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酔生夢死浪人日記 https://blog.goo.ne.jp/ck1956/

 映画、音楽、書物、スポーツ、政治に至るまで、日々思いついたことを記していきます。

ck1956
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2005/08/24

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  • 「歩道橋の魔術師」~過去と現在をマジカルに紡ぐ都市小説

    「歩道橋の魔術師」(呉明益著、天野健太郎訳/河出文庫)を読了した。呉の作品を紹介するのは「自転車泥棒」(2024年5月7日)以来、2度目である。「自転車泥棒」時空を行きつ戻りつ虚実の狭間を彷徨う実験小説で、主人公は1992年に解体された台北にある住居兼商業施設「中華商場」生まれという設定だった。「歩道橋の魔術師」の舞台も中華商場である。〝台湾人は親日的〟という先入観通り、文化的結びつきの強さは本作にも描かれている。アジア一の先進国は日本という思い込みはあるが、台湾は日本を追い抜いている。1人当たりのGDPは逆転されているし、同性婚も合法化された。トランスジェンダーであるオードリー・タンは<人々が国家の主人>のビジョンを掲げ、情報戦略のトップとして中国と対峙してきた。質の劣る中国製品の流入、通信の自由制限な...「歩道橋の魔術師」~過去と現在をマジカルに紡ぐ都市小説

  • 「エミリア・ペレス」~〝フェイク〟から〝リアル〟へ

    「贋作者からの問い“本物”をめぐる思索」(2025年、NHK・BS)を見た。世界を震撼させた〝贋作師〟ヴォルフガング・ベルトラッキ(チューリッヒ近郊在住)を取材班が訪ねる。<日本人が購入した3作はベルトラッキによる贋作か?>と海外で報じられたことがきっかけだった。審美眼に欠ける俺が論じるには無理があるが、ドイツ表現主義の画家カンペンドンクが1919年に描いたとされる「少女と白鳥」に絞って記したい。英クリスティーズに出品された時点で〝リアル〟と認定された本作を、落札した画商を通じ高知県立美術館が購入した。ベルトラッキは自分が1990年前後に描いたことを認め、経緯を語る。<所在不明で大きさもわからないし、写真もない。だから、カンペンドンクが描いた場所にも行き、用具も当時のものを使った>と……。10代前半にピカ...「エミリア・ペレス」~〝フェイク〟から〝リアル〟へ

  • 「殺人出産」~性と死を超越する村田沙耶香

    WOWOWで「ハッシュ!」(2001年、橋口亮輔監督)を見た。「恋人たち」(15年)は格差と貧困、LGBT、東京五輪、覚醒剤といった様々なテーマでスパイスしながら、<人と人とのささやかな絆>を追求したリアルな作品だったが、デビュー作「二十才の微熱」(1993年)公開時、ゲイであることを公表した橋口は「ハッシュ!」でもゲイカップルを主役に据え、新しい愛と家族の形を提示している。同棲している会社員の勝裕(田辺誠一)とペットショップ店員の直也(高橋和也)の間に歯科技工士の朝子(片岡礼子)が割り込んでくる。勝裕がゲイであることは承知しながら、「あなたは父親の目をしている」と精子提供を求めるのだ。勝裕と直也の愛の巣に、朝子、勝裕の兄夫婦と姪、直也の母が鉢合わせするシーンが本作のハイライトだ。家族とは、愛とは、そして...「殺人出産」~性と死を超越する村田沙耶香

  • 「教皇選挙」~多様性の極致を見据えた衝撃のコンクラーベ

    俺が世界最高の作家と位置付けるバルガス・リョサが亡くなった。享年89である。ブログでは7作紹介したが、始める前に数作読んでいる。70歳を超えてもエネルギッシュに重厚な作品を発表し続けた巨匠の死を惜しみたい。遠からず30代の頃に読んだ「緑の家」を再読し、紹介する予定だ。その時にリョサへの思いも併せて綴りたい。新宿で先日、「教皇選挙」(2025年、エドワード・ベルガ-監督/米英合作)を見た。アカデミー賞8部門でノミネートされたものの受賞は脚色賞のみで、作品賞など主要5部門でオスカーに輝いた「ANORAアノーラ」には完敗の形だった。だが、俺に投票権があったなら、「教皇選挙」に投じただろう。本作は緊張感が途切れない超弩級のミステリーで、最終盤には強烈などんでん返しが連発する。前教皇の突然の死で、新教皇を選出するコ...「教皇選挙」~多様性の極致を見据えた衝撃のコンクラーベ

  • 「脱走と追跡のサンバ」~筒井康隆の千里眼に驚嘆

    NHK・BSで「トルクメニスタン未知の独裁国家を行く」を見た。ソ連崩壊後に独立したトルクメニスタンは人口700万でその90%はイスラム教徒だ。世界で最も自由が抑圧された国に、4人のフランス人ジャーナリストがツアー客を装って北朝鮮を彷彿させる世襲の独裁国家に入国し、監視者の目を盗んで隠し撮りする。無駄遣いとしか言いようがない大理石建造物が立ち並ぶ首都アシガバートは、ホテルもレストランも人影がまばらのゴーストタウンだ。国営テレビが流す父子の前、現大統領は滑稽なほどスポーツマン、ミュージシャンであることをアピールしつつ、独裁者の恐ろしさを国民に植え付ける。ジャーナリストたちは社会に潜む政権協力者と偶然出会った。トルコには貧困や弾圧を逃れたトルクメニスタン人が100万以上暮らしているという。フランスに亡命した反体...「脱走と追跡のサンバ」~筒井康隆の千里眼に驚嘆

  • 「ミッキー17」~普遍性を求めて情念は薄味に?

    映画館では見逃していたが、WOWOWで先日オンエアされた「夜明けのすべて」(2024年、三宅唱監督/瀬尾まいこ原作)に感銘を覚えた。スクリーンで接した昨年の邦画ベストワンに「あんのこと」を挙げていたが、「夜明けのすべて」も匹敵する作品だった。W主人公の美紗(上白石萌音)は月経前症候群(PMS)の薬の副作用で眠くなったり怒りっぽくなったりで、周囲とうまくやっていけない。山添(松村北斗)はパニック障害で生きる希望をなくしていた。2人は転職して栗田科学の社員になり、社長(光石研)が織り成す温かい空気の中で明るくなる。ぎくしゃくしていたが、チームを組んだことで互いを思いやるようになった。移動プラネタリウムの企画で、山添がシナリオを書き、美紗がイベント進行を務める。ささやかな日常の中で2人の言動に変化が訪れた。生き...「ミッキー17」~普遍性を求めて情念は薄味に?

  • 「木曜日だった男」~アナーキーな夢がロンドンを翔ける

    先月30日、「令和の百姓一揆」東京会場(青山公園)に足を運んだ。3200人と盛況で、フランスで昨年行われたトラクターデモに着想を得て、30台が東京をデモ行進するというラディカルでアナーキーな試みに胸が躍った。農政と環境は切り離せず、食料自給率向上こそ喫緊の課題だが、現状を放置すれば日本の農業は崩壊してしまう。水田農家の時給は10円で、主催者は<所得補償の拡充>を掲げていた。俺の前で、作業着姿の男性2人組が叫んでいた。国会議員たちへの罵倒で、「おまえら何もしてこなかったじゃないか」という内容である。草の根から生まれた運動なのに、無策だった議員連中が連帯の挨拶をするという滑稽な構図に呆れていたので、集会が終わるとデモ隊を見送り、帰途に就いた。今回の試みをきっかけに、様々な動きと連動して裾野は広がっていくと思う...「木曜日だった男」~アナーキーな夢がロンドンを翔ける

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