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  • オヤジのあくび590

    梓澤要「方丈の孤月」を読む 前半は、煩わしいとさえ感じる中世貴族社会の人間模様の中で、若い鴨長明が要領よく立ち回れない様子が描かれている。由緒ある下鴨神社の御曹司としてのブライドや両親を亡くした哀しみが、主人公のコンプレックスの背景にあるのかもしれない。 「方丈記」の作者という私たちが知っている長明像を超えて、歌人、琵琶奏者としても活躍した様子を語っていく。この小説の中では和歌や琵琶を通して自分を認めさせたい長明の自我を描いている。ところが屈折した心情から湧き出る衝動が長明を突き動かし、結果的に天涯孤独の身となっていく。 もう一つ伝説として広まっているのが「平家物語」の作者は「実は鴨長明ではな…

  • オヤジのあくび 589

    ピーノ・アプリーレ「愚か者ほど出世する」 本書は動物行動学者のローレンツ教授にインタビューした経験から始まる。「人間の知恵は必要があれば、いつでも解決の出口を見つけ出す。しかし、ひとたび解決法を見つけてしまうともう知能を使う必要はなくなる。ただまねだけしていればいいわけだ。反復は創意工夫とは違う。そこで知的資質は衰えてしまう。刺激がなくなるからだ。」さて、生成AIという解決法を手にした私たちはこの先どのように知能を使いこなせばよいのだろうか? 大げさに言うなら本書の問題提起は「人類はこの先も知的な進化を継続できる」「人類はとうの昔に知的な進化を止めて、この先はますます愚かになっていく」のどちら…

  • オヤジのあくび588

    山崎慶子「グランマの本棚から」を読む 読み聞かせの予定表が送られてきて、第一回目は2年生。「そうか、低学年なら絵がある本がいいかなぁ。紙芝居にチャレンジしてみるのもいいかもしれない。」などと、例によって取らぬ狸の皮算用を始めてしまう。 読書について、自分自身が子ども〜学校教員時代を通して一貫して上手くできないジレンマを抱えていたのが、読書感想文という代物。屁理屈少年のボクは感想らしい感想を書けなかったし、教員になってからも夏休みの宿題とかに平気な顔して出しておきながら、満足な事前指導事後指導が出来なかった。教え子の皆様ごめんなさい。そもそも指定図書の感想文を「やらせ」ていること自体が未だにどこ…

  • オヤジのあくび587

    中島義道「カイン」を読む タイトルの「カイン」は、旧約聖書で弟アベルを殺した兄であります。主によって殺されぬ「しるし」が付けられたカインは、苦しみ悩み続ける日々を送る。本書では青年Tに寄り添いながら、彼が立ち向かい排除していくべき相手は何なのか? を説いていく。 60代も半ばを過ぎてから、この本を読んでいる。もしボクが青年期にこの本と出会っていたらどうだったのか? そんなifが頭を掠めます。 親を捨てて期待に背くことを語るのは、著者の半生を重ねているのだろう。額面通りに受け止めると逃げ場のない袋小路へ追い込まれることになるが、それこそがおそらくは本書のねらいと思われる。 結局、この本は、世間様…

  • オヤジのあくび586

    野口五郎「芸能人はなぜ老けない」を読む 本書の最初に役職と威厳の話が出てくる。威厳を保とうとすることは自ら進んで老けようとすることだと、野口五郎さんは言うのだ。エンターテイナーに役職はないし威厳も必要ない。なるほど郷ひろみさんの若々しさには驚かされるばかりだけど、納得できるなぁ。現在の自分の姿がどう見えているのか? 定期的に写真を撮ってもらうことを勧めています。その話に篠山紀信さんとの撮影エピソードが出てきて、シャッターを切るタイミングが予測できないとか、撮影場所が墓地や精神病院の裏庭だったとか語られています。自分の知らない自分が自然に出たと野口さんは語っています。 精神年齢を一定の年齢で止め…

  • オヤジのあくび585

    伊東乾「笑う脳の秘密!」を読む 初めに音楽の話が出て、呼吸をしていない表現=うたっていない音の課題を指摘している。テンパる→呼吸が浅くなる→表現が不自由になっていく感覚は、ボクも日頃合唱や琵琶歌で音を出しているので身につまされてしまう、 自分の話。「最近若い頃に比べて暗譜が苦手になってきたなぁ」と感じるようになった。耳の暗譜、手(身体)の暗譜、目の暗譜を筆者は説いている。そして目の記憶はイメージの記憶だと言う。自分が通った道の風景を細かく思い出せるように記憶をトレーニングできるのだ。耳の暗譜・手の暗譜については動物的な快感と結びつく。音楽担当の教師をしていた頃「この曲の好きなところはどこ?」と…

  • オヤジのあくび584

    相田一人「父 相田みつを」を読む。 頸椎症のせいか? 肩や首周りが痛い。本の初めに筆者が「姿勢をよくしろ!」と父から言われた話が出てくるが、身に染みてその通りだと思う。姿勢の話に限らず、相田みつをさんが書かれることはいちいちごもっともであります。けれどそれらの言葉がどのような状況から発せられたのか? その一端がいっしょに生活していた息子から語られる。 相田みつをは、書家・詩人として認められている人であります。(名刺に書家と印刷したことはない)定職に就かず、ろうけつ染めで生計を維持していて五十代前半まで極めて貧しい生活を送っていたことがわかります。8畳間借りの生活でありながら、別の場所に25畳の…

  • オヤジのあくび583

    伊藤悟「ひょっこりひょうたん島 熱中ノート」を読む 著者は「ひょっこりひょうたん島」を記録し尽くした少年です。ひょうたん島の放送回数は1224回。今ならスマホで動画撮影すれば済むようなことを、ひたすらセリフや字幕、背景、人形の動きをノートに書き写していたというから驚く。やがてテープレコーダー(オープンリール)を買ってもらえたので、ノートには絵だけを描くように変わった。 すごく行動的な少年であり、何と手紙を書いて、川崎市にあるひとみ座の稽古場、さらにはNHKのスタジオを訪問する。 ご存知の方も多いでしょうが、1990年ひょうたん島のリメイク再放映計画が立ち上がる。筆者のノートが重要な資料になった…

  • オヤジのあくび582

    桑田佳祐「ポップス歌手の耐えられない軽さ」を読む 桑田佳祐さんは茅ヶ崎で育ち、ボクは隣町の辻堂で育った。時代も重なっているので取り上げている音楽体験や、地域の雰囲気をボクも味わっている。だからこそかなり共感して読み進めることができる。 この本は週刊文春に連載されたエッセイが収録されているのですが、コロナ禍でライブコンサートを始めとする音楽活動が制限され、自宅に籠る日々に書かれています。コンサートで発散しているエネルギーがこの文章に投影されているかは、よくわからないのですが・・・。 読んでいて嬉しいのは、桑田佳祐と同世代の感覚。山下達郎が「ゆらぎ」を気にしていたり、桑田佳祐のマイクが1947製の…

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