2020年の古井由吉氏の死、そして2023年の大江健三郎氏の死において、日本近代文学は終焉を迎えた、或いは滅んだーーーとまでは、まあ、言わない。ただ、そうたやすくまた来ないであろう偉大な日々が終わりを告げた、とは言わなくてはならないだろう。 ごく控えめに言っても、漱石と鴎外、芥川と谷崎に引き継ぐ名として、この二人の名前は挙げられるべきであろう。 作家はその死後辺獄に入り、20年の時を経て復活するかどうかが鍵であると言われる。古井文学は20年の時を隔てて復活するであろうし、せねばならない。もし再評価がなければ日本語が危ういーーーと言えば、果たして大袈裟であろうか。 佐々木 中 天気は悪いが本屋に…