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人生は花鳥風月 https://saga135.hatenablog.jp/

自分の趣味であるギャンブルや読書、水泳、魚釣り、ゲーム、動画鑑賞等を中心に世相や人生観、様々な事を綴っています。 言ってみれば何でもありなブログです。

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2021/01/18

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  • 約定の蜃気楼 最終話

    突如姿を現し、いきなり発言を試みようとするレーテを司祭は制する。 「レーテや、およしなさい」 だが他の長達の寛大な計らいに依って発言を許されたレーテは、携えて来たものを皆の前に出し、こう言いだすのだった。 「まずこの籠に入れられた二匹の蝶と二羽の小鳥をご覧になって下さい」 長達は怪訝そうな顔をしながらもレーテに従い無言のままそれをじーっと見る。次にレーテは籠の扉を開き蝶と鳥を解き放った。すると蝶も鳥も颯爽と飛び立ち、開けていた窓から外に出て行ってしまった。その後も元気よく、勇ましく、優雅に、そして愛らしく飛び回る蝶と鳥の姿は人の心を癒やしてくれる。こうして再度口を開くレーテ。 「どうです、皆様…

  • 約定の蜃気楼 十九話

    身体が重い。まるで鉛でも付けられたように重く感じる。湖の奥深くまで沈められた真人の身体はもはや自力では浮かび上がる事は出来ないだろう。こうなれば反省もクソもない。観念した真人は何も抗わず何も考えずに、ただ死を待つ。 すると何も考えていなかった筈の真人の心に直接触れて来る者が現れた。その者はこう語り掛けて来る。 「真人さん、まだこちらに来る時では無いですよ、ほら、この子も貴方と会ってからこんなに元気になってくれて、これも全て貴方のお陰なのです、ありがとうね」 誰だ。子供という事は畜生道で会った象の親子なのか。確かにあの子供の象は最後に振り返って明るく笑っていた。今も元気にしているのだろうか。真人…

  • 約定の蜃気楼 十八話

    信じていた、尊敬していた人にさえも裏切られる。確かに長い人生に於いては無い話でも無い。でも見聞きした事はあってもいざそれが自分自身に降りかかって来た場合、人はどういう心境になるのだろうか。 今回の事件の犯人は恐らくあいつらだ。悪い勘ほど当たるものだ。そう信じて疑わなかった真人にはもはやこの店主ですら憎らしく思えて来るのだった。 真人は一応夜まで頑張って仕事をやり通した。帰る時にまた一つ訊いてみる。 「店長、あの連中、この近くに住んでいるんですかね?」 店主は少し眉を顰めて答える。 「家までは知らないけど、どうせそうだろうよ、でも何でそこまで気になるんだ? もうこの前の事はいいぞ」 尚も真人は続…

  • 約定の蜃気楼 十七話

    真人の叫び声に愕いた誰かが通報したのだろうか。夜半の公園には大勢の警察官が駆け付け、辺りは騒然とした様相を呈して来る。真人も目撃者として聴取を受けた。そんな中、警察達は口々に言う事があった。 「倉科の英さんとうとう仏さんになっちまったか」 「あれだけまともな所で生活するよう言われてたのにな~」 「何でこんな所でホームレスなんかやってたんだか」 これらの事は当然真人も訝しんでいた。あの容姿、話し方、ホテルオーナーの兄である事等、何処から見ても落ちぶれたホームレスには見えない。それが何故。こんな生活を好んでしていたとすればその理由は何なのだろうか。何れにしても倉科さんにはもっともっと話したい事があ…

  • 約定の蜃気楼 十六話

    「覚えておけよっ!」 捨て台詞を吐いて逃げるチンピラどもの姿は滑稽であった。結局二人がした事は連中を叩きのめしただけで食事の代金を払わせるまでには至らなかった。それより真人が気になった事は瞳の力だった。彼は正直に真正面からその事を訊く。 「今のは何だったんだ? お前そんなに強かったのか?」 瞳はまた溜め息をついてから少し暗鬱な表情で答える。 「そうよ、術を使ったのよ、一応格闘技もしてたんだけどね、あのままじゃ貴方が危ないと思って使ってしまったのよ」 「俺達の力は封じられてる筈じゃなかったのか?」 「貴方も鈍感ね、気付かなかったの? 貴方も力を使ったのよ」 そう言われてみればそうだった。真人は軽…

  • 約定の蜃気楼 十五話

    朝目が覚めた時、瞳は後悔していた。その暗鬱な表情の意味する所とは何なのだろう。それに引き換え明朗な面持ちで窓を開け外の景色を眺める真人。 今日も燦然と輝く陽射しは眩しく、その下で元気良く飛び回る雀達。その可愛い鳴き声はホテルの7階までも十分聴こえ、瞳の気持ちが多少なりとも落ち着いた所を見計らってから真人は声を掛ける。 「何時聴いても鳥の鳴き声は可愛いもんだな」 瞳は溜め息をついてから答え出した。 「確かにね、それにしても貴方はほんとに楽観的でいいわね」 真人は瞳の答えを想定した上で訊いていた。恐らくは瞳も同じだろう。となると後はこれからどうするかという話になって来る事はかなりの必然性を帯びて来…

  • 約定の蜃気楼 十四話

    湖からワープして来たその場所は正に大都会そのものであった。二人の眼前に拡がる夥しいまでの人の群れとビルの群れ。行きかう人々はまるでロボットのように同じような恰好、同じような無表情、同じような歩調で周りには一切目もくれず、無関心を装ったまま歩き続けている。アスファルトの道路とコンクリートで覆い尽くされたビル群は冷たさだけを漂わす。自然を感じさせてくれるものがあるとすれば唯一街路樹ぐらいなものか。 ここが最期の試練である人間道なのか、ここで一体何をしろと言うのか。こればかりは流石の瞳にさえ分からない。このような都会の雑踏を好まない二人は自ずと人気のない場所に移動しようとした。 二人が歩き始めて横断…

  • 今週のお題 ~100万円に対する想い

    今週のお題「100万円あったら」 軒下に 日陰求める 雀達(笑) いやいや、夏はもう目の前までやって来たという陽気ですね。この調子だと何時蝉が啼き出しても不思議ではないような気もします。こんな時期だからこそ心を落ち着かせてブログ制作に勤しむ必要があるとも思える所ですが(笑) という事で久しぶりにお題に挑戦しようと思います。100万円から思い付く事といえばあんな事やこんな事。ま、じっくり考えて行きましょう^^ 100万円という金額の価値 まずはここから始めて行きたいと思います。結論から言いますが自分は100万円というお金を働いて稼いで実際に手にした事は一度もありません。要するに貯めた事は一度も無…

  • 約定の蜃気楼 十三話

    二人が舞い戻った夕暮れ時の湖には珍しく人だかりが出来ていた。霧が晴れているとはいえ、このような幻想的な場所に人が群がっている光景は何ともぎこちなく感じる。 一体ここで何が始まるのだろう。真人はそう思いながらも敢えて訊こうとはしない。それは虎さんと口を利くのを怖れる、彼に対する嫌悪感は言うに及ばす、焦燥感に駆られた瞳の様子にも疑念を抱いていたからであった。 つまりは真人は未だ腹を括り切れていなかったという事になる。そんな真人の不安も他所に湖畔に佇む群衆の一人が真人に声を掛けて来た。 「いよいよ始まりますね、虎さんが気まぐれで行う花火大会が」 そう訊いた真人はなるほどとは思ったものの、何故気まぐれ…

  • 約定の蜃気楼 十二話

    久しぶりに会った瞳の珍しい仕種に愕いた真人であったが、彼は気の向くままに彼女を自分の身体で休ませてやり、優しく髪を撫で互いにその切なさを共有していた。 その後こんな地獄道に長居は無用と感じた真人は瞳の身体を起こし、取り合えず歩き出した。二人は何処へ行くとも考えないまま足に任せて歩いていた。道中瞳は全く口を利かない。そうして二人が辿り着いた場所はこの町で真人が初めに訪れた例の幻想的な湖だった。 閑散とした雰囲気を漂わすこの湖の様子も相変わらずだったが、全く人気の無いこの場所こそが今の二人にひと時の安らぎを与えてくれる事も事実ではあった。二人は湖畔にあるベンチに腰掛ける。湖の遙か彼方に視点を置いて…

  • 三島由紀夫の魅力とは

    日の長さ 夜が恋しい 天邪鬼(笑) 確かに日が長い事は有難い事で感謝しなければならないと思いますが、なるべく人目を避けて生活している自分としては早く夜になって欲しいような気もしないではありません。かといって冬になり余り日が短か過ぎるのもどうかなと思う所でもあります。 本当に文句ばかりですね、こんな事ではいけません(笑) 今日6月22日はかにの日みたいです。大阪府大阪市中央区に本社を置き、かに料理の専門店を運営する株式会社「かに道楽」が1990年(平成2年)に制定。 日付は星占いにおいて「かに座」の最初の日が6月22日であることと、50音で「か」が6番目、「に」が22番目で当たることから。 とあ…

  • 約定の蜃気楼 十一話

    「そうです、そのままじっとしていなさい、餓鬼達は決して貴方の身体に触れる事は出来ません、何も怖れる事はありません」 この神々しいまでの威厳に充ちた綺麗な声の主は一体何者なのだろうか。真人はその指示に従い、身体を仰向けにして微動だにせずその場に横になっていた。 餓鬼達は一斉に真人の方へ駆け寄って来る。さっき話していたシュードラだけはそれを傍観していた。腹を空かせていた餓鬼達は旨そうな食料だと言わんばかりに目をギラつかせながら、何か鋭利な尖った骨のような武器を手にして真人の身体を削ぎ始めようとした。 その刹那真人の身体からは凄まじいまでの金色の光が放たれ、眩しさのあまり目を覆っていた餓鬼達の身体は…

  • 約定の蜃気楼 十話

    西軍の本陣から数十分歩いただろうか。遙かに霞んでいた敵本陣にようやく辿り着いた一行は快く迎え入れられ、手厚いもてなしを受けた。取り合えずと一献授かった真人は悠長に構えているなと感心しながら酒を飲んでいた。 敵総大将の榊原泰幸はその恰幅の良い身体でどんと座り込んで、微動だにしない様子で何故か大将の神原利昌を差し置いて真人に語り掛けて来た。 「貴公は実に聡明な顔をしておられるの~、いや気に入った、素晴らしいご尊顔じゃ」 真人は大して照れる事もなくいきなり本題に入った。 「お褒め頂き恐悦至極で御座います、では気に入って頂いたお礼に一つ上策を献上仕りたいと存じます」 榊原はそんな真人の出過ぎた振る舞い…

  • 約定の蜃気楼 九話

    何時ものように朗らかな表情で真人を見つめる瞳ではあったが、今日は何処となく少し神妙な風にも感じられる。瞳はその長い髪を荒野の強風に靡かせながら語り掛けて来た。 「これで3つの合格認定を頂いたのね、貴方なら次の試練にも耐えられると思うわ、でも最後の試練は......」 真人は瞳の顔を訝しそうに見ながら訊いた。 「確かに最後は難しいだろうな、でも大丈夫さ、さあ、行こう!」 真人はこれまでの3つの試練を超えた事に依って明らかに成長していた。それは瞳にも十分分かる事で頼もしいぐらいだった。それでもまだ少し頼りなさも残る真人でもあったが、瞳は彼の前向きな精神に懸けた。 「そうね、行きましょう」 二人は歩…

  • 限りなく透明に近いブルー<村上龍>を読み終えて

    肌寒さ 嬉しく思う 梅雨の雨(笑) いやいや、梅雨というものは本来蒸し暑いというイメージが強かったのですが、昨日辺りから少し肌寒さを感じるぐらいです。自分としては6月中旬はこれぐらいの気候で丁度良いとも思うのですが。 これも偏に昨今の地球が暑くなり過ぎて、それを抑える為の天の優しい業(わざ)であるようにも思える所ですが、もしそうであれば尚更天に感謝しなければとその有難さを痛切に感じる所です(笑) という事で(どういう事やねん!?)限りなく透明に近いブルー。この超大作のレビューをしてみたいと思います。 あらすじ 舞台は東京、基地の町、福生。ここにあるアパートの一室、通称ハウスで主人公リュウや複数…

  • 約定の蜃気楼 八話

    血と臓物とは正にこの事か。巨大な鰐に飲み込まれた真人の眼前には見るも恐ろしい闇の世界が拡がっていた。ここが胃袋なのか、胃粘液の強力な粘着きに依って手足の動きを封じられた真人には何ら抗う術が無かった。だがこのままでは何れ死んでしまう。真人は精一杯力を振り絞って懐に忍ばせてあったナイフで鰐の身体を突き刺そうと試みたが、ナイフはいとも簡単に弾き飛ばされ何の役にも立たなかった。 真人は観念して死を覚悟した。その時漆黒の闇に閉ざされていた鰐の身体の中が突然明るくなり、向こうから一匹の小魚が真人の方へ駆け寄って来た。メダカかウグイか、はっきりは分からなかったがその魚は何か笑っているように見えた。 「貴方で…

  • 約定の蜃気楼 七話

    瞳は無言のまま真人の顔を凝視し、射貫くような鋭い眼光で彼の両目を見つめ出した。そんな彼女の姿に動じた真人は不甲斐なくも瞳と接吻する覚悟をするのだった。しかし瞳は何時になってもその目を閉じようとはしない。寧ろ、いやに攻撃的なその様子は真人を威嚇し、脅かすようにも感じられる。 危機感を感じた真人は声を発しようとしたが時既に遅し。瞳から目を反らす事が出来なかった真人は口が利けなくなってしまった。何故だ、催眠術にでも掛けられたとでもいうのか。意識までも遠のいて行く。あの時と同じだ、この町へ来たあの時と。あの時は音が聴こえなくなっってしまったが今度は喋る事が出来なくなってしまうのか。 このままではダメだ…

  • 約定の蜃気楼 六話

    就寝前の祈祷を終えた真人は部屋に戻り床に就く。静かな修道院は彼を安眠させるのに十分だった。熟睡中の真人ではあったが久しぶりに夢の世界に誘われる。それは彼の今までの人生を振り返るような過去の経験が物語る夢であった。 真人は高校生の頃から交際していた智子という女性と二十歳過ぎに結婚したのだった。それは傍から見ても実に仲睦まじい夫婦で身内は勿論、職場の人達や同級生、世話になった学校の先生、近所の住民と、大勢の人達からに祝福を受けていた二人の姿は何時も光り輝き、みんなの希望であった。 二人は何処へ行くのにも常に一緒で、綺麗な景色を見ては共に感動し、面白い事があれば共に笑い、亦苦難に遭遇すれば共に悩む。…

  • 約定の蜃気楼 五話

    窓外に見える外の風景は既に日が暮れかけ、一面に広がる野の草花は光の加減か紫色にも見える。そして少し強めに吹いて来た風は真人の逸る気持ちを一層駆り立てるような勢いがあった。 真人は指示されたように取り合えず料理をテーブルに運んで食事の支度を整え、司祭やシスター達に声を掛け、自分自身も食事に赴く。食事室に入って来た一同はテーブルを囲み祈りを捧げてから席に着いた。真人も見様見真似で同じように振る舞い食事を始める。 この日の夕食の献立は白身魚のムニエルとサラダとスープとパンであった。流石は修道院だけあって実に質素なメニューではある。だが結構美味しい。食事中は一切口を利いてはいけないという修道院の仕来り…

  • RIZIN28 感想 ~無常感

    移り行く 夜は儚くも 無常かな(笑) おはようございます^^ いや~本当に月日の経つ早さには愕くばかりですね。もはや6月も中旬、あと半月もすれば7月、2ヶ月後は盆。そして盆が過ぎればまた正月と。 何処かで時を止めたいという衝動に駆られる事もあります(笑) これも甘ってれた考え方ですよね。しっかりと現実を直視しなければなりませんね 😒 という事で(どういう事やねん!?)で一昨日6月13日のRIZIN28の感想でも綴ってみたいと思います。自分のようなヘタレのトーシローの意見なので多少横柄で底の浅い記事になるとは思いますがご了承のほど宜しくお願い致します^^ 試合結果&感想 jp.rizinff.c…

  • 約定の蜃気楼 四話

    晴れ渡った蒼い空一面には無数のひつじ雲がまるで天かける星々のように果てしなく連なっており、その下には見渡す限りの緑の広野が拡がっていて、遙か彼方には微かに海までが見える。 草を食べながら悠々と歩く牛の姿や、香ばしい土の匂い、風に優しく揺らめく樹々(きぎ)、実り豊かな農作物の数々。この目を覆い尽くさんばかりの和やかで素晴らしい光景は、真人の少し沈んでいた心を一掃してくれた。 瞳に連れて来られた時、こんな風景は全く目に入らなかった。またしてもこの町特有の不思議な術にでも掛かってしまったのだろうか。しかし眼前に映るこの素晴らしい光景に感銘を受けた真人は己が狭量を恥じる。そして彼にここで生きて行く事を…

  • 約定の蜃気楼 三話

    相変わらず朗らかな瞳ではあったが湖を後にする時、何やら意味深な事を告げるのだった。 「あ、それとね、この湖は底なし沼なの、通称地獄の沼って言われてるわ、でも底まで辿り着く事が出来たら元の世界に帰れるという言い伝えもあるの、それが出来た人は今まで一人もいないけどね」 真人は冗談半分で訊いていたが、これまでの経緯からも満更嘘ではないような気もする。それを敢えて教えてくれたという事は、俺の勇気を試してでもいるのだろうか。真人は帰りたいやら帰りたくないやら迷っていたが、正直な気持ちとしてはもう少しでもこの女性と一緒に居たいという思いが勝っていたのは自明の事実であった。 次に湖から微かに見えていた神社に…

  • 約定の蜃気楼 二話

    翌朝目を覚ました真人は環境の違いに仰天した。天井がある、壁がある、床がある、窓がある、そして自分は布団に寝ている。ここは一体何処なんだ、昨日湖で会った老人はその後何処へ、訳が分からない。窓外に見える景色からしても恐らくここは家の2階であろう。真人は部屋を出て恐る恐る階段を下りて行った。 下りながら聞こえて来る音がある、まな板を包丁で叩く音だ。誰かが料理でもしているのだろう。真人はどう声を掛けていいのやら分からず、取り合えず 「おはようございます」 とだけ挨拶をしてみた。すると料理をしていた若い女性が愛想の良い態度で、笑みを浮かべながら語り掛けて来た。 「おはようございます、よく眠れたかしら?」…

  • 約定の蜃気楼 一話

    あれからもうどのくらいの月日が経ったのだろう、幾日歩き続けていたのだろう。最期に物を食べたのは何時だったろう、昨日水を飲んだ事は辛うじて覚えているような気もする。自分でも何がどうなってしまったのか分からない。唯一覚えている事といえば自分の名前と微かな思い出ぐらいなものか。 高坂真人25歳。彼は或る悲惨な経験をした事で自暴自棄になり、何もかもを忘れたくなって家を飛び出したのだった。それでもまだ生きている。死なない限りは生きて行くしかないのだ。 その想いは彼をただ夢遊病のように何処までも歩き続けさせるのであった。 だがまだ若い真人は決して道中でへたり込むような真似はしなかった。このまま頑張って歩き…

  • まほろばの月 最終章

    初志貫徹。今正に阿弥の本懐は成し遂げられた。積年の恨みであった目黒は阿弥本人の手に依って殺められ、ヤクザの大親分待鳥さえも抹殺された。この事は或る意味素晴らしい功績で、輝夜一家は一躍ヒーローになったといっても過言ではないような気もする。 まだ胸の高鳴りが抑えられない阿弥ではあったが、3月下旬の海風は冷たくも清々しく、その場を鎮静化させる漂いがあった。 阿弥は二人の外道を蹴り堕とした海面に向かって唾を吐いた。 「ぶくぶく腹だけ肥えやがって、この豚野郎どもがっ!」 一同に歓喜の声は無かったが、静寂の裡にも阿弥が思いを遂げた事に対する喜びは自ずと一人一人の表情が物語っていた。椎名が無言で阿弥の肩を優…

  • まほろばの月 二十六章

    決行の刻(とき)は来た。午後7時過ぎ、既に日も暮れ天高く姿を現した半月を眺めながら仕事に赴く。一意専心。一行はただ阿弥が本懐を遂げる為のみにその身を賭して動き出すのであった。 手筈通り一家の者達を二手に分け、まずは山友会の待鳥宅を襲う組は椎名を筆頭にして直、健、柾、そして椎名が連れて来た数名の子分達に依って組織され、目黒には阿弥、波子、沙也加の三人が例のように華麗に変装して待鳥が雇った娼婦として近づく。椎名の組は黒の目出し帽に黒の手袋、黒のブーツに黒の上下作業服と、黒づくめの装備で颯爽と待鳥宅に襲撃を掛けた。 玄関前には屈強な門番が立っていたがそんな奴等は椎名と子分達が瞬く間に始末し中へ入る。…

  • 主観性と客観性、二元論と多元論

    風吹けば 心安らぐ 初夏の空(笑) いやいや、暑くなりましたね 🥵 まだ6月上旬のこの時期に初夏というワードを用いる事は不本意ではありますが、この暑さでは致し方ないかなと思う次第です。せめて風が吹いてくれれば少しは涼しくなるのですが。自分は団扇で我慢しています^^ ですがそんな気候とは裏腹に、心が熱くなるような事象はなかなか起きてはくれないみたいです。それどころか暑い、暑苦しい、むさ苦しい、醜い、亦氷のように冷たい、冷徹なニュースばかりで嫌になって来るぐらいです。 またまた硬い内容の記事になってしまう事、ご容赦願いたいと思います^^ news.yahoo.co.jp 五輪開催の是非 まずはオリ…

  • まほろばの月 二十五章

    一殺多生。美子の死と、英二の遺言も空しく絶縁された清吾の処遇は一家にとって本当に功を奏するのだろうか。だが清吾は阿弥の事を全く恨みになど思っていない、それどころか阿弥が本懐を遂げる事を祈る清吾の想いは、波子や阿弥本人にも伝わって来るぐらいであった。とすれば阿弥の決断は寧ろ清吾に対する優しさであったようにも思えないでもない。だが美子の方は.......。 3月下旬のまだ寒さの残る夜の路上で、阿弥と波子は凄惨な状態で眠っている美子の姿を後目に憂愁をたたえながら立ち去って行くのだった。 隠れ家に戻った二人は何も喋らずぼんやりと佇んでいた。二人の想いは今更口に出すまでも無かったのだが阿弥は敢えて波子に…

  • 武神 <韓流時代劇>

    キム・ジュンは何故イム・ヨンなる者を己が跡継ぎに考えていたのでしょうか。確かに彼には比類なき才能があったかもしれませんが、あくまでも物語の後半から知り合ったばかりの彼にそこまで惹かれるものでもあったのでしょうか。 結果二人は袂を分かつ事になりますが、キム・ジュンはこのイム・ヨンといい、チェ・ハンといい、自ら悩みの種を作ったように見えてしまいます。後に閤下(はっぱ)となるキム・ジュンにはそれほど先見の明が無かったのでしょうか。というのが自分の最大の疑問ではあります。 一番好きだった韓流時代劇、武神のレビューです。 概要 このドラマは高麗王朝中期、武臣政権時代を舞台に奴婢(ぬひ)から武臣になり権力…

  • まほろばの月 二十四章

    翌日、椎名は電光石火の如く迅速に仕事を終え、阿弥の下に吉報を齎す。彼は顔がボコボコに腫れあがった男を伴って勢いよく隠れ家に入って来た。 「阿弥よ、こいつが竜太を察に売ったんだよ、俺の方である程度は〆ておいたが、後はやりたいようにやってくれ」 一同は椎名の仕事の早さに愕きその場に立ち尽くしていた。阿弥は無表情で冷たい面持ちの中にも、鋭い眼光を放ちながらその男を蹴り飛ばした。 「よくやってくれたな~、椎名、他の奴等は?」 「悪い、残念だが他は逃げられた、何とかそいつだけを引っ張って来れただけだよ」 「そっか、ま~いい、こいつは使い道がある、直! こいつを縛っておけ! 生かさず殺さずな!」 「へい!…

  • まほろばの月 二十三章

    竜太は一晩留置所に泊まる事になりその後も執拗な尋問を受けていた。だが口の堅い一家のメンバーは堕とす事は至難の業で、警察の取り調べも苦戦を強いられていた。 そんな竜太に刑事は言う。 「流石と言いたい所だが、いい加減吐いてしまえよ、被害届も出てるし、お前の顔を見たという証言もあるんだ、これだけでも十分な証拠だよ」 竜太は尚も余裕綽々な態度でこう答えた。 「誰だよ? 俺の顔を見たというのは? 読んで来いよ、それに指紋も残ってねーだろーよ」 「確かに、指紋は一切残って無かったよ、流石は輝夜一家、完璧な仕事だよな、だが目撃者は本当に居る、状況証拠だけで起訴する事も出来るんだぞ」 「へ~、じゃあしたらいい…

  • まほろばの月 二十二章

    腐っても極道の端くれであった椎名はエンコを飛ばしたぐらいでは全く狼狽えなかった。阿弥が命じて用意させた氷にも手を浸そうとはしない。それどころか未だ不敵な笑みを浮かべながら阿弥に言うのだった。 「この勝負貰ったな、俺達の勝ちだぜ」 椎名のこの笑みには単なる強がりではなく、何か自信に充ちた、以前の彼には無かった毅然とした頼もしい漂いがあった。その自信の源とは何なのだろう、阿弥に対する愛情か、将又山友会や目黒を追い込まんとする気概か。何れにしても阿弥はこの椎名の言を受け入れ、此度の仕事に加える事にしたのだった。 作戦会議は仕切り直され、新たに加わった椎名は指の痛みなど気にする素振りも見せずに己が策を…

  • 大阪弁と神戸弁(播州弁)の違い

    梅雨空の 僅かな晴れ間 有難き(笑) 昨今は若者の、いや現代人の方言離れなども囁かれていますが自分としては嘆かわしい限りですね。方言こそ素晴らしい文化、歴史の象徴で、そこから多種多様の個性や面白さが生まれて来るとも思えるのですが、そういうものに頓着の無い人が増えたという事なのでしょうか。それとも自分が考え過ぎているだけでしょうか(笑) 自分もブログや手紙などの文書では当然標準語を使っていますが、日常生活では勿論バリバリの神戸弁で喋っています(笑) でもテレビを観ていても未だに関西弁自体が特別視されているように見受けられますし、もっと悲しいのは関西人でありながら関西弁を喋らない人も増えて来たとい…

  • まほろばの月 二十一章

    隠れ家に帰った阿弥は本格的な作戦会議を開いたのだが、そこでは思わぬ凶報が齎された。警察が本気で動き出したのだというのだ。確かに想定内ではあった。いくら一家が義の為にして来た事とはいえ、その行為はあくまでも犯罪である。今まで誰一人としてお縄になっていなかった事がおかしいくらいである。 阿弥は改めて皆に警戒を怠らぬよう忠告すると共に、最期の仕事に対する意気込みを示した。 「そうか、いよいよい察が動き出したか~、だがあと一歩だ、ここまで来て下手打つ訳には行かねーぞ! 最期の仕事だ、十分気を引き締めて当たってくれや!」 子分達は一同にして声を上げた。 「へい親分! 最期の仕事、是が非でも成功させますぜ…

  • まほろばの月 二十章

    波子に内々に調べさせていた目黒と山友会との間柄は実に醜く腐れ切ったものだった。山友会は目黒に対し多額の賄賂を贈っていた。それは当然目黒の選挙資金にもなるし、小遣いにもなる。その上、右翼団体などを使い敵対する候補者の選挙妨害や、己が身辺警護までさせていた。 見返りは山友会が少々の事件を起こしても穏便に済ませるよう手を回したりして彼等の活動がし易くなるよう便宜を図る、という持ちつ持たれつの関係が形成されていた。 朱に染まれば赤くなる。確かに政治家とヤクザが裏で繋がっている事は決して珍しい訳でもないが、阿弥は世の中はこうも醜いものかと呆れ返っていた。となればヤミ金で儲けた分もかなりの額になるだろう。…

  • まほろばの月 十九章

    無事仕事を終えた阿弥だったがその顔に笑みは無かった。椎名が最後に吐いた捨て台詞が気に掛かって仕方ない。彼はこう言っていた。 「今回は流石に完敗だな、しかしお前らも長くは持たねーぞ、うちの親分は黙ってねーだろうな、それにあの御方も付いてる事だし、ま、せいぜい頑張るこったな」 阿弥は必死になって訊き出そうとした。 「あの御方とは誰なんだ!? 言えよゴラ!」 「流石にそれだけは言えねーな、何れは分かるだろうがな」 「お前、言いたい事はそれだけか?」 「もう一つある、お前、俺と一緒にならねーか? いい暮らしさせてやるぞ、でねーと俺がお前を殺る事になるかもな」 「お前にあたいは取れねーよ、それはお前が一…

  • 横浜港、長崎港開港記念日 ~オムレツの日

    春情に 別れを告げる 水無月よ(笑) いよいよ六月になってしまいましたかぁ~。いやはや本当に早いですね。この前正月になったばかり、この前節分、雛祭り、桜の開花、端午の節句、GWと思っていましたが。それがもはや6月、早くも夏を思わせる気候ですけど、また暑くなるのかと思うと嫌になって来ます 😅 でもそんな愚痴ばかり零していてはいけません。暑い夏も正に花鳥風月そのものなのです。 という事で(どういう事やねん!?) 恒例の行事、記念日特集です(笑) 横浜港開港記念日・長崎港開港記念日 1859年(安政6年)のこの日、前年1858年に締結された日米修好通商条約により、それまでの下田・箱館(現:函館)のほ…

  • まほろばの月 十八章

    波子から合図を受けた五人の女達はいよいよ動き出す。時は午後10時半、金色に輝く満月の月灯りは優しく柔らかく、そしてあくまでも堂々と地上にあるもの全てを真正面から見据えているようだ。街はずれこの辺りは既に閑散としなくていて人影は全く無く、椎名邸の玄関に屹立するシケ張りの男達だけがやたら物々しく映る。 そんな中、女達は各々のセンスで艶やかな服に身を包み、懐には小刀を潜ませ辺りを警戒しながら歩いて行く。阿弥だけは殊更凝ったメイクをして顔を見ただけでは誰なのか分からないほどであった。 玄関前に差し当たるとシケ張りが声を掛けて来た。 「お前達か、親分に呼ばれて来たのは?」 「さようで御座います」 「ちょ…

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