なきまね

新郎新婦から席が遠いのをいいことに、小坂は口をあけて寝ていた。まだ仲人の退屈な挨拶も、三つの袋がどうのこうのというお決まりの話も済んでいないのに。隣に座ってい…

黒郷第四小学校⑦

ひまわりってもんは一週間や二週間で色が激変したり、スイートピーに変わったりするわけはない。だけど、理科の時間になるとしょっちゅう植物の観察をやらされる。必要ね…

黒郷第四小学校⑥

屋上に流れる暖かい風は、すぐ下の音楽室からまだあどけなさの残る歌声を運んだ。校内合唱コンクールの日も近いから、熱心なクラスは昼休みや放課後に練習をする。ほとん…

黒郷第四小学校⑤

きゅるるるぅー。きゅる。きゅー。翔子ちゃんは慌ててお腹を押さえ、空腹のシグナルが周りに聞かれていないか心配した。さっと見回すと、クラスの皆は、わざとらしく目を…

黒郷第四小学校④

ジャンケンをした。誠一がグー。僕がチョキ。「じゃあ、お先に失礼。」誠一が先に入った。僕は傍に腰掛けた。他の学校がどういった造りになっているかは知らないが、うち…

黒郷第四小学校③

葉子先生の足の具合を心配した生徒が、保健室に群がった。保健の久慈先生は、ませがきどもから葉子宛の励ましのお便りを受け取り、教室に戻るように諭した。言うことを聞…

黒郷第四小学校②

体育のメニューは葉子先生が出勤前に見たスポーツ新聞の一面記事で決まる。阪神タイガースが勝てば、体育は野球。千代大海が優勝すれば、相撲。ワールドカップの期間中は…

黒郷第四小学校①

僕は文京区の黒郷第四小学校に通っている。校舎の外観は他の小学校と大差ない。無駄に広い校庭が特徴といえる。その広い校庭のせいで、校門と逆方向に住んでいる僕を含め…

大家族

うちの国では登校拒否が問題になっているらしい。学校が嫌なら家から出なければいい。それはいたって単純なことだと思う。何もそんなことで悩まなくても良いのに。ぼく…

怪談もどき

旅行好きのA子は、毎月のように同僚のB子と旅行にいっていました。国内の有名な観光地には何度も足を運んでいたので、こんどはあまり聞かない所へ行こうと二人で相談し…