遺影に手を合わせた理由 実家の両親に会いに行くため、自宅を出発する直前だった。 玄関にいた娘の彼氏、寧守太(ねすた)が、何かを思い出したような表情で靴を脱ぎ、和室にある妻の祭壇に向かった。「急にどうした?」と尋ねてみたが、彼は何も答えなかった。 遅ればせながら、翌日、気づいた。 「母の日」だったから、妻の遺影に手を合わせてくれたのだ。 そういえば、実家の両親も、ねすたのことを「ねすたくん」と呼ぶようになった。 紹介して丸2年。ようやく、名前を覚えてくれた。ねすたが同行することを事前に伝えておくと、父は饒舌になり、母は張り切って料理を作ってくれる。 どちらかというと人見知りな性格だったが、最近、…