振り返った医者は無表情で言った。「あれから発作は起きてない?」 その真意がどこにあるのかわからなくて、俺はじっとその瞳の奥を見つめる。けれど、そこには悪意も善意も読みとれなくて、俺は事実だけを伝える意味でゆっくりと首を縦にふった。「そう……」 先生は一瞬だけ医者らしいやさしい笑みを浮かべた。そして、その微笑を喜色に変えるように満面に広げ「じゃあ」と鋭い刃を振りおろすように「消えてくれないか?」とこ...
「いい加減にしないと、マジで追いだすぞ」 凄みを増した低い声が、少しの沈黙のあとにそう言った。「認めるんだな?」「だから、なにを!?」「おまえが誰と遊ぼうが、何をしようが、俺には関係ない。財界のプリンスでも山の手のホストでも勝手にやってくれ。けどな」 そこで医者の声がワントーン低くなる。そして、また沈黙がやってきて、それから「香華を泣かせたら許さない」と脅すようにつづけた。 びくりと背中が震える。...
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