東京フクロウ26

「確かにお前の気持ちはわからんでもない。出来る事ならわしがミギコの事を引き取ってやってもいい。だがミギコは言うんだ。お前がいい、と。お前の側にいたい、と。私は…

東京フクロウ25

ちらも急所を狙って的中だ」 ヒロムは左のこめかみ、父親は首を撃たれている。「康平は」「暴れ出したんで寝かせてる」「鎮静剤打ったの」 岩沢は頷いた。翔は眠ってい…

東京フクロウ24

真夜中過ぎ、翔は由樹に電話をかけていた。由樹は頷いた。翔は今夜は帰れない旨を告げ、携帯をポケットに閉まった。「綺麗なお顔に戻られましたよ」看護婦が声をかけた。…

東京フクロウ23

「由樹さん知ってる？雪の結晶って心の綺麗な人にしか見えないんだって」「まあ・・・」「あたしには見えないだろうな」由樹は戸惑いの顔を見せた。ミギコの横顔。それは…

東京フクロウ22

「お帰りなさい」「…どうも」 小声で話す。翔は鼻をひくつかせた。どこからかいい香りがする。「食事の支度、出来てます」「すいません、買い物代を」「それは頂きます…

東京フクロウ21

「翔」「ん？」「苦しくはないのか」「何が」「今の生活」 翔は少し微笑んだ。「そんな事、考えた事すら無いよ」「翔」「当たり前の事だから。だってそうじゃん」 翔が…

東京フクロウ20

「寒いな、お湯はかけてないのか」 高藤が入って来る。翔は慌てて涙を拭いた。「かけてるよ。もうすぐ沸く。この額いいね」「いいだろう。特別に作って貰ったんだ。樫の…

東京フクロウ19

ヒロムは立ち上がった。「今日は俺は裏の方流してみるよ」「ヒロム」ヒロムは一度だけ振り返った。「翔、粋に生きような、ずっと」翔は何も返せなかった。ヒロムは皮のコ…

東京フクロウ18

「金が要るんだ」「翔」「一円でも、一円でも欲しいんだ。金が要るんだ」「だったらなぜわしの助けを借りん！いくらでも、」「先生！」二人は視線を反らさなかった。翔は…

東京フクロウ17

岩沢はバスルームで手を洗った後、居間のソファに座り直した。ミギコの寝顔。今は微笑みさえ浮かべて眠っている。ここを訪れたとき、飛び込んで来たのはミギコの慟哭…

東京フクロウ16

雀たちのさえずり。ミギコはそっと目を覚ました。窓際の雀たち。「また来てくれたの？ありがとう」ミギコは微笑みながらサイドテーブルをふいに見た。翔が置いて行って…

東京フクロウ15

翔にはわかっていた。警察（サツ）に挙げられるのが怖いんじゃない。父親に吊るし上げられるのが怖いのだ。ヒロムの父親はこの世界の元締めだ。「ヒロム」翔は優しく声を…

東京フクロウ14

「もちろん。警察（サツ）より確実」翔はそう言ってウインクしてみせた。 『ジェイ』はその手のクラブだ。ガキは来ない。そこのボスはヒロムの父親の息がかかっている。…

東京フクロウ13

もしあの時、康平が教えてくれていなかったら。そして何よりヒロムという存在が無かったら。翔は額を押さえた。ヒロムがそんな翔を気遣い、少し空を見上げた。「翔はい…

東京フクロウ12

何の誇張でもない。女は本当に天使だ。だってほら、こんなにも女の体は温かい。暖かくて温かくて…体温のそのすべてを預けてくれる。幸せだ。本当に幸せだ。  「看護婦…

東京フクロウ12

何の誇張でもない。女は本当に天使だ。だってほら、こんなにも女の体は温かい。暖かくて温かくて…体温のそのすべてを預けてくれる。幸せだ。本当に幸せだ。  「看護婦…

東京フクロウ11

「翔！」 翔はステッキを男目掛けて振りかざした。ステッキの銀の色が部屋中に反射した。  翔は自分のホテルに女を連れて来ていた。ヒロムが救急に連れて行ってくれた…

東京フクロウ10

「お前ら、人のシマで…」「何だ？」 その内の一人が立ち上がった。翔は慌てて中を見た。一人の女が顔を押さえて蹲っている。服の上に落ちている血。翔は慌てて駆け寄っ…

東京フクロウ9

「お前ら、人のシマで…」「何だ？」 その内の一人が立ち上がった。翔は慌てて中を見た。一人の女が顔を押さえて蹲っている。服の上に落ちている血。翔は慌てて駆け寄っ…

東京フクロウ8

「俺はいいんです。俺は大丈夫です。今の職を失っても、また別の仕事がある。何でもやって食って行ける。だけど翔は…」 火柱の折れる音。圭太は一度軽く瞼を閉じ、そし…