【通りすがりの怪談】怪其之六十七 ~瞼~
怪談 ~瞼~ 目を閉じると瞼の裏に映る人影。常にではないが、それは現れる。そしてそれは笑いかける、俺に向けて。最初は気のせいかと思った。疲れているだけだと。しかし、その影は日に日に濃くなり、笑みは嘲笑の色を帯び始めた。まるで、俺の心の奥底にある弱さを見透かしているかのように。ある夜、眠ろうと目を閉じた俺は、恐れつつもついにその人影に問いかけた。「お前は、一体何者なんだ」しばらくの沈黙が続いた後に、それはゆっくりと応えた。その声は、まるで壊れたオルゴールの音色のように、耳障りで不快だった。「私は、お前の心の影。お前が目を背けている、真実の姿だ」まさか反応があるとは思わず、俺は絶句し言葉を続けるこ…
2025/05/22 22:20