「ミナエさん」 アリスさんの決然とした声に息を飲んだ。心にかかっていた冷たい澱が洗い流されたような気持ちになった。 「お話くださってありがとうございます。 ミ…
魔法なし、架空生物なし、妙に現実風味の漂う異世界恋愛物語を、まったり更新中です。 ハッピーエンドと王道と下手なしゃれが大好きな管理人運営しておりますが、物語にうまく反映できているかは不明です。
幼い頃の病がもとで白髪になった王女エステリーゼは、政略結婚の駒として嫁いだ先で、一夜のうちに離縁を告げられた。 その一年半後、彼女に舞い込んだのは、国内最南端の島を治める伯爵に、書生として厄介にならないかという話だった…… 己の誇りと純情(!)をかけて、島を襲う大小の危機に立ち向かう王女と伯爵の物語「エリー・ブラントの誇りと純情」をまったり更新中です。
「ミナエさん」 アリスさんの決然とした声に息を飲んだ。心にかかっていた冷たい澱が洗い流されたような気持ちになった。 「お話くださってありがとうございます。 ミ…
翌日、領主会談二日目の昼下がり。アリスさんと私は王都の市街地を訪れていた。王都エルフラークの市街地は、デナリーさんが描写した通り喧噪と埃が舞う賑やかなところだ…
伯爵はスプーンに山盛りヨーグルトをすくうと、 「そうだな。 だが、奴らがドナーク島は我らのものだと主張し出すとしたら、 マキ人がミデルファラヤの血を引く民族だ…
それから夕刻まで、私とアリスさんは作業しながら様々なことを話した。アリスさんが話してくれた新聞社に入るまでの紆余曲折や、新聞社の人々と伯爵の面白エピソード、取…
アリスさんとの会話を書き連ねると余計に長くなるので、またこちらでまとめさせてもらった。できるだけ長尺にならないよう努めたつもりだが、重要な事柄も多く、そのよう…
アリスさんの話してくれたことは、以下のようなことだ。私との会話を挟むとあまりに長尺になるので、ある程度まとめさせてもらおう。 アリスさんがドナーク島の遺跡…
翌日、領主会談一日目の朝。 朝食後、カイラさんと上屋敷の執事、そして私に見送られ、伯爵はいよいよ領主会談の舞台である王宮へ登城していった。 伯爵を乗せた馬車が…
武器とは、これまた物騒なものが出土したものだ。 マキ人の『温厚で争いを好まない』というイメージとは、真逆のものが出てきたな。これは歴史を塗り替える発見だ。しか…
夕食後、伯爵と私は明日からの領主会談に備えて、最終の打ち合わせを行った。 三日間に渡る会議で取り上げられる議題について、諸侯がどのような主張をしてくるかを想定…
カシルダにネルドリの船が漂着した時、伯爵はすぐさま箝口令を敷いた。兵士たちはもちろんのこと、第一発見者の近所の住民から、騒ぎを聞きつけて集まってきた野次馬たち…
翌日の午前中、私たちを乗せた貨物船は無事王都に到着した。 わが国の王都エルフラーク。諸国からは『東洋の青玉』と例えられている。 但し『東洋の青玉』とご大層な称…
奇声は確かに人だかりから聞こえてきた。しかも、その人だかりの中心が発生源のように思われた。 私には奇声に聞こえたが、もしかすると意味のある言葉だったのかもしれ…
翌日の朝、伯爵と私はじい夫妻やマノン他お屋敷の使用人たち、早朝の鍛錬仲間、カシルダ軍の皆さん、ハックさん夫妻などなど、大勢の人に見送られてカシルダの港を後にし…
そうと決まると、私とじいは綿密な口裏合わせを行い始めた。 お館さまには私が舞踏会に出る意思があることを、決して当日まで知らせないこと。とはいうものの、私の衣装…
それからというもの、私は今まで以上に知識の吸収に努めた。 領主会談で議題に上がると思われる事象の知識から、国内と世界の情勢、果てはわが国の王族貴族の動向、王都…
甘味処『マハシュトラ』を出た時にも、陽の光はまだ暖かかった。 「夕飯までにはまだまだ時間がある。腹ごなしをしよう」 という伯爵のご提案で、遠回りをして屋敷に帰…
甘味処『マハシュトラ』はティータイムにはまだ早い時間にも関わらず、混み合っていた。 「いらっしゃい、ま、せ……!?」 私と伯爵が店のドアを開けると、店員の女の…
再度店を訪れた私と伯爵を見ると、ピエールさんは驚いた。当然だろう。 私が先程のかつらをもう一度つけさせて欲しいと頼むと、ピエールさんは希望通りにあの麗しいかつ…
ラキルル平原から市街地に抜けた時、時刻はまだ正午になっていなかった。 「予定より早く着いたな」「そうですか? 私は大体このくらいかと思っていましたが」「あなた…
そうしてしばらくの間、うきうきと足早に歩いていた伯爵だったが、 「そうそう、かつらの話をしていたら、忘れるところだった」 思い出したことがあったらしく、歩調を…
ご訪問くださりありがとうございます!こちらには、当社の更新状況と、掲載している話のもくじ等を載せています。ここを覗くと、当社の全てにアクセスできる…はず。 …
そして、ついに待ちに待ったこの日がやってきた。伯爵を甘味処に連行する日である。 この日をどれだけ待ち望んだことか。 伯爵とハックさんのお店『エイミス商店』を訪…
ネルドリ。あなたは、この言葉の意味をご存じだろうか。 『ネル』とは、ネルドリ語で『一つ、一人』を表わし、『ドリ』とは、ネルドリ語で『人間』を示す。 つまり『ネ…
カシルダ島に来てから、夜に出歩いたことはなかったので、久しぶりの夜歩きに、自分でも少し心が弾んでいるのがわかった。 歩きながら見上げるカシルダの夜空は、とても…
伯爵が私を連れて行ったのは、海に近い露店居酒屋とでも言うべきところだった。 店を囲う柵などもなく、砂浜のぎりぎりに幾つもの机と椅子が雑然と並び、仮設のようにも…
「最近、妙な噂を聞いたんです」 ハックさんは続けた。不思議なもので、噂とは大抵妙なものだ。 「ミデルファラヤで、難病の人々が奇跡的に助かることが、 とても多く…
三人の間を、なんとも形容できない空気が漂っていた。伯爵の手元にある広告(などと呼ぶのもおぞましい)が何を求めているのか、わからない者はこの場にいないようだ。 …
翌日の体力づくりでは、積極的に若い衆と体術の手合わせをした。そして、顔が間近にくるとすかさず、 「次に私を『姐さん』と呼べば、きさまの何かを再起不能にする」 …
伯爵の目は私ではなく、遥か遠くに向けられているように見えた。緑青色の瞳が思いを馳せているのは、ネルドリに誘拐された島民たちや、行方知れずのお父上のことではない…
食堂に入ると、テーブルでは二人分の夕食が湯気をあげて私たちを待ち構えていた。伯爵を出迎えた執事が気を利かせてくれたのだろう。 いつも思うが、この屋敷に仕える人…
あの出来事から、およそ二か月が過ぎて今に至る。 私に怪我を負わされたと訴えた者は、今も体力づくりの一員として、共に研鑽を積む仲間である。 あの翌日、体力づ…
今でこそ慣れてきたが、初期の私にとって『体力づくり』は、『筋肉痛づくり』と『あざづくり』であった。 悪戦苦闘する私に、伯爵は特別扱いすることなく接してくれた。…
濡れてより重くなった軍靴で砂の上を歩くのは、歩きづらいことこの上なかった。おまけに、先ほどまで全く感じなかった冬の寒さが、ずぶ濡れの衣服を伝って全身に染みて、…
翌日からカシルダ島での生活が始まった。 「とりあえず、一週間は光合成をするところから始めましょう。 どうにもこうにも、顔色がよろしくなさすぎる」 伯爵の仰せで…
生まれてからずっと、私は招かれざる存在だった。 エステリーゼ・マティルダ・ブラント・サラ・ジーナ・ブランアズール。 これが私の正式な名前なのだが、なぜこれほど…
世界でも有数の大国であるこの国……ブランアズール王国の王女に生まれたならば、大抵は同盟を結んでいる(もしくは、これから仲良くしたいと考えている)国に嫁がされる…
わが国で最も危険なはずの場所、カシルダ島。 国の最南端に位置し、南の海路の要所でもあるこの島は、地理的にもとても重要な場所だ。それゆえに、領主である伯爵を筆頭…
浜に打ち上げられていたのは、いつ沈没してもおかしくない有様のみすぼらしい小型船だった。 ここは島の北方、島内で最も美しいと言われている砂浜。夏は国中の海水浴客…
【あらすじ】政略結婚で嫁いだ先から、一夜で返品された王女エリー。次に彼女を待っていたのは国内最南端の島だった。 プロローグ招かれざる者 1 ごあん…
*このページは、次回何らかの話を更新する際には削除しますので、 こちらへのリンクはご遠慮くださいませ。 今後はこのような記事を設けて、 更新のお知らせをしたい…
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タナールブータ国王の暖かなおもてなしを受けて、王宮内に用意してくださった部屋に入ったときには、夜もすっかり更けていた。 私も夫も、一応国家元首なので、たとえ私…
アンウォーゼル捜査官からの書簡が届いたのは、彼に対する判決を聞いてから、一週間後のことだった。 夫はいつも、自分宛に届いた書簡でも全て私に見せてくれるのに…
『親愛なるわが友 センチュリア国王 フリストフォール・クロンシュタット陛下 ご結婚、そしてご即位おめでとう。 既に知っていることと思うが、本日私の裁判…
パレードのときにも、空は快晴のままだった。沿道では、たくさんの人たちがセンチュリア国旗の小旗を手にして、寒空の下私たちを待ってくれていた。 晴れているといって…
大公殿下という響きを耳にして、もう一度彼の様子を横目で伺ったのだけど、強張った顔のままだった…表向きは。胸の内では、さぞかしこの呼ばれ方をいやがってるだろう。…
翌朝。 予想どおり、寝不足で朝を迎えた私は、いつもより早くベッドから出ると、早速自分の下準備にかかった。 いつもより入念に顔を洗って、髪もいつもの2倍は丁寧に…
うららかな春、汗ばむ夏、実りの秋を過ぎて、季節は雪が積もり始める冬…年の瀬の月を迎えた。 明日はいよいよ婚礼の式典、そしてユートレクトの戴冠式。 私もユー…
『センチュリア女王 アレクセーリナ・タウリーズ陛下 ごきげんよう。私は日々眼が回るほど忙しく過ごしているわ。 あなたがいくらマカロニ頭でも、『世界機構…
まだ薄暗い明け方、何かの気配と、聞き慣れない微かな音で眼が覚めた。 枕から少し頭を上げてみると、視界の先にあったものに驚いて眼を見張った。 「おはよう…どうし…
お互いのことを考えているあいだ流れていた沈黙の空気は、真剣だったけどいやな張り詰め方は一切していなかった。 クラウス皇帝との会談で、何度もあった沈黙の時間みた…
私は一旦開けた扉を静かに閉めた。 室内よりは寒い廊下で、自分の部屋にいた違和感の主…まだセンチュリアにいるはずのない人物について、頭を落ち着かせてよく考えるこ…
「……」 なによ、これ。 そう低い声が出そうになったのを、なんとか最後の理性で抑えた。 正反対の二つの感情が、身体の中で渦を巻き始めたけど、まずは負の感情の方…
週明けの執務室では、たくさんの書類が私を待ちかねていた。 自分の席でコーヒーを一口飲んで、処理する書類の優先順位考えていると、二人の重臣が訪ねてきた。 「おは…
…私の演説が終わったときには歓声はなく、拍手もさほど大きくならなかった。思いを伝える演説ができなかったからだろう。 でも、弁解するわけではなく、それだけが原因…
そして今日。 とうとう『世界機構』がユートレクトに自主的な出頭を認める期間の、最終日になってしまった。 アンウォーゼル捜査官が御前会議の場であの通達を読み上げ…
「ひ…へ、陛下!?」部屋の中で荷造りをしていた侍女は、私の姿を見ると裏返った声を出した。 「リーリア! 久しぶりね、元気にしていた?」 キアラさんを叱りつけて…
あれから…クラウス皇帝の行幸最終日の演説から、十日が過ぎた。 クラウス皇帝が演説を終えた後、前庭はものすごい騒ぎになった。 会場の全員が席を立ち、拍手喝采…
『親愛なる友人であり妹へ 寒い日が続くが、元気にしているかな? 貴国に滞在中は非常に世話になった。御礼申し上げる。 あれから少し日が経ったが、体調はどうだ…
「それをみなに伝えるためには、 私がまだ皇太子だった頃の話から聞いてもらいたい。 わが国には、マレイ・アス氏の孫にあたる ライムントという皇子がいた。 私…
気がつけば、自分の席に着いていた。いつの間に席に戻ったのか、全く記憶がなかった。 演説が終わったとき、前庭にいる人たちがどんな反応を示していたのかも、まるで覚…
みんな不思議そうな顔をしている。私が何を言い出すのか、見当もつかないのだろう。 「皆さんは『世界機構』という 国際機関をご存知でしょうか? 学校の授業などで…
あれからおよそ一時間後。 センチュリアとローフェンディア、双方の臣下たちの、 『この演説内容、真剣にどうにかなりませんか?こんなこと公の場で暴露したら、『世界…
一度口にしてしまったら、もう後には引けなかった。 クラウス皇帝と二人きりで話せるのは、恐らくこれが最後になる。ここでクラウス皇帝からいいお返事を引き出せなかっ…
霊廟から戻ったときには、ちょうど身支度をしないといけない時間になっていた。呼鈴で侍女に来てもらうと、ヨーグルトと野菜ジュースを朝食に出してくれるよう頼んだ。昨…
深刻な交通渋滞が発生している顔面の交通整理…つまり、お化粧を丁寧に落としてお湯を浴びると、永世中立国の元首の皆さんへ手紙をしたためた。 連日の寝不足のせいか、…
クラウス皇帝とお別れして私室に向かっていると、廊下が交差するところで、とある人物と鉢合わせた。 「あら…お子さまはもう寝ているはずの時間よ」「お疲れさまです、…
昨年の『世界会議』で、東方地域の国々の会議が行われているとき、ペトロルチカの代表(実は影武者だった)が、議論の途中で興奮状態になってしまった。 困った東方地域…
特例法案が前文をつけた形でできあがった頃には、時計の針は日を大幅にまたいでいた。 「皆さま、ご協力まことにありがとうございました。 おかげさまでよい法案ができ…
男性お二人が戻られるとすぐ、椅子とテーブルを持った侍従たちが入室してきた。どうしてだろうとほんの少し考えたのだけど、すぐにわかった。いつの間にか非公式会議に加…
キアラさんの言ったことがすぐには信じられなかった。 フェアラスルインにそんな意味があったなんて。 その言葉は私の遺誡にもあった。一字一句はっきりとは覚えていな…
『世界機構』が不文律で運用している暗黙の規約がある。 すべての国家元首は告発・拘束しない、というもの。 逆に言えば、国家元首でさえあれば、『世界機構』の告発と…
席を立って外に出ると、控えている侍従に、紅茶のおかわりと気軽につまめそうな軽食めいたものを頼んだ。 気軽につまめそうな軽食めいたものってなに、って…
クラウス皇帝がユートレクトを…? そんなわけはない。クラウス皇帝に命じられた人たちが、ユートレクトの身柄を確保したってことよね。 ユートレクトを連れ去ったのは…
私はなんとも言えない気持ちを慰めるために、まだ残していたケーキを口にした。ケーキはあと3分の1ほど残っている。いちごもまだ残してあるし、バスケットの中にもまだ…
いきなり真正面から切り込まれるとは思わなかったので、心臓が止まりそうなほど驚いた。だけど、回りくどく聞かれるよりこういう方がいい。 「はい」「あと2週間でフリ…
晩餐会がお開きになったときローフェンディア側から、非公式会談の開始を一時間ほど後にずらしてほしいと申し出があったので、一旦執務室に戻ることにした。 きっと、こ…
晩餐会の会場となる『黒い森の大広間』は、センチュリア王宮で一番大きな広間だけれど、私の戴冠式が行われて以来ずっと使われていなかった。この広間を使わなくてはいけ…
オーリカルクの鉱山と加工所の見学から戻ると、晩餐会が始まるまで少し時間ができた。 侍従侍女たちが、クラウス皇帝をはじめローフェンディア御一行さまを宿泊場所へ案…
昼食会場は『雪うさぎの間』というかわいらしい名前の部屋だった。 名前には癒されるのだけど、部屋の中は白を基調にした格調高いしつらえになっていて、床を汚したり傷…
「クラウス、お久しぶりです。道中お疲れさまでした。 お元気でいらっしゃいますか?」 センチュリアの地に足を下ろしたクラウス皇帝に、昨年『世界会議』でお会いした…
昨日からちらちら降っていた雪は、明け方にやんだようだった。空は冬の晴天の空の見本のみたいに、青く高く澄み渡っていた。空気がいつもより澄んでいるような気がして、…
今日はどうにか次の日が来る前に、ベッドに入ることができた。 タンザ国王をお見送りしてから、ララメル女王に化粧水をおすそ分けしに行ったのだけど、外出されてい…
時は進んで今は夕刻。 私はタンザ国王をおもてなしするため、昨夜ララメル女王と晩餐を共にした部屋にいた。まもなくタンザ国王もおみえになるだろう。 あれからずっと…
今日の御前会議では、主に明日のクラウス皇帝の行幸について最終確認を行うことになっている。他にも重要なことはたくさんあるけど、まずはこれが最重要事項だった。 他…
キアラさんが執務室を出ていくとすぐ、各省の官吏たちが決裁書類や郵便物、大小の相談事を持ってやってきた。その対応や自分の執務に追われているうちに、午前中の時間は…
「アレクセーリナ女王!」 翌日の朝、執務室に轟いた第一声はあの人のものだった。 給湯室でコーヒーを淹れようとしていた私は、頭だけ給湯室から出すと予想通りの姿を…
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「ミナエさん」 アリスさんの決然とした声に息を飲んだ。心にかかっていた冷たい澱が洗い流されたような気持ちになった。 「お話くださってありがとうございます。 ミ…
翌日、領主会談二日目の昼下がり。アリスさんと私は王都の市街地を訪れていた。王都エルフラークの市街地は、デナリーさんが描写した通り喧噪と埃が舞う賑やかなところだ…
伯爵はスプーンに山盛りヨーグルトをすくうと、 「そうだな。 だが、奴らがドナーク島は我らのものだと主張し出すとしたら、 マキ人がミデルファラヤの血を引く民族だ…
それから夕刻まで、私とアリスさんは作業しながら様々なことを話した。アリスさんが話してくれた新聞社に入るまでの紆余曲折や、新聞社の人々と伯爵の面白エピソード、取…
アリスさんとの会話を書き連ねると余計に長くなるので、またこちらでまとめさせてもらった。できるだけ長尺にならないよう努めたつもりだが、重要な事柄も多く、そのよう…
アリスさんの話してくれたことは、以下のようなことだ。私との会話を挟むとあまりに長尺になるので、ある程度まとめさせてもらおう。 アリスさんがドナーク島の遺跡…
翌日、領主会談一日目の朝。 朝食後、カイラさんと上屋敷の執事、そして私に見送られ、伯爵はいよいよ領主会談の舞台である王宮へ登城していった。 伯爵を乗せた馬車が…
武器とは、これまた物騒なものが出土したものだ。 マキ人の『温厚で争いを好まない』というイメージとは、真逆のものが出てきたな。これは歴史を塗り替える発見だ。しか…
夕食後、伯爵と私は明日からの領主会談に備えて、最終の打ち合わせを行った。 三日間に渡る会議で取り上げられる議題について、諸侯がどのような主張をしてくるかを想定…
カシルダにネルドリの船が漂着した時、伯爵はすぐさま箝口令を敷いた。兵士たちはもちろんのこと、第一発見者の近所の住民から、騒ぎを聞きつけて集まってきた野次馬たち…
翌日の午前中、私たちを乗せた貨物船は無事王都に到着した。 わが国の王都エルフラーク。諸国からは『東洋の青玉』と例えられている。 但し『東洋の青玉』とご大層な称…
奇声は確かに人だかりから聞こえてきた。しかも、その人だかりの中心が発生源のように思われた。 私には奇声に聞こえたが、もしかすると意味のある言葉だったのかもしれ…
翌日の朝、伯爵と私はじい夫妻やマノン他お屋敷の使用人たち、早朝の鍛錬仲間、カシルダ軍の皆さん、ハックさん夫妻などなど、大勢の人に見送られてカシルダの港を後にし…
そうと決まると、私とじいは綿密な口裏合わせを行い始めた。 お館さまには私が舞踏会に出る意思があることを、決して当日まで知らせないこと。とはいうものの、私の衣装…
それからというもの、私は今まで以上に知識の吸収に努めた。 領主会談で議題に上がると思われる事象の知識から、国内と世界の情勢、果てはわが国の王族貴族の動向、王都…
甘味処『マハシュトラ』を出た時にも、陽の光はまだ暖かかった。 「夕飯までにはまだまだ時間がある。腹ごなしをしよう」 という伯爵のご提案で、遠回りをして屋敷に帰…
甘味処『マハシュトラ』はティータイムにはまだ早い時間にも関わらず、混み合っていた。 「いらっしゃい、ま、せ……!?」 私と伯爵が店のドアを開けると、店員の女の…
再度店を訪れた私と伯爵を見ると、ピエールさんは驚いた。当然だろう。 私が先程のかつらをもう一度つけさせて欲しいと頼むと、ピエールさんは希望通りにあの麗しいかつ…
ラキルル平原から市街地に抜けた時、時刻はまだ正午になっていなかった。 「予定より早く着いたな」「そうですか? 私は大体このくらいかと思っていましたが」「あなた…
そうしてしばらくの間、うきうきと足早に歩いていた伯爵だったが、 「そうそう、かつらの話をしていたら、忘れるところだった」 思い出したことがあったらしく、歩調を…
再度店を訪れた私と伯爵を見ると、ピエールさんは驚いた。当然だろう。 私が先程のかつらをもう一度つけさせて欲しいと頼むと、ピエールさんは希望通りにあの麗しいかつ…
ラキルル平原から市街地に抜けた時、時刻はまだ正午になっていなかった。 「予定より早く着いたな」「そうですか? 私は大体このくらいかと思っていましたが」「あなた…
そうしてしばらくの間、うきうきと足早に歩いていた伯爵だったが、 「そうそう、かつらの話をしていたら、忘れるところだった」 思い出したことがあったらしく、歩調を…
ご訪問くださりありがとうございます!こちらには、当社の更新状況と、掲載している話のもくじ等を載せています。ここを覗くと、当社の全てにアクセスできる…はず。 …
そして、ついに待ちに待ったこの日がやってきた。伯爵を甘味処に連行する日である。 この日をどれだけ待ち望んだことか。 伯爵とハックさんのお店『エイミス商店』を訪…