ブログ開始時31歳。斎藤茂吉が処女歌集『赤光』を世に出したのも、満31歳のときです。同じ歳で茂吉はどんな歌を詠んだのかと考え、茂吉の故郷で研究しています。茂吉生誕140年の2022年、没後70年の2023年の前に、このブログを始めました。
蚊帳のなかに蚊が二三疋にさんびきゐるらしき此寂しさを告げやらましを 『赤光』初版「みなづき嵐」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中八首目。 寝床を覆う蚊帳...
ながながと廊下を来つついそがしき心湧きたりわれの心に 『赤光』初版「みなづき嵐」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中七首目。 長い廊下を長い時間をかけて歩...
狂じや一人ひとり蚊帳よりいでてまぼしげに覆盆子いちご食べたしといひにけらずや 『赤光』初版「みなづき嵐」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中六首目。 「狂...
狂院の煉瓦の角かどを見ゐしかばみなづきの嵐ふきゆきにけり 『赤光』初版「みなづき嵐」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中五首目。 狂院という語は、茂吉が他...
みなづきの嵐のなかに顫ふるひつつ散るぬば玉の黒き花みゆ 『赤光』初版「みなづき嵐」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中四首目。 水無月みなづき(旧暦六月)...
わがいのち芝居しばゐに似ると云はれたり云ひたるをとこ肥りゐるかも 『赤光』初版「みなづき嵐」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中三首目。 主体の命、すなわ...
わが体にうつうつと汗にじみゐて今みな月の嵐ふきたれ 『赤光』初版「みなづき嵐」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中二首目。 「体たい」と言って、身体を客体...
どんよりと空は曇りて居をりたれば二たび空を見ざりけるかも 『赤光』初版「みなづき嵐」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「みなづき嵐」の十四首中一首目。十四首目の後に「(六月作)...
殺人未遂被告某の精神状態鑑定を命ぜられて某監獄に通ひ居たる時、折にふれて詠みすてたるものなり。 『赤光』初版「麦奴」詞書 『赤光』初版「麦奴」十六首の後の詞書。 「殺人未遂被告某...
黴毒のひそみ流るる血液を彼の男より採りて持ちたり 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十六首目。この歌の後に「(七月作)」と記載されている。...
よごれたる門札おきて急ぎたれ八尺やさか入りつ日ゆららに紅し 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十五首目。 「門札」は「もんさつ」とも「かど...
監獄に通ひ来しより幾日いくひ経し蜩かなかな啼きたり二つ啼きたり 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十四首目。 「殺人未遂被告某の精神状態鑑...
紺いろの囚人の群むれ笠かむり草苅るゆゑに光るその鎌 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十三首目。 「紺いろの囚人の群むれ」とあるが、ここで...
けふの日は何も答いらへず板の上に瞳ひとみを落すこの男はや 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十二首目。 一連後付の詞書にあるように「精神...
光もて囚人の瞳ひとみてらしたりこの囚人を観みざるべからず 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十一首目。 作品主体が光を使っている。手にも...
まはりみち畑にのぼればくろぐろと麦奴むぎのくろみは棄てられにけり 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中十首目。 目的地は畑。回り道を上って...
相群れてべにがら色の囚人しうじんは往ゆきにけるかも入り日赤あかけば 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中九首目。 ...
ほほけたる囚人の眼のやや光り女を云ふかも刺しし女を 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中八首目。 &n...
巻尺まきじやくを囚人のあたまに当て居りて風吹き来しに外面そともを見たり 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中七首目。 &nbs...
監房より今しがた来こし囚人はわがまへにゐてやや笑ゑめるかも 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中六首目。 監房か...
ひた赤し煉瓦の塀はひた赤し女をんな刺しし男に物ものいひ居れば 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中五首目。 「ひた赤...
病監の窓の下びに紫陽花あぢさゐが咲き、折をり風は吹き行きにけり 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中四首目。 読点...
飯いひかしぐ煙けむりならむと鉛筆の秀ほを研ぎて居ゐて煙けむりを見るも 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中三首目。 「飯いひ」とは飯めし...
雨空あめぞらに煙上のぼりて久しかりこれやこの日の午時ちかみかも 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中二首目。 雨が...
しみじみと汗ふきにけり監獄のあかき煉瓦にさみだれは降り 『赤光』初版「麦奴」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「麦奴」の十六首中一首目。十六首目の後に、(七月作)とある。 &...
鳳仙花かたまりて散るひるさがりつくづくとわれ帰りけるかも 『赤光』初版「七月二十三日」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「七月二十三日」の五首中五首目。 &nbs...
十日なまけけふ来て見れば受持の狂人きやうじんひとり死に行きて居し 『赤光』初版「七月二十三日」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「七月二十三日」五首中の第四首。 ...
たたかひは上海しやんはいに起り居ゐたりけり鳳仙花紅あかく散りゐたりけり 『赤光』初版「七月二十三日」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「七月二十三日」五首中の第三首。 「たた...
夏休日なつやすみわれももらひて十日とをかまり汗をながしてなまけてゐたり 『赤光』初版「七月二十三日」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「七月二十三日」五首中の第二首。 &nb...
めん鷄どりら砂あび居たれひつそりと剃刀研人かみそりとぎは過ぎ行きにけり 『赤光』初版「七月二十三日」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「七月二十三日」五首中の第一首。 「め...
屋根にゐて微けき憂湧きにけり目したの街のなりはひの見ゆ 『赤光』初版「屋上の石」 「ゐる」という動詞には「座っている」、「じっとしている」、「とどまる」、「おさまる」などの意味...
屋根踏みて居ればかなしもすぐ下の店に卵を数へゐる見ゆ 『赤光』初版「屋上の石」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「屋上の石」八首中の第七首。 二句切れ...
屋根の上に尻尾動かす鳥来りしばらく居つつ去りにけるかも 『赤光』初版「屋上の石」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「屋上の石」八首中の第六首。 先の第...
屋上をくじやうの石は冷つめたしみすずかる信濃のくにに我は来にけり 『赤光』初版「屋上の石」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「屋上の石」八首中の第五首。  ...
天そそる山のまほらに夕ゆふよどむ光りのなかに抱いだきけるかも 『赤光』初版「屋上の石」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「屋上の石」八首中の第四首。 天そそるは、「天に高...
鳳仙花城あとに散り散りたまる夕かたまけて忍び逢ひたれ 『赤光』初版「屋上の石」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「屋上の石」八首中の第三首。 鳳仙花は...
しら玉の憂のをんな恋ひたづね幾やま越えて来りけらしも 『赤光』初版「屋上の石」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「屋上の石」八首中の第二首。 &nbs...
あしびきの山の峡はざまをゆくみづのをりをり白くたぎちけるかも 『赤光』初版「屋上の石」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「屋上の石」八首中の第一首。一連の末尾に「(七月作)」...
詞書 七月三十日信濃上諏訪に滞在し、一湯浴びて寝ようと湯壺に浸つてゐた時、左千夫先生死んだといふ電報を受取つた。予は直ちに高木なる島木赤彦宅へ走る。夜は十二時を過ぎてゐた。 『赤...
あかあかと朝焼けにけりひんがしの山並の天あめ朝焼けにけり 『赤光』「悲報来」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」の最終、第十首。 第二句まではア段音とカ行音の響きがまぎ...
諏訪のうみに遠白とほじろく立つ流波ながれなみつばらつばらに見んと思へや 『赤光』「悲報来」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第九首。島木赤彦宅から見える諏訪...
罌粟けしはたの向うに湖うみの光りたる信濃のくにに目ざめけるかも 『赤光』「悲報来」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第八首。 島木赤彦宅から「罌粟はた」...
赤彦と赤彦が妻吾(あ)に寝よと蚤とり粉を呉れにけらずや 『赤光』「悲報来」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第七首。 島木赤彦宅での一場面。作品主体は主...
死にせれば人は居ぬかなと歎かひて眠り薬をのみて寝んとす 『赤光』「悲報来」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第六首。 死ねば人という存在はなくなるという自明の...
氷きるをとこのロのたばこの火赤かりければ見て走りたり 『赤光』「悲報来」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第五首。前の一首と同様、採氷している人々...
氷室より氷をいだす幾人はわが走る時ものを云はざりしかも 『赤光』「悲報来」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第四首。イ段音の頭韻が特徴的だ。「氷室」の「ひ」...
すべなきか蛍をころす手のひらに光つぶれてせんすべはなし 『赤光』「悲報来」 『赤光』初版「大正二年(七月迄)」「悲報来」十首中の第三首。「光」と「蛍をころす」は第ニ...
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