これプレゼントがあるんだけど」 「まぁ、いつもありがとうございます」 この料亭では客からチップを貰ったらそれは全て店に渡り、お礼のお菓子包みをいつも帰りに手渡すことになっている。 だからその時も同じように店に何...

  • 貴方と私の境界線02

    「こちら今朝釣り上げられた旬の鮎でございます。それから…」 給支中は話しかけられるまでは無駄口は叩かないけれど、料理の説明だけはしなければならない。話の腰を折らないように、慎重にタイミングを計って料理を出す。さすがにこの仕事について数年経っているので慣れたが、最初の頃は失敗ばかり...

  • 貴方と私の境界線01

    この人と付きあっていられるのはそう長くない。 だってこの人は私の手に余るようなすごい人だから。 大手企業で営業をしているらしい彼は、よくうちの店に来ていた。 高級老舗で有名なうちの懐石料理屋は界隈の社会人に接待場所として人気で、彼もそんなビジネスマンの中の一人だ。 私の両親...

  • しのやみ よわのつき07

    マナと初めて会ったのは、物心ついてすぐだった気がする。 3歳になった頃だったのだろうか。当時のことは霧がかかったように曖昧で、唯一覚えているのはマナを見て何とも言えない気持ちに襲われたことだ。 そう。 あれは襲われたというのが正しいほど、突然で強烈な気持ちだった。 『こんにちは』...

  • 愛とはかくも難しきことかな37

    宮内が貸してくれることになった一夜のお宿はなんと彼の実家だった。 元々徒歩10分くらいのところにアパートを借りて暮らしている彼はよく実家に顔を出すらしく、その夜も電話で一つ断りを入れる だけですんなりと寝床を用意してもらえた。 「これ、うちの生徒。こっちが俺の両親と姉」 軽...

  • 愛とはかくも難しきことかな36

    とりあえず連絡だけは腹を括ってすることにした。 少し冷めた頭で考えてみればお金も全部払ってもらっていたんだし、いくら酷い人達でも悪戯に逃げ出すだけではただ混乱させるだけだ。祖母の形見とかも御堂家にあるし、いつかは向き合わなければいけない日もくるかはしれないし。 でも話して分...

  • しのやみ よわのつき06

    マナは基本的に7時半過ぎに仕事場を出て8時前に家につく。外資系証券銀行のアナリストは朝が早く帰宅も遅いが、給料は文句なく良いし福利厚生などの手当も良い。 レイと過ごす時間は多少減るけれど、週末の残業は少ないので休日しっかり時間を取れる分普通の仕事よりも良いかとも思ったりしてい...

  • しのやみ よわのつき05

    深夜寝静まった寝室の扉が静かに開いた。 「マナ…、起きてる?」 密やかな声がかかるが、それに返事はなかった。 レイにとってはその方が都合が良い。音を立てないように忍び足で寝室に忍び込むと、ベッドの傍まで寄る。 「マナ……」 朝も昼も好きなだけ触れられるけれど、それは子供...

  • しのやみ よわのつき04

    ホテルを出たところでタクシーを拾い、急いで帰ってきたマナはリビングのソファで寝転がっているレイを見つけてほっと息をついた。 「おかえり」 「大丈夫?気分は?」 心配は杞憂だったのかレイは平然としておやつに置いておいたプリンを食べている。額を合わせても特に熱もなさそうだ。 「ご...

  • しのやみ よわのつき03

    10時過ぎ。 けだるげな空気の中、マナは身体を起こして、地面に散乱した自分の荷物の中から携帯を拾い上げた。最中に携帯の着信音を聞いたような、そんな気がしたのを思い出したのだ。 『頭痛い。風邪ひいたみたい。早く帰ってきて。マナがいないと寂しい』 15分ほど前に届いたメッセージ...

  • しのやみ よわのつき02

    朝の6時。 隣の部屋から聞こえてくる目覚まし時計の音で目を覚ます。 しばらく微睡んでいると、腹の虫をうるさくさせる香ばしい朝食の香りが漂ってくる。 頃合いを見計らって起き上がり、洗面所で顔を洗う。 さりげなく寝癖だけを確認したあと、わざと寝起きのように怠そうに足音を立...

  • しのやみ よわのつき01

    女の人生の中で一番大切な物ってなんだろう。 恋すること?美しくなること?幸せな結婚をすること? それとも最近の女性なら仕事で成功することと答えるだろうか? 私には自分だけの確固たる信念に基づいた幸せの概念がある。 そして、それは他人と似通っているようで相容れない、...

  • 愛とはかくも難しきことかな 閑話5

    渡辺明代が信じた男は、御堂ほどではないがそれなりの家柄で、御堂の家で育ったせいかあか抜けていた明代に目をつけた。しかし結婚する気などは元からなかった。 明代がその事に気がついた頃には腹に子供を授かっており、相手はすでに誰か他の女性と結婚をしていた。彼女は本当のことは言えず、結...

  • 愛とはかくも難しきことかな 閑話4

    時は遡ること3代前の御堂の当主、克巳の曾祖父の時代。 厳格で知られていた彼にも一つだけ誰にも知られてはいけない秘密があった。 それは女中の渡辺珠子と関係があったことだ。政略結婚の末に嫁いで来た嫁に文句はなかったが、若々しく純粋だった10歳年下の珠子に彼はどんどん嵌って行った...

  • 愛とはかくも難しきことかな35

    運ばれてきた料理をもくもくと食べている前で宮内は私が説明した話しを頭の中で整理しているのか顎に手を当てて考え込んでいる。 「えーと…、まず血が繋がっていると説明されて御堂の家に世話になるようになったと。それから妾腹だと兄弟に虐められるようになった。行く宛も特にないから多少は我慢...

  • 愛とはかくも難しきことかな 閑話3

    別に彼女が婚約者候補だとは思わないけれど、ただの一般人を父が引き取るとも思えずに、その夜遅く父の書斎に行った。 父の部屋と自分の部屋は増築した離れにある。といっても、自分の部屋には最低限の家具しかおいていない。さすがに20代も後半に差し掛かると自分のマンションも持っている。た...

  • 愛とはかくも難しきことかな34

    24時間営業のファミレスに入ると、宮内は何でも頼んでもいいぞと言った。一番お腹に溜まりそうなハンバーグセットとメロンソーダを頼むと、ぷっと笑われた。 「お子様メニューじゃねぇか」 「でも大人サイズだもん」 べー、と舌を出して応酬すると、彼は何故かツボに入ったのか肩を振るわせて笑っ...

  • 愛とはかくも難しきことかな 閑話2

    今に揃っていた僕たちに部屋に入ってきてから気がついたのか、戸口で彼女がびくっと震えた。 少し迷った後、強張った顔で居間に入ってくる。 双子は明らかに歓迎していない態度だし、優成に至っては興味がないとばかりに視線すら動かさない。 可哀想になって、とりあえず手招きをして空いていたソフ...

  • 愛とはかくも難しきことかな 閑話1

    能面のような表情をした、日本人形のような彼女が御堂の家に来たのは夏の初めだった。 「この子は渡辺萌ちゃん。お前達の妹になるから面倒見てやるんだぞ」 「よろしくお願い致します」 呆気に取られる四兄弟の前で、父は嬉しそうな顔で彼女を紹介した後、トメさんに彼女に家を案内するよう...

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