「ハニー、そこでいったい何を?」アンジェラを探して庭に出たクリスは、庭師から教えられたとおりの場所でアンジェラを見つけた。日が高く昇っている時間とはいえ、この季節屋外で過ごすのはおすすめできない。 ここへ来て三日、屋敷の者ともすぐに打ち解けあれこれ手を出しているが、できれば目の届く場所にいて欲しいというのはわがままだろうか。 「土を掘っているの」地面にしゃがみ込むアンジェラは、覗き込むクリス…
このどんぐりクッキーなかなかいける。 セシルは指先についた粉糖をぺろりと舐めて、つい溜息を吐いた。ずっと待っているのに、誰も来ない。どうせリックがサミーを離さないからに決まっている。何が起こったのかは聞いたけど、正直わからないことだらけだ。どうして家庭教師をしていた人がサミーを襲うの? きっとサミーは訊いたら教えてはくれるだろうけど、進んで聞きたいような話ではないし、かといって知らないままな…
サミーは身体が痛いと言ってソファに横になった。膝を貸してやろうとしたが、花柄のクッションを枕にして人の膝は足置きにするあたり、さほど心配はいらないようだ。しかも室内履きを脱いだ足はなぜか靴下をはいていない。真冬になにをしているんだか。 エリックは仕方なしにウールケットを引っ張り上げて、サミーの足を覆った。膝の上で指先がきゅっと丸まったのがわかった。 今朝報告を受けて顔を見るまでは、嫌な考えば…
エリックに気を使われることほど、腹立たしいものはない。腫物を触るような態度で、中途半端なからかいしかできないなら、ここへ来て欲しくなかった。 一人で対処する。できもしないのにそんなことを思う。結局は諦めてエリックのすることを受け入れるしかないのに。 グラントが姿を見せたことで会話はそのまま途切れ、サミーはひとまずスープを手にした。浮き身のひとつも浮いていない透き通ったコンソメスープは、すんな…
エリックはソファの座面を手のひらでぐっと押し、クッションがきいていることを確かめると、畳まれたウールケットをそこに置いた。 グラントが空のトレイを手にやってきて、窓際のテーブルを素早く片付けた。声を掛けなくても、次に現れた時にはきちんと欲しいものを用意してくれているだろう。たとえ仕えている家の者を守れなくても、そのくらいはできるはずだ。 ダグラスがいればと思うが、そもそもクリスとハニーがここ…
ブラックがエリックに報告した時点でこうなると予想はしていたが、セシルまで巻き込むことは想定していなかった。 セシルとはお互いのそういう話をほんの少しだけしたことがある。確か来週には恋人に会えると言っていた。それなのにこんなところへ連れてきて、エリックはいったい何を考えているんだか。 のろのろとした足取りで居間へ向かいながら、マーカスの事を思った。いったい僕の何がマーカスを怒らせたのだろう。頭…
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