近代道徳哲学としての経済学という観点から、身近に起こるさまざまを論じます。
さて、このブログの読者の方たちは気づいただろうか。私は多少ずるい形でこの文章を続けていることを。私は売春禁止法について、その悪影響を述べてはいるけれど、私自身の立場をそこでは表明していないことを。これは、どちらに転がっても非難を受ける話題であり、実際のところ、法的に禁止すべきか、禁止されないべきか、態度をうやむやにしたいところ。でも、それはずるい。(実は禁酒法についても態度を表明してはいないが、こちらはべつにずるくない。というのは現在の日本の法律におおかた賛成であり、それを特に表明する必要もないだろうから。)法律を経済学はどう扱うか、それは、法律が社会にどのような影響を与えるかであり、法律の有効性である。これははじめに書いたとおり。だから、たとえば売春禁止法について。売春がない社会のほうが望ましい、だから売春は...売春禁止を有効に
経済学的に有効と考えられる法律の例を挙げよう。それは、たとえば「副業の禁止」という社内規定を設けることを法的に禁止すること。従業員の生活を向上させるものは、自分の雇い主である企業に依存しなくても生きられるような立場。最低賃金法も残業規定も労働者の待遇改善には大きな意味を成さない。かといってマルクス主義的な労働組合も成功していない。ならばどんな法律なら意味があるのか。それは、雇用される側の選択肢を増やし、自由度を増すような法律となる。要は、被雇用者が自分にとって有利なものを選べる、そうすればいい。現在の雇用を取り巻く制度や規定には、被雇用者の自由な選択を奪い、企業に逆らうことを難しくするものが多くある。年金制度、退職金制度しかり、副業の禁止などの社内規定しかり。これらは、被雇用者が雇われている企業の意向に反するこ...売春と禁酒と経済学5
では、という疑問が当然浮かぶ。では、経済学者は法律をどう考えているのか。多くの経済学者は自由主義的な傾向が強く、法律はできるだけ作らない、という立場をとっている。法は一人一人の社会構成員の自由で活発な活動を制限し、政治腐敗の機会を創り、社会全体として不利益をもたらす、これが大雑把な自由主義経済学者たちの考え。ちょっと大雑把過ぎるけど。公立学校制度に反対し、教育はそれを受けるもの自身の出資ですべてまかなうべきとする経済学者、医師免許制度に反対する経済学者、などなど。これらの主張は一種の妥当性を持ったものであり、その場の思いつきや他人をやりこめるため、なんて感覚で述べられたものではない。肩書きで意見の良し悪しを判断するのは間違いだけれど、これらの経済学者が世界的な一流大学の教授、などといった高い社会的な地位を持ち、...売春と禁酒と経済学4
そう、経済学者にとって、法律の目的の高尚さは中心的課題ではない。気にするのはその影響と結果のほう。その法律ができれば、あるいはとある政策がとられれば、結果として社会はどう動くのか、それが経済学者の考え方。それに、社会構成員が法律をすべて守ると思うのは間違い。立派な精神を謳った法律も、ときには悪しき副作用をもたらす。その例などいくらでも挙げることができる。法律で残業費の支払い規定を設けても、それを守らない企業はいくらでも存在する。いわゆる「サービス残業」から、名ばかりの管理職を作って残業費を支払わない、という抜け道を作るものまで。(だからといって私は残業費支払い規定を撤廃すべき、とは思わない。その理由は後で述べる。)最低賃金法は一方では安い給料でも仕方なく働く、という人から収入源を奪い、その一方で出来高契約や内職...売春と禁酒と経済学3
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