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2022/03/03

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  • 花嫁の秘密 437

    花嫁の秘密 437

    兄二人が難しい話をしている間、居間に残されたセシルもまた難しい顔をしていた。 「はぁ……」ため息がこぼれたのは何度目か。 あの日、リックと慌ただしく列車に乗ってフェルリッジに舞い戻ってから、数日の間は気にしていなかったけど、もう一週間だ。いくらなんでも手紙のひとつも寄越さないなんてひどすぎる。今日の午後に出掛けたついでに郵便局で確認してみたけど、僕宛の手紙が届いている様子もどこかにまぎれている様子もなかった。 まさか、僕が送った手紙が届いていないなんてことないよね? いや、きっと届いている。届かないはずなんてないから。返事をしない理由は、たいした内容ではないと判断したからか、彼は僕と会えないことなど気にしていないからか、いったいどちらだろうか。 「そりゃあ僕もさ、会えない原因を作ってるわけだけど……」でもそれは、家族の一大事なら当然のことで、彼がクリスマス休暇..

  • 花嫁の秘密 436

    花嫁の秘密 436

    一人で何もかも決めてしまうくせに、話し合おうなどとよくも言えたものだ。 サミーはエリックの言う通りに向かいの椅子に座った。嘘や誤魔化しがないように、しっかり顔の見える場所がいい。 「話し合いは済んだと思っていたけど?」まだ隠していることは大いにありそうだが、サミーは素知らぬふりで尋ねた。話したいことがあるなら聞く耳はある。 「さっきのは報告だ」 「報告ねえ……ずいぶんとざっくりした報告だったけど、バークリー家の娘は本当に無関係なのか?」 「お前はあの娘がジュリエットに手を貸すように見えるか?」ふんと鼻を鳴らし馬鹿にしたような物言い。くだらない質問だとでも言いたいのだろうけど、詳しい説明もなしに納得はできない。とは言え、バークリー家の娘は規律正しく慎ましく、派手なジュリエットと何らかの接点があったとしても、悪事に加担するとは到底思えない。 「聞いてみただけ..

  • 花嫁の秘密 435

    花嫁の秘密 435

    話すべきことは話した。すべてではないが。 エリックは尻に根の生えた二人を残して地階へ行き、グラントにひとつ用事を頼んだ。まずはサミーのためにブラックを呼び戻すことが先決だ。それと、自分のため――突き詰めればサミーのためだが――にカインを呼ぶ。プラットはいい顔をしないだろうが、どうせしばらく屋敷は空いた状態でやることもないなら、こっちで仕事をさせるまでだ。サミーの許可はあるとか何とか言っておけば問題はないだろう。 二人とも早ければ明日、遅くとも明後日にはフェルリッジに到着する。 気になったのはサミーがどこか上の空だったこと。この事件をさっさと片付けてしまいたいという気持ちは理解できるし、できるならそうしたいところだが、事件自体を表沙汰にできない以上慎重にならざるを得ない。あれはあくまで事故だった、その後起こった出来事を隠すためにはそうしておくしかない。 次の動きをサミ..

  • 花嫁の秘密 434

    花嫁の秘密 434

    エリックにこれまでにわかったことをいくつか聞かされたが、なぜそんなことまで調べられるのか疑問を抱くのは至極当然。 ハンカチの刺繍を見ただけで、どこの誰が針を刺したものかわかるご婦人がいると言うが、どうにも胡散臭い。エリックと一緒に調査しているときにはほとんど何も進展しないのに、急にすべてが判明するのもおかしなものだ。 細かな調査を行っているのはあのスミスとかいう男だろうか。地味で目立たない風貌は調査員向きではある。 「ところで、犯人が分かったなら、すぐにでもその事実を突きつけて、街から追い出すなり国から追い出すなりするべきじゃないかな」サミーは次に起こすべき行動を提案した。面倒はすべて省いて、流刑地へ向かう船に乗せるのはどうだろう。 「なんて言う気だ?バークリー家の娘にハンカチに刺繍してくれと頼んだろう、とでも尋ねるのか?」エリックが馬鹿にしたように言う。 「そう..

  • 花嫁の秘密 433

    花嫁の秘密 433

    何から話すべきか、正直悩むところだ。 これまでにはっきりしたことはふたつ。 マーカス・ウェストの居場所とクリスマスの朝この屋敷の敷地内へ侵入した者。ああ、それとそれを依頼した者も。 ひとまずマーカス・ウェストの次の逗留場所は確認できた。事務所で聞き出した通り、しばらくはブレイクリーハウスにいるようだが、あそこの女主人は少々厄介だ。ブラックには戻ってくるように言って、あとはユースタスに任せるか。もう少し早く追いついていれば、そのまま闇に葬ってやることもできたのに残念だ。 計画は次の段階へと進めるしかない。どうすれば効果的にあの男を苦しめられるかは、ユースタスが考えてくれるだろう。 問題はジュリエットのことだ。当初描いていた計画からは大きくずれてしまい、これに関しては一から策を練り直す必要がある。それも早急に。 エリックは飲みたくもない紅茶に口をつけ、要点だけ掻..

  • 花嫁の秘密 432

    花嫁の秘密 432

    外出から戻ると出迎えた従僕がやけにそわそわとしていた。いま残っている使用人たちは多少のことでは動じたりしないが、エリックが絡むと話は違ってくる。客のくせに屋敷の主然と振る舞うせいで、使わなくてもいい気を使わなくてはならない。 サミーはグラントを呼びつけた。聞けばエリックは僕がどこへ行ったのか気にしていたようで、戻り次第知らせるようにと命じていた。 「直接伝えるから、居間にティーセットを用意しておいて」買って帰ったケーキをセシルがとても楽しみにしている。手間を省くためにも先に話を済ませておいた方がいい。 珍しいことに、エリックはベッドで横になっていた。電報を受けていったいどこで何をしていたのやら。 「どこに行っていたんだ?」サミーはベッドの端に立ち、有無を言わせぬ口調で尋ねた。 エリックの背中がゆっくりと動き、まるで猫が伸びをするような仕草でこちらを見上げた。寝..

  • 花嫁の秘密 431

    花嫁の秘密 431

    エリックが屋敷に戻ったとき、そこにいるはずのサミーもセシルもいなかった。大抵は居間の暖炉の前のソファか、窓際の椅子でまどろんでいる。もしくは図書室か。 出掛けるとは聞いていない。出迎えた下僕も何も言っていなかった。わざわざ居場所を聞くのも大袈裟な気がして――というのも、サミーが何かにつけ大袈裟だと言うからだ――見回りがてら邸内を巡った。 大きな屋敷ではないし、二人のいそうな場所は限られている。そこにいないとなれば、散歩にでも出たか。庭にいるか、門の外に出て湖まで足を延ばしているかもしれない。そこまで考えて、あまりの馬鹿馬鹿しさにエリックは頭を振った。 あの二人がいくら天気がいいとはいえ、この寒さの中散歩に出るとは思えない。とはいえ、念のため確認は必要だ。 屋敷の裏手にまわり庭園を横目に小道を行くと、途中には温室とサミーがアトリエと呼ぶ離れがある。小さな温室のようにも..

  • 花嫁の秘密 430

    花嫁の秘密 430

    「セシル、エリックを見なかった?」サミーは居間でセシルを見つけ、向かいのソファに座った。ここ数日すっきりしない空模様だったが、今日はよく晴れていて暖かいからか、暖炉の火も小さいままだ。 「リックならちょっと出かけてくるって」セシルが読んでいる本から顔を上げた。昨日から読み始めた本は、もう半分まで進んでいる。 「こんな田舎のどこへ出かけるって?」サミーはうんざりとした口調にならないよう気をつけながら尋ねた。エリックはどこにいても忙しなく、じっとしていることがない。 「知らない。ああ、そうだ。電報が届いてたから、それかなぁ……」セシルは本を置いて、考え込むように頬杖をついた。「特に慌てた様子はなかったけどね」 「エリックがいったい何をしているのかは知らないけど、ブラックは一向に戻ってこないし、うちの使用人にも勝手に指示は出すし、もう向こうへ戻ってくれないかな」駆けつけて..

  • 花嫁の秘密 429

    花嫁の秘密 429

    「ねえ、メグ。これクリスには不評みたいよ」アンジェラは足元に落としたズボンを鏡越しに見ながら言う。足元が温かいし、動きやすいし、文句なしなのに。 「たいていの夫はそういう反応をすると思います」メグはきびきびと言い、ズボンを回収する。 「でもこれはセシルのおさがりでも紳士用でもなく、ちゃんと婦人用のズボンなのよ。狩りや乗馬する時にスカートより便利だし、みんなもそうするべきよ」そうは言いつつも、ドレスに袖を通すとホッとする。身体にぴったり馴染むこの感覚は、他の人には理解できないものかもしれない。 「でも奥様は狩りも乗馬もされないでしょう?」メグは背中のリボンを結びながら言う。 「まあ、そうね」ついでに言えば、女性でもないわ。 アンジェラは口元だけで呟き、鏡の中の貧相な身体を見つめた。背はまだ伸びる可能性はある。けど身体つきに関して言えば、兄たちを見てもこれからアン..

  • 花嫁の秘密 428

    花嫁の秘密 428

    「ハニー、そこでいったい何を?」アンジェラを探して庭に出たクリスは、庭師から教えられたとおりの場所でアンジェラを見つけた。日が高く昇っている時間とはいえ、この季節屋外で過ごすのはおすすめできない。 ここへ来て三日、屋敷の者ともすぐに打ち解けあれこれ手を出しているが、できれば目の届く場所にいて欲しいというのはわがままだろうか。 「土を掘っているの」地面にしゃがみ込むアンジェラは、覗き込むクリスにまばゆい笑みを向けた。手にはシャベルが握られている。 「それは見ればわかるが、何か植える気ならもう少し暖かくなってからでないと」おそらく菜園の空いた場所を好きにしていいとでも言われたのだろう。 「土をほぐしておくといいんですって」アンジェラが緑色の葉っぱを横目に言う。サンドイッチの皿によく添えられているハーブだ。 「それもわかるが、ハニーがそこの土をほぐすと、庭師の仕事を..

  • 花嫁の秘密 427

    花嫁の秘密 427

    このどんぐりクッキーなかなかいける。 セシルは指先についた粉糖をぺろりと舐めて、つい溜息を吐いた。ずっと待っているのに、誰も来ない。どうせリックがサミーを離さないからに決まっている。何が起こったのかは聞いたけど、正直わからないことだらけだ。どうして家庭教師をしていた人がサミーを襲うの? きっとサミーは訊いたら教えてはくれるだろうけど、進んで聞きたいような話ではないし、かといって知らないままなのも足の裏がむずむずするような不快さがある。 「まだ食ってるのか?」声がして、セシルはのろのろと顔を上げた。まだもなにも、ほとんど手をつけていない。 「サミーは?」セシルは言いながら手元のティーポットを掴んだ。いつの間にか空になっている。 「寝た。もうしばらくは影響があるだろうな」エリックは疲れた顔で横に座り、テーブルに肘をついて頭を抱えた。横から覗き込もうとして鋭く睨みつ..

  • 花嫁の秘密 426

    花嫁の秘密 426

    サミーは身体が痛いと言ってソファに横になった。膝を貸してやろうとしたが、花柄のクッションを枕にして人の膝は足置きにするあたり、さほど心配はいらないようだ。しかも室内履きを脱いだ足はなぜか靴下をはいていない。真冬になにをしているんだか。 エリックは仕方なしにウールケットを引っ張り上げて、サミーの足を覆った。膝の上で指先がきゅっと丸まったのがわかった。 今朝報告を受けて顔を見るまでは、嫌な考えばかりが頭に浮かび、こうして触れることさえできないかもしれないと危惧していた。サミーは俺には理解できないようなこだわりを持っているし、妙に潔癖なところがある。俺が気にしないことも気にするのがサミーだ。 サミーはゆっくり途切れ途切れに昨夜の出来事を語った。記憶が曖昧だと言っていたが、マーカス・ウェストがなにをしたのかははっきりと理解できた。侵入経路はグラントが言っていた通りだろう。田舎の屋..

  • 花嫁の秘密 425

    花嫁の秘密 425

    エリックに気を使われることほど、腹立たしいものはない。腫物を触るような態度で、中途半端なからかいしかできないなら、ここへ来て欲しくなかった。 一人で対処する。できもしないのにそんなことを思う。結局は諦めてエリックのすることを受け入れるしかないのに。 グラントが姿を見せたことで会話はそのまま途切れ、サミーはひとまずスープを手にした。浮き身のひとつも浮いていない透き通ったコンソメスープは、すんなりとひりつく喉を通り胃に染み入った。吐き気は一時的なものだったのか、キャノンの煎じ薬のおかげなのかいったいどちらだったのだろう。 エッグスタンドの卵の頭をエリックがナイフできれいに切り落とし、パンを添えて目の前に置いてくれたが、なぜかどろどろとした半熟卵を見ると胃がむかむかとした。上顎が擦り剝けそうなほどカリカリに焼かれたパンの方が、まだ食べる気が起きる。 エリックが昼食はまだだ..

  • 花嫁の秘密 424

    花嫁の秘密 424

    エリックはソファの座面を手のひらでぐっと押し、クッションがきいていることを確かめると、畳まれたウールケットをそこに置いた。 グラントが空のトレイを手にやってきて、窓際のテーブルを素早く片付けた。声を掛けなくても、次に現れた時にはきちんと欲しいものを用意してくれているだろう。たとえ仕えている家の者を守れなくても、そのくらいはできるはずだ。 ダグラスがいればと思うが、そもそもクリスとハニーがここにいればマーカス・ウェストは侵入することはできなかっただろうし、サミーも襲われずに済んだ。つまり結果として、自分が出した指示のせいでこうなってしまったのは否定できない。 「すべて、俺のせいか……」 「なんの話かは分からないけど。だいたい君が悪い」 ふいに掠れ声が聞こえ顔を上げると、サミーがほとんど目の前まで来ていた。思いのほかしっかりとした足取りで、エリックは安堵のため息を..

  • 花嫁の秘密 423

    花嫁の秘密 423

    ブラックがエリックに報告した時点でこうなると予想はしていたが、セシルまで巻き込むことは想定していなかった。 セシルとはお互いのそういう話をほんの少しだけしたことがある。確か来週には恋人に会えると言っていた。それなのにこんなところへ連れてきて、エリックはいったい何を考えているんだか。 のろのろとした足取りで居間へ向かいながら、マーカスの事を思った。いったい僕の何がマーカスを怒らせたのだろう。頭がすっきりすると、所々欠けていた記憶がよみがえってきた。つまり、マーカスは僕とジュリエットを結婚させまいとして、あんなことをしたということか? サミーは頭を振った。 いや、違う。マーカスはたかがゴシップ紙のくだらない記事を真に受けたりはしない。一〇年以上会っていなくても、それは断言できる。それなら家庭教師をクビになったこと?父への恨みだとしたら、とんだとばっちりだ。それとも、僕が..

  • 花嫁の秘密 422

    花嫁の秘密 422

    ドアノブを後ろ手にエリック廊下では立ち尽くしていた。 サミーがゆっくり慎重にベッドから出る音が聞こえる。どこか痛むのか、小さく呻き、なにかを叩きつけた。 怒りとやるせなさで胃がむかつきいまに吐きそうだ。サミーが自らマーカス・ウェストの前に身を投げ出したのなら何も言うつもりはない。いまの関係を維持することがどれだけ大変かはわかっているし、サミーの出方次第ではすぐにでも終わりを告げられてもおかしくない。 だがそれとこれとは別だ。マーカス・ウェストは一番手を出してはいけないものに手を出した。サミーがあいつを殺せと言うなら、俺は喜んでそうする。 エリックはドアを閉め階下へおりた。小さな居間ではセシルが窓際の日当たりのよい場所を陣取って、のんきにミートパイにかぶりついている。いつもなら気にならないが、いまこの瞬間においては違う。 セシルがエリックに気づいた。「リック、サ..

  • 花嫁の秘密 421

    花嫁の秘密 421

    甘い香りで目が覚めた。 まるでいつもの朝と同じような――こんがりと焼けたトーストにバターがじわりと溶けていく様子や、それにかぶりつくセシルとやけに苦いコーヒーに文句を言うエリック。僕はココアを手にまた騒々しい一日が始まったと素知らぬふりで新聞に目を落とす。 サミーはまばたきをして、香りを辿った。いつもと同じではないことは、目を開ける前から分かっている。キャノン処方の怪しげな薬を飲んだあとは、父の葬儀の時の話をして、それからまた薬を飲んだ。そのおかげか頭痛も治まりぐっすり眠れた。気を失うのとは違う、ちゃんとした睡眠。 身体を起こして枕に背を預ける。誰かいると思ったら、ブラックか。テーブルに食べ損ねた朝食が置いてある。いや、昼食の支度をしてくれているのかもしれない。 「着替えを出してくれ。下で食べる」食欲があればだけど、病気でもないのにベッドで過ごすなんて馬鹿げている。..

  • 花嫁の秘密 420

    花嫁の秘密 420

    「それで、なんでお前まで一緒に来るんだ?」 セシルは悠々と座席に腰を落ち着け、列車が動き出すのを待った。兄の嫌味には耳を貸すものか。いや、やっぱりひと言言わないと気が済まない。 「なんで?リックこそ、なんで僕を置いて行こうとしたの?」荷物らしい荷物も用意できずに駅に駆けつけ、朝食さえ食べ損ねたのに、これが怒らずにいられるか。たまたま、ほんの偶然、リックが急遽フェルリッジへ行くという話をプラットから聞かなければ、今頃何も知らずにのほほんと朝食を食べていただろう。 エリックは言い返そうと口を開きかけたが、お腹が空いて不機嫌な弟ほど厄介なものはないと嫌というほど知っているので、黙ってサンドイッチの入った紙袋をセシルに差し出した。 セシルは鼻から大きく息を吐き出しひと息吐くと、紙袋をガサガサ言わせながらサンドイッチを取り出した。スモークチキンと卵のサンドイッチだ。すごく美味..

  • 花嫁の秘密 419

    花嫁の秘密 419

    朝、街灯の明かりがまだ残っている時間。 ミロード夫人の夜会から帰宅したエリックは、玄関前にクレインが立っているのを見て顔をしかめた。周囲に誰もいないとはいえ、こんなふうに待ち伏せされたことはない。それに昨日の夜――いやほんの数時間前、次の仕事の打ち合わせをしたばかりだ。アクストン通りの俺の部屋で休むと言っていたが、まさかタナーに入れてもらえなかったか? 「何の用だ?お願いだから面倒が起きたと言わないでくれよ」煙草の煙で目が痛いし、いまはとにかくベッドに入って休みたい。 「面倒だけならいいがな」クレインが神妙な面持ちで階段下まで降りてきた。顔を寄せ、声を潜める。「タナーから伝言だ。お前のサミーが襲われた。向こうでブラックが電話を待ってる」 なんの冗談だと言い返す前に走り出していた。頭の中にクレインの言葉がこだましている。襲われた?いったい誰に?無事なのか?怪我の程度は..

  • 花嫁の秘密 418

    花嫁の秘密 418

    ブラックはキャノンに主人を託し、グラントに屋敷の内外をもう一度詳しく調べるように言って屋敷を出た。グラントは言われるまでもなくそうするつもりだったようで、庭を管理しているモリスに馬車が待機していた場所を調べさせていると言っていた。調べたところで行き先がわかるわけでもないが、いつからそこにいたのか、いつ去ったのかくらいはわかるだろう。 事を荒立てず、いま出来得る限りのことをする。お互い名誉挽回のために必死だ。 まずひとつ、到着が遅れたことは言い訳にならない。そばにいれば守るのは簡単なことだった。そして屋敷を任されているグラントが戸締りを確認しておけば、見回りをしておけば、侵入者などやすやすと追い払えた。 ブラックの最大の失態は、新しい主人を信じていなかったこと。部屋に足を踏み入れた瞬間、主人の無事を確認するどころか前の主人に対して不義理を働いたと決めつけ腹を立てた。 ..

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