サクラマスの渚 2
「魚が見えるの?」 川を渡った女が、マコトたちのすぐそばまで近づいてきていた。男は口をつぐんでしまった。マコトは戸惑いながら逆に 「何かを探していたんですか。」 と問い返した。白いクロップドパンツを履いた女は、見てと言って、マコトまで歩み寄り、手に持った赤色のバケツをマコトの前に差し出した。バケツの中には、角がとれた石が数十個入っていた。ブラウン、グレイや、オーカー色に染まったもの。細かいゴマ模様、地層模様が入っていたりと、様々な種類の石がそこにはあった。 「きれいな石ですね。」 「そうでしょう。」 麦わらのつば広帽の下から女の笑顔が覗いた。女はガラガラとバケツをかき回して、一つ取り上げ、開い…
2022/08/23 10:23